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就業規則を円滑に変更するための5つの手順と問題点を解説

2021年12月7日
就業規則を円滑に変更するための5つの手順と問題点を解説

就業規則の変更は労働者の仕事環境だけでなく、労働者にとって最も重要な賃金に関わることもあるため、後々労働者とのトラブルに発展するケースも多々あります。

今回は、円滑に就業規則を変更するための基礎知識として、

  • 就業規則の変更方法
  • 就業規則の変更による問題点と解決方法

を解説していきたいと思います。ご参考になれば幸いです。

1、就業規則を変更する前に|就業規則とは?

円滑に就業規則を変更したい! 就業規則の変更方法や変更による問題点をやさしく解説

(1)就業規則とは

就業規則とは事業場ごとに作成される、雇用主と労働者間の雇用に関する決まりを定めたものです。

常時10人以上の労働者を使用する雇用主は就業規則を作成し、就業規則を所轄の労働基準監督署に届出をしなければなりません(労働基準法第89条)。

(2)労働基準法第89条の解説

就業規則条文

労働基準法第89条では、就業規則を作成しなければいけないケースと、就業規則で規定しなければいけない事項(変更する場合も含む)を定めています。

①就業規則を作成しなければいけないケース

就業規則を作成しなければいけない者は、「常時十人以上の労働者を使用する使用者」です。

この場合、企業の労働者が10人以上といった解釈ではなく、一つの事業所に10人以上の労働者がいる場合に就業規則を定めなければならないと解されています。

②行政官庁への届け出

就業規則は、作成後、行政官庁へ届け出なければならないと規定されています。

「行政官庁」とは、管轄の労働基準監督署長です。

③就業規則の届出における注意点

就業規則の届出を行う際には、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者の「意見書」を添えて提出しなければいけません。

④記載事項

【必ず記載すべき事項】

  1. 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制の場合には就業時転換に関する事項
  2. 賃金の決定、計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期や昇給に関する事項
  3. 解雇の事由を含む、退職に関する事項

【規定がある場合は記載しなければならない事項】

  1. 退職手当に関する事項
  2. 手当・賞与・最低賃金額について規則がある場合には、これに関する事項
  3. 食費・作業用品等を負担させる場合には、負担に関する事項
  4. 安全・衛生に関する事項について規定がある場合には、安全・衛生に関する事項
  5. 職業訓練に関する事項について規定がある場合には、職業訓練に関する事項
  6. 災害補償・業務外の傷病扶助について規定がある場合には、災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 表彰・制裁について規定がある場合には、表彰・制裁に関する事項
  8. 上記のほか、事業場の全労働者に適用される事項について規定がある場合には、これに関する事項

【任意に記載してもよい事項 】

  1. 就業規則の総則的事項などの、使用者が自由に記載する事項

2、就業規則の変更をするケース

円滑に就業規則を変更したい! 就業規則の変更方法や変更による問題点をやさしく解説

就業規則は、実務ではどのような場面で変更がなされているのでしょうか。
多くの場合、以下の2場面で変更がなされています。

(1)労働関連の法令の改正時

労働関連の法令が改正されるときに、就業規則を改正内容に沿った規則に変更することが一般的です。
働き方改革により様々な法令が施行されています。
改正の必要がないか、今一度全体を見直してみるべきです。

(2)経営状況の悪化時

企業の経営状況が極端に悪化し、現状の就業規則では経営破綻になりかねないといった場合に、就業規則の変更を行うケースもあります。

3、就業規則の変更方法

円滑に就業規則を変更したい! 就業規則の変更方法や変更による問題点をやさしく解説

ここでは、就業規則の変更はどのような手順で行うのかを説明していきたいと思います。

(1)就業規則の変更に関する原案作成

最初に企業の現状を把握しながら、就業規則の変更に関する原案を作成します。
原案を作成したら、後のトラブル防止のためにも、できるだけ専門家にチェックをしてもらいましょう。

(2)労働組合または労働者代表からの意見聴取

参考:労働基準法第90条

労働基準法第90条にある通り、労働者の過半数で組織されている労働組合または、労働者の過半数で組織されている労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する人の意見を聴かなければなりません。

(3)変更の決定

労働者の意見を聴取した後に変更内容を決定させていきます。

(4)労働基準監督署長への提出

就業規則の変更が確定した後に、就業規則を所轄の労働基準監督署に届出しなければなりません。
この際に、労働組合または、労働者の過半数で組織されている労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する人の意見を記した書面を添付する必要があります。

(5)労働者への周知

最後に就業規則を、事業場ごとに労働者に周知させる必要があります。

就業規則が有効に成立するためには、周知のための手続が必要不可欠とする最高裁判例もあります(フジ興産事件・最二小判平15・10・10)。
ですから、しっかりと以下の方法で就業規則の周知を行いましょう。

≪就業規則の周知方法≫

  • 常時各作業場の見やすい場所に掲示 or 備え付けること
  • 就業規則の変更に関する書面を労働者に交付すること
  • 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録したうえで、各作業場に労働者が就業規則の変更に関する記録の内容を常時確認できる機器を設置すること

4、就業規則の変更に関する注意点

円滑に就業規則を変更したい! 就業規則の変更方法や変更による問題点をやさしく解説

(1)労働者が就業規則の変更に反対している場合

①基本的に「意見を聴く」ことが重要

就業規則の変更において、重要なことは労働者の「意見を聴く」ことです。
ですから、労働者が就業規則の変更に反対しているといったケースでも、労働者側の意見を聴いたことが証明できれば、就業規則の変更に関する届出は受理されます。

②労働条件の不利益変更に該当する場合

労働条件の不利益変更に該当する場合でも、下記の事柄を総合的に判断し、合理性がある場合は就業規則の変更が認められるケースがあります。
変更の可否は個別具体的に判断されるため、事前に専門家に相談することをお勧めします。

≪労働条件の不利益変更の判断基準≫

  • 労働者の受ける不利益の程度がどの程度か
  • 就業規則の変更に必要性はあるのか
  • 就業規則変更後の内容に相当性はあるのか
  • 労働組合などとの交渉の状況
  • その他の事情

(2)労働法関連法規などに反する、矛盾している場合

労働法関連法規や労働協約に反したり、矛盾するような就業規則の変更は許されません。
そのような変更を行ったとしても、変更内容は無効となります。
労働者が労基署などに就業規則の不当性を相談すれば、是正勧告等の行政対応がなされるおそれがあります。

5、10人未満の事業所のみの会社はどうすべき?

円滑に就業規則を変更したい! 就業規則の変更方法や変更による問題点をやさしく解説

就業規則は前述の通り、事業所のメンバーが10人以上の場合に必要であると法定されています。
言い換えれば、10人未満である場合は、作成も、労基署への提出も、法律上は必要ありません。

とはいえ、職場でのルールは使用者、労働者ともに認識は共通にしておく方が、個別に発生するトラブルが減りますので、就業規則を作成しておくことがお勧めです。

また、将来的に人数を増やすことを考えている場合、作成時期を逃す可能性があります。

かといって、少ない人数の場合、個別に対応する方がやりやすいこともあるでしょうから、機動的に使える就業規則を作るためには、専門家に相談してみることをお勧めします。

6、就業規則の変更は弁護士に相談を

円滑に就業規則を変更したい! 就業規則の変更方法や変更による問題点をやさしく解説

労働関係の決まり事は労働者の生活に密接にかかわるため、後々のトラブルに発展しやすい事項です。
ですから、就業規則の変更をする前に、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

判例では、年功序列型の賃金制度から成果主義型の賃金制度に移行する就業規則の変更を無効と判断し、約1,200万円の支払命令が出された事例などが存在します*。
*クリスタル観光バス(賃金減額)事件(平成18(ネ)1379)

このように労働者とのトラブルを抱えないためにも、事前に専門家である弁護士に相談しましょう。

まとめ

今回は円滑に就業規則を変更するための基礎知識として、就業規則の変更方法や変更による問題点を解説してきました。

労使間の決まり事は労働者にとって重要な問題であるため、就業規則の変更は、労使間のトラブルに発展しやすいという特徴があります。

よって、トラブルに発展する前に専門家である弁護士に相談することが重要であるといえるでしょう。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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