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会社の種類一覧|特徴や選び方、会社設立に役立つ知識まとめ
会社の種類やそれぞれの特徴についてご存知でしょうか?
新たに会社を設立するときや、法人化するときは、それぞれの会社の設立に関する手続やメリット・デメリットを把握し、ベストな選択をすることが重要です。
今回は、
- 会社の種類
- 各種類における特徴
- 会社設立に関する相談先
について、解説していきます。ご参考になれば幸いです。
1、会社の種類は4つある
2006年施行の新会社法では、設立できる会社の種類は、「株式会社」、「合同会社」、「合資会社」、「合名会社」の4種類で、「有限会社」は、新会社法の施行以後、設立することができなくなりました。
新会社法の施行前までに、有限会社として存在した会社のみ、「特例有限会社」として、「有限会社」を名乗ることができますが、会社法上は、株式会社として扱われます。
4つの会社は、以下の2点から、分類することができます。
- 債務に対する社員(株主などの出資者)が負う責任の態様
- 会社の内部組織の構成
このうち重要なのは、「債務に対する社員(株主などの出資者)が負う責任の態様」です。
「債務に対する社員(株主などの出資者)が負う責任の態様」とは、会社の債権者に対し、社員(株主などの出資者)が、どのような責任を負うか、ということです。
例えば、会社が、A企業からお金を借りました。
会社が支払えなくなったとき、A企業は、会社の社員(株主などの出資者)にも、「返せ」と言えるかどうか。
言える場合は、社員(株主などの出資者)が、無限責任を負っているといい、言えない場合は、社員(株主などの出資者)が、有限責任を負っているといいます。
旧商法での会社形態 |
会社法での会社形態
|
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・株式会社 ・合名会社 ・合資会社 ・有限会社 |
・株式会社 ・合名会社 ・合資会社 ・合同会社
・特例有限会社 (新規設立は不可) |
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持分会社
|
新会社法施行以降は、「株式会社」か「合同会社」のいずれかを選択するケースが多いですが、会社設立後に、別の会社形態に移行することもできます。
ここでは、有限会社を除く4種類の会社それぞれの概要を解説します。
(1)株式会社
株式会社は、もっとも一般的な会社形態です。
債務に対する社員(株主などの出資者)が負う責任の態様は、間接有限責任です(会社法第104条)。
会社債権者にとって担保となるのは、会社財産だけになります。
株式の発行による資金調達が可能で、集めた資金を、事業活動に充てることができます。
出資者を募って株式会社を設立するケースもあれば、個人事業主が、節税対策で法人化するケースもあります。
株式会社の最大のメリットは、社会的な信用度が高いことです。
たとえば、個人事業主や合同会社等と比べると、融資や助成金の面で優遇されることが多く、BtoBなどの大きいビジネスチャンスもつかみやすくなっています。
一方で、赤字経営であっても、最低7万円ほどの法人税が課される、会計処理が複雑化するといったデメリットもあります。
設立には登録免許税15万円、定款認証5万円、印紙4万円、トータルで約25万円の費用がかかります。その他、会社の実印や銀行印も必要となります。
(2)合同会社
2006年に新会社法が施行されて以降、有限会社に代わる会社形態として注目されているのが、合同会社です。
債務に対する社員(株主などの出資者)が負う責任の態様は、間接有限責任です。
組織は、経営者と出資者が同一で、出資者全員が、有限責任社員として、会社の経営に携わります。
新たに会社を設立する場合は、株式会社と合同会社のメリット・デメリットをそれぞれ比較検討して、どちらかを選択することになるでしょう。
合同会社のメリットは、設立コストの安さと簡便さです。
株式会社設立に必要だった定款認証が不要で、登録免許税も6万円で済みます。
登記に必要な書類も少なく済むため、早く簡単に設立できます。また、株主総会や決算公告が不要であることから、経営上の事務作業も、株式会社に比べると負担が少ないです。
ただし、社会的信用度は株式会社に劣るため、資金調達や契約等で、不利になるケースも少なくありません。
(3)合資会社
合資会社は、会社の債務に対し、無制限に責任を負う「無限責任社員」と、出資額までの責任を負う「有限責任社員」が各1名以上、合計2名以上からなる会社です。
株式会社や合同会社は、1人でも設立できますが、合資会社の設立は、最低でも2人が必要です。
また、経営が失敗したときの責任は、無限責任社員がすべて負うことになるため、設立者個人の資産に責任が及ぶリスクがあります。
新会社法の施行以降は、より経営者のリスクが少ない合同会社の設立が多くなり、新たに合資会社を設立するケースは、少なくなっています。
合資会社の設立費用は、合同会社と同じく、登録免許税6万円は必要ですが、株式会社設立に必要だった定款認証は不要です。その他の費用を合わせても、トータル10万円程度で設立することができます。
(4)合名会社
合名会社は、会社の債務に対し、無制限に責任を負う「無限責任社員」だけで構成される会社形態です。
無限責任社員1名で設立することができること以外は、合同会社・合資会社と同じで、登録免許税も6万円で済み、定款認証も不要で、手続も比較的簡単です。
ただし、経営が失敗したときの責任は、無限責任社員である設立者個人が、すべて負うというリスクがあります。
2006年の新会社法の施行以降は、合名会社より、経営者のリスクが少ない合同会社の設立が多くなっています。
2、それぞれの会社が持つ特徴を比較
新会社法で設立できる4種類の会社それぞれの特徴を表にまとめてみました。
|
株式会社 |
合同会社 |
合資会社 |
合名会社 |
出資者 |
1人以上 |
1人以上 |
2人以上 |
1人以上 |
出資者の呼称 |
株主 |
社員 |
社員 |
社員 |
出資者の責任 |
有限責任 |
有限責任 |
無限責任 有限責任 |
無限責任 |
代表者の呼称 |
代表取締役 |
代表社員 |
代表社員 |
代表社員 |
社会的信用度 社会的認知度 |
高い |
(新しい組織のため)やや低い |
低い |
低い |
設立時の費用と手続 |
登録免許税15万円~ 定款認証5万円 印紙4万円 |
登録免許税6万円~ 定款認証不要 印紙4万円 |
登録免許税6万円~ 定款認証不要 印紙4万円 |
登録免許税6万円~ 定款認証不要 印紙4万円 |
資本金 |
1円以上 |
1円以上 |
規定なし |
規定なし |
役員(任期) |
取締役 (最長10年) |
全社員(定款に業務執行社員を定めた場合、業務執行社員) (無制限) |
全社員(定款に業務執行社員を定めた場合、業務執行社員) (無制限) |
全社員(定款に業務執行社員を定めた場合、業務執行社員) (無制限) |
最高意思決定機関 |
株主総会 |
社員の過半数 |
社員の過半数 |
社員の過半数 |
上場 |
できる |
できない |
できない |
できない |
決算公告 |
必要 |
不要 |
不要 |
不要 |
利益の配分 |
出資額に比例(法律上の制約が多い) |
定款で 自由に決められる |
定款で 自由に決められる |
定款で 自由に決められる |
3、株式会社と合同会社はどちらを選ぶべき?選び方のポイント
会社を設立するときに、株式会社と合同会社のどちらを選べば良いかは、両者のメリット・デメリットを把握したうえで、判断することが大切です。
両者を比較する際に、重視すべきポイントして挙げられるのが、「会社を大きくすることを重視」か、もしくは、「経営の自由度を重視」かの2択です。
株式会社と合同会社、それぞれの特徴を考慮すると、次のような選択が望まれます。
会社を大きくすることを重視 |
社会的信用度の高い「株式会社」が有利 |
経営の自由度を重視 |
経営の自由度の高い「合同会社」が有利 |
(1)会社を大きくしたい
たとえば、多くの取引先を獲得したり、従業員を増やしたりすることを「会社を大きくすること」と捉えれば、社会的信用なくして、実現はできません。
一般的に、株式会社の方が、認知度・実績などから見て、社会的信用度は高いと言えます。
たとえば、同じ商品・サービスを同じ価格で扱っている「株式会社A」と「合同会社A」があった場合、前者の方が、一般的に良いイメージを持たれやすく、契約・資金調達・求人などの面で有利に働きます。
さらに、株式会社は、株を発行することで一般の出資者から資金を集めることができます。
株式発行による資金調達は、4つの会社形態のうち唯一、株式会社だけに認められた大きなメリットと言えるでしょう。
一方、合同会社も、地道に実績を積んでいけば、社会的信用を獲得することはできますが、株式会社ほどの信用度を得ることは難しく、契約・資金調達・求人などの面で、敬遠されることも少なくありません。
(2)経営の自由度が高い会社にしたい
経営の自由度を最優先事項とするならば、株式会社よりも合同会社の方が、経営の自由度は高いです。
合同会社の社員は、出資者と経営者の役割を兼ねており、取締役会などの機関の設置が不要で、なおかつ、株主総会などを開く必要もないため、ビジネスの意思決定を迅速に行うことができます。
ただし、合同会社は、規模が大きくなったときに、「利益配分の自由度の高さ」が、社員間のトラブルになるケースも少なくありません。
会社設立時に、定款でルールを明確に定めておけば、トラブルは起こりにくいですが、会社が大きくなっていく過程で、逐次的に決めていく場合は、揉める可能性もあります。
つまり、合同会社の経営の自由度の高さは、社員間の人間関係が良好であることが前提と言えるでしょう。
4、会社設立に関する相談先と専門家
会社設立に関わる士業にはさまざまな種類の専門家がおり、それぞれで専門とする領域が異なります。
(1)税理士
税理士は、税務・決算の分野の専門家です。
税理士には、会社設立前に税務・決算について助言を求めたり、設立後に顧問契約を結び、決算業務や税務申告などの手続代行を依頼したりすることができます。
(2)行政書士
行政書士に依頼できることは、「権利義務または事実証明に関する書類作成」と「行政に提出する書類の作成」です。
また、許認可手続の書類作成も、行政書士が、専門としていることです。
行政書士に、許認可に関する各種書類の作成を依頼する場合の費用相場は10万円ほどです。
(3)司法書士
司法書士は登記の専門家であり、会社設立の登記手続の代行ができるのは、司法書士だけです。
司法書士に、設立登記の手続を依頼する場合の費用相場は10万円ほどです。
(4)弁護士
弁護士に、会社設立を依頼した場合の費用相場は20万円ほどですが、諸々の書類作成や設立手続の代行など、設立前から後々までトータルのサポートを受けることができます。
書類作成は行政書士に、登記手続は司法書士に、といった面倒なことをせずとも、他士業と連携している弁護士なら、ワンストップでトータルに対応してくれるため、結果的に時間と手間がかからないというメリットがあります。
さらに、弁護士と顧問契約を結ぶことで、法律に関するさまざまな助力を受けることができるため、将来的に会社を大きくしたいと考えている方にとっては頼れる存在となるでしょう。
(5)社会保険労務士
会社を設立し、従業員を雇う時には、社会保険・厚生年金・雇用保険などに加入しなければなりません。
社会保険労務士は、保険に関する専門家です。
さらに、会社設立に際して、助成金の申請を得意としている社会保険労務士も多いので、併せて依頼すると会社設立のコストを抑えることもできます。
まとめ
会社設立に関して、どのような選択肢があるのか、どの専門家に相談すればよいのか、具体的なイメージができたでしょうか。
新会社法の下では、「株式会社」か「合同会社」のいずれかを設立することになります。
いずれの会社形態も、メリット・デメリットがありますので、事業の内容や目的に合わせて、ベストな選択をしましょう。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています