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商標登録とは?4つのメリットと手続のポイントを解説
商標登録とは、どうすればよいのかご存知ですか?
会社の営業企画担当者が、突然社長から聞かれました。
「今度の新商品・新サービスについて商標登録したい。登録しておかなかったために、大変な目にあった会社もあるそうだぞ。しっかり調べて教えてくれ。」
商標とは何か、商標登録とはどうすればよいのか、全く知らなかったので、慌てふためいています。
今回は、
- 商標登録の基本のキ
から弁護士がわかりやすく解説します。お読みになれば、あなたも社長に自信をもって解説できるでしょう。
1、商標登録の基本の前に|商標とは何か
そもそも商標とは何でしょうか。
ひとことで言えば、「商品・サービスを識別して、権利者・消費者を共に守るもの」です。
(1)商標の定義
商標とは、自社の取り扱う商品や役務(サービス)を他社のものと区別するために使用するマーク(標識)のことです。
商標権は「マーク」+「使用する商品・サービス」のセットで特許庁に登録します。
たとえば、「電撃の巨人」というマーク(文字商標)で自社の「電子レンジ」という商品を登録する、ということです。
別の会社が、「電撃の巨人」という「ピリ辛のお菓子」(商品)を登録することはできます。
逆に、別の会社が既に、「電撃の巨人」という「ゲーム」を登録済みであったとしても、同じマーク(電撃の巨人)の電子レンジを、商標として登録する事は可能です。
(2)なぜ商標を登録すべきか。
なぜ商標を登録すべきなのでしょうか。商標登録の主なメリットと注意点は、次の通りです。
① 商標権を取得しておくことで、自社の商標として使い続けることができます。
商標権の存続期間は10年ですが、更新が可能で、更新には制限がありません。
つまり、半永久的に使い続ける事ができます。
② 自社の登録商標やそれと類似の商標を使ってる人に対して、「使うのをやめてくれ!」といえます。
すなわち、商標を独占的に使用することができるのです。
③ 商標登録をすることで、権利者のみでなく、消費者の保護にもつながります。
自社で、「電撃の巨人」という「電子レンジ」を製造販売している場合に、他社が、自社商品と同じ「電撃の巨人」という「電子レンジ」を製造販売したら、どうなるでしょうか。
自社で、苦労を重ねて商品にしたものと、同一であると間違われかねません。
それが粗悪品だったりすれば、自社の商品やブランドイメージが壊れます。
消費者も、良い商品・サービスと思って購入したのに、粗悪品を掴まされることになりかねません。
④ 商標登録は先願主義(早い者勝ち)
商標権は、基本的には、先に出願した者に認められます(先願主義)。
自社で「電撃の巨人」という「電子レンジ」を販売していても、他社が先に出願してしまうと、先に出願した他社に商標権が認められてしまいます。
その結果、自社で、「電撃の巨人」という「電子レンジ」の商標使用が認められなくなります。
新商品を販売するときには、速やかに出願しておく必要があります。
(3)商標の3つの機能
以上のまとめとして、商標の3つの機能について整理しておきましょう。
商標を適切に使用すればするほど、機能が発揮されていきます。
これにより、商標というマークが、自社のブランドとして成長していくことになります。
① 出典を表示する機能
自社の商品・サービスであることを表示します。
消費者はこれを信頼して、他社商品と区別して購入するかどうかを決めます。
② 品質を保証する機能
「電撃の巨人」という「電子レンジ」は、自社商品として、しっかりとした品質を持ったものと保証する機能です。
③ 広告宣伝の機能
「電撃の巨人」という「電子レンジ」は、自社商品であることを消費者に訴えかけ、購買、利用を促す機能です。
(注)商標は「マーク」+「商品・サービス」の組み合わせですが、このマークには、様々な種類があります。
詳細は別記事で解説していますが、概要は次の通りです。
①文字商標(文字のみの商標)
②図形商標(図形のみから構成される商標)
③記号商標(のれん記号、文字を図案化しモノグラム化したものなど)
④立体商標(人物、動物等を立体化したものや商品の立体形状等)
⑤結合商標(文字、図形、記号等の二つ以上を組み合わせた商標)
⑥新しいタイプの商標(「色彩のみからなる商標」、「音商標」、「位置商標」、「動き商標」、「ホログラム商標」等)
東京都「中小企業経営者のための商標マニュアル」5~8頁
2、登録の手続|全体の流れ
このような商標を実際に登録する手続のポイントは、次の通りです。
実際には、弁理士等専門家に依頼することが通例でしょう。
ただし、会社の担当者としても、手続の意味と簡単なイメージを把握して、適切な手続が進むように、管理しておく必要があります。
まず、商標の登録出願から特許庁の審査を経て登録されるまでの流れを示しておきましょう。
費用についても記載しています。
(出典)特許庁
3、出願前の「先行商標調査」
(1)先行商標調査
前項の図では、まず初めに行うことが「商標登録の出願」になっていますが、実務では、これよりも前にすることがあります。
それは、「先行商標調査」です。
先行商標調査とは、登録しようとしている商標が、すでに登録されていないかどうかを調査することです。
「電撃の巨人」という「電子レンジ」が、既に商標登録されていないかどうかをまず確認します。
(2)先行商標調査の仕方
特許庁ホームページ掲載の次のバナーからアクセスします。
上記プラットフォームの「商標」にカーソルを合わせて、検索メニューを表示します。
その上で、「商標検索」や「商品・役務名検索」の機能を用います。
前述の通り、商標は、①「マーク」と②「使用する商品・サービス」のセットであり、それぞれについて、確認する必要があります。
① マーク(ロゴ)の調査
「商標検索」の機能を用います。
- 称呼(読み方)が類似する商標を探す
カタカナで検索します。できるだけ幅広く、類似のものがないかどうかを調べるためです。
ここで全くヒットしなければ、一安心といえるでしょう。
「デンゲキノキョジン」は該当なしでした。
- 同じ文字を含む商標を探す
称呼が類似するものがある場合には、今度は、実際に使う文字で検索します。
しかし、実際に使う文字でヒットするものがなくても、安心はできません。
たとえば、ひらがなとカタカナは、別の文字として検索されます。
「でんげき」と検索しても、「デンゲキ」の商標はヒットしません。
そのため、「でんげきレンジ」を商標登録しようとしていて、他の人が「デンゲキレンジ」を既に商標登録していた場合、特許庁の審査でハネられたり、既に登録している人から、商標権侵害と訴えられるかもしれません。
また、文字列の前方、中間、後方に違う文字が入っているだけでも、検索にヒットしませんので、検索で問題ないと思っていても、類似の文字列として、審査でハネられる事もあるでしょう。
「でんげき?」を入れてあいまい検索をする、といった注意も必要になります。
- その他の注意
特許庁では、次のような注意も行っています。
「検索の仕方によっては網羅的に検索ができていない可能性がありますので、検索項目やキーワードを変えて検索を行っていただく等の対応をお勧めします。」
「情報の反映までにタイムラグが生じることがあります。」
② 商品・サービスの調査(商品・役務名検索)
「商品・役務名検索」の機能を用います。
指定商品・指定役務の表示として、特許庁で採択可能な表示や類似群コード等を検索できます。
前述の通り、マークが一致していたり、類似のものでも、商品・サービスが異なるのであれば、商標登録は可能になります。
「電子レンジ」で試しに検索してみると、電子レンジそのもののほか、加熱用のお皿等、様々な商品が合計60件ほど出てきました。
③(参考)登録できない商標
次のような商標は、登録できません。これも注意事項です。
- 他人の商品・サービスと区別するマークとして機能しないもの(商品・サービスの品質を示すにすぎない商標)
例)商品「野菜」について「北海道」の文字 - 公共機関のマークと紛らわしい等、公益に反する商標(たとえば国旗等)
- 他人の登録商標又は広く知られた著名な商標等と紛らわしい商標
その他、指定商品(指定役務)の記載が明確でない等の場合にも、登録できません。
実際の調査は、かなり煩雑なものです。
間違った調査のまま出願しても、審査で拒絶されては、二度手間になりかねません。
後日になって、他の人から自分の商標権を侵害された、と訴えられることにもなりかねません。
専門家とのご相談をお勧めします。
4、商標登録願の作成と提出(登録願、特許印紙、提出)
いよいよ出願です。これも細かな技術的問題があります。
ここでは、概要を説明します。
(1)商標登録願の作成
書類で出願する方法と、インターネットを用いて出願する方法があります。
出願手数料は、いずれの場合も[3,400円+(区分の数×8,600円)]となります。
① 書類で出願する方法
商標登録願の様式(外部サイトへリンク)をダウンロードし、J-PlatPatと「商標登録出願書類の書き方ガイド」(外部サイトPDF)を参照しながら、商標登録願を作成します。
書類での提出の場合は、前述の出願手数料のほかに、電子化手数料が必要になります。
② インターネットを用いて出願する方法
電子出願ソフトサポートサイト(外部サイトへリンク)に基づいて、手続を進めます。
特許庁も、インターネット出願を推奨しています。
インターネット出願ソフトを用いた電子出願用のひな型も用意されており、手続も楽でしょう。
インターネット出願の場合は、電子化手数料も不要になります。
ただし、電子証明書の購入が必要です。電子証明書は、一定の期間使用できます。
商標登録を幾度もやるような場合には、インターネット出願するほうが費用の面でも有利になるでしょう。
(2)特許印紙の購入と貼り付け
上記の手数料は、通常の収入印紙では納付できません。集配郵便局等で、「特許印紙」を購入して、指定の箇所に貼り付けます。
(3)特許庁へ提出
① 受付窓口へ直接持参する場合
特許庁1階の出願受付窓口へ提出します。
② 郵送する場合
〒100-8915 東京都千代田区霞が関三丁目4番3号 特許庁長官 宛 に郵送します。
※宛名面(表面)余白に「商標登録願 在中」と記載して、書留・簡易書留郵便・特定記録郵便で提出します。
(4)書類で提出の場合の電子化手数料の納付
書類で提出した場合、出願日から数週間後に送付される払込用紙を用いて、電子化手数料として1,200円+(700円×書面のページ数)を納付します。
5、拒絶理由通知、拒絶査定が来たときの対応
無事出願ができたら、方式審査と実体審査が行われます。
審査で登録できない理由が発見された場合、拒絶理由が通知されます。
(1)拒絶理由通知への対応
拒絶理由通知が来ても、出願人は意見書で意見を述べたり、指定商品・指定役務を補正すれば、拒絶を解消できることがあります。
これも、担当の審査官に、拒絶理由通知の詳しい内容を確認した上で、意見書や手続補正書を出す必要があり、専門家との相談が必要でしょう。
(2)拒絶査定があったとき
意見書や補正書を出しても、結局、拒絶査定になってしまうことがあります。
この場合は、3か月以内に、「拒絶査定不服審判請求」をして、争うことは可能です。
ただし、請求料1万5000円+(区分数×4万円)という費用がかかり、専門家に依頼する場合には、さらに費用がかかります。
争うかどうか、慎重な判断が必要です。
6、登録査定から設定登録まで
意見書や手続補正書等も提出して、晴れて登録査定の案内が来たら、どうしたらよいでしょうか。
それ以後の手続は、次のようになります。
① 登録料の納付
登録査定の謄本送達後30日以内に、登録料10年分を納付します(5年ごとに分割して納付することもできます)。
登録料は1区分あたり年額2万8200円です。
② 設定登録
登録料納付により、特許庁で設定登録が行われ、晴れて商標権の効力が発生します。
7、弁理士・弁護士をしっかり活用
以上は、商標登録の具体的な手続の概要です。
本文中にも書いたとおり、技術的な細かな問題があります。
丹念に調べていけば、ご自身でも手続は可能かもしれませんが、それにかかる手間と時間は、大変なものになります。商標登録は先願主義、つまり早い者勝ちです。無駄に時間をかけることは避けるべきです。
何よりも、手続の不備により登録に至らなかったり、調査が不十分なために、他人の商標権を侵害する、といったことは絶対に避けなければなりません。
問題のないケースにおける手続は、実務になれた弁理士に依頼するとよいでしょう。
一方、何らかの問題がある場合は、知的財産権に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
問題を未然に予防しながら、手続を進めていきたい場合は、弁理士と連携している法律事務所へ相談すればワンストップで対応できます。
最近は、このような法律事務所も増えていますので、ぜひお探しの上、ご相談ください。
まとめ
商標登録は、簡単にできるものではありませんが、一度登録しておけば、半永久的に自社の商標として使い続けることができます。
手続も技術的な問題もありますが、本質的には、「マーク」と「商品・サービスのセット」が独自のものであるかどうか、ということだけにかかっています。
自社の大切なブランドとして育てたいのならば、多少の費用をかけても、商標登録を目指すべきです。
この記事がそのためにお役に立てれば幸いです。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています