企業法務のご相談も受付中。お気軽にお問合わせください。
秘密保持契約とは?契約の意味や作成のポイントを弁護士が解説!
取引先の会社から提示された「秘密保持契約」。この契約の意味はなんでしょうか。
現代の情報化社会において、企業が安全に経営していくためには、「秘密保持契約」は必須と言っても過言ではありません。
今の時代「情報が宝」。情報を必要以上に開示することは避けなければなりません。
今回は、
- 秘密保持契約とは何のための契約なのか
- 気になる秘密保持契約と不正競争防止法との関係
- 秘密保持契約作成の際にポイントとなる事項
についてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。お役に立てれば幸いです。
[nlink url=”https://best-legal.jp/contract-revenue-stamp-2408/”]
1、秘密保持契約とは
秘密保持契約とは、当事者の重要な秘密情報を他に漏らさないことを約束する契約です。
英語では「Non-Disclosure Agreement」または「Confidencial Agreement」と表現するので、その頭文字を取って「NDA」または「CA」と呼ばれることもよくあります。
秘密保持契約を締結する目的は、取引上他社に自社の重要な情報を開示する必要があるとき、その情報を他に漏らされないよう、相手に(お互いに)秘密を守る義務を課すことです。
本来であれば、重要情報は他社に開示しないのが安全なのかもしれませんが、企業活動を進める際に、外注などによって情報開示せざるを得ない機会も存在します。
そのようなときには、相手に秘密を守ることを約束させ、自社の利益を守ることが必要となります。
今や1つの情報が漏れたことによって企業が数千万円、数億円の大損失を受けることもありますし、ときには倒産につながる可能性すら存在します。
秘密保持契約は、企業の利益を守るために必須の重要な契約と言えます。
2、秘密保持契約を締結すべきケース
秘密保持契約が必要となるのは、たとえば以下のような場合です。
- ソフト開発を外注する
- 社史や新商品などの広告記事やデザインをライターやデザイナーに外注する
- 商品やサービスの開発を業務委託する
- 代理店に販売を業務委託する
- 自社の従業員に会社の重要機密を扱わせる
上記は例示であり、他にも、秘密が漏えいされると困る場合には、あらゆるケースで秘密保持契約が有効です。
3、秘密保持契約と不正競争防止法違反の関係
秘密保持契約を締結する際、「不正競争防止法」との関係も理解しておくと役立ちます。
不正競争防止法とは、企業同士の関係や競争を適正化し、企業取引を安全かつ円滑化しようとする法律です。
ここでは「営業秘密」を不正に取得したり、利用したり、開示したりする行為が禁止されています。
そして、不正競争防止法違反の行為が行われたとき、被害者は加害者に対して、損害賠償請求や差し止め請求をできますし、加害者には、刑事罰も下されます。
では、この法律で営業秘密の漏えいは禁止されているので、わざわざ秘密保持契約を締結しなくても良い?は正解でしょうか?
いいえ。
なぜなら、不正競争防止法違反では、すべての企業秘密が守られるわけではないからです。
不正競争防止法違反の「営業秘密」に該当するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 秘密管理性
- 秘密の有用性
- 非公知性
これらの3つをすべて満たしていないと「営業秘密」にはならないので、該当しない情報は、他に漏えいされても、文句を言えなくなってしまいます。
また、禁止される行為も「詐欺脅迫によって情報を取得した場合」、「その事情を知りながら、あるいは過失により情報を開示した場合」、「不正な利益を得る目的や損害を与える目的で情報を使用、開示した場合」など、一部に限られています。
それ以外の行為で情報を漏らしたケースでは、不正競争防止法で対応できません。
そこで秘密保持契約の出番です。
秘密保持契約を締結すると、これらの「不正競争防止法でカバーできない部分」もカバーして、企業の情報を守ることができます。
契約内容は、当事者間で自由に定めることができるので、守られるべき秘密の範囲を広めに設定することもできますし、禁止される行為の範囲も、状況に応じて設定できるので、効果的に会社の利益を守ることが可能となります。
[nlink url=”https://best-legal.jp/unfair-competition-prevention-act-13287″]
4、秘密保持契約で重要なポイント
実際に、秘密保持契約を締結する際に重要となるのはどういったことなのか、ポイントを解説していきます。
(1)秘密情報の範囲
まず重要なのは、「秘密情報」の範囲です。
どの情報を保護の対象にするか、です。
たとえば、情報を預ける提供者が、「秘密情報である」と明示したものに限るのか、明示されていないものも含むのか、あるいは書面で開示したものに限るのか、口頭で告げたものを含むのかなど、明らかにすべきです。
また、口頭による開示のケースを含める場合、後にトラブルが起こらないように、遅滞なく書面によって通知するように定めておくと良いでしょう。
秘密情報の範囲については、「例外(除外)規定」も定める必要があります。
形式的には秘密情報に該当しても、すでに知られているものなどは、秘密保持義務を課すべきではないからです。
以下のような情報が除外されることが多いです。
- 開示された時点で、既に世に知られている公知な情報、開示後に、情報の受領者の責任ではない事由により公知になった情報
- 開示された時点において、既に受領者が取得していた情報
- 開示後に、正当な権限をもった第三者から開示された情報
- 情報受領者が、提供者とは無関係に、独自に開発した商品やサービス、技術などに関する情報
- 裁判所の命令や法令によって開示すべき義務がある情報
上記のようなものは、秘密保持義務を課すのが不合理なので除外されます。
(2)秘密保持義務の範囲
次に、「秘密保持義務の範囲」も明確化しておく必要があります。
情報を守るために、「何をすべきか、何をしてはいけないのか」ということです。
たとえば、以下のようなことを義務内容とするケースが多数です。
- 情報の受領者は、「秘密情報」を第三者に開示や漏えいしてはならない
- 情報の受領者は、秘密情報を適切な方法で管理する
- 管理の際、秘密情報への不正アクセスや不正な持ち出しを防止すべく、必要な対策を行う
単に情報の開示や漏えいを防ぐだけではなく、外部からの攻撃や内部の不正持ち出しも防ぎ、管理方法を適切にすることも定めておきましょう。
ただし、秘密情報を利用したり、開示したりしなければならないケースもあります。
そこで、以下のような例外規定を定めます。
- 情報の受領者は、目的達成に必要な範囲で、秘密情報を複写・複製できる。その場合の複写・複製された情報も、「秘密情報」となる
- 情報の受領者は、必要な範囲で、弁護士や公認会計士、税理士等の外部の専門家に対し、秘密情報を開示できる。ただし、外部の専門家に秘密保持義務違反があった場合には、情報の受領者による違反とみなす
- 情報の受領者は、法令の規定によって、官公庁、裁判所等の公的機関から情報開示を求められた際、秘密情報を開示できる。その場合、ただちに情報の開示者に対し、情報開示の事実を知らせる
秘密保持契約締結の際には、このように秘密情報の範囲と秘密保持義務の範囲について、しっかりと話し合い、両者が納得する内容を決定する必要があります。
(3)義務違反したときの効果
秘密保持義務に違反したら、どのような効果があるのかも定めておきましょう。
たとえば、差し止め請求ができること、損害賠償請求ができること、業務委託契約を解除できることなどは基本です。
また、情報開示者が、情報受領者に対し、立入調査できる権限を定めるケースなどもあります。
(4)契約期間と契約後の拘束
秘密保持契約を締結する場合には、契約期間を定めます。
ただし、契約期間が終了しても、その秘密に価値がなくなるわけではないことが多数です。
その場合には、契約終了後も5年程度、秘密保持義務が継続するという条項を入れて対応します。
(5)契約終了時の対応
秘密保持契約では、契約終了時の対応も重要です。
情報を提供した元データやそれを保管したハードディスク、各種の媒体などをすべて破棄してもらうか、返還してもらう必要があるので、そのことも契約に定めておきましょう。
5、秘密保持契約に印紙税は不要
一般的に、契約締結の際には「印紙税」が必要と思われていることがあります。
秘密保持契約の場合にも、印紙税は発生するのでしょうか?
印紙税がかかる契約(課税文書)については、国税庁によって明らかにされていますが、秘密保持契約はそれらに該当しません。
そこで、秘密保持契約書に印紙を貼る必要はありません。
参考:国税庁
6、秘密保持契約書作成を弁護士に依頼するメリット
秘密保持契約を締結するのであれば、テンプレートなどではなく、弁護士に依頼すべきです。
弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。
(1)ケースに応じた適切な内容の契約書ができる
上記でも示した通り、秘密保持契約は、「ケースに応じた内容」にすることが重要です。
秘密保持の範囲も、秘密保持義務の内容も、違反したときの効果も、必要な内容はすべて状況によって異なるはずです。
しかし、テンプレートではこのような配慮をしてくれません。
弁護士に相談すると、その企業と相手方の状況や希望(契約によって実現したいこと)を聞き、効果的に実現できる内容の契約にしてくれます。
このことで、本当に安全に企業取引を行えるようになります。
(2)自社の権利を守りやすい
契約を締結するときには、まずは「自社の利益」を守らねばなりません。
情報を開示する側であれば、なるべく確実に情報を守る内容にしなければなりませんし、義務を課される側であれば、過大な負担を課されないようにする必要があります。
素人同士で話し合うと、本当に自社の利益が反映されているのかわからないケースが多々ありますし、相手に押しきられて、不利な内容の契約をさせられる可能性もあります。
弁護士に依頼すれば、依頼企業が不利益を受けないように先回りして、配慮した契約内容にしてくれます。
(3)実際にトラブルが起こったときの対応がスムーズ
秘密保持契約を締結していても「万が一のトラブル」があります。
情報提供者ならば、勝手に情報が漏えいされていることが考えられますし、情報受領者なら、漏えいしていないのに、濡れ衣を着せられたり、従業員が勝手に情報を持ち出したりするリスクが考えられます。
このように、実際にトラブルが発生したときにも、契約書を弁護士に作成してもらっていたら、そのままスムーズに対応してもらえます。
(4)定型事業に1つ万全な雛形を
これから新しい事業スキームに入るという際、まずは取引先との秘密保持契約の締結から入ることが多いでしょう。
定型事業として複数社と秘密保持契約を継続的に締結が予定される場合は、その事業における万全な雛形を準備しておくべきです。
雛形として繰り返し使っていく契約書を作る際は、弁護士によるリーガルチェックは欠かせません。
ぜひベリーベスト法律事務所 企業法務担当弁護士までご相談ください。
まとめ
以上のように、秘密保持契約書を作成するならば、弁護士に依頼すると効果が高くなるので、自分たちだけで対応するよりも、専門家に任せることをお勧めします。
秘密保持契約は、企業が安全に取引を進めるのに重要な契約です。
正しく理解・活用して、自社の利益を守りましょう。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています