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厚生年金保険法改正について、弁護士が分かりやすく解説

2020年4月30日
厚生年金保険法改正について、弁護士が分かりやすく解説

1.はじめに

近年、高齢者が老後の生活を維持するためには、年金以外に2000万円が必要と金融庁が金融審議会報告書に記載した、いわゆる老後2000万円問題が認知されてから、老後に不安を抱えている方は多くいらっしゃると思います。

しかも、子育てなどの様々な事情から、働き方が多様化していることもあって、正社員雇用に拘らず、フレキシブルな勤務体系で働く方も多くいらっしゃることでしょう。

しかし、老後の資金が不安だから、60歳以降も働きたいと考えている方や、家庭の事情などから、正社員雇用は難しいけど、将来受け取れる年金額が少ないという不安を感じている方も多くいらっしゃることと思います。

そこで、厚生年金保険法や関連する法令の改正を、わかりやすく解説していきたいと思います。

2.厚生年金保険法の改正

厚生年金保険法の改正

(1)年金制度改革関連法案の歩み

① 2020年に法案提出された年金法改正案は、2016年から2018年に成立した年金制度改革法案の拡充という目的があります。
2016年~2018年の法案では、大きく次のような特徴がありました。

 マクロ経済スライドを導入し、年金額改定額を少子高齢化や経済事情に合わせる。

イ 一定の条件を満たす短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大。

 自営業者とその家族などの1号被保険者の産前産後の納入を免除。

② マクロ経済スライドの目的は、年金額が少子高齢化や経済不況が生じても変動しづらかったのを、時代や社会情勢に合わせて変動するようにしたものです。
現役世代の負担が過剰になることを防ぎ、無理のない範囲での納付をしてもらうためのものです。

③ 短時間労働者への厚生年金の被用者保険の適用拡大は、パートタイムなどで働く方にも厚生年金に加入してもらい、年金制度を活用してほしいという目的があります。
正社員の方との格差が生じないようにして、年金制度が多様な働き方をしたいという方たちの足枷にならないようにするためのものです。

短時間労働者の適用条件は、一週間の所定労働時間が同一事業所の通常の労働者の労働時間の4分の3以上であって、以下の条件を満たす必要がありました(旧厚生年金法第12条5項)。

  • 企業全体で501人以上の従業員が勤めていること
  • 学生ではないこと
  • 月20時間以上働いていること
  • 雇用の期間が1年以上見込まれること
  • 賃金が月額8.8万円以上であること

見ていただくとわかるように、大企業に勤めている正社員に近い雇用環境で働いていらっしゃる方に限定されていたことが分かります。

これは、社会保険料は会社も負担しなければならず、中小企業の短時間労働者を一律に被保険適用者とすると、会社が負担に耐えられないという危険があったからだったと考えられます。

 自営業者とその家族の方は、国民健康保険に加入していらっしゃると思いますが、産前産後は働くことができず、保険料の支払いが大きな負担となることがあります。お子さんを安心して出産してもらうための、次世代支援という目的が、ウの趣旨です。

(2)改正点のポイント・どんな狙いがあるの?

①2020年の年金法改正の代表的な特徴

2020年の年金法改正の代表的な特徴は、次のようなものになります(厚生労働省「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案(2020年3月3日提出)」)。

 短時間労働者を雇用する企業の条件のうち、501人以上の企業の部分を、500人超⇒100人超⇒50人超の企業と段階的に下げる。

 在職中の65歳以上の厚生年金受給額を毎年改定する。

ウ 年金受給開始年齢の60歳~70歳を、60歳~75歳に拡大する。

 在職老齢年金制度の支給停止額を、年金と支給の合計28万円から47万円に拡充。

②どういう目的でこのような変更をしたのか

改正前は、501人以上の企業でなければ被保険者と認められませんでしたので、この条文は、人を多く雇用している大企業の従業員を対象として定められたものといえます。
この条件を大幅に引き下げていくという改正案の目的は、中小企業に雇用されている短時間労働者にも厚生年金に加入してもらい、生活安定と多様な働き方を後押しするという目的があります。
実際、企業の規模は、短時間労働者の所属比率に大きな違いを生じさせていないというデータがあります(第15回社会保障審議会年金部会/2019年12月25日)。

③在職中の高齢期の方の改正条項

次に在職中の高齢期の方の改正条項を見てみましょう。60歳以上で在職している方は、年金と賃金の両方を受け取ることが可能です。
このように働ける方は、年金と併せて多くの収入が見込めることになりますが、年金制度は国民全体の保険料によって支えられていますから、働けない方に給付できる金額も限りがあります。

そこで、在職中の高齢期の方々に対する支給額を毎年改定することで、こうした方が受け取る賃金水準を年金額に反映させることが適切と考えられ、これが今回の改正につながったといえます。

働ける方には引き続き働いていただき、リタイアされた方には生活が安定する額の年金を支給しようという目的があるといえます。

④受給年齢を60歳から75歳の間に改定するという改正案

年金受給年齢を60歳から75歳の間に改定するという改正案は、従前よりも選択できる年齢幅が5歳延びています。
先ほど述べました、働きたい方たちがいらっしゃるという社会情勢の変化を受けて、60歳以上の方も働けるうちは働いていただき、受給開始年齢を延ばすものといえます。

受給開始年齢を75歳まで伸ばした場合、受給開始が60歳であった場合と比較して、受給額が上乗せされて支払われることになるため、働ける60歳以上の方たちにとっては賃金と合算すると、最終的に受け取ることができる金額の総額が大きくなるというメリットがあります。

以上からすると、働くか、年金を受け取るかという選択肢が増えるという意味があるため、より柔軟な働き方ができるようになるかもしれません。

⑤在職老齢年金の支給停止額を28万円から47万円に引き上げ

在職老齢年金の支給停止額を28万円から47万円に引き上げることによって、働きながら年金を受け取ることができる額が増えることになります。
これにより、年金を受け取るか、働き続けるかという難しい判断を迫られる機会を減らし、働くという選択肢を選びやすくする、という目的があるといえます。

⑥人生設計をより柔軟に対応できるものに

以上のように、今回の改正は、保険適用となる短時間労働者の範囲を広げるとともに、60歳以上の方の人生設計により柔軟に対応できるようなものになっているといえるでしょう。

3.個人型確定拠出年金「iDeCo(通称:イデコ)」の加入条件の緩和

個人型確定拠出年金「iDeCo(通称:イデコ)」の加入条件の緩和

(1)そもそも、ⅰDeCoって何?

iDeCo(以下、「イデコ」とします)という名称を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
運用が開始されたのは平成14年からですので、認知度が高くなってきていますから、近年利用される方が増えているようです(2020年1月現在までの加入者149.3万人)。

今回厚生年金保険法改正に伴って、確定給付企業年金法も改正されていますが、この確定給付企業年金法にイデコに関する規定があります。

イデコについては、聞いたことがないという方もいらっしゃるかもしれませんので、、改正点をお伝えする前に、「そもそも、イデコって何?」という疑問にお答えしようと思います。

①任意加入の個人年金の一種

イデコは、個人年金の一種で、自分で掛金を拠出し、運用するものです。
したがって、加入は任意ですし、どのような運用をするのかもご自身で決める必要があります。

②メリット・デメリット

そして、掛金、運用益および給付を受け取るときに、税制上の優遇措置が講じられています。掛金、運用益は原則非課税です。
受給する場合は、受け取る年金は課税対象ですが、退職所得控除の対象になりますので、掛金の拠出は、ご自身が年金受給開始年齢になるまで積み立てていきます。
その掛金の運用の対象となる金融商品もご自身でリスクや運用益を考えて選択する必要があります。

その結果、年金として受け取る金額も、運用実績や拠出した金額に応じて、各人で変わるということになります。

もちろん、運用実績は選んだ商品によって変動しますから、経済事情の悪化に伴って、損失が拡大し、拠出した元本を下回る可能性があります
どのような運用実績になるかは、選んだ金融商品によって変わりますから、元本割れのリスクを避ける場合は、より変動リスクの少ない商品を選ぶ必要があります。
したがって、どのような商品に、どのような特徴があるのかは、各自で調べる必要があります。

③加入できる条件

イデコに加入できる方は、原則60歳未満のすべての方になります。
例外的に国民年金保険料を免除されている方、農業年金被保険者の方、企業型拠出年金に加入している方で、イデコに加入することを認められていない方などは加入できませんが、拠出金の金額は異なるものの、それ以外の方は原則加入することができます。

④手続き方法

加入するためには、運営管理機関として指定されている金融機関で手続を行う必要があります。
金融機関ごとに扱う金融商品にも違いがあります。
各金融機関にお問い合わせいただき、ご自身の人生設計と合う金融商品を選ぶといいでしょう。

(2)法改正によってどうなるの?

①60歳未満⇒65歳未満の加入条件緩和

 先ほど、イデコに加入するには60歳未満であることが必要と述べました。
改正法では、この加入年齢が5歳延長されます。これは、厚生年金法改正と同様に、年金支給を遅らせるまたは支給金額を必要としている方に支給する範囲内に抑える改正であることがお分かりだと思います。

 イデコの改正によって、加入できる年齢が延長されると、より多くの方が加入できることになり、受給開始が延びたとしても、非課税の拠出でそれを埋め合わせるように活用してもらう意図があるといえるでしょう。

②企業型確定拠出年金の条件緩和(確定拠出年金法第3条3項7号関連)

 企業型確定拠出年金に加入している従業員の方は、イデコに加入できるか否かは、加入している企業型確定拠出年金がイデコへの加入を認めているか否かによります。

 ただし、今回の法改正案の趣旨には、企業型確定拠出年金とイデコの両方に加入することが容易になるような改正になっています。
現在、企業型確定拠出年金とイデコに加入するには、規約にその旨記載する義務がありますが、この記載義務をなくして、両方に加入できることを原則にするというものです。
これによって、各人が拠出先を選択する余地を増やすものです。

(3)イデコを利用した方が良いの?

① 結局イデコは利用した方がいいの?という疑問があると思います。
イデコは、拠出した金額と利益が全額非課税になるという大きなメリットがあります。
これにより、自分で金融商品を選別・運用してハイリターンを得れば、年金受給額が増えるメリットを享受できるわけですから、それを望ましいと思えば利用する価値はあると思います。

一般的な投資以上にリスクがあるというものではありませんから、投資の経験がない方でも、ローリスク商品を選択して始めることができるのも魅力の一つといえるでしょう。

② しかし、ローリスクといっても、リスクがないわけではありません。
リスクを一切負いたくないという方や、金融商品を選ぶのが面倒くさいという方にはお勧めできません。

ただ、一般的な投資よりも手順が複雑であるとか選択の幅が狭いというものではありませんから、空いた時間で、これを機に金融商品を調べて、年金の自己管理を始めてみるというのも悪くはないかもしれません。

4.まとめ

(1)年金システムが、社会情勢とマッチングしづらくなっている

既述のとおり、高齢化社会が進む日本では、以前のように現役世代がリタイアした方々を背負うという年金システムが、社会情勢とマッチングしづらくなっているという状況があります。
従来の年金システムでは、現役世代の人口比率が高齢者世代よりも多いという前提があったからです。

(2)現役世代の負担を減らし、負担の偏りを解消しようという目的

今回の改正は、現役世代の負担を減らし、60歳以上の方であっても活躍できる方たちの力を活用し、負担の偏りを解消しようという大きな目的があります。
徒に将来の年金について不安を抱えるよりは、自己が成長するチャンスととらえて、積極的に年金や金融商品を学ぼうと心がけることで、時代の変革を乗り切れるチャンスも生まれてくるのではないでしょうか。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

弁護士石川 賢樹
皆様、はじめまして。 弁護士の石川と申します。以前は不動産会社の社員として勤務しておりました。 会社員としての職務を通じて、さらに、私自身が紛争を経験したことで、私も多くの方の助けになりたいと思い、 弁護士になりました。 私も当初、弁護士は、どこに行けば会えるのか、よく分かりませんでした。 皆様の平穏な日常を守り、弁護士の存在を皆様の身近なものにするため、日々精進いたします。 どうぞ、お気軽にご相談ください。
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