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コロナ禍における企業対応に関する7つのことを解説

2021年12月7日
コロナ禍における企業対応に関する7つのことを解説

目次

コロナ禍でさまざまな企業対応に追われている方も多いことでしょう。

新型コロナウイルスの影響が日増しに深刻化し、遂に新型コロナ特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正法)に基づく緊急事態宣言。
ともかく猫の目のように情勢が変わってきます。

人事総務担当者のあなた。
経営者も、上級管理者も、資金繰り等で頭がいっぱいで、「人事や総務で、今やっておくべきことを簡単にまとめておいてくれ」と丸投げされてはいないでしょうか。

国や都道府県の指示や要請を待っていてはなりません。
これらは、全体を見据えた概括的なものであり、頼り切る事は危険だからです。

この記事では、事態が流動的な中、勤務場所、勤務時間、休業、退職といった人事労務管理の基礎について、方向性のヒントを示します。

新型コロナウイルスに関しては、今後も皆様のお役に立つ記事を随時発信していく予定です。

1、コロナ禍での企業対応について知る前に|経営者と労働者に訴えよう

コロナ禍での企業対応について知る前に|経営者と労働者に訴えよう

(1)経営者に覚悟を求める

まず、経営者に覚悟を求めてください。

「会社としては、大切な労働者の命や健康、安全が損なわれたり、事業の継続に支障が生じるようなことを防がねばなりません。取引先やお客様の命や健康、安全をおびやかす行動はできません。必要に応じ、躊躇せずに決定を下し、問題があれば速やかに是正していく、という覚悟をもってください。」

(2)管理職や労働者に訴える

管理職や労働者の皆さんに訴えてください。

「会社としては、労働者の皆様の命、健康、安全を第一に対応します。お気づきのことや不明なことは、すぐに人事部総務部に相談してください。会社は必ずあなたを守ります。」
(今は非常時・緊急時です。現場の管理者等が、人事総務に十分確認せずに間違った対応をすることは、絶対に避けなければなりません。細かなことも、必ず人事総務に確認することを周知徹底してください。)

(3)信頼できる情報源を知っておこう

内閣官房のサイトで、特措法に基づく対応の全体像を把握できるようにされています。
各種資料にリンクを設け、日々的確にメンテナンスされています。

各業界団体のガイドラインも紹介されています。
全部で81団体のガイドラインです。

役職員の皆さんは、ぜひ知っておいてください。
ご自身の業界のガイドラインには、お目通しされることをお勧めします。

内閣官房「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言
各業界団体のガイドライン 「業種別ガイドラインについて

2、通勤、勤務時間、勤務場所の柔軟な対応が求められる

通勤、勤務時間、勤務場所の柔軟な対応が求められる

(1)原則的な考え方

ウイルスは、自分で移動するわけではありません。人間が運びます。
そして「3つの密」(3密)などの場で、人から人に感染します。
つまり、人の行動を変えれば、感染を最小限に抑える事ができます。

今は平時ではありません。就業規則等のルールにこだわってはなりません。
たとえば、会社が対応をためらう間に、労働者が満員電車で感染したら大変です。
労働者の状況を把握し、すぐに対応しましょう。

3密を避けよう

(出典:首相官邸「新型コロナウイルス感染症に備えて~一人ひとりができる対策を知っておこう。~」5. 感染症対策へのご協力をお願いします(チラシ)

(2)時差通勤(時差出勤)

時差通勤(時差出勤)は、始業・終業時刻を、本来の所定時刻より早くしたり、遅くしたりすることで、ラッシュアワー時間帯の通勤を回避するものです。
効果は大きいでしょう。
厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A 」でも強く勧められています。

なお、「就業規則」に定めがあるかどうかに、こだわるべきではありません。
「就業規則」は、個別労働契約の最低限の共通事項を定めたものです。
労使合意の上で、個別労働契約を改定することは、労働者にとっての不利益変更でない限り、問題になりません。
必要なことならば、まず個別に対応した上で、就業規則の改定は、後でじっくり取り組んでも良いと思います。
このような緊急時の対応については、柔軟性・迅速性を優先するべきでしょう。
この点は、後述のテレワーク等も同様です。

(3)フレックスタイム制等の導入

①フレックスタイム制とは

フレックスタイム制は、労働者が、各日の始業・終業時刻を自ら決める制度です。
3か月以内の一定期間(清算期間)の総労働時間を定め、その範囲で、各日の始業・終業の時刻を労働者が自らの意思で決めるものです。

②緊急時の実務的な対応

フレックスタイム制を全社で導入するには、就業規則と労使協定の定めなどの慎重な手続が必要です。
ひとまず時差通勤等で対応の上、フレックスタイム制について、労使で十分話し合っていくことが適切と思われます。

[nlink url=”https://best-legal.jp/flextime-system-14973″]

(4)テレワークの導入

[nlink url=”https://best-legal.jp/telework-18017″]

①テレワークの意味

テレワークは、働く場所の柔軟化です。
本拠地のオフィスから離れた場所で、ICTを使って仕事をすることです。
自宅で働く「在宅勤務」、移動中や出先で働く「モバイル勤務」、 本拠地以外の施設で働く「サテライトオフィス勤務」があります。

②テレワークは、もはや避けて通れない

通勤や勤務場所での感染防止や、休校中のお子様への対応など、テレワークのニーズは急増しています。
人との接触を8割減らす、という政府方針は、テレワークを用いない限り、達成できないでしょう。
政府からも強く推奨されています。
経営者こそが、自ら取り組んでみてください。

③就業規則になくても対応はできる

テレワークは、就業場所の問題であり、就業規則に明確な定めがあるのが望ましいでしょう。
ただし、就業規則に定めがなくても、労働者からの要望があれば、労使合意で個別労働契約を改定すれば対応は可能でしょう。

④労働者の意に反するテレワークは慎重に

逆に、会社が、テレワークを労働者に強いることは、慎重に考えるべきです。
とりわけ、在宅勤務は、私生活の場を職場とするものです。
労働者の個々の事情で、取り組みが難しい方もおられるでしょう。
事情をよく聞いて、個別に柔軟な対応が必要でしょう。
モバイル勤務やサテライトオフィス等、様々な選択肢も検討しておきましょう。

厚生労働省の「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」では、「個々の労働者がテレワークの対象となり得る場合であっても、実際にテレワークを行うか否かは本人の意思によることとすべきである。」と明記されています(ガイドライン3.(1))。

テレワークの区分

(出典:厚生労働省「テレワーク綜合ポータルサイト」「テレワークとは」「テレワークの定義」より)

以下、テレワークに関する参考サイトをご紹介いたします。

ⅰ)厚生労働省

・厚生労働省:新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)

2―問1テレワーク導入の簡単な解説です。

・厚生労働省テレワーク総合ポータルサイト

テレワークの基本的な情報、資料紹介、実施事例、無料コンサルティング、サテライトオフィスの紹介等、利用しやすいサイトです。

・情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン

ⅱ)一般社団法人日本テレワーク協会(JTA)

・新型コロナウイルス感染症対策:テレワーク緊急導入支援プログラムのご紹介

テレワークを緊急導入される企業等へのサポートのため、JTA会員企業・団体によるテレワーク緊急導入支援プログラムが用意されています。

ⅲ)株式会社テレワークマネジメント

同社代表田澤由利様の日経ビジネス記事は、ぜひお読みください。

また、【緊急LIVEセミナー】録画公開|緊急事態宣言下における「今できる、今すべき、テレワーク」が公開されています。これも、ぜひ一度ご視聴ください。以下、内容の一部です。

「何はともあれ、WEB会議を始めましょう。」
「着席退席の管理システムで、職場と同様の緊張感。」
「味の素の事例:工場勤務でもテレワーク可能!」
「ZOOMシステムを用いて『仮設クラウドオフィス」はすぐできる」

ⅳ)東京テレワーク推進センター

東京都と国が設立したワンストップ相談サービスセンターです。
近郊の方であれば、ぜひ一度訪問してみてください。

(4)その他の注意点(勤務の柔軟な対応・母性保護等)

①遅刻・早退、その他の柔軟な対応

労働者から、様々な事情で、遅刻・早退や有休取得、時短勤務や勤務地の変更等の要望も出てくるでしょう。
ご家族が感染して、看護・介護が必要になることも考えられます。
可能な限りの対応を進めてください。

なお、有休取得を理由に、賃金の減額、その他不利益な取扱いをする事は許されません。
有休は、労働基準法に定められた労働者の権利です。

②自動車通勤・自転車通勤等について

公共交通機関の3密を避けるため、自動車通勤や自転車通勤を労働者が希望したり、会社としても対応を考えることもあるでしょう。
例えば、妊娠した女性労働者、ご家族に病人等を抱える労働者にとっては、通勤の3密防止・感染予防は喫緊の課題です。(妊娠した女性労働者の対応については、次項③も参照)

労働者の希望をよく聞いて、必要ならば、たとえ就業規則の改定が間に合わなくても、特例として速やかに認める、といった柔軟な対応が望まれます。
時差通勤やテレワークの項で述べた通り、就業規則は、個別労働契約の最低限の共通事項を定めたものです。
労働者の不利益にならない限り、労使の合意があれば、個別労働契約で別の定めを設けることは可能です。
駐車場料金やガソリン代等、細かな問題も、緊急時であり、会社としてできる限り配慮すべきだと思います。

なお、通勤時に事故があれば、通勤災害として、労働災害となりうるでしょう。
仮に、切羽詰った事情があって、労働者が会社の承諾なく、自動車通勤等をして、そこで事故にあった場合でも、合理的な通勤手段として、労災認定を得られる可能性は十分にあります。
「会社の許可なく、勝手にやったから、労災にはならない。」等と即断しないでください。
労災認定は、会社ではなく、労基署の権限です。ともかく、労基署と相談してください。

③母性保護への配慮(母性健康管理措置)

働く妊婦の方は、職場の作業内容等によって、新型コロナウイルス感染症への感染について、不安やストレスを抱える場合があります。
会社としての必要な措置が義務づけられました。

「新型コロナウイルス感染症への感染のおそれに関する心理的なストレスが母体又は胎児の健康保持に影響があるとして、主治医や助産師から指導を受け、それを事業主に申し出た場合、事業主は、この指導に基づいて必要な措置を講じなければなりません。」

例えば次のような対応です。

  • 感染のおそれが低い作業への転換又は出勤の制限(在宅勤務・休業)
  • 妊娠中の通勤緩和
  • 妊娠中の休憩に関する措置
  • 妊娠中又は出産後の症状等に関する措置(作業の制限、勤務時間の短縮、休業等)

(参考)厚生労働省5月7日報道発表資料
妊娠中の女性労働者の新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置が本日から適用されます

3、職場において気をつけるべきこと

職場において気をつけるべきこと

職場にも「3つの密」のリスクは様々あります。
以下は一例です。
ぜひ、皆さんの職場で話し合って、職場にふさわしい対応を実施してください。

(1)共通事項

マスクや手洗いの励行、間隔を空ける、大声を避ける、換気に注意する、消毒薬等の設置を行う、こんなことはすぐできるでしょう。
次のチラシなども職場に掲示しましょう。

【出典:首相官邸】
「新型コロナウイルス感染症に備えて~一人ひとりができる対策を知っておこう。~」
5. 感染症対策へのご協力をお願いします(チラシ)

(2)事務室、食堂、喫茶室等の対応

①事務室

レイアウトを変更する、換気をよくするなど、すぐできることがあるはずです。
鳥取県は、感染者が少ない県ですが、県庁では、職員の間に段ボールの仕切りをおいて、感染予防に努めておられます。

②食堂・喫茶室

食事は交代でとる、気を緩めて大声での長話等はお互いに注意しましょう。
外食もランチタイムラッシュを避けて、交代で出かけましょう。

③トイレ、給湯室、更衣室、バックヤード、エレベーター、廊下等

気が緩みがちな場所です。管理職の注意も行き届かないでしょう。
大声での長話を避けるなど、労働者一人一人が、お互いに注意を呼びかけましょう。

(3)喫煙所の廃止

喫煙所こそ、3つの密そのものです。
受動喫煙防止対策が義務付けられています。
廃止を検討せざるを得ないでしょう。

【参考】

厚生労働省:「受動喫煙対策」ポータルサイト
東京都:東京都受動喫煙防止条例ポータルサイト

4、業務において気をつけるべきこと

業務において気をつけるべきこと

(1)会議、取引先訪問、出張を最小限に

対面でなければ話ができない、という発想はやめましょう。
対面の接触を極力少なくするのは、国家的な要請です。

オンライン会議システムは、非常に使いやすくなっています。
移動時間や費用の節約にもなります。
例えば、Google HangoutsやWebexです。
いわばテレビ電話です。

①会議

3つの密の代表です。
無駄な会議はやめる、会議時間を短くする、オンライン会議を活用する、すぐ取り組んでください。

②取引先訪問・出張

移動時の公共交通機関は3つの密です。
さらに、「せっかく来られたのだから」と、長話になったり、接待になったりしがちです。
オンライン会議をぜひ活用してください。

製造現場、工事現場等も、現場の担当者に、現場の映像をWEBカメラで送ってもらえば、遠く離れた場所でも、指示や打合せは可能なはずです。

このような柔軟な発想こそが、あなたの会社の未来を決めます。

(2)接待、歓送迎会、パーティー等の自粛の徹底

これも3つの密です。
これで感染したら、社会的な批判をすら招きかねません。

なお、アルコールは聴覚の働きを鈍らせ、声が大きくなり、飛沫感染のリスクを高めます。
アルコールを伴う場所は我慢しましょう。

経営者、管理者こそが、率先垂範し、若手社員の模範となってください。

(3)店舗系BtoCの業務で気をつけるべきこと

小売業・飲食業等、お客様と直接向き合う店舗営業等では、お客様を守りぬくこと、お客様と向き合う労働者をしっかりサポートすることが求められます。

国や地方自治体、業界団体等から様々な注意喚起がされています。
また、レジに透明垂れ幕を設置したり、レジの待ち列の床に立ち位置のマークを書く、混み合う時間帯を避けるようアナウンスするなど、各小売店で様々な工夫が既に行われています。
これらも、ぜひ参考にしてください。

①東京都の緊急事態措置による「適切な感染防止対策」

政府の緊急事態宣言を受けて、東京都で、一定の施設について、休止要請や協力依頼を行っています。
社会生活を維持する上で、必要な施設(医療、生活必需物資や食事提供施設等)についても、「適切な感染防止対策の協力要請」が行われています。

4月16日には、緊急事態宣言の対象が全都道府県に拡大され、記事の掲載時点では、宣言の解除が進められてはいますが、まだまだ油断できません。
各都道府県の指示や要請も、しっかり把握しておく必要があります。

東京都の「適切な感染防止対策」の一例は、次の通りです。
全国で参考にされるべきでしょう。

  • (発熱者等の施設への入場防止)従業員・来店者のうち体調不良者等の出勤停止・入場制限
  • (3つの密防止)店舗利用者の入場制限、行列を作らないための工夫や列間隔の確保(約2m間隔の確保)
  • (飛沫感染・接触感染防止)従業員のマスク着用、手指の消毒、咳エチケット、手洗いの励行
  • (移動時における感染の防止)時差出勤、テレワーク、出張の中止等

【出典】:新型コロナウイルス感染拡大防止のための東京都における緊急事態措置等
(「適切な感染防止対策」は末尾別表に掲載されています。)

一般社団法人日本フードサービス協会「外食事業者の新型コロナウイルス感染症対策チェックリスト

一例は次のとおり。全体で26項目です。
非常にきめ細かく、実践的です。
外食産業以外の様々な業種でも、ぜひ参考にしてください。

<衛生管理関係>より

  • 店舗のドアノブ、テーブル、イス、サラダバー、セルフドリンクコーナー等の設備の消毒、卓上の調味料・ポット、セルフサービスのトング等について、撤去が難しい場合は、こまめな消毒や用具の交換を行うなど、店舗内での接触感染防止を図る。

<人材管理>より

  • 従業員が過度な心配や恐怖心を抱かないよう、また風評や誤解などに惑わされないよう、現状を的確に従業員に伝える方法を考えておく(従業員へのリスク・コミュニケーション)。

<渉外・広報>より

  • 緊急連絡システムは、メインの通信機能に支障が生じた場合に備え、電話や電子メール等、複数の連絡方法を検討する。

5、労働者や顧客に感染者が出たときの企業としての対応

労働者や顧客に感染者が出たときの企業としての対応

労働者に新型コロナウイルス感染症の陽性者等が発生したときの対応については、厚生労働省が職場の対応ルール(例)を示しています。

以下に、概要をお示ししました。
このようなルールを定めて、社内に周知徹底してください。

顧客に感染者が出た場合も、このルールをもとに、保健所の指示に従って対応してください。

なお、労働者・顧客いずれの場合でも、健康情報は、必要最小限の関係者限りの開示とすべきであり、保健所等の指示に従い、厳格に扱ってください。
家庭の中で、軽はずみに話題にするなど、もってのほかです。
情報が一気に拡散し、当該労働者や顧客に多大な迷惑がかかるだけではありません。
会社としての信用が、一気に失墜すると肝に銘じてください。

外食店については、一般社団法人日本フードサービス協会が「外食店における新型コロナウイルス感染者発生時の対応に関するガイドライン」を公表しています。
業務継続可否についても、丁寧に解説されています。
人事総務担当者としては、これも、ぜひ目を通しておいてください。

(1)厚生労働省の職場の対応ルール(案)の概要

①従業員から社内担当者への報告ルール

PCR検査実施が決まった時点で、従業員から所属長に報告、所属長は人事担当部門等の対策所管部に報告。
結果判明時には、陽性・陰性を問わず、報告する。
健康情報の取扱いは、必要最小限の関係者限りとする。

②従業員が陽性と判明したときの対応

保健所の指示に従い、濃厚接触者等の自宅待機を行うこと。
保健所の疫学的調査に備えて、事業場ごとに保健所との連絡担当者を定め、陽性者等の勤務状況や在籍する部署の座席表、フロアの見取り図を準備する。

③職場の消毒等

保健所の指示に従う。
特段の指示がない場合には、次の通り対応する。

(消毒の場所)

陽性者等が接触したと考えられる場所:机・椅子・使用機器、キャビネット、ドアノブ、照明スイッチ、床面や壁等

会社の共用スペース:食堂、ロッカールーム、トイレ等
(消毒薬、保護具、消毒後の手指の衛生等のルールの例も示されています。)

(2)一般社団法人日本フードサービス協会の患者発生時ガイドラインより(事業継続の部分)

一般的な衛生管理が実施されていれば、感染者が出たからといって業務停止や食品廃棄等の対応をとる必要はありません。
濃厚接触者の待機等で人員確保が困難になったり、消毒作業等で業務継続が困難な場合は休業が必要となります(店舗の休業を14日間とすることは、合理的な根拠がありません)。

お客様や他の労働者等に2次感染の可能性がある場合は、保健所の助言を踏まえて、何らかの方法で注意を喚起する必要もあります。

農林水産省で、感染者発生時の対応や事業継続についてガイドラインが定められていますので、これをベースに考えてください。

6、休業、休暇について、気をつけるべきこと

休業、休暇について、気をつけるべきこと

会社の事業そのものをストップするか、店舗を閉めるか、どのような場合に労働者を休ませるか、その場合の給料の補償をどうするか、様々な問題が出てきます。

新型コロナ特措法や助成金・補助金等については、リーガルモールの別記事で詳しく解説しています。
本項の末尾に掲載しています。

(1)店舗等休業の判断基準

①特別措置法や地方自治体からの要請・依頼の正確な把握

緊急事態宣言を受けて、各都道府県で、施設の使用停止及び催物の開催の停止要請が出されています。
自社の施設が該当するか把握してください。

新型コロナウイルス感染拡大防止のための東京都における緊急事態措置等

②結局は経営判断

ただし、①の要請・依頼に強制力はありません。
営業の継続可否は、事業者の判断に委ねられています。

要請・依頼の対象外の施設は、地域や顧客層、収益見込み等を考慮しての総合判断となるでしょう。
労働者が感染したり、来店客を感染させたりしたら、致命的な打撃になりかねません。

これも踏まえて、判断してください。

【参考】施設の使用制限の要請等について

新型コロナ特措法では、以下の通り、ステップを踏んで協力要請、制限要請、指示・公表と進むこととされていますが、応じなくても、罰則はありません。
そのため、罰則を設けるべきという検討が行われています。

なお、パチンコ店に対して、第3段階の施設名の公表まで行われている例があります。
「施設名が公表されたら、営業しているとわかるので、逆に客が集まるのではないか。」ともいわれていました。
しかし、地方公共団体の厳しい指導や地域住民等の厳しい批判を浴び、殆んど例外なく、休業に追い込まれているようです。

ⅰ)第1段階:第24条第9項による協力の要請

ⅱ)第2段階:正当な理由がないにもかかわらず、①の要請に応じないとき

第45条(感染を防止するための協力要請等)第2項に基づく、施設の使用の制限、若しくは停止又は催物の開催の制限要請

ⅲ)第3段階:正当な理由がないのに、②の要請に応じないとき

第45条第3項に基づく指示を行い、これらの要請及び指示の公表を行う。

新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(新型コロナウイルス感染症対策本部)三(3)3)施設の使用制限等より)

[nlink url=”https://best-legal.jp/store-closed-by-corona-20725″]

(2)労働者に休業するように要請できるか

①労働者への休業の要請には、休業手当補償義務

労働者を休業させる場合、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払う必要があります(労働基準法第26条)。
労働者の最低生活保障のための罰則つきの定めです(罰則:30万円以下の罰金。労働基準法第120条)。

補償義務を免れることができるのは、「不可抗力による場合だけ」と考えてください。
「不可抗力」というには、「事業の外部より発生した」だけでなく、「経営者として最大の注意を尽くしても、避けられなかった」という場合に限られます。

例えば、在宅勤務で対応可能かどうかも十分検討せずに、労働者に休業を命じた場合は、不可抗力とは言えず、休業手当の支払が必要となりえます(厚生労働省の新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)4-問1)。

前述のテレワークについての真摯な検討が、この意味からも必須です。

注意しておくべきは、休業が会社の故意・過失による場合には、賃金全額の支払義務が生じることです(民法第536条第2項)。
安易な休業は、会社にとって、大きなリスクになります。
会社だけで判断せず、人事労務の専門の弁護士の意見等も確認しながら、慎重に対応してください。

②労働者に有休取得を強いることはできない

有休は、労働者の権利であり、原則として、労働者の請求する時季に与えなければなりません。
会社が、一方的に取得を命ずることはできません。
(厚生労働省の新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)4-問9)

③予防的な休業の要請

会社が、感染症予防のために労働者に休むように求めたら、休業手当の支給が必要です。
労働者自身が、体調不良や感染予防のために休みたいのであれば、休業手当の支給は必要ではありません。
有休の取得を求めるのが現実的でしょう。

④労働者の感染

労働者が感染して休業する場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」ではなく、休業手当の支払いは不要です。
要件を満たしていれば、健康保険から傷病手当金が支給されます。

⑤学校の臨時休業の対応について

学校の臨時休業のため、労働者が子供の世話のため休みたい、と希望されることも増えています。
通常の有休と別に、特別休暇等も検討してください。
後述の助成金の対象になります。

(3)公的な支援(雇用調整助成金等)

助成金は、日々内容が更新されています。
本稿執筆時(5月18日)現在の主なものをご紹介します。
労働者の正規・非正規を問わず、助成の対象です。
これらの詳細は、本項末尾の記事を参照ください。

①雇用調整助成金

新型コロナウイルス感染症により影響を受ける会社が、労働者の雇用維持のため、一時的に労働者の休業、教育訓練又は出向等を行えば、休業手当、賃金等の相当部分が助成されます。
要件次第では、全額助成されることもあります。

これらも、順次助成率の引き上げや要件緩和等が進められています。

②新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金

小学校等が休校になり、親御さんがお子さんの世話のために休む場合に、会社が通常の有休とは別に、特別の有給休暇を付与すれば、休暇中の賃金全額が助成されます(上限額あり)。

[nlink url=”https://best-legal.jp/subsidy-for-elementary-school-leave-20232″]

③申請手続

申請手続は大変複雑です。
社会保険労務士・弁護士等の専門士業者やコンサルタントのサポートを検討してみてください。
なお、中小企業では、顧問税理士への相談を考える方も多いと思います。
しかし、これらの助成金は、人事労務に関わる問題であり、税理士は提出書類の作成代行等の取扱いはできません。

【厚生労働省】

「雇用調整助成金」>新型コロナウイルス感染症について
新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金・支援金の延長について

(4)その他各種の公的支援

新型コロナウイルスに関しては、矢継ぎ早に、様々な公的支援策が打ち出されています。
内閣官房では、これらを一覧化し、各種支援策へのリンクも設けています。
東京都でも、独自の検索サイトを設けています。

支援策の代表的なものをご紹介します。
会社の人事総務担当者としても、このような情報は、ぜひ社内で周知してください。
労働者の方向けのみならず、会社として存続するためのサポートも様々用意されています。

①給付

「特別定額給付金」:一律1人当たり10万円
「子育て世代への臨時特別給付金」:児童1人あたり1万円(申請手続不要)
「住居確保給付金」:休業による収入減で、住居を失う恐れがある方に、原則3か月、最長9か月の家賃相当額を支援

②貸付

「緊急小口資金・綜合支援資金」:収入減で、生活が苦しい方に、最大80万円(2人以上世帯)、最大65万円(単身世帯)を貸付。

③保険料や公共料金等の猶予・減免

国民健康保険料、介護保険料、国民年金保険料等の減免。
国税、地方税、各種公共料金等の支払猶予。

④中小・小規模事業者向けの支援策

以上の①から③は、個人向けの支援策ですが、次の内閣官房の一覧表の通り、中小・小規模事業者向けの支援策も様々用意されています。

「持続化給付金」:月の売上が50%以上減少した場合に、事業継続資金として、最大200万円が給付されます。

「実質無利子・無担保融資」:日本政策金融公庫等を通じて、3年間実質無利子、最長5年まで元本据置きの融資が受けられます。
地銀・信金・信組を通じた融資も、利用可能になっています。

「税・社会保険料等の納付猶予・減免」:国税・社会保険料の納付猶予や固定資産税・都市計画税の減免が受けられます。

【資料1】内閣官房:新型コロナウイルス感染症に伴う各種支援のご案内


【資料2】東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ

検索の仕方が工夫されており、ご自分に合った制度を探すことが容易にできます。
また、東京都独自の支援策もまとめられています。
(例えば、都の休業要請等に協力する中小事業者への東京都感染拡大防止協力金等です。)

7、解雇等について気をつけるべきこと

解雇等について気をつけるべきこと

事業継続が困難として、解雇・雇止め・内定取消し、といった事態が発生しています。
業績が悪化したからといって、安易に対応すると、社会的な批判を浴びかねません。
そもそも、日本の労働法制では、解雇等への規制は極めて厳しいものです。
経営者が暴走しないように、人事総務担当者は勇気をもって、適切な助言を行ってください。

以下に述べる点については、厚生労働省新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(以下「Q&A」)9.労働者派遣、10.その他(職場での嫌がらせ、採用内定取消し、解雇・雇止めなど)で丁寧に解説されています。人事労務担当者は、お目通しされることをお勧めします。

(1)解雇

会社が、労働者を解雇する場合、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められない場合には、「解雇権濫用」として、無効となります(労働契約法第16条)。

新型コロナ不況による解雇であれば、労働者側の理由でなく、会社側の理由による整理解雇です。「整理解雇の4要件」に該当するか考えておく必要があります。

*整理解雇の4要件:

①解雇の必要性(解雇しなければ、会社が存続できない。)
②解雇回避措置(解雇回避のために、最善の努力をした。)
③人選の客観性・合理性(客観的・合理的な人選基準を定めて、公正に適用している)
④手続の妥当性(労働組合、労働者との誠実な交渉等)

(参考:「Q&A」10―問2~4))

[nlink url=”https://best-legal.jp/new-coronavirus-dismissal-20199″]

(2)雇止め

有期労働契約について、契約更新を行わないことを指します。

労働者が契約更新を申し入れたのに対し、会社が拒否したとしても、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、従前の労働契約を、そのまま承諾したものとみなされます(労働契約法第19条)。

(参考:「Q&A」10―問5、なお問4③なども参照)

(3)派遣切り

派遣労働者について、派遣元と派遣先との派遣契約が、派遣期間終了前に打ち切られることです。
この場合、派遣先は、新たな就業機会の確保や派遣元会社への30日前の予告または損害賠償が求められます。

派遣労働者と派遣元会社との労働契約の解約も、「派遣切り」と言われることがありますが、これは解雇そのものです。
(1)のとおり、安易にできるものではありません。

(参考:「Q&A」9-問1、問3等)

(4)内定取消し

内定により、既に労働契約は締結されており、内定取消しは、会社による労働契約解約すなわち、解雇です。
最高裁の判例で、内定取消しができるのは、「客観的に合理的な理由があり、社会通念上、相当として是認することができる場合に限られる。」とされています。
業績の悪化が見込まれるから、内定者には遠慮してもらおう、などといった安易な対応は許されないのです。

また、新入社員を、自宅待機等、休業させることを考える会社もあるかもしれません。
当該休業が、使用者の責めに帰すべき事由によるのであれば、使用者は、労働基準法第26条により、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払うことが必要です。

(参考:「Q&A」10-問2)

まとめ

新型コロナにより、経営者も現場管理者も、右往左往しているでしょう。
このようなときこそ、人事総務の担当者は、法的な問題や経営上のリスクをしっかり把握して、適時に適切なアドバイスをしなければなりません。

万一、なんらの対応も取らなかった場合や、不適切な対応をしたときには、例えば、次のようなリスクが生じることになります。

①会社・業界が、社会の批判を受けて、淘汰されることになりかねない

現在のパチンコ業界への厳しい批判は、決して他人事ではありません。
休業要請に応じなかった店は、ほんの一部です。
それでも、業界全体が厳しい批判に晒されています。

②労働者やその家族、顧客や取引先の命と健康への配慮が不十分な場合、直接的には、安全配慮義務違反や不法行為責任として労働者等からの損害賠償請求や、監督官庁からの厳しい指導を受けることになる。さらには、労働者の採用・定着を妨げ、顧客離れ、取引先の離反等も生じかねない。

その企業が、「金もうけのために、命と健康という至高の価値をないがしろにしている」という社会からの評価は、今後のいかなる営業努力でも、修復は難しくなるでしょう。
逆に言えば、今このひとときの少しばかりの努力と配慮が、将来に向けて、会社の信用というかけがえのない宝を産むことになるでしょう。

この未曾有の危機への対応は、今後、企業が未知の緊急事態に直面したときの対応のモデルとして、貴重な教訓・ノウハウを獲得する絶好の機会です。
この時期に果敢に取り組み、どのように行動したか、どんな問題があったのか、しっかりと記録してください。
今すぐできなくても、近い将来に必ず振り返ってみてください。
今のこの時期の勇気を持った行動こそが、あなたの会社の未来を築くための貴重な礎となることでしょう。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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