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会社の民事再生手続きのメリット・デメリットについて解説

2021年8月31日
会社の民事再生手続きのメリット・デメリットについて解説

民事再生にはどのようなメリットデメリットがあるかご存知でしょうか?
民事再生手続は、会社を清算せずに負債を減免することで会社の再建を図るための「再建型倒産手続」のひとつです。

先日、大手繊維メーカーのレナウンが民事再生法の適用を受けたことが報道されたばかりですが、近年の有名案件として、エアバックのリコールが話題になったタカタ、航空会社のスカイマーク、エアドゥなどのケースがあります。

また、中小企業向けの再建手続として利用されることも多く、コロナ禍の影響などで経営が苦しくなったという会社の経営者の方には民事再生法の申請を検討している人もいるかと思います。

万能にも見える民事再生手続きですが、そのデメリットは何でしょうか。
今回は、民事再生手続きのメリットデメリットについて整理してみました。
ご参考になれば幸いです。

法人の債務整理に関してはこちらの記事をご覧ください。

[nlink url=”https://best-legal.jp/civil-rehabilitation-law-22785/”]

1、民事再生とは?申請や手続きについて

民事再生手続の概要〜デメリットを知る前の前提知識

まず民事再生手続は、和議と呼ばれる再建型手続の問題点などを改善する形で2000年から施行されている比較的新しい手続です。
個人の債務整理として利用される個人再生手続は、この民事再生手続を個人向けの手続として改良したものになります。

民事再生手続の流れの概略は下記のとおりになります。

1, 申 請 の 準 備

2, 民 事 再 生 の 申 立 て

3, 再 生 手 続 開 始 決 定

4, 再 生 計 画 案 の 提 出

5, 再 生 計 画 案 の 議 決

6, 再 生 計 画 案 の 認 可

7, 再 生 計 画 の 履 行

8, 再 生 手 続 の 終 結

以下、特に重要なポイントについて簡単に解説を加えることにします。

(1)再生手続の申立てと再生手続開始決定

民事再生の申立てがなされたときには、裁判所によって「弁済禁止の保全処分」が下されるのが一般的です。
この保全処分によって、債務者による弁済行為は法的に禁止されることになります。

また、再生手続の申立てと同時に監督委員が選任され、以後、再生手続の対象となる会社は監督委員による監督に服することになります。

さらに、再生手続を申し立てる際には、これとあわせて債権者向けの説明会が実施されるのが一般的です。
民事再生手続は債権者の理解・協力が必須となるからです。

申立てに対して債権者の大多数からの反対がなければ、申立てから1週間程度で裁判所による再生手続開始決定が出されます。
この段階で債権者から強硬な反対があり、手続を進めても再生計画案が可決される見込みがない場合には、申立てを棄却する決定が出される場合もあります。
この場合には、破産手続に基づいて会社の負債を清算することになります。

(2)再生計画案の策定・事業再建活動

再生計画案は、債権者に対して依頼する具体的な権利の変更(負債の減免)と返済方法を定めたもので、民事再生手続で最も重要なものといえます。
後に解説するように、再生計画案が債権者に否決されてしまえば、民事再生手続は失敗となってしまいます。

したがって、再生計画案を可決してもらうためには債権者の理解と協力が必須であり、その前提として債権者が納得できるだけの「具体的な事業再建活動」がなされていることは、民事再生手続の成否をわける重要な要素といえます。

実際にも、不採算事業からの撤退(売却)、一部営業所の閉鎖(コストカット)、未履行の双務契約の解除などの対応がとられることは少なくありません。
また、事業の継続可能性を高め債権者からの信頼を獲得する目的で、資金力・信用力の高いスポンサー(メインバンクや主要取引先など)を選定するケースも多いといえます。

(3)再生計画案の議決・認可

再生債務者から提出された再生計画案は、まず債権者の議決に付されます。
再生計画案に対して、「届け出債権者の頭数の過半数」かつ「届け出債権額の過半数」の賛成を得られたときに可決されます。
このうち片方の要件のみを満たした場合には再決議に付されますが、どちらの要件も満たさない場合には、再生手続は廃止され破産手続に移行する可能性が高くなります。

再生計画案が可決されたときには、法律が定める障害事由に該当しない限り裁判所によって再生計画が認可されます。再生計画の認可が確定すると、届出債権の権利変更(減額)および残額についての免責という効果が発生します。

(4)再生計画の履行

再生計画の認可後は、再生債務者はその再生計画にしたがって債権者に対する弁済を行います。
「再生計画を完遂した場合」または「再生計画認可後3年間」のいずれかの時点で再生手続は終結となりますが、それまでは監督委員の監督に服する必要があります。

2、民事再生手続きのメリット

民事再生手続きのメリット

以上で解説した民事再生手続の特徴をふまえて、まずは、法人が民事再生手続を利用することのメリットについておさらいしていきましょう。

(1)会社の経営権を失わずに事業を継続できる可能性がある

民事再生法は、「再建型」の倒産処理手続なので、破産手続のように会社の清算(消滅)を前提としません。

さらに、民事再生法は、いわゆる「DIP型」とよばれる方法を採用している手続なので、再生債務者(民事再生を適用する会社)の経営陣の退陣も必須ではありません。

つまり、民事再生手続は、法人の経営者にとっては「経営権を失うことなく」今後も事業を続けられるという点で非常にメリットの大きな手続ということができます。

(2)負債を大幅にカットしてもらえる

民事再生では、裁判所に認可された再生計画に基づいて負債を大幅に圧縮してもらうことができます。
個人向けの手続である個人再生の場合とは異なり、民事再生手続の場合には、法令上の減額目安などがあるわけではありません。
下記のルールに反しない範囲で、債務者側の責任で再生計画案を作成しなければなりません。

  • 債権者の平等を害しない内容であること
  • 弁済期間は10年以内であること(特別の事情があるときを除きます)
  • 再生手続の時点で破産した場合の配当額よりも多い金額を弁済すること(清算価値保証の原則)

とはいえ、再生計画には債権者の同意が必要になりますので、事業の継続可能性と債権者の納得の両面から具体的に妥当な金額(減免率)を提案することになります。
その意味では、民事再生の経験の豊富な専門家の支援抜きに手続を成功させることは難しいといえるでしょう。

(3)手元資金を確保できる

事業者が経営不振に陥った場合には、取引先からの未回収金の取り立てなどが厳しくなったり、決済方法が不利になったりする(手形決済を認めてもらえないなど)、手元資金が一気に枯渇してしまうことは珍しくありません。
また、融資の返済を滞納してしまったことが原因で、メインバンクの口座を凍結され、ランニングコストの引き当てにすべき預金と相殺されてしまうことも考えられます。

すでに解説したように、民事再生が申し立てられた場合には、裁判所によって「弁済禁止の仮処分(保全処分)」が下されることになりますので、上記のような問題の発生を食い止めることが可能です。

(4)柔軟な対応が認められる可能性

事業継続という点を重視した場合には、すべての債権者に画一的な対応をすることが望ましくないことも珍しくないといえます。

たとえば、再生計画によって大幅な権利変更(債権の減額)を行ったことで、主要取引先の経営が先に破綻してしまえば、再生計画の履行が不可能になってしまうことも考えられます。
そのような場合には、取引先への支払(未払いの仕入れ代金の支払いなど)を、金融機関からの借金返済に優先して行うような対応が認められる場合もあります。

また、事業継続に必要な設備などをリースしているケースなどでは、リース会社と「別除権協定(優先的に返済することで担保権実行をやめてもらう協定)」を結ぶことで、事業継続に必須となるリース物品の引き上げを回避できることもあります。

(5)経営者保証ガイドラインを利用できる場合も

中小企業の倒産処理で大きな問題となるのが、会社の融資に対する経営者の個人保証です。

法人向けの融資は巨額になることも多いため、経営者保証のある状態で会社を倒産させれば、経営者自身も連鎖倒産しなければならなくなってしまいます。

しかし、民事再生法では、会社を破産させた場合よりも多額の返済を実施することが前提条件となるため、いわゆる「経営者保証ガイドライン」を適用することで、経営者保証の負担を減免してもらえる余地があります。

[nlink url=”https://best-legal.jp/guidelines-for-management-assurance-19660″]

3、民事再生のデメリット

民事再生のデメリット

ではいよいよデメリットの解説です。

民事再生手続には、倒産処理手続をとったことによる信用(企業ブランド)低下・費用負担といった一般的なデメリットに加えて、次のようなデメリットが発生する可能性があります。

(1)監督委員による監督

法人の民事再生事件では、全件で監督委員が選任されるのが原則です。

監督委員とは、民事再生手続や再生債務者の経営建て直しがうまく進むように監督・支援する役割を担っている機関で、監督委員選任後は、再生債務者(の経営者)は、次の行為を行う場合には監督委員の同意が必要となります。

【再生計画認可までの間同意が必要となる行為】

  • 所有財産に係る権利の譲渡、担保権の設定、賃貸その他一切の処分行為
  • 再生債務者の有する債権の譲渡、担保権の設定、その他の一切の処分(売掛金・貸付金の回収は除く)
  • 財産の譲受け
  • 借入行為,手形割引及び保証
  • 双方未履行双務契約の解除
  • 訴え提起などの法的手続きの申立て
  • 会社財産の無償譲渡
  • 債務免除,無償の債務負担行為及び権利の放棄
  • 取戻権の承認
  • 別除権の目的である財産の受戻し

【再生計画認可後も同意が必要となる行為】

  • 重要な財産の処分及び譲受け
  • 多額の借財
  • 別除権の目的である財産の受戻し

(2)経営者が変わらないことがデメリットになることも

経営者にとっては、「経営権を失わずに負債を圧縮できる」ことは、民事再生の最大のメリットといえますが、それがアダとなる場合がないわけではありません。

①経営再建に失敗するリスク

再生債務者の事業の行き詰まりが経営陣の経営判断上のミスにあるような場合には、経営に失敗した経営陣が引き続き経営にあたることで、建て直しに失敗することもあるといえます。

特に、経営陣にも痛みを伴う経営改善が必要とされるケースでは、経営陣が変わらなかったことが原因で、対応が不十分に終わってしまうということもあり得るでしょう。

②債権者の理解・協力が得られない場合も

また、経営陣に対して債権者が強い不信感をもっている場合には、「経営陣の刷新」を抜きに民事再生を申請してもうまくいかないケースが少なくありません。
そもそも、再生計画案を否決されてしまっては、民事再生は失敗してしまうからです。

また、担保権者の存在が事業継続可能性や収益性改善に大きな影響を与える場合には、担保権者の意向を無視できない場合が多いといえます。
民事再生では、担保権者の同意(別除権協定)なしに担保権の実行を阻止することはできないからです。

実際の民事再生では、申請に先立って社会的に信用のあるスポンサー企業を選定しておく(いわゆるプレパッケージ型民事再生)ケースが多いのは、「債権者の理解・協力を得られる外観」を確保することが重要と考えられているからです。

(3)債権者の足並みが揃わないリスク

上の点にも関連することですが、再生計画の認可の前提として債権者の同意(可決)が必要になりますから、債権者の足並みが揃わない場合に手続が失敗してしまうリスクがあるということです。

すでに解説したように、再生計画の可決には、頭数要件と債権額要件の双方を満たす必要がありますので、債権額の過半数を超えるような大口債権者がいる場合には、「たった1人の債権者の意向」で再生計画案を否決されてしまうこともあり得るわけです。

実際にも、メインバンクの理解を得られなかったことで、手続が失敗に終わるケースは少なくないといえます。

(4)債務免除税の負担

こちらは付随的な負担ということになりますが、再生計画の認可によって負債が減免された場合に納税の義務が発生します(債務免除税)。
債務の免除は再生債務者にとっては利益となると考えられるからです。

弁護士に依頼しているケースでそのような事態が起きることは考えづらいのですが、十分な知識のない人が再生計画をつくった場合には、この債務免除税の負担を見過ごしたために、再生計画中の資金繰りに狂いが生じることもあり得ます。

4、デメリットを小さくするには専門家の支援が必須

デメリットを小さくするには専門家の支援が必須

民事再生は、DIP型という経営者にとっては非常に大きな魅力のある手続である反面、債権者との交渉・調整、スポンサーの選定といった、専門知識・スキルを必須とする交渉ごとの負担も発生します。
債務者側の都合を押しつけるような再生計画案では、債権者の理解を得られない可能性が高いからです。

また、民事再生手続は、清算価値(配当可能額)の算出や、種々の書類作成といったように、手続を正しく進めるための負担も小さくありません。

そのため、デメリットを少しでも小さくするためには、弁護士のみならず、会計士・税理士といった専門家を加えたチームでの対応が必要となるケースも多いといえるでしょう。

まとめ

個人再生は、「経営権を失わずに負債の減免を受けられる」という点で、経営者にとってはメリットの大きい手続といえます。

しかし、実際の民事再生では、再生債務者の都合だけで手続が進められるというわけではありません。
債権者の理解なくして再生計画が可決されることはないからです。

そのため、債務者(経営者)だけでなく債権者も納得できるような「実現可能性のある」再生計画を策定し、それを確実に履行できると評価してもらえるだけの具体的な経営建て直しを行う必要があります。

また、ケースによっては、民事再生ではなく、早期に会社を破産(特別清算)させたり、会社更生法を利用した方がよいというケースもあるかもしれません(近年では東京地裁などを中心に中小企業にも会社更生法を適用する運用が増え始めています)。

[nlink url=”https://best-legal.jp/company-reconstruction-22753/”]

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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