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スメハラ社員への効果的な対応|穏便な解決のポイントとは?

2021年12月7日
スメハラ社員への効果的な対応|穏便な解決のポイントとは?

近年、さまざまな形態のハラスメントが社会問題化しています。
臭いに関するハラスメント、いわゆる「スメハラ」もその一つです。

臭いのひどいスメハラ社員に、会社としてどのように対応するかは、なかなか難しい問題です。
スメハラ問題を穏便に解決するための解決策は、会社の人事担当者としてはぜひ知っておきたいところでしょう。

この記事では、スメハラ社員への効果的な対応策について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、スメハラとは?

スメハラとは?

まずは、「スメハラ」がどのようなハラスメントであるかについて、基本的な知識を押さえておきましょう。

(1)臭いが原因で周囲に不快感を与えるハラスメント

スメハラは、「スメル・ハラスメント(smell harassment)」の略で、臭いが原因で周囲に不快感を与えるハラスメントをいいます。

スメハラについては、法律でルールが決まっているわけではなく、また臭いの感じ方には個人差があるため、会社がスメハラへの対応に苦慮してしまうケースも多くなっています。

(2)スメハラの主な原因

スメハラの原因となっている臭いがどのような原因で発生しているかについては、ケースバイケースですが、以下のような例が挙げられます。

①体臭(ワキガ等)・口臭

体臭や口臭のケアが甘く、周囲にとっても気になる臭いを発してしまうことは、スメハラ問題の中でもよくあるケースといえるでしょう。
特に、朝シャワーを浴びてこなかったり、歯磨きをしなかったりする社員は、体臭や口臭の問題を生じやすいといえます。
体臭や口臭については、本人にとっては自分の臭いということもあり、なかなか気づきにくいケースも多いようです。

②香水

毎日大量の香水を使用しているために、周囲に対して鼻を覆ってしまうような臭いを発しているケースもあります。
香水は微量であれば心地よい香りとなりますが、大量に使うと、かえって逆効果になってしまいます。
また、香水の臭いが体臭と混じってしまい、複雑な不快感を与える臭いを発してしまっているケースも見受けられます。

③タバコ

喫煙者から発せられるタバコの臭いも、生理的に受け付けないという人は多いでしょう。

口や服等に付いたタバコの臭いは、本人の近くまで行かなければ強く感じることはありませんが、その独特の不快感から、微量の臭いであっても嫌だと感じる人は多いようです。

2、スメハラを放置した場合に会社が抱えるリスクとは?

スメハラを放置した場合に会社が抱えるリスクとは?

会社の中でスメハラ問題が発生した場合、会社としては難しい対応を迫られますが、できる限りの対応をする必要があります。

もしスメハラ問題に十分な対応をせず放置してしまうと、会社としては以下のようなリスクを負ってしまうでしょう。

(1)被害者が退職してしまう可能性がある

スメハラの被害を訴えた社員は、そのままの状況が続けば、職場環境について嫌気がさしてしまうことでしょう。
臭いは人間の生理的な部分に訴えてくるため、長時間不快な臭いがする場所で過ごすことの精神的苦痛はかなり大きいといえます。
特に会社の場合、一般的に社員は、毎日8時間程度の定時労働を義務付けられているため、スメハラのある環境から逃げたくても逃げられないという事情があります。
だからこそ、会社がスメハラ問題に対して真摯に対応することが重要です。

もし会社がスメハラを放置してしまった場合、被害者の社員は会社を辞めてしまうかもしれません。
そうなる前に、会社として組織的にスメハラ問題に対応しましょう。

(2)ひどいケースでは安全配慮義務違反に該当する可能性がある

スメハラの程度がひどい場合、社員が嗅覚障害を患ってしまったり、スメハラが原因で精神的に病んでしまったりする可能性もあります。

この点、労働契約法第5条は、会社が労働者に対して負担する安全配慮義務について以下のとおり定めています。

(労働者の安全への配慮)

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

(労働契約法第5条)

スメハラが原因で、社員が心身の健康を害してしまった場合には、会社が安全配慮義務違反に問われる可能性があります。
そのような事態を避けるためにも、会社がスメハラに適切に対処することが大切です。

3、スメハラは対処が難しい|その理由とは?

スメハラは対処が難しい|その理由とは?

会社としてスメハラに対処することは重要ですが、どのように対処すれば良いかについては、スメハラという問題の性質上、十分な検討を必要とします。
以下では、なぜスメハラ問題への対応は困難であるのかという理由について解説します。

(1)加害者に故意がないケースが多い

スメハラの加害者となっている社員は、大抵の場合、自分が不快な臭いを発しているということに気づいていません。

人間誰しも、自分の臭いについては当たり前に感じてしまい、非常に鈍感になっているという現実があります。
周りが不快に感じていたとしても、スメハラ社員にとっては、その臭いは日常そのものなのです。

加害者にスメハラの故意がない以上、周囲から加害者を強く責めたり、注意したりすることはしづらいでしょう。

(2)指摘する場合、加害者に対するハラスメントに当たらないように注意が必要

また、スメハラで問題になりがちな体臭・口臭等は、非常にプライバシー性の高い事項であるといえます。
スメハラ社員に対する指摘の仕方を誤ると、加害者に対する侮辱やいじめなどの原因になってしまいかねません。
スメハラを指摘することが別のハラスメントを構成するようでは、本末転倒といえるでしょう。

そのため、スメハラ社員に対する指摘の仕方については、加害者自身の感じ方や周囲への影響等を十分に考慮して決める必要があります。

(3)懲戒事由に該当する可能性は低い

スメハラという行為それ自体は、就業規則等で定められた懲戒事由に該当することはまずないと言っていいでしょう。

したがって、会社はスメハラ社員に対して懲戒処分等の直接的な処分を下すことはできません。

スメハラへの対応は、あくまでも「指摘」、「注意」、「お願い」といったソフトな形で行うほかなく、この点もスメハラ対応を難しくしている一因といえるでしょう。

(4)臭いの感じ方には個人差がある|被害者が過敏すぎるだけの可能性も

スメハラを告発する社員がいたとしても、その社員の言い分だけを鵜呑みにして対応するのは好ましくありません。
臭いの感じ方には個人差があるので、被害者であると主張する社員だけが特に敏感であるだけというケースも考えられるからです。

また、単に被害者が加害者のことを気に入らないために、スメハラをでっちあげて告発してくるような悪質なケースもないわけではありません。
このようなケースでは、逆に被害者から加害者へのパワハラが行われていると捉えることもできてしまいます。

被害者の言い分が本当に正しいのか、加害者に本当に責任があるのかについては、周囲からの事情聴取等も含めて、よく調査しなければわからないでしょう。
しかし、スメハラというプライバシーに関わる問題の性質上、大々的に事情聴取をすることも難しく、会社としてスメハラ問題の実態を掴むのはかなり困難な側面があります。

4、スメハラ社員に対して会社はどのように対応すべき?

スメハラ社員に対して会社はどのように対応すべき?

スメハラ社員に対して、会社としては具体的にどのように対応すれば良いのでしょうか。

会社の対応策は、

①会社全体としてのスメハラ対策(全体対策)

②個別のスメハラ社員への対策(個別対策)

の大きく2つに分けられます。

全体対策と個別対策について、それぞれ3つずつ具体例を挙げましたので、スメハラ社員への対応の参考にしてください。

(1)社内に消臭対策の備品等を導入する

まずは全体対策から解説します。
スメハラに対する直接的な全体対策としては、全社的に消臭対策の備品を導入することが考えられます。

たとえば、オフィスの各箇所に空気清浄機を設置したり、誰でも利用できる口臭防止ガム・汗拭きシート等を社内に常備したりする方法があり得るでしょう。

(2)スメハラの原因となっている業務を改善する

また、スメハラの原因となっている業務が存在する場合には、その部分のオペレーションを改善することも有効です。
たとえば、外回りの多い営業部署の社員がスメハラの主要な原因になっている場合には、外回り後の直帰を認める等の方法も考えられます。

また一般的に、社員の残業時間が長くなるにつれて、体臭も強くなる傾向にあります。
そのため、会社全体で残業を減らす取り組みも、間接的ではありますがスメハラ対策になり得るでしょう。

(3)社内研修や広報等でスメハラ防止を訴える

会社全体でスメハラを防止するためには、社員全体の臭いに対する意識を改革・啓蒙することも大切です。

たとえば、社内研修でスメハラの問題点についての講義を行ったり、広報ニュース等で清潔感アップの取り組みを紹介したりすれば、社員の臭いに対する意識が高まり、スメハラ防止に寄与することが期待されます。

(4)被害者をスメハラ社員から引き離す

ここからは、個別のスメハラ社員への対策を紹介します。

もし、被害者がスメハラ社員と近くの席に座っている場合には、何はともあれ被害者とスメハラ社員を引き離すことが先決です。
両者を引き離せば、被害者のストレスは軽減されますし、被害者とスメハラ社員の間で無用な軋轢が深まってしまうリスクを減らすことができます。

(5)上司や同僚等にそれとなく指摘してもらう

スメハラ社員の臭いに関する根本的な問題は、やはり本人に指摘しなければ解決しません。
しかし、デリカシーがない注意の仕方をしてしまうと、かえって本人の反発を招く可能性もありますし、場合によっては逆にスメハラ社員に対するハラスメントになってしまうことも考えられます。

もし、スメハラ社員が信頼している上司や、仲の良い同僚がいれば、臭いについて、それとなく指摘してもらうのが望ましいでしょう。
信頼できる人からの指摘であれば、スメハラ社員もある程度臭いに気を付けるようになり、スメハラ問題の解消に繋がるかもしれません。

(6)人事から個人面談で指摘する

あらゆる方法を用いてもスメハラ問題が解決せず、周囲への悪影響が無視できないレベルになってしまったら、会社としてスメハラ社員に直接臭いを指摘するほかありません。

しかし、周囲に人がいる状況でスメハラを指摘する行為は、スメハラ社員に対するパワハラ等に該当する可能性が高いといえます。

そのため、人事部等が個別にスメハラ社員を呼び出し、他の社員に聞かれないような状況でスメハラを指摘するようにしましょう。

まとめ

スメハラ社員を放置すると、被害者の退職や健康被害等、会社にとって望ましくない結果を生じてしまう可能性があります。

スメハラ対策は、会社全体の清潔感・臭いに対する意識改革と、個々のスメハラ社員への対応の両輪で考えることが大切です。具体的に会社がどのようにスメハラへの対応をするかは非常に難しい問題ですが、周囲の上司や同僚等と協力しながら、状況に合わせた適切な対応を取りましょう。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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