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法務担当者のための香港市場上場準備ガイド

2019年4月1日
法務担当者のための香港市場上場準備ガイド

香港上場を目指して会社がまず始めることは?
そもそも香港上場とは?
日本の会社が香港上場できる条件は?
香港上場のメリットは?
香港上場にかかるコストは?

何より自分の会社も上場できるのか?

香港上場を視野に入れたことがあれば、上記のようなご疑問をお持ちになったことと思いますが、日本での上場に比較し、香港での上場についてアクセスしやすい情報は十分ではないのが現状です。
このページでは、会社の海外での成長戦略として、香港上場について調査・検討されている法務担当者の方々に是非知っておいていただきたい情報をまとめました。

. 日本企業の成功例

まず、日本企業グループとして香港取引市場に上場することのできた事例をご紹介します。

(1)成功事例1

株式会社ダイナムジャパンホールディングス

パチンコホール事業を経営する会社としても、日本で未上場の日本企業としても、最初に香港上場を成功させたのが株式会社ダイナムジャパンホールディングスでした。
パチンコホール事業は、上場するのに十分な産業の規模であったにも関わらず、日本で上場が成功した会社はありませんでした。
過去に、パチンコホール企業が日本で上場申請をしたところ、景品の換金システムの合法性が曖昧なため、投資家への保護を果たせないという理由で申請を却下された例(朝日新聞2006年4月29日朝刊)があるからだと言われています。

しかし、株式会社ダイナムジャパンホールディングスは、法律事務所に依頼しリーガルオピニオンを香港証券取引所に提出することで、ビジネスが合法であることの説得に成功し、上場を果たしたのです。

過去になかった新しいビジネスでまだ一般に認識されていない場合、保守的な日本の上場審査では申請が通らないリスクがあります。

一方、香港取引市場は、2018年4月に財務基準を満たさないバイオテックの企業の上場を許可することができる上場規則を追加する(※Main Board Listing Rules Chapter 18A)など、革新的な企業の受入れに積極的であると言えます。

したがって、新しい技術や新しいビジネスモデルを提供する企業の場合、ビジネスの適法性についてリーガルオピニオンを出すことのできる弁護士や、香港上場案件を取り扱ったことのある法律事務所に相談し、香港上場を検討してみることをお勧めします。

(2)成功事例2

株式会社ツガミ

株式会社ツガミ自体は東証1部上場企業ですが、100%出資の中国現地子会社の事業資金の確保、知名度向上等を図ることを目的にアジア上場を計画し、その子会社を事業主体とする持株会社を上場主体として、香港証券取引所に上場しました。

成功事例1の株式会社ダイナムジャパンホールディングスの例のように、日本で設立された株式会社が主体として香港上場をする場合、定款変更又はそれに代わる代替措置が必要になることが多いです(※COUNTRY GUIDE ‐Japan(20 December 2013, Updated in April 2014 and March 2016) )。
これは、日本法と香港法の制度が異なることから、香港証券取引所の上場審査において、香港法と同水準の投資家保護の仕組みが求められるためです。

しかし、設立以降日本法に則って会社運営を行ってきた中で、香港法に沿った定款変更等を行うことは、変更手続き及びその後の運用において、スムーズに進められないリスクは否定できません。

_そのような場合、株式会社ツガミのように、日本の会社の現地子会社を上場主体とすることで、日本と香港双方の法規制の要求に同時に応えるという難題に悩む必要はなくなるでしょう。

特に、株式会社ツガミのように、中国や香港で既に成果を出している部門や現地法人によるスピンオフ上場は、投資家に対し、上場で得られた資金の用途や企業の成長ストーリーを説明しやすく、上場審査でも上場後の投資家からの評価でも有利に働くと考えられます。

. 香港上場を成功させるためのポイント

上記の成功例を踏まえると、日本企業グループが香港上場を成功させるためのポイントは、以下の二点であるといえます。

ビジネスに理解のある弁護士等の専門家のサポートを受けること
各会社の実態に即した上場主体・スキームを含めた総合的な上場計画を早期に立案すること

. 香港市場の特徴

(1)香港に上場するメリット

①中国における知名度・信用度の向上

香港市場に上場することにより、約14億人とされる中国に暮らす人々を中心に、株価や企業情報の公開を通して知名度・信用度をアピールすることができます。
ユニクロの親会社であるファーストリテイリング、化粧品メーカーのロクシタン、高級ブランドのプラダも香港で上場しています。

②世界の機関投資家からの投資

香港市場には世界中から機関投資家が集まり、特に、中国の金融機関によって構成されるQDII※Qualified Domestic Institutional Investorsの略で中国の国内機関に海外資本市場への投資業務が許される制度。)の大半は香港市場の上場企業株式に投資しています。
したがって、①中国における知名度・信用度を向上できるというメリットが、資金調達や株式評価の面でも反映されるような投資家層であるといえるでしょう。

③資金調達額の実績

香港取引市場は、資金調達総額においては過去8年のうち5度、年間世界一の実績を残しており(HKEX)、2018年においても、新規株式公開(IPO)における資金調達額が世界一となりました(2018/12/19日本経済新聞電子版)。
資金調達力の高さに実績がある香港での上場は、グローバルな人材の流出防止のためのインセンティブプランを導入する際にも効果が高いといえます。

(2)香港上場のコスト

香港上場は、海外での上場であることから、日本語から英語や中国語への翻訳費用がかかりますし、上場する香港はもちろん、主要なビジネスを複数の国にまたがって行う場合にはその分の専門家に原則依頼する必要が生じることになります。
また、財務報告基準として、IFRSInternational Financial Reporting Standards)等を採用していない場合には、直近3事業年度の財務諸表をIFRSに準拠させ監査をやり直す必要があります。
したがって、上場準備段階のコストは日本で上場する場合よりも高くなることは避けがたいでしょう。

業績自体は伸びていても、上場準備費用に不安がある場合には、まず深圳の前海持分取引センター(現段階で証券取引所に登録することができない中小企業の成長のための市場型融資プラットフォームを提供する広東省地区における株式取引市場)に株式を店頭登録し資金を調達するというステップを踏む方法があります。

. 上場基準

香港上場を達成するために求められる条件の難易度をイメージしやすくするため、香港証券取引所(GEM:新興企業向け)と東証マザーズの上場基準を比較してみました。

香港GEM と 日本マザーズ の比較

市場名

香港GEM

GEM Listing Rules

マザーズ
株主数 100人以上
上場時における上位3名の株主の浮動株割合が50%以下であること
200人以上
(上場時までに500単位以上の公募を行うこと)
流通株式 株式総数の25%以上が浮動株かつ公開募集株式は浮動株総数の10%以上
(市場流通株時価総額が4,500万香港ドルを下回ってはならない。)
流通株式数 2,000単位以上
流通株式時価総額 5億円以上
流通株式数(比率) 上場株券等の25%以上
時価総額 以下の基準の両方を満たすこと

①時価総額基準
上場時の時価総額が1.5億香港ドル以上

②キャッシュフロー基準
直近2会計年度における営業キャッシュフローの合計が3千万香港ドル以上

 

10億円以上
事業継続年数 以下の要件を満たし、2事業年度以上。
①直近2会計年度に経営陣に変更がない
②上場直前期において主要株主に変更がない
新規上場申請日から起算して、1年前以前から取締役会を設置して継続的に事業活動をしていること
監査報告書 少なくとも直前2事業年度分の監査報告書において下記の内容を含むこと

①財務諸表が監査済みか否か
②監査済み財務諸表が最終の事業年度末までに作成されているか否か
③真実かつ公正な概観を示しているかどうかの意見

a「上場申請のための有価証券報告書」に添付される監査報告書(最近1年間を除く)において、「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」
b「上場申請のための有価証券報告書」に添付される監査報告書等(最近1年間) において、「無限定適正」
c上記監査報告書又は 四半期レビュー報告書に係る財務諸表等が記載又は参照される有価証券報告書等に「虚偽記載」なし
d新規上場申請に係る株券等が国内の他の金融商品取引所に上場されている場合にあっては、次の(a)及び(b)に該当するものでないこと(a)最近1年間の内部統制報告書に「評価結果を表明できない」旨の記載
(b)最近1年間の内部統制監査報告書に「意見の表明をしない」旨の記載
株式事務代行機関の設置 海外の発行者は規則に従い香港又は取引所が同意するその他の場所に株主名簿を設置する必要がある。 東京証券取引所(以下「東証」という)の承認する株式事務代行機関に委託しているか、又は当該株式事務代行機関から株式事務を受託する旨の内諾を得ていること
単元株式数及び株券の種類 取引単位について制限はなく発行者が決定する。
日本の上場会社と異なり、株券の発行が要請される場合があり、種類株式は原則認められない。
単元株式数が、100株となる見込みのあること
新規上場申請に係る株券等が、次のaからcのいずれかであること
a議決権付株式を1種類のみ発行している会社における当該議決権付株式
b複数の種類の議決権付株式を発行している会社において、経済的利益を受ける権利の価額等が他のいずれかの種類の議決権付株式よりも高い種類の議決権付株式
c無議決権株式
株式の譲渡制限 新規上場申請に係る株式の譲渡につき制限を行っていないこと 新規上場申請に係る株式の譲渡につき制限を行っていないこと又は上場の時までに制限を行わないこととなる見込みのあること
指定振替機関における取扱い CCASS(Central Clearing and Settlement System:電子決済システム)への登録が必要。 指定振替機関の振替業における取扱いの対象であること又は取扱いの対象となる見込みのあること

. まとめ

香港上場は、早期のうちから専門家の支援を受け、法務・税務・財務等の各方面に配慮した計画を立てて準備していくことで、貴社のグローバル戦略の鍵として大きなメリットを享受することが期待できます。
この記事が、香港上場について情報を収集・分析する企業の皆様のご参考になれば幸いです。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。

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