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債務名義の取得方法とは?6つのパターン別にわかりやすく解説
債務名義の取得方法についてご存知ですか?
そもそも「債務名義」とは、強制執行(※)によって実現されることが予定される請求権の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の文書のことです。
※強制執行とは、債務者に対する請求権を、裁判所が強制的に実現する手続をいいます。
強制執行は、人と人との間の権利義務関係において、国家権力が使われる場面です。
そのため、そもそもの権利義務関係が間違いなく正当なものである必要があり、これが証明されていなくてはなりません。
その「証明」が「債務名義」です。
今回は、
- 債務名義の種類
- 種類ごとの取得方法
- シチュエーション別に見るオススメの債務名義
などを解説していきます。ご参考になれば幸いです。
債権回収の方法について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
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1、債務名義の取得方法について知る前に|債務名義取得の必要性
「強制執行」とは、民事事件における私人間(しじんかん)の権利義務について、国が関与し、強制的に権利を実現することです。
国が関与するには、自由に生活する私人において、どのような関係が発生し、どのような債権債務が発生したのか、間違いなくきちんと把握した上でなければなりません。
国が、その把握をするためには、単なる契約書などのような、私人間において作成されたものでは弱く、公的機関が関わってなされた証明をもって、なされることが必要なのです。
そこで、その証明を「債務名義」とし、民事執行法においていくつかその種類が定められています。
2、債務名義の種類は主に6種類
それでは、「債務名義」の種類についてご紹介していきます。
(1)確定判決
上級裁判所によって取り消しできない(控訴、上告できない)状態の判決です。
(2)仮執行宣言のある判決
上級裁判所へ控訴できるものの、暫定的に執行可能な判決です。
(3)仮執行宣言付支払督促
支払督促の手続によって出されます。
支払督促については、こちらの記事をご覧ください。
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(4)訴訟費用の負担の処分
「訴訟費用」とは、裁判にかかる費用のことです(弁護士費用は含まれません)。
訴訟費用は、裁判において、どちらが負担するかを判決で言い渡されるのですが、この判決だけでは、強制執行をすることはできません。
強制執行するためには、訴訟費用額確定処分が必要なのです。
(5)公正証書(執行証書)
債務者が直ちに強制執行に服する旨の文言が記載されている公正証書は、執行力、つまり、債務者が契約等で定めた約束に違反して債務を履行しなかった場合に、債権者において強制執行をすることができる効力を有します。
(6)確定判決と同一の効力を有するもの
①裁判所の和解調書
裁判では、判決までいく途中で、話合いで紛争を解決することがあり、これを「和解」といいます。
和解になると,裁判所書記官が、その内容を記載した書面を作るのですが、それが「和解調書」です。
②認諾調書
裁判では、被告は、原告の請求を認めることで、裁判を終了させることができます。
被告が、原告の請求を認めることを「認諾」といい、認諾がなされると、裁判所は調書を作成します。
これが「認諾調書」です。
③訴え提起前の和解(即決和解)
裁判外で「和解」をしたときに、これを簡易裁判所に申し立てることにより、訴訟上の和解とすることができる制度です。
④調停調書
「調停」とは、裁判のような争いの場というよりは、「話し合い」の場です。
裁判所も、簡易裁判所が管轄となります。
この調停において作成された調書が、「調停調書」です。
⑤刑事和解・損害賠償命令
刑事事件においては、裁判で有罪が確定するなどの刑事手続が主流ですが、同時に、民事上の損害賠償も発生するケースが多いでしょう。
この民事上の損害賠償については、裁判外で示談が行われることも多いのですが、公判調書(刑事裁判の記録)に、示談の内容も記載してもらうことを刑事和解といいます。
また、刑事裁判において、引き続き損害賠償請求についての審理も行い(原則的には民事裁判を別途提起します)加害者に損害の賠償を命じることができるという制度もあり、この制度が「損害賠償命令」です。
3、それぞれの債務名義の取得方法
(1)確定判決・仮執行宣言のある判決の取得方法
裁判をすること(訴訟)で、得ることができます。
(2)仮執行宣言付支払督促
支払督促の手続を利用することで、得ることができます。
(3)公正証書(執行証書)
全国の公証役場で、作成することができます。手数料は5,000円からです。
(4)その他
その他については、「2」の各ご紹介において、どのように取得できるのかの概略がお分かりいただけるかと思います。
4、シチュエーション別|おすすめの債務名義
(1)契約書がある金銭の不払いの場合
合意内容に基づき契約書が作成されているが債務者が債務を履行しない(金銭を期日に支払わない)という場合では、「仮執行宣言付支払督促」がおすすめです。
支払督促は、訴訟に比べて断然手続が簡易です。
相手方(債務者)が、異議を唱えなければ、スムースに強制執行まで行き着けます。
(2)契約締結時に、もしものために備える場合
契約の締結時に、もし将来債務が履行されなかった場合は、と念のために備える場合は、「公正証書」がおすすめです。
実務上、契約当初から公正証書にする例は少なく、債務が履行されないときに債権者が公正証書(執行証書)にするのが一般的です。
公正証書を作成するためには、契約書にこのことを記載しておく必要があります。
例えば、「本件契約を、強制執行認諾約款付きの公正証書とし、乙(債務者)が、本件契約に規定する金銭債務を履行しない場合、乙は、直ちに強制執行を受けても異義のない事を承諾し、甲(債権者)は、遅滞なく公正証書を作成する。」というような文言を入れておくのです。
(3)相手が支払いに合意している場合
相手が支払いに合意している場合は、まず、支払いについての合意書面を作成しましょう。
そして、訴え提起前の和解(即決和解)で債務名義を取得しておくのが効果的です。
5、債務の履行請求についてお困りの際は
契約や不法行為などにより、相手に債務の履行を請求してもなかなかうまくいかないときは、どうぞお気軽に弁護士にご相談ください。
具体的なケースに合う権利の実現について、ベストなアドバイスがもらえるはずです。
強制執行を視野に入れる場合は、相手にどのような資産があるのか、それが大切です。
何ら資産がない中で強制執行をしても、空振りに終わってしまいます。
弁護士に依頼すれば、手続も全て弁護士が代行します。
財産の調査も含め、トータルにサポートしてくれるでしょう。
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まとめ
強制執行を行うには、「債務名義」が必要になります。
債務名義の種類はさまざまです。状況に合った債務名義を取得しましょう。
債務の履行請求でお困りのことがありましたら、ぜひ弁護士までご相談ください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています