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税務署の調査が実施される際に知っておくべきこと7つ
- 税務署からの調査で知り合いの社長が追徴課税をたくさん取られたらしい…うちの会社にも調査が来ることはあるのだろうか…
- 税務署から「調査をさせてほしい」と電話があった。どんな準備をしておけばいいの?
税務調査への対応を考えることは、経営者や経理担当者として非常に重要な仕事です。
もし税務調査に対する対応の仕方(虚偽など)を間違えると、多額の追徴課税が課せられてしまう可能性もありますから注意しておきましょう。
この記事では、
- 税務調査に向けて準備しておくべきこと
- 税務調査当日はどのような流れで調査が進んでいくのか
- 追徴課税を課せられないためにはどうしたらいいのか
について具体的な項目をあげながら解説いたします。
この記事が、税務調査への対応について不安がある方の参考になればうれしく思います。
1、税務署の調査は本当に来る?
「うちは小規模な個人事業主だから、税務署がわざわざ調査しに来るようなことはないのでは?」と思われる社長さんも多いかもしれません。
しかし、結論から言うと、税務署の調査は事業規模の大小にかかわらず行なわれる可能性があります。
例えば、個人事業主として一人で活動している方や、サラリーマンの方が副業でかなりもうけが出ている…というような状況でも税務調査がくる可能性はあるでしょう。
さらにいうと、税務調査というのは「何か怪しいことをしたから調べに来る」という性質のものではなく、「定期的なチェック」というような形で行われることもあります。
ある程度の規模の事業者になると、2年〜3年に1回は必ず税務調査がきているというケースも少なくないのです。
(1)税務調査に入られやすい業種
このように、税務調査はどのような規模の事業者であってもやってくる可能性があるのですが、その中でも「現金商売のビジネス」は特に税務調査が行われやすいといわれています。
現金商売のビジネスとは、その名の通り「サービスを行ったその場でお客さんが現金で代金を支払ってくれる」という形のビジネスのことで、具体的には以下のような業種が該当します。
- 飲食業
- 理容業や美容業
- 風俗業
現金商売のビジネスに対して税務調査が入りやすいのは、売上の操作を行うことが比較的容易であるからです。
お客さんから受け取ったお金を、レジを通さずに処理してしまえば、外から見ると売上の計上が無かったように見えるでしょう。
売上高を本来の金額よりも少なく計上すれば、当然ながら支払う税金も少なくなりますから、こうした操作が行われないかをチェックする目的で税務調査がやってきやすいというわけです。
なお、上のような「売上の計上漏れ」は税務署職員が身分を隠して実際にお店を利用し、その後に税務調査にやってきて適切にレジを通しているかチェックする…というようなことも行われますから、絶対にやめましょう。
(2)税務署はいきなり踏み込んでくる?
テレビドラマや映画では、いきなり税務署の職員が会社の営業所などに踏み込んでくる…という演出がされることがあります。
しかし、実際にはこのような形で税務調査が行われることはめったにありません。
多くの税務調査では、税務調査が行われる日程の数日〜1週間以上前に電話で事業所に連絡が入ります。
指定された期日に予定があって対応ができないような場合には、日程の変更を依頼することも認められます。
2、税務署の調査がきやすい時期はいつ?
税務署の職員も公務員ですので、「この時期にはこの仕事をする」ということがおおよそ決まっています。
結論から言うと、8月〜12月前半ごろまでが税務調査の行われやすい時期といえるでしょう。
税務署は7月〜6月末を1つの事業年度として動いています。
7月には人事異動がありますから、組織メンバーの改変が終わった8月ごろから税務調査に関連する業務が動き出す傾向があるのです。
また、12月末ごろ〜1月にかけては年末調整業務、2月〜3月は確定申告業務というように、税務署は非常に忙しい時期ですから、税務調査は少なくなります。
さらにその後、5月には三月決算法人の税務申告業務があり、6月になると人事異動関連の引継ぎ業務があり忙しくなります。
必然的にこれらの時期には税務調査にかけられる時間が減りますから、それ以外の8月〜12月前半に税務調査を集中的に行うことになるというわけです。
もっとも、これはあくまでも原則的なケースですので、特殊なケースではこうした時期に該当しなくても税務調査が行われる可能性はあります。
事業者の立場としては、税務調査が来ることを避けることは基本的にできませんから、実際に税務調査の依頼があった時にしっかりと対応できるようにしておくことが大切です。
3、税務署の調査では何年分の帳簿がチェックされる?
税務調査では、過去3年分の事業年度の帳簿がチェックされるケースが多いでしょう。
ただし、悪質な不正を日常的に行っていることが明になってしまったようなケースでは、最大で過去5年〜7年分の帳簿がみられる可能性があります。
以下では、実際に税務調査の連絡が入った時に、どのような準備をしておけばいいのかについて解説します。
(1)税務調査の連絡が入った時点で準備しておくべきもの
税務調査の連絡が税務署から来たら、調査期日までに以下のようなことを準備しておきましょう。
- 指定された事業年度の決算書や申告書控え
- 顧問税理士がいる場合は速やかに連絡しておく
- 会社の事業内容や経理処理の流れを説明できるようにしておく
- 指定される事業年度分の会計帳簿を用意しておく
- 総勘定元帳と仕訳帳をデータで保管している場合はすべて印刷しておく
- 株主総会や取締役会議事録の準備
- 従業員の賃金台帳やタイムカード・源泉徴収簿の準備
- 会社の資産台帳の準備
- 契約書等の準備(収入印紙の貼り忘れがないかチェック)
- 会計帳簿に対応する請求書や領収書を年度別にまとめておく
- 税務署の職員に使ってもらうデスクやPC・プリンタの準備
- できれば事業所に税務署職員が作業する用のスペースを設ける
税理士はあなたの会社が負担する税額が少しでも少なくできるように税務調査に対応してくれますから、もし顧問を依頼している税理士がいない場合は相談することを検討してみてください。
(2)帳簿を改ざんしたり隠したりしたらどうなる?
絶対にやってはいけないこととして、「税務調査の連絡が入った後のタイミングで、過去の経理処理を修正する」ということがあります。
会計処理というのは基本的に過去にさかのぼって処理をすることは認められませんから、これをやってしまうと最悪の場合は「帳簿を意図的に改ざんしている」と判断される可能性があります。
帳簿の改ざんは、後で見るように重加算税(税務調査の結果として課せられるもっとも重いペナルティです)を課せられる原因となってしまいますので、絶対にやめましょう。
4、税務署の調査はどのように行われる?
税務調査は、実際にどのように行われるのかについてみておきましょう。
税務調査はほとんどのケースで2日間の期日で行われます。
時間は午前10時から始まって、正午にお昼休みをはさみ、夕方4時半ごろまで行われることが多いでしょう。
おおまかに税務調査のスケジュールを見ると、以下のようになります。
- (1)事前連絡
- (2)事業内容や経理処理の方法についてヒアリング
- (3)帳簿のチェック作業
- (4)調査結果のおおまかな報告
- (5)後日に正式な結果報告
- (6)修正申告または職権による更正
以下、それぞれの項目について順番に見ていきましょう。
(1)事前連絡
税務調査が行われることが決定したら、調査期日の10日〜2週間ほど前のタイミングであなたの会社に税務署職員から電話で連絡が入ります。
税務署の職員は「この日に調査をさせてほしい」と伝えてきますが、もしこの日程が難しい場合には変更を依頼することも可能です。
税務調査は2日間にわたって行われるのが普通で、朝10時から始まったお昼休みをはさみ、夕方で終わります。なお、昼食は用意する必要はありません。
(2)事業内容や経理処理の方法についてヒアリング
調査当日は、会社の事業内容や、経理処理の大まかな流れについてヒアリングが行われます。
事業内容については、どこから何を仕入れてどこに売っているのか、従業員はどのような区分に従って正社員やパートとして雇用しているのかといったことを説明できるようにしておきましょう。
経理処理の流れについては、売上はどのタイミングで計上しているのか(請求書を得意先に送った時?入金があった時?など)、毎月どのような経費が発生して、該当する請求書や領収書はどれなのかといったことが分かるようにしておくと良いです。
(3)帳簿のチェック作業
ヒアリングが終わったら、税務署の職員は会計帳簿を1つずつチェックしていきます。
基本的には領収書や請求書といった原資料の内容が、会計帳簿(仕訳帳と総勘定元帳)に正しく反映されているかが見られます。
(4)調査結果のおおまかな報告
2日間の調査日程が完了したら、調査の結果にしておおまかに報告が行われます。
加算税の有無や否認される経費項目などが指摘されますので、顧問税理士がいる場合は説明をしてもらうようにしましょう。
もちろん、経理処理の内容に全く問題がなければ、申告是認ということで追徴課税や修正申告が必要ないこともあります。
(5)後日に正式な結果報告
調査期日が終了したら、後日に正式な結果報告が書面で行われます。
過去の申告内容に問題がなかった場合には「申告是認通知」、問題があった場合には指摘事項の一覧が通知されるとともに、修正を行うように指示されます。
(6)修正申告または職権による更正
過去の申告内容を自発的に修正することを「修正申告」と呼びますが、これは必ずしも義務ではありません。
ただし、もしあなたが自発的に修正申告を行わない場合には、税務署側が職権で過去の申告内容を修正してきます(更正処分といいます)。修正申告をした場合には加算税の一部が免除されるなどのメリットがありますから、できれば修正申告を行うようにしましょう。
5、税務署の調査でチェックされる項目
それでは、実際に税務調査が来た時に備えて、会社の経営者として行っておくべき対策としてはどのようなことがあるでしょうか。
以下では、主に個人事業主や中小企業の経営者の方向けに、税務調査でチェックされることの多いポイントについて解説いたします。
(1)売上高に関する主なチェック項目
売上の計上漏れがないか?は税務調査でもっとも厳しくチェックされる項目です。
現金商売の場合はレジを通した証拠をすべて残すとともに、帳簿上の現金残高と実際の現金残高が必ず一致しておくようにしなくてはなりません。
掛け取引がメインの業種では、得意先からの請求書を適切に整理しておくとともに、売上台帳などによって売掛金の管理を行っていることが必要です。
(2)外注費に関する主なチェック項目
外注費については、外部の下請け業者や、職人に対して支払った費用を適切に処理しているかがチェックされます。
相手先から渡される請求書をすべて保管し、適切に会計帳簿に記入していることが基本ですが、その他にもいろいろなことが見られます。
例えば、利益額の調整のために架空の請求書を発行するなどの業界慣行があることもあるでしょうが、最悪の場合は重加算税を課せられる原因となるのでこうしたことは絶対にしては行けません。
また、実質的には従業員であるのに、彼らに対して支払ったお金を外注費として処理している場合も問題となります。
従業員に対して支払った賃金は会計上給与として処理し、適切な金額の源泉所得税を納付しなくてはなりません。
外注先が個人事業主として適切に確定申告を行っているかどうかによって、あなたの会社の外注費処理が適切であるかどうかが判断されることもありますから、外部に仕事を依頼している場合には相手に確定申告を行うよううながしておくことも大切です。
(3)経費項目に関する主なチェック項目
接待費や交通費といった経費項目が、領収書の内容に基づいて適切に経費処理されているかどうかが確認されます。
経費として処理する項目については、すべてその内容を記した領収書が完備されていなくてはなりません。
領収書がないのに経費として処理している項目が発覚すると、その経費処理は否認されて税額が増える可能性がありますので、注意が必要です。
(4)従業員に関する主なチェック項目
従業員に関しては、給与として経費処理した金額が適正なものであるか?という視点で調査が行われます。
会社の仕事をしているという実態がない人にお給料を出していたり、給与を計上しているのに実際にはお金を渡していなかったりする場合には、過去に計上した給与が否認されてそれだけ税額が大きくなる可能性があります。
また、源泉所得税の処理も重点的にチェックされる項目です。
従業員のお給料からは適切な所得税額を毎月天引きし、翌月10日までに税務署に納付する義務があります。
もし納めるべき源泉所得税を納付していなかった場合には、追加で納税を求められるとともに、不納付加算税というペナルティが課せられる可能性があります。
(5)会社と役員に関する主なチェック項目
会社と経営者(役員)との関係は、税務調査で重点的にチェックされる項目です。
具体的には、会社の経費として計上している役員報酬の金額が適法なものであるか、役員個人のプライベートな支出を会社の経費として処理していないかといった項目が見られます。
会社の社宅として処理している役員宅の家賃や、会社の資産として計上して減価償却費を計上している社長の車などが問題となるケースが多いでしょう。
(6)契約書に関する主なチェック項目
会社が作成する契約書には、契約の金額に応じて収入印紙を張り付けておかないといけません。
もし印紙の貼付け忘れが調査によって発覚した場合には、本来必要な印紙を張り付けるとともに、本来張り付けるべき印紙の2倍の金額を過怠税として徴収されてしまいます。
税務調査の連絡が税務署から入った段階で、契約書はすべて精査して印紙税の貼付け忘れがないかチェックしておくようにしましょう。
6、税務署の調査で不正が分かった場合の扱いや罰則
税務調査の結果として、過去に行った税務申告の内容に誤りが見つかった場合には、その申告内容を修正するように求められます。
修正を求められるのは、税金の負担額が増えるケースだけですので、必然的に追徴課税というかたちで追加の納税を求められてしまうのです。
具体的には「本来納めるべきだった税額と、過去に実際に納税した税額の差額」を納めることになります。
また、上で見た「足りない分の税金」だけでなく、ペナルティの意味も込めて加算税や延滞税といった税金が課せられるケースもあることに注意しておきましょう。
以下では、加算税や延滞税が課されてしまう場合と、その計算方法について簡単に説明いたします。
(1)延滞税の計算方法
延滞税は、本来納めるべきだった税額と、実際に納めた税額の差額について、利息のようなかたちで課せられるペナルティです。
延滞税の計算は、納税の期日から2か月以内の部分と、それ以降の部分を分けて日割り計算で計算します。
- 納税期日の翌日〜2カ月:2.6%
- 2か月目以降:8.9%
例えば、納付漏れとなっていた税額が10万円で、本来の期日から36か月後に納税したという場合には、次のように延滞税を計算します。
- 納税期日の翌日〜2カ月の分:10万円×2.6%×2ヶ月÷12か月=433円
- 2か月目以降の分:10万円×8.9%×(36か月−2カ月)÷12か月=2万5216円
- 合計(36か月分):433円+2万5216円≒2万5600円(百円未満は切り捨てです)
なお、延滞税の税率は毎年変更されますから、国税庁のホームページで最新の税率を確認しておくようにしましょう。
(2)加算税の種類
税務調査の結果として、ペナルティとしての意味合いがより強い「加算税」が課せられてしまうケースがあります。加算税の種類には以下のようなものがあります。
- 過少申告加算税:過去に申告納付した税額が少なかった場合に課せられます
- 無申告加算税:税務申告が必要であったのに、期日までに申告を行わなかった場合に課せられます
- 不納付加算税:本来納めるべき源泉所得税の納付を怠った場合に課せられます
- 重加算税:帳簿の改ざんや財産隠しなど、特に悪質なケースで課せられます
また、加算税は「条件に該当するときに必ず課せられる」という性質のものではなく、調査官が必要と認めた場合に課せられるものです。
調査官の心証によって課せられたり、課せられなかったりすることもあるのが実際のところなので、税務調査には協力的な態度で臨むことが無難といえるでしょう。
(3)追徴課税を納めなかったらどうなる?
指定された期日までに追徴課税の納税を行わない場合、最悪のケースでは財産の差し押さえなどがされてしまう可能性があります。
どのぐらいのタイミングで差押えがされるかは状況によって様々ですが、3か月〜1年以上追徴課税を放置している場合、差押えされるリスクは非常に高くなっているといえるでしょう。
なお、どうしても納税が難しい場合には、税務署に直接相談することで分納や一部の免除が認められる可能性があります。
7、税務署の調査への対策は税理士に相談しよう
税務調査への対応を誤ると、本来は納めないでもよい税金を納めることになったり、税務署にマークされて今後ひんぱんに税務調査が来る…という状況になったりしかねません。
税務調査への対応に不安がある方は、専門の税理士と顧問契約を結ぶことをおすすめします。
税法にくわしい税理士に税務調査の対応をしてもらうことにより、追徴課税を免除してもらえることもあります。
また、税務調査がきても安心な経理体制の構築や、法律のルール内で使うことができる合法的な節税対策の方法を提案してもらうこともできます。
現在、自力で経理をしている経営者の方は、税理士と顧問契約を結ぶこともぜひ検討してみてください。
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まとめ
今回は、税務署が行う調査の内容について解説いたしました。
本文でも見たように、税務調査の対象となることは事業者として基本的に避けることができないものです。
そのため、「どうしたら税務調査が来ないようにできるのか」ではなく、税務調査が来ても大丈夫なように、日ごろから準備と対策をしておくことが重要といえるでしょう。
税務調査への対応は、専門の税理士と顧問契約を結ぶことでさまざまな対策をアドバイスしてもらえます。税務調査について不安がある方は、ぜひ税理士との顧問契約も検討してみてください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています