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景品表示法違反の事例集|罰則やガイドラインの知識を解説
「景品表示法違反で措置命令」などといったニュースを見かけたことがありますか?
景品表示法は、過大な景品の提供と、虚偽・誇大な広告などの表示を規制する法律です。
企業の販売担当者やマーケターのみならず、商品やサービスを販売する企業、事業者であれば、必ず知っておくべき法律といえます。
景品表示法違反を理解するためには、その事例をみておくことも大事でしょう。
今回は、景品表示法の広告などの表示規制について、
- 実際に景品表示法違反してしまった企業の事例
- 景品表示法違反の罰則・措置
などについて解説していきます。ご参考になれば幸いです。
コンプライアンスの意味について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
[nlink url=”https://best-legal.jp/compliance-meaning-26636/”]
1、景品表示法違反の事例をみる前に|不当表示規制違反とは
景品表示法の不当表示規制とは、商品やサービスの広告・宣伝の表示が実際と異なる、大げさ、根拠がないなどにより、一般消費者の誤認を招くような表示を禁止するものです。
このように、不当な表示を規制することで、消費者が適正に、商品・サービスを選べる環境を守ることを目的としています。
つまり、景品表示法の不当表示規制違反とは、事実と異なり、消費者の誤認を招くような商品やサービスの広告・宣伝を行うことです。
(1)対象者
商品・サービスを供給する事業者が、景品表示法の不当な表示の規制対象者となります。
(2)対象となる表示
景品表示法における「表示」とは、本法で次のように定義されています。
この法律で「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。(本法第2条第4項)
具体的には、次に挙げる媒体の広告・表示が規制対象となります。
- 商品、容器または包装およびこれらに添付したもの
- 見本、チラシ、パンフレット、説明書面
- ポスター、看板(プラカード、電車・自動車等に記載されたものを含む)、ネオンサイン、アドバルーン
- 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備、拡声器による放送を含む)、映写、演劇、電光による広告
- 情報処理の用に供する機器による広告(インターネット、パソコン通信等によるものを含む)
その他、これらに類似するものによる広告および表示が含まれます。
これらが不当な表示か否かの判断は、表示内容全体から消費者が受ける印象・認識が基準となります。
(3)不当表示とは
景品表示法では、「不当表示」を規制対象としています。
そして「不当表示」とは、以下の3つをいいます。
- 優良誤認表示
- 有利誤認表示
- 商品または役務の取引に関する事項について、一般消費者に誤認されるおそれのある表示であって、内閣総理大臣が指定する表示
以下、順番にご説明します。
2、優良誤認表示の事例
(1)優良誤認表示
優良誤認表示とは、商品または役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、次のいずれかが示された表示をいいます。
- 実際のものよりも著しく優良であること
- 事実に相違して競争関係にある事業者にかかるものよりも著しく優良であること
以下、「優良誤認表示」を理由とした、景品表示法の違反事例をご紹介します。
① 学習塾の講師の学歴を誤認させる表示
学習塾を運営する株式会社進学会は、チラシ広告に「国公立大出身98% 精鋭講師陣が皆さんを指導」と掲載。
講師の98パーセントが国公立大学・大学院出身者であるかのような表示だが、実際は当該学習塾の講師のうち、国公立大学・大学院出身者が占める割合は、約14パーセントにすぎないものであった。
②松坂牛を使用した料理と誤認させる表示
しゃぶしゃぶ・日本料理を提供する株式会社木曽路は、広告に「松阪牛 入荷いたしました 木曽路が目利きした、最高級の松阪牛をお楽しみ下さい」と掲載。
松坂牛しゃぶしゃぶコース、松阪牛すきやきコースなど、松阪牛を使用しているかのような表示をしていたが、実際は料理の大部分について、松阪牛ではない和牛の肉を使用していた。
③天然温泉を使用した露天風呂と誤認させる表示
旅館を営む株式会社豆千待月は、「1,300mの地下より湧き出る良質な温泉」とインターネット広告等に表示していたが、実際は水道水を加温したものであった。
④天然の食材を使った料理と誤認させる表示
旅館を営む株式会社豆千待月は、利用客に提供する「トラフグ会席」という料理の食材に、天然のトラフグを使用しているとする表示をインターネット広告等に掲載していたが、実際は天然のトラフグよりも安価で取引されている養殖のトラフグ、またはゴマフグを使用していた。
(2)不実証広告
優良誤認表示は、(1)の講師の学歴などのように、専門的な調査など要せずに嘘が判明する場合もあれば、(2)のように、肉がどのようなブランドなのかなどの専門的な調査をもって、嘘なのかどうかを判断しなければならないケースがあります。
専門的な調査が必要な場合は、一概に優良誤認表示だろう!と決めつけることはできませんので、本当に松坂牛なのか、の証拠を求めることになります。
このように、専門的な調査を必要とする場合は、内閣総理大臣(消費者庁長官)は、事業者に対して、「合理的な根拠」の提出を求めることができます。
この場合、事業者は、求められた根拠を提出することができなければ、優良誤認表示だとみなされてしまいます。たとえ、本当に松坂牛であったとしても、です。
これを、「不実証広告」といって、景品表示法第7条第2項に定められています。
以下、「不実証広告」を理由とした、景品表示法の違反事例をご紹介します。
①容易に痩身効果が得られると誤認させる表示
株式会社ライフサポートが販売するサプリメントにおいて、対象商品を摂取するだけで、特段の運動や食事制限をすることなく、容易に痩身効果が得られるかのような表示を行っていた。
景品表示法第7条第2項の規定に基づき、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められたが、提出された資料からは、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠は認められなかった。
②空気清浄効果の優良性を誤認させる広告
株式会社エム・エイチ・シーは、同社が販売するイオン発生器・空気活性器の広告に、あたかも優れた脱臭・抗菌効果があることを表示していたが、消費者庁が合理的な資料の提出を求めたところ、同社が提出した当該資料は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
③サプリメントの脂肪燃焼効果を誤認させる広告
有限会社プライム・ワンは、同社が販売する脂肪燃焼専門サプリの広告に、「飲むだけ簡単」、「このサプリで失敗した人は1,000人中、たった1人だけ!」といった表示をしていたが、消費者庁から合理的な資料の提出を求められたところ、同社が提出した当該資料は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
④ガン等の疾病及び老化を予防する効果を誤認させる広告
株式会社三貴は、同社が販売する清涼飲料水の広告に、「疾病・老化の原因である活性酸素を除去し健康・美容を促進」、「ガンの原因である活性酸素を除去する働きがある」といった表示をしていたが、消費者庁から合理的な資料の提出を求められたところ、同社が提出した当該資料は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
⑤虫の忌避効果を誤認させる広告
「つるだけ、おくだけでいやな虫をよせつけない」といった虫の忌避効果を標ぼうするネットタイプの虫よけ商品が販売業者4社から販売されたが、消費者庁から合理的な資料の提出を求められたところ、アース製薬株式会社が提出した当該資料は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
⑥ エアコンの空調効率アップを誤認させる広告
株式会社ダスキンは、同社が提供する窓用フィルム施工サービスを広告するダイレクトメールおよび配布したチラシにおいて、「最大-5.4℃空調効率アップ」など室温の上昇が最大で5.4℃から6℃抑えられるかのように表示していた。
消費者庁から合理的な資料の提出を求められたところ、株式会社ダスキンが提出した当該資料は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
3、有利誤認表示の事例
「有利誤認表示」とは、商品または役務の価格その他の取引条件について、以下のように表示されたものをいいます。
- 実際よりも著しく有利である(安い)
- 競争関係にある事業者の同種または類似商品よりも著しく有利である(安い)
以下、「有利誤認表示」を理由とした景品表示法の違反事例をご紹介します。
(1)半額で販売することを誤認させる表示
有限会社ミート伊藤は、特定日の売出しを広告する新聞折込みチラシにおいて、対象商品を、通常時の販売価格の半額で販売するかのように表示していたが、実際は、通常時の販売価格が一旦引き上げられてから半額にされたものであって、通常時の販売価格の半額ではなかった。
(2)懸賞企画の当選者数と同数の景品類が提供されることを誤認させる表示
株式会社竹書房は、同社が刊行する漫画雑誌上の懸賞企画において、それぞれの景品類について、誌面上に記載された当選者数と同数の景品類が提供されるかのように表示していたが、実際は、誌面上に記載された当選者数を下回る数の景品類の提供を行っていた。
4、商品または役務の取引に関する事項について、一般消費者に誤認されるおそれのある表示であって、内閣総理大臣が指定する表示
(1)「おとり広告」
「おとり広告」とは、不当表示の一つで、広告に表示されている内容と、実際の販売状況が異なることで、これも景品表示法の不当表示規制の対象となっています。
以下、「おとり広告」を理由とした景品表示法の違反事例をご紹介します。
①ウェブサイトのおとり広告の事例
株式会社ジャストライトは、インターネット上に開設したウェブサイト「APPLAUSE(アプローズ)VOXY専門店」において、ウェブサイトに掲載する前に売買契約が成立していた中古自動車を、あたかも購入できるかのように表示。
実際には、取引に応じることができないものであった。
②情報誌のおとり広告の事例
株式会社オートアクションは、中古車情報雑誌『Goo関西版』に、同社が販売する中古車情報を掲載していたが、実際には、当該中古車は、情報誌が発売されるよりも前に売買契約が成立しており、取引に応じることができないものであった。
(2)その他
その他、「商品または役務の取引に関する事項について、一般消費者に誤認されるおそれのある表示であって、内閣総理大臣が指定する表示」には、次のものがあります。
- 無果汁の清涼飲料水等についての表示
- 商品の原産国に関する不当な表示
- 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
- 不動産のおとり広告に関する表示
- 有料老人ホームに関する不当な表示
5、景品表示法違反をした場合の罰則、措置
国内で有数の大企業であっても、景品表示法に違反してしまった具体的事例が多いことを確認できました。
景品表示法に違反した場合には、次に挙げる刑事処分と行政処分の2つがあります。
(1)景品表示法に違反した場合の刑事処分
事業者が景品表示法に違反した場合、まずは消費者庁から、措置命令が下されます。
しかし、事業者が措置命令に従わなかったときには、景品表示法第36条に規定されている「2年以下の懲役又は300万円以下の罰金」が科されます。
加えて、措置命令に従わない事業者(法人、自然人または法人でない団体)は、違反行為者とともにも、3億円以下の罰金が科されます(景品表示法第38条)。
また、措置命令によって報告義務が課せられた場合、同法第29条第1項規定の報告や物件の提出をしない、もしくは虚偽の物件の提出をしたりするなど報告義務に従わなかったときには、景品表示法第37条に規定されている「1年以下の懲役又は300万円以下の罰金」が科されます。
加えて、措置命令に従わない事業者(法人、自然人または法人でない団体)は、違反行為者とともに、「1年以下の懲役又は300万円以下の罰金」が科されます(景品表示法第38条)。
さらに、措置命令違反の計画や違反行為を知って、必要な措置を講じなかった法人の代表者や団体の役員理事、管理人、代理人などに対しても、300万円以下の罰金が科される可能性があります(景品表示法第39条、第40条)。
(2)景品表示法に違反した場合の行政処分
景品表示法に違反した場合の行政処分については、平成28年から導入された改正景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律)により規定されています。
先ほど事例として挙げた景品表示法違反行為を行い、消費者庁より措置命令を受けた場合には、原則として課徴金が課されます。
具体的には、不当表示の対象となった商品やサービスの売上額の3%の課徴金が課されることになり、課徴金の算定期間は最長で3年分です。
たとえば、松坂牛を使用したと偽った料理の広告で消費者を誘引し、3年間で6,000万円の売上があった場合、改正景品表示法違反の課徴金は、最大で180万円となります。
ただし、課徴金額が150万円未満(売上額が5,000万円未満)の場合には、課徴金は課されません。
さらに、景品表示法に違反していた事業者が顧客に対して自主的に返金を行った場合は、課徴金の額が減免、もしくは違反者が相当の注意をしていたと証明されれば、課徴金が免除となることもあります。
(3)不正競争防止法違反の可能性も
「優良誤認表示」や「有利誤認表示」では、競争関係にある事業者との比較表示が問題となります。
この表示は、不正競争防止法の「信用毀損行為」に該当する可能性もありますので注意が必要です。
また、「商品または役務の取引に関する事項について、一般消費者に誤認されるおそれのある表示であって、内閣総理大臣が指定する表示」での原産国に関する不当表示では、やはり不正競争防止法上の「品質等誤認惹起行為」に該当する可能性も高いでしょう。
不正競争防止法違反の場合は、被害者からの差止請求、損害賠償請求、信用回復措置請求がなされる可能性があります。
[nlink url=”https://best-legal.jp/unfair-competition-prevention-act-13287″]
6、景品表示法の違反をしないように注意すべきこと
国内有数の大手企業でも違反してしまうケースも少なくない不当表示。
景品表示法違反を避けるためには、どのようなことに注意すべきでしょうか。
(1)ガイドラインに沿って景品表示法の違反をしていないか確認する
商品やサービスの広告等を行う場合は、
- 表示する効果や性能などが何を根拠としているのか
- 消費者にとって本当にお得な取引条件となっているか
など、ガイドラインに沿って、事実と異なる表示がないか確認する必要があります。
また、消費者庁より不当表示の疑いをかけられた場合、事業者は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を提出する義務があるため、あらかじめ合理的な根拠を示す資料を用意しておくことも重要です。
(2)社内で景品表示法違反があった場合の対応方法について周知する
社内の担当者に景品表法の内容について周知させることはもちろん、景品表示法の違反行為を発見した場合の社内の連絡体制や行政への報告手順など、企業全体としての対応方法もしっかりと規定しておきましょう。
(3)弁護士にリーガルチェックをしてもらう
商品・サービスを販売する前、あるいは広告を出す前に、弁護士など景品表示法に精通したプロに依頼し、法的に問題ないかの確認(リーガルチェック)を依頼しましょう。
万が一景品表示法に違反した場合は、事業者名が広く公表されてしまうリスクがあります。
日頃から徹底した対策を行うことで、未然に景品表示法違反の芽を摘むことが重要です。
まとめ
景品表示法は、事業の規模や商品・サービスの種類にかかわらず、広告を展開する事業者であれば、だれもが遵守すべき法律です。
より多く販売したい、売上や収益を上げたいからと、商品・サービスの表示を大げさにしたり、事実と異なる表示を行ったりすることは、景品表示法違反により、事業そのものの継続が不可能になるリスクをはらんでいます。
実際に、景品表示法違反の影響により、売上が急減して倒産に至った事業者も少なくありません。
企業の販売担当者やマーケターのみならず、企業全体でコンプライアンス意識を高め、対策を徹底したうえでリスクのない広告の表示を行うことが重要です。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています