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中国で上場したい企業必見!上場前に必ず知るべき4つのこと
中国で上場を考えている日本企業には、資金調達や知名度の向上を目的としているケースが多くあります。
成長著しい中国市場において上場を果たせば、海外投資家からの潤沢な投資やアジア向けのビジネス展開など大きなビジネスチャンスを掴むこともできるでしょう。
本稿では、日本企業の中国市場への上場にフォーカスして、
- 日本企業の中国進出の課題
- 中国で上場するための条件
- 中国市場の構造
など、上場を検討するにあたって知っておくべき基礎知識を解説します。
中国進出をお考えの経営者の方、実務担当の方のご参考になれば幸いです。
1、中国に上場する前に|中国に進出した中小企業が抱える問題
(1)資金調達で指摘されている課題
中国に進出した中小企業にとって、資金調達の面では、次の2つの問題が指摘されています。
- 借入枠の制限や総量規制といった中国特有の規制問題
- 中国の成長著しいことによる競争の激化
中国の現地法人は、借入枠の制限によって外貨による円滑な資金調達を行うことが難しく、また貸付総量規制によって日本から進出した中国企業が地場銀行から借り入れを受けることも厳しい状況にあります。
したがって、2つめの問題でもある競争の激化に耐え抜くためにも、日本の中小企業が中国で上場することが、これらの解決策として浮上してくるのです。
(2)解決策としての上場
中国進出をした日本の中小企業が上場することで、規制に制限されない資金を調達することが可能となります。
金融モデルには「間接金融」と「直接金融」の2種類があり、前者は資金の需要者と供給社の間に金融機関が入って調節を行うモデル、後者は資金の需要者と供給者の間で証券を用いて自由に売買を行うモデルを指します。
中国に進出した日本の企業は、上場することで、金融機関の影響を受けない直接金融によって資金調達が可能になり、借入枠の制限や総量規制といった間接金融の制約を受けることもありません。
2、そもそも中国に進出する場合、どういう形態があるのか?
(1)外国企業の中国への進出形態には、どういうものがあるのか?
外国企業の中国への進出形態は、法人形態(三資企業、株式会社)、支店、駐在員事務所、パートナーシップがありますが、多くの企業は、独資、中外合資、中外合作の三資企業か、もしくは駐在員事務所(常駐代表処)を選択しています。
そもそも、外国企業が中国で事業活動を行うには、法人形態を取らざるを得ないという制約があるからです。
三資企業以外の法人形態としては、外資パートナーシップ企業という形態もありますが、三資企業に比べてフレキシブルな運営が可能ではあるものの、出資者のうち最低1人は無限責任を負う必要があり、また実例も少ないことから、不明な点も多いところが実情です。
(2)外資株式会社
外国企業の中国への進出形態には、「外資株式会社」というものもあります。
外資株式会社の設立には、発起設立方式、募集設立形式、更には既存の外資企業からの形態変更という方法があり、出資者は、出資金の範囲で会社に対して責任を負うというところは、日本の株式会社と同じです。
ただし、原則として上場を目的とした形態であり、初回上場基準として、発行済株式が3,000万元以上であることが義務付けられているなど、設立条件は厳しめです。
3、外資株式会社の上場
(1)上場するための要件
外資株式会社が上場するための要件は、次のとおりです。
- 上場申請前3年以上、適切な法的手続を行って、合法的に存続していること
- 上場後に、非上場外資株比率が25%以上となること
- 上場後に外資株の資本金総額に占める割合が、10%以上となること
さらに、初めての株式公開に際しては、日本でいう経産省にあたる商務部の書面による同意の取得、ならびに中国証券監督管理委員会(証監会)に対する関連書類の提出、審査認可が必要となります。
(2)中国の株式市場の枠組み
中国の証券取引所は、上海と深センとがあり、それぞれ外国人投資家の取り扱いが限定的な人民元建てのA株と、国内外の投資家双方に開放されている外貨建てのB株に別れています。
A株市場とB株市場は独立しているため上場する企業も異なりますが、B株に発行する企業の多くは、A株にも上場しています。
上海と深センの両方に大企業向けのメインボードがあり、深センには、さらに中小企業向けの「中小企業板」、ベンチャー向けの「創業板」があり、外資株式会社の上場は3種類のボード全てで可能です。
(3)店頭銘柄
中国政府は資本市場多層化の推進により、場外市場(店頭市場)を発展させ、新興企業の育成を目指しています。
中国の店頭株式市場には「新三板」、上海株式託管交易センター(SEE)の「E版」、「Q板」市場などがあり、「新三板」と「Q板」では外資企業の登録が可能です。
特に、新三板市場は、先端型、ベンチャー型、成長型の中小企業にとって、株式の流動性の向上などのメリットがあるため、迅速かつ好条件による投下資本の回収が期待できます。
(4)新三板の登録
新三板への登録条件は、次のとおりです。
- 株式会社であり、法によって設立され、2年以上存続していること(主体条件)
- 業務が明確であり、継続経営能力があること(業務条件)
- ガバナンス体制が整備され、適法に経営されていること(ガバナンス条件)
- 株主権の内容が明確であり、株式の発行及び譲渡行為が適法になしうること(株主権条件)
- 主幹事証券会社による推薦、かつ継続的な監督及び指導(監督指導条件)
以上を見てわかるように、メインボードや中小企業板、創業板と異なり、新三板への登録に、利益要件や純資産の額、株主資本の額に関する要件がないという特徴があります。
さらに、証監会の審査認可も基本的に不要、登録は半年ほどで完了します。
ただし、主幹事証券会社や会計事務所等により、新三板への登録条件に合致するかどうかの厳しい確認作業が行われます。
中国の株式会社は、新三板登録の条件を満たす場合に限り、主幹事証券会社に登録を申請し、株式を公開することができます。
基本的に、株式会社であれば、株主の属性は問われないため、外資系中国企業も、新三板の登録を申請することができます。
4、アクションを起こす場合には、専門家に相談しよう
中国市場への上場を検討する場合は、専門家に相談されることをおすすめします。
(1)JETRO
JETRO(日本貿易振興機構)は、海外ビジネス情報の提供、中堅・中小企業等の海外展開支援、対日投資の促進などに取り組む独立行政法人で、中小企業の中国進出の支援サービスも行っています。
外国企業の会社設立手続き・必要書類や、相談窓口は次のとおりです。
必要書類 https://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/invest_09.html#block1
相談窓口 https://www.jetro.go.jp/jetro/overseas/cn_shanghai/support.html
(2)コンサルティング会社
中小企業の中国進出について、支援サービスを提供しているコンサルティング会社もあります。
基本的に、相談は無料で、実際にコンサルティングを依頼すると、着手金や成功報酬などが発生する仕組みとなっています。
(3)法律事務所
ベリーベスト法律事務所をはじめとして、中小企業の中国市場への進出をサポートする法律事務所があります。
サポート内容は、主にコンプライアンス体制の構築状況および労務管理等の調査、意見書の作成、課題への戦略的アドバイス等です。
実績のある法律事務所であれば中国語に対応できる弁護士も所属しているので、安心してサポートを受けられるでしょう。
まとめ
成長著しい中国市場への進出、および株式上場は、海外投資家からの潤沢な資金調達や、アジアにおけるビジネス展開など大きなチャンスが転がっています。
しかし、本稿で見てきたように、日本の株式市場とは勝手が違うだけでなく、中国語という言語の壁も存在します。
中国市場への進出には、プロのサポートが必要不可欠です。中国市場上場を検討されている方は、支援の実績が豊富にあり、柔軟な対応が可能な法律事務所等に相談されることをおすすめします。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています