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財産引受とは?スムーズな会社設立のために知っておきたい7つ
財産引受を利用して、スタートアップをスムーズに進めたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし「必要な手続きや注意点」が分からないとお困りのこともあるかと思います。
そこで今回は、
- 財産引受の基礎知識
- 財産引受を行う際に必要な手続き
- 財産引受の注意点
等について、ご説明したいと思います。ご参考になれば幸いです。
1、財産引受とは?
財産引受の概要を解説します。
(1)財産引受とは
財産引受とは、発起人が、株式引受人や第三者との間で、会社成立を条件に特定の財産を譲り受ける(買い受ける)ことです。
会社を設立した後は車や不動産など事業用の資産が必要となるので、財産引受は資産の取得手段の一つと考えられます。
会社設立時に、発起人が金銭以外の財産を出資する「現物出資」という方法がありますが、現物出資は発起人に限られるのに対し、財産引受は第三者からの財産も譲り受けて(買い受けて)良いという特徴があります。
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(2)財産引受の趣旨
財産を譲り受ける発起人は、会社設立に必要な資産を確保することができます。
車や不動産など会社設立後の事業に必要な資産を譲り受ける契約(売買契約)を事前に結んでおくことで、スムーズなスタートアップができます。
(3)財産引受は財産的基盤を危うくさせる恐れがある
しかし、譲り受ける財産を過大に評価して不当な対価を支払ってしまうと、会社の財産的基礎を損ないかねません。
たとえば、第三者が時価総額50万円の車を財産引受で譲り、会社が対価として100万円の現金を支払った場合、50万円の現金が流出したことになります。
(4)財産的基盤を危うくさせないために
会社法第28条2号では、財産引受の趣旨として、財産が過大に評価されると会社の財産的基礎を危うくし、なおかつ、現物出資規制の潜脱手段として財産引受が用いられる可能性があるとして、財産引受を「変態設立事項」として定款に記載しなければ当該財産引受の効力は生じない、と規定されています。
また、原則として、検査役の検査を受けることとし、適正な財産引受であるかの検査がなされることになっています。
2、財産引受をするには、原則、裁判所に検査役の選任を申立てることが必要
前述の通り、会社が財産引受によって財産を譲り受ける場合、原則として検査役の検査を受けなければなりません。
「検査役」は、裁判所に選任を申立て、弁護士や公認会計士、税理士から選任されます。
検査役は、譲り受けた財産について、定款に記載された価額と実際の価値の調査を行います。
会社法第33条1号は、検査役について次のように規定しています。
(定款の記載又は記録事項に関する検査役の選任)
第三十三条 発起人は、定款に第二十八条各号に掲げる事項についての記載又は記録があるときは、第三十条第一項の公証人の認証の後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。
ただし、会社法第33条に基づく次のようなケースでは、検査役による調査が不要です。
- 定款に記載され、または記録された価額の総額が500万円を超えない場合
- 市場価格のある有価証券について定款に記載され、または記録された価額が市場価格を超えない場合
- 定款に記載され、または記録された価額が相当であることについて弁護士、公認会計士、税理士等の証明を受けている場合
検査役による調査には、1回につき数十万円の費用と数ヶ月の期間を要します。
スムーズに会社設立の手続きを遂行するためにも、財産引受は財産の価額の総額を500万円以下に抑えることをおすすめします。
3、財産引受は変態設立事項として定款に記載が必要
財産引受は、変態設立事項として定款に記載が必要です。
会社法第28条では、変態設立事項について次のように規定しています。
第二十八条 株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第二十六条第一項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。
一 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第三十二条第一項第一号において同じ。)
二 株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
三 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
四 株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)
4、定款に記載のない財産引受の効力は?
財産引受を行う場合、会社法第28条に基づき、次の事項を定款に記載します。
- 会社成立後に譲り受けることを約束した財産(目的財産)
- 譲り受けた財産の価額
- 譲渡人の氏名または名称
以上の記載が定款になければその効力を生じません。
「効力を生じない」とは、記載が無かったからといって定款自体が無効になることはないものの、その財産引受は無効である、ということです。
5、財産引受や会社設立の際は、弁護士へご相談を
財産引受は、特定の財産を売買契約などで譲り受けることです。
個人間のモノの譲受とは異なり、会社法に基づいて厳格な手続きを行わなければなりません。
会社設立時、あるいは会社設立後の忙しいタイミングですので、財産引受や会社設立については弁護士に相談されることをおすすめします。
まとめ
会社設立前後には、財産引受以外にも、定款の作成や認証、登記書類の作成と申請、役所や法務局への届け出など、さまざまな手続きで手間も時間もかかります。
なるべく煩雑な手続きを回避し、スムーズなスタートアップを実現するためにも、会社設立を一括して弁護士に依頼するという方法を選択してみてはいかがでしょうか?
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています