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残業時間には上限規制、残業を増やさずに決算早期化はできるのか

2020年3月10日
残業時間には上限規制、残業を増やさずに決算早期化はできるのか

1.決算早期化が求められる背景

経理や総務、IR(投資家向け広報)の仕事に関わる方なら、決算早期化という言葉を聞くことは多いのではないでしょうか。
決算早期化という言葉が普及したのは、ここ20年ほどのことではないかと思います。
企業を取り巻く経営環境が厳しい中で、経営上の意思決定を迅速に行えるようにタイムリーな財務情報の入手が求められたことや、資本市場からの資金調達のために投資家向けの情報提供を迅速化することが求められたことなどが背景にあります。
このように決算早期化には企業経営上のメリットもあるのですが、実際に決算早期化を実現するには一筋縄でいかない部分があります。以下で解説します。

2.決算業務の大まかな流れ

決算業務を大きく分ければ、以下のように分けられるのではないかと思います。

  1. 単体決算業務
  2. 連結決算業務
  3. 開示書類作成(東京証券取引所の上場規程に基づく決算短信、会社法に基づく計算書類、金融商品取引法に基づく有価証券報告書など)

この3つは、基本的には記載したとおりの順序で進んでいきます。
つまり、単体決算業務を経て単体決算の数値が固まり、これを元に連結決算業務を経て連結決算の数値が固まり、単体決算・連結決算の数値を元にして開示書類を作成するという流れになります。
実際には連結決算業務を進めている中で、単体決算業務の誤りが発見されることもありますし、公認会計士又は監査法人の指摘によって修正が必要になることもありますから、必ずしも順序良く進んでいくわけではなく、時には何度も戻って修正することになります。
このため、決算スケジュールの中にあらかじめ余裕を見込んでおく必要があります。

また、決算業務を担当する経理部門内では、決算業務の具体的内容を、勘定科目別や仕訳別に担当者に割り振っていることが多いと思います。
決算スケジュールを組むうえでは、特定の担当者に一時期に業務が集中しないように配慮することも大切です。

3.決算早期化の目標はどこか

決算早期化の目標はどこか

(1)上場企業の場合

決算早期化を実現するうえでまず考えなくてはならないことは、決算業務の期限を意識したうえで、目標をどこに設定するかです。
上場企業の場合、東京証券取引所が45日以内開示のルールを示しつつ、30日以内開示が望ましいとしていることから、前年比で1日でも決算発表を早期化しようと取り組むことが多いでしょう。
ちなみに、東京証券取引所が2019年3月期決算発表状況の集計結果について取りまとめて公表しているところ(https://www.jpx.co.jp/news/1023/20190621-01.html)によれば、決算発表までの平均所要日数は39.7日で、前年における平均所要日数39.2日から0.5日長くなりました。
10連休による稼働日数の減少などが影響しているとは考えられますが、決算発表を1日でも早期化することがいかに難しいかがわかります。

(2)非上場企業の場合

一方で非上場企業の場合、決算短信のような形で決算発表する義務はありませんから、決算業務の期限としては、株主総会の時期や、法人税の申告期限を意識してスケジュールを調整することになります。
法人税の申告書は、株主総会の承認を経た確定決算に基づいて作成されますから、順序としては必ず株主総会の時期が先になります。
しかし、株主がオーナー経営者やその親族だけに限られている場合などは、会社法300条に基づいて、株主全員の同意により株主総会の招集手続を省略することができますので、法人税の申告書を作成するぎりぎりのタイミングで株主総会を開き、決算を承認することもできます。
このような場合には、法人税の申告期限を意識して決算業務のスケジュールを組むことになるでしょう。

(3)非上場企業がIPOを目指す場合

上記のように、上場企業の決算スケジュールが非常にタイトであるのに対して、非上場企業の決算スケジュールはかなり余裕があります。
このため、決算早期化を最もダイナミックに進めなければいけないのは、IPOを目指す企業ではないかと思います。
今まで法人税の申告期限に間に合うように単体決算業務をしてきた企業が、45日以内に連結決算業務まで終えて開示書類を作成できるようにすぐになるかといえば、なかなか容易なことではありません。

(4)合理的な目標の必要性

このように企業によって決算業務の期限は異なりますから、決算早期化の目標をどこに置くかも異なります。
しかし、共通して言えるのは、目標は合理的に定める必要があるということです。
前期の実績や当期の改善計画を踏まえることなく目標だけを設定しても、現場の疲弊を招きます。
決算業務には単体決算業務、連結決算業務などの流れがありますから、無理な目標設定をした場合、単体決算業務がスケジュールよりも遅れ、連結決算業務の担当者がスケジュールどおりに着手できない状況も生じ得ます。
こうなると、予定していた業務が実施できず、手持ち無沙汰になる人員が発生して、かえって効率性が悪くなってしまいます。

また、いわゆる働き方改革関連法の成立によって、2019年4月からは残業時間に対する法律上の上限が厳格化されています(中小企業については2020年4月から適用予定)。
決算業務は決算期末日後の1か月ほどの間に集中して進めるため、時間外労働や休日労働が発生することは避けがたいところがあります。
しかし、法律上1か月における時間外労働と休日労働の合計が100時間までに制限されていますから、決算業務の担当者がこの上限を超過しないように注意しなくてはなりません。
決算の早期化目標を設定するには、このような点にも注意する必要があります。

4.決算早期化のために何をすればよいのか

決算早期化のために何をすればよいのか

(1)属人化の防止

それでは決算早期化のために具体的にどんなことに取り組めばよいのでしょうか。
よく言われることではありますが、業務内容をマニュアルに記述し業務の属人化を防止することは、決算早期化においても重要です。
そもそも月次決算と異なり、年度決算の場合には、担当者に決算業務を経験させる機会はどうしても限られてきます。
効率性を考えると、前期と同じ決算業務を前期と同じ担当者に処理させたくなるかもしれませんが、属人化を防止するためには業務内容をマニュアルに記述して担当者を毎年適宜変更して処理させることも大切です。
属人化を防止することで、決算業務担当者の異動や、休暇取得、さらには決算スケジュールの再調整などに対応しやすくなることが期待できます。
また、担当者を毎年適宜変更することで、決算業務を見直す気付きの機会が増えることも期待できます。

(2)決算前倒し

また、決算業務の中には決算日以前に前倒しで準備できるものもありますから、前倒しできるものは決算期末日以前にあらかじめ準備(決算資料の仮作成や、概算数値の仮入力など)をしておいて、決算期末日後の決算業務の中では簡単な更新作業だけで終えられるようにしておくことも、決算早期化には役立ちます。
前倒しをすると全体的な作業工数は多少増えることが多いですが、決算期末日後の業務集中を分散し、平準化する効果が期待できます。
経理部門の業務はどうしても繁閑差がありますから、このような業務平準化は企業だけでなく従業員にとってもメリットがあるのです。

(3)監査対応の迅速化

公認会計士又は監査法人による監査を受けている場合、決算のためには、監査及び監査対応に要する時間も見込まなくてはなりません。
監査で質問を受けてから社内で調査して回答をするようだとどうしても時間がかかりますから、監査で質問を受けるような項目は、事前に社内で洗い出して回答を用意しておくことが望ましいです。
社内では通常月次決算を実施しているわけですから、月次決算の機会を利用してこのような準備を進めると良いでしょう。

なお、日本公認会計士協会は、平成29年12月8日に「十分な期末監査期間の確保について」の会長声明を出しています。
また、最近は監査法人でも働き方改革が進められていることもあり、監査及び監査対応に要する時間も事前に協議して決算スケジュールを組まなくてはいけません。
決算短信はそもそも公認会計士又は監査法人の監査の対象外ですので、決算短信の作成者である企業自身の判断として、監査終了前に決算短信を開示することは本来は可能です。
とはいえ、決算短信で開示した内容と、後日有価証券報告書などで開示する内容とが矛盾することのないように、監査を待ってから決算短信を開示することも、多くの企業で行われているのではないかと思います。

5.IPOを目指す企業の場合

IPOを目指す企業の場合、決算早期化をダイナミックに進めて準備しなくてはなりません。
非上場企業であっても、上場企業と遜色ない水準の決算を行っている企業はありますが、数で言えばそのような企業は少数派でしょう。
多くの非上場企業は、子会社があっても連結決算業務をしたことがないとか、単体決算業務についても実質的な締め切りを法人税の申告期限においているのではないかと思います。
このような状態から決算業務の体制を整えていくには、時間をかけ、なおかつダイナミックに進めていかなくてはなりません。

(1)外部の専門家を利用する

社内に連結決算業務などのノウハウがない場合、まずはノウハウを得るところから始めなくてはなりません。
公認会計士又は監査法人、IPOコンサルタントなど外部の専門家の協力を得て、決算業務の課題を洗い出し、改善計画を作成して進めていきましょう。

(2)中途人材を採用する

決算業務は専門性が高く、しかも会社が変わっても通用するポータブルスキルとしての側面も比較的強いです。
IPOを目指すにあたって、決算業務全体の工数が増える見込みの場合には、中途人材を採用して決算業務の体制を強化するのも有効でしょう。

(3)子会社の決算を指導する

連結範囲に含まれる子会社がある場合、連結決算業務を進めるためには、子会社がその単体決算の内容を親会社に報告する必要があります。
子会社の単体決算業務が遅い場合、親会社の連結決算業務も遅くなってしまいますから、子会社の決算を指導することは大切です。
特に海外に子会社があるような場合、現地の管理部門と十分にコミュニケーションをとっておかないと、必要な情報を必要な時期に入手できず、決算の大幅な遅延の原因になります。

6.まとめ

以上のように決算早期化を実現するためには様々な方法がありますが、現在のように働き方改革が課題となっている状況では、効率化を伴わない決算早期化は現実的ではありません。
決算早期化のためには外部の専門家を利用することも有効ですから、企業と従業員の双方にメリットのある形で決算早期化を進めていくのがよいでしょう。

森田雄介
弁護士・公認会計士森田 雄介
大阪大学法学部卒業、立命館大学法科大学院修了。司法試験合格後、司法修習を経て、地方公共団体において勤務し、入札・契約関連の業務に従事する。その後、公認会計士試験(論文式)合格を経て、大手監査法人において勤務し、財務諸表監査、内部統制監査、IPO支援等の業務に従事する。2019年6月にベリーベスト法律事務所に入所。多様な業務経験と弁護士・公認会計士のダブルライセンスをバックグラウンドに、多角的な視点からのアドバイスを心掛けており、個人向け・法人向けを問わず幅広い業務を手掛ける。
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