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仮差押えとは?利用方法や早期に債権を回収するためのポイント7つ
債権を回収したいときに、仮差押えという方法が有効な場合があることをご存じでしょうか。
仮差押えとは、文字どおり、相手方の財産を仮に差し押さえる法令の規則に則った手続きのことです。
「差押え」によって相手方から強制的に金銭を回収できるということは多くの方がご存じだと思いますが、「仮差押え」の意味については、よく分からない方も多いと思います。
債権を回収するためには、差押えが最も強力な手段であることは間違いありません。
しかし、相手方の財産を差し押さえるまでには時間がかかりますし、その間に相手方の財産が消失してしまい、債権を回収できなくなる可能性があります。
そんなとき、仮差押えを活用することで、迅速かつ確実に債権を回収することも可能になってくるのです。
今回は、
- 仮差押えとは
- 仮差押えをする方法
- 仮差押えで早期に債権を回収するコツ
について、債権回収に関する経験の豊富なベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。
債権回収の方法や種類について知りたい方は以下のリンクからページに飛んでいただけると幸いです。
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1、仮差押えとは?
まずは、仮差押えとは何かということについてご説明します。
(1)対象となる財産を保全する手続きのこと
仮差押えとは、「差押え」の前提として、債務者が財産の処分をすることを制限する裁判所の決定のことをいいます。
債務者が債務を支払わない場合には、その財産を差し押さえることができますが、そのためには裁判をして判決等の債務名義を取得する必要があります。
しかし、裁判には時間がかかるため、その間に債務者が財産を使い果たしたり、差押えを回避するために財産隠しをする可能性があります。そうなると、債権者はせっかく裁判で勝訴判決を得ても債権を回収できなくなってしまいます。
差押えを実効的に行うためには、裁判前の時点で債務者が財産を処分することを制限しておく必要性が高いといえます。それを可能にするのが、仮差押えです。
裁判前に仮差押えを行い、差押えの対象となる財産を保全しておくことによって、債権者はじっくりと裁判を行った上で対象財産を差し押さえて、債権を回収することができるのです。
第二十条 仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
引用元:民事保全法
(2)仮差押えのままで取立はできない
仮差押えは、あくまでも仮に財産を差し押える手続きに過ぎません。債務者が財産を処分することは禁止されるものの、債権者がその財産を処分できるわけではありません。
対象財産に対して取立を行い、実際に債権を回収するためには、判決等に基づいて差押えを行う必要があります。
このように、先行して仮差押えをした後に差押えを行うことを、実務上は「本差押え」といいます。
(3)裁判せず早期に債権を回収できる可能性もある
以上でご説明したように、債権を回収するにはまず仮差押えを行い、それから裁判をして判決等の債務名義を取得し、本差押えを行うというのが正規の法的手続きとなります。
しかし、実際には、仮差押えをしただけで、裁判せずに早期に債権を回収できる場合も少なくありません。
なぜなら、仮差押えが行われると、債務者は対象財産の処分を禁止され、そのため事業の遂行に支障を来たすことがあるからです。
債務者としては、財産を活用しなければ事業を円滑に遂行できなくなることがあります。財産を活用するためには、仮差押えを解いてもらわなければなりません。そのためには、債務全額を早急に支払う必要があります。
つまり、債務者にプレッシャーをかけることによって債権の早期回収も期待できるのです。実務上は、この効果を狙って仮差押えを活用する債権者も多いです。
2、仮差押えと差押えの違いは?
仮差押えについて基本的なことをご説明しましたが、「差押え」(本差押え)とは異なる手続きであることがお分かりいただけたでしょうか。
次に、仮差押えと差押えが具体的にどのように違うのかについて、詳しくご説明します。
(1)取り立てる手続きか財産を保全する手続きか
まず、仮差押えは相手方の財産を保全する手続きであるのに対して、差押えは相手方の財産から直接に金銭債権を取り立てる手続きであるという点が異なります。
仮差押えは、先ほどからご説明しているように、差押えに先立って相手方の財産を保全するために、債務者による財産の処分を制限する手続きであり、「民事保全法」に基づいて行われます。
それに対して差押えは、債権者が裁判による判決等の債務名義を有していることを前提として、相手方の財産から直接金銭を回収することを可能とする手続きで、「民事執行法」に基づいて行われます。
仮差押えが行われた段階では、相手方の財産は処分が禁止されるだけですが、差押えが行われると、債権者が対象財産を直接処分して換金することが可能になります。
(2)申立て前に裁判が必要か不要か
仮差押えは裁判前に相手方の財産を保全するための手続きですので、申立て前に裁判は不要です。
それに対して、差押えを申し立てる前には、基本的に裁判をすることが必要です。なぜなら、債権者が債務名義を有していることが差押えを申し立てる条件とされているからです。
債務名義とは、債権者が裁判所の強制執行手続きによって実現しうる債権の存在と範囲を公的に証明する文書のことです。
債務名義の種類は、民事執行法第22条に定められています。確定判決や訴訟上の和解調書、調停調書、仮執行宣言付きの支払督促などが主なものです。
唯一、強制執行認諾文言付きの公正証書は裁判所を介さなくても入手できる債務名義となっています。
したがって、取引先に対する売掛金等を差し押さえる場合、あらかじめ強制執行認諾文言付きの公正証書を作成していれば裁判は不要ですが、そうでない限りは、まず裁判をする必要があります。
(3)担保金の要否
仮差押えでは通常、申立ての際に担保金(保証金)を裁判所へ納める必要がありますが、差押えの場合、担保金(保証金)は不要です。
なぜなら、仮差押えは債務者の財産を保全するという目的からして、迅速に手続きを進める必要があるからです。裁判前に行われる手続きであるため、債権者の主張が誤っている可能性もあります。
迅速に債務者の財産が保全される分、債権者の権利は保護されますが、その反面で債務者の権利が不当に侵害される可能性もあります。
そのため、債務者が不当な不利益をこうむった場合には確実に損害賠償を受けられるように、その担保として債権者は保証金を提供する必要があるのです。
(4)対象財産の優先順位の有無
仮差押えも差押えも、民事執行法で差押えが禁止されている財産を除いて、債務者が所有するすべての財産が対象となります。
ただし、仮差押えはあくまで「仮」のものであり、裁判前に緊急的に行われる手続きであることから、相手方に対して与える影響ができる限り少ないものを選ばなければならないという制限があります。
例えば、相手方の預金口座を仮差押えをすると、相手方はその口座に入っているお金を使えなくなり、様々な取引に支障をきたしてしまうでしょう。
また、相手方が他の取引先に対して有する売掛金を仮差押えした場合には、その取引先が相手方の経営状態を不安に思い、取引から手を引くおそれもあります。
一方、不動産を仮差押えした場合は、相手方はその不動産を売却することはできなくなりますが、今までどおり使用・収益することは認められます。
そのため、裁判所は、相手方が不動産を所有している場合にはまず不動産を仮差押えすべきであり、不動産がないか仮差押えができない場合に初めて、預金口座や売掛金の仮差押えが認められるべきと考えています。
この優先順位を守らずに仮差押えの申立てをしても、裁判所に不動産の仮差押えに切り替えるように求められる可能性が高くなります。
それに対して、差押えの場合はこのような優先順位はなく、債権者はどの財産でも差し押さえることができます。
3、仮差押えの方法と手続きの流れ
それでは、仮差押えをするにはどのような手順を踏めば良いのでしょうか。ここでは、手続きの流れに沿ってやるべきことを解説します。
なお、裁判所によって細かな運用が異なるところもありますが、ここでは東京地方裁判所の例でご説明していきます。
その他の地域でも基本的な流れは同じですが、細かなところは地元の弁護士に相談するなどして確認されることをおすすめします。
(1)申立て
仮差押えを申し立てるには、申立書と資格証明書(当事者や第三債務者が法人の場合)や債務者の本店などの不動産登記事項証明書、債権の存在を疎明する資料などを裁判所へ提出します。
申立書には「保全すべき権利」と「保全の必要性」を記載することが必要です。
保全すべき権利とは、債権者が仮差押えによって保全しようとする権利のことです。例えば、相手方に対する売掛金を回収するために仮差押えを申し立てる場合は、その売掛金債権が「保全すべき権利」にあたります。
保全の必要性とは、仮差押えを行わなければ上記の権利を実現するために強制執行ができなくなるか、著しく困難となる事情のことです。
そして、保全すべき権利と保全の必要性を「疎明」する資料も添付する必要があります。
疎明とは、疑いの余地がないほどに「証明」する必要はありませんが、申立人の主張が確からしいと裁判官に信用してもらうことをいいます。
売掛金を保全するために仮差押えを申し立てるときは、その売掛金の発生原因となる取引に関する契約書や、仮差押えをしなければ債務者が財産を散逸させるおそれがある事情を具体的に記載した陳述書などを提出することになるでしょう。
提出先は、保全する債権に関する訴訟を管轄する地方裁判所、または仮差押えの対象となる財産を管轄する地方裁判所です。
(2)裁判官との面接
仮差押えの申立てをした際に、裁判官との面接日時を予約します。
窓口が混み合っている場合や、申立書を郵送した場合には、裁判官との面接は受付の2日後以降となってしまいます。
そのため、お急ぎの場合は午前中、できれば朝一番に申立書を窓口に持参した方が良いでしょう。東京地裁の場合、担当窓口は「民事第9部」、受付開始は午前8時30分からとなっています。
裁判官との面接では、申立書や疎明資料の内容に基づいて、保全すべき権利や保全の必要性について確認が行われます。
このとき、資料が不足していると補充等を指示されることもあります。したがって、申立書は正確に記入し、疎明資料も可能な限り充実したものを提出することが大切です。
特に問題がない場合は、裁判官からその場で担保金の額が告げられます。担保金の相場については、後ほど「4(3)」でご説明します。
(3)担保金の供託
仮差押決定が出る前提として、先に担保金を法務局に供託する必要があります。
供託は振込みによることも可能ですが、その場合はまず法務局に供託の申請を行い、法務局側の準備ができた後に振り込む必要があるので、タイムラグが発生します。
お急ぎの場合は、法務局へ現金を持参した方が良いでしょう。そのためには、担保金の相場を知り、早めに現金を用意しておく必要があります。
(4)仮差押決定
担保金を供託した後、供託正本の写しを裁判所に提出することで「仮差押決定」が出されます。
東京地裁の場合、供託正本の写しの提出が午後11時を過ぎると、仮差押決定が出るのが翌日になってしまいます。
申立書を提出してから仮差押決定が出るまでにかかる時間は、平均して3日~5日程度です。
しかし、朝一番に申立書を提出し、翌朝一番の裁判官面接を予約し、面接後はすぐに供託をして午前11時までに供託正本の写しを提出すれば、最短2日で仮差押決定が得られます。
早急に仮差押えを行いたい場合は、準備を整えた上で迅速に動くことが大切になります。
(5)仮差押決定の送達
仮差押決定が出たら、裁判所からまず第三債務者へ仮差押決定書が送達されます。第三債務者とは、保全する債権が売掛金の場合は売掛先、預金債権の場合は銀行のことです。保全する財産が不動産の場合は、法務局への登記の嘱託(依頼)も裁判所が行います。
その後に、裁判所から債務者に対して仮差押決定書が送達されます。
送達の順序が以上のように決められている理由は、債務者に先に送達すると財産を処分されるおそれがあるため、先に第三債務者や法務局へ仮差押決定が出たことを知らせる必要があるからです。
(6)第三債務者による陳述
第三債務者による陳述とは、債権者が保全する債権が実際にいくらあるのかを第三債務者が回答することをいいます。
例えば、保全する債権が売掛金の場合は、売掛先が債務者に対していくらの買掛金を抱えているのかを回答します。預金債権の場合は、銀行が債務者の預金口座にいくらの残高があるのかを回答します。
債権者は、これらの回答を見て、本差押えをした場合にいくらの金銭を回収できるのかを知ることができます。
もし、十分な金額がなかった場合には、債権者としては他の財産に対しても仮差押えを申し立てることも検討することになるでしょう。
なお、第三債務者による陳述をしてもらうためには、「第三債務者に対する陳述催告の申立書」を提出しておく必要があります。通常は仮差押えの申立書と一緒にこの申立書も提出します。
4、仮差押えにかかる費用
次に、仮差押えを行うためにどのくらいの費用がかかるのかについてご説明します。
(1)印紙代
仮差押えを申し立てる際には、裁判所の手数料がかかります。この手数料は、申立書に収入印紙を貼って提出することによって納めます。
金額は、申立書1通ごとに2,000円です。
ただし、当事者が複数の場合は「多い方の一方当事者の人数×2,000円」が必要です。例えば、債権者が2名で債務者が1名の場合には4,000円が必要となります。
なお、法律上は1通の申立書に複数の当事者を記載してもかまわないのですが、東京地裁では、迅速に手続きを進めるために原則として債権者・債務者各1名ずつに分けて申し立てることとされています。
(2)予納郵券
予納郵券とは、裁判所が書類の送達や連絡に使用する郵送費のことで、申立人が郵便切手を用意して申立書と一緒に提出します。
金額は、東京地裁の場合、債権者1名、第三債務者1名の場合は3,137円です。内訳は以下のとおりです。
1,099円×債務者数+(1,145円+290円+519円+84円)×第三債務者数
裁判所によって金額は異なりますので、事前に申立先の裁判所で確認しましょう。
(3)担保金
仮差押えを行うためにかかる費用で最も高額となるのが担保金です。
担保金の額は担当裁判官が決定しますが、明確な基準があるわけではなく、事案ごとに具体的な事情を考慮して決められます。
具体的には、保全すべき権利の種類や訴訟で勝訴する蓋然性、対象財産の性質などによって金額が異なってきます。
相場としては、対象財産が不動産の場合は評価額の15%~20%程度、債権の場合は債権額の20%~30%程度となっています。
例えば、500万円の売掛金を保全するために債務者が第三債務者に対して有する売掛金に対して仮差押えをする場合は、100万円~150万円程度の担保金が必要となります。
このように、担保金は高額となる可能性が高いのですが、相場に幅があることから、裁判官の交渉によって金額を抑えられることもあります。
担保金とは、仮差押えによって債務者に損害が発生した場合に賠償するための担保です。そのため、損害が発生する可能性が低いことを裁判官に説明できれば、担保金の額を抑えることも可能なのです。
裁判官と交渉して担保金を抑えるためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
5、仮差押えの後にやるべきこと
仮差押決定が出ても、まだ仮に相手方の財産が差し押さえられただけです。これから、債権を回収するために以下の手順を踏む必要があります。
(1)相手方から債権全額を受け取った場合は仮差押えを取り下げる
仮差押決定が出ると相手方は事業に支障を来す可能性が高いため、すぐに債権全額を支払ってくることも少なくありません。
この形で債権を回収できた場合は、仮差押えはもう必要なくなりますので、取り下げましょう。
担保金を裁判所から取り戻すためには、別途、担保取消手続きを行います。具体的には、担保の事由が消滅したこと、すなわち債権を回収したことを証明して、担保の取り消しを申し立てます。
第七十九条 担保を立てた者が担保の事由が消滅したことを証明したときは、裁判所は、申立てにより、担保の取消しの決定をしなければならない。
引用元:民事訴訟法
この申立てのときに、担保取消しに関する相手方の同意書を添付すれば、担保取消決定が行われ担保金を取り戻すことができます。同意書がない場合は、担保金が戻ってくるまでに2ヶ月程度かかることがあります。
そのため、できるかぎり相手方から債権を回収する際に、担保取消しの同意書も取得するようにしましょう。
(2)相手方が債権全額を支払わない場合は裁判をする
相手方が債権全額を支払わない場合には、本差押えをするために、まずその債権を請求する裁判をしなければなりません。
裁判で勝訴判決や和解といった債務名義を得たら、本差押えに進んで債権を回収できます。
ただ、仮差押えが行われたにもかかわらず早期に債務を支払おうとしない債務者は、経営状態が相当に悪化している可能性があります。
もし、債務者が破産をすると仮差押えは無効なってしまいます(破産法42条2項)ので、裁判をするなら可能な限り迅速に行うことが大切です。
(3)相手方が解放金を供託した場合も裁判をする
債務者は、仮差押え命令によって裁判所が定めた金額を法務局に供託することによって、仮差押えの解除を求めることができます。この、裁判所が定めた金額のことを「解放金」といいます。
第二十二条 仮差押命令においては、仮差押えの執行の停止を得るため、又は既にした仮差押えの執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めなければならない。
2 前項の金銭の供託は、仮差押命令を発した裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。
引用元:民事保全法
債務者としては、債権者が主張する債権の存在や金額に争いはあるが、仮差押えの状態が長期間続くと事業に支障をきたすため解除してもらいたいという場合に、解放金を供託することがあります。
この場合、債権者は債務者に対して有する債権を請求する裁判をして、勝訴判決や和解といった債務名義を得た上で、債務者が供託した解放金を差し押さえて債権を回収することになります。
6、仮差押えで債権を回収するためのポイント
ここまでご説明してきたように、仮差押えは「仮」の手続きでしかないとはいえ、債権を確実に回収するために重要なものですし、債務者にプレッシャーをかけることで早期の債権回収の効果も期待できるのです。
ここでは、より効果的に仮差押えを活用して債権を回収するためのポイントをご紹介します。
(1)預金口座や売掛金の仮差押えを検討する
前記「2(5)」でご説明したように、仮差押えでは対象財産に優先順位があり、不動産の仮差押えが可能な場合には、預金口座や売掛金の仮差押えは認められにくいです。
裏を返していえば、債務者にとっては預金口座や売掛金を仮差押えされると事業に対するダメージが大きいといえます。そのため、預金口座や売掛金を仮差押えできれば、債務者が早期に債権全額を支払ってくる可能性が高いのです。
不動産がある場合でも、調べてみれば抵当権などの担保がついていて、その不動産を仮差押えしたところで債権の保全はできないことも多いものです。このような事情を疎明すれば、預金口座や売掛金に対する仮差押えが認められる可能性も高くなります。
仮差押えをするには、相手方の財産状況をよく調べて、可能であれば預金口座や売掛金の仮差押えを検討しましょう。
(2)複数の財産を仮差押えする
仮差押えをするときは、複数の財産を対象とすることで、債権回収の効果がより高まります。
対象財産は1つに絞らなければならないという決まりはありません。例えば、相手方に対する売掛金を保全するために、相手方が他社Aに対する売掛金、他社Bに対する売掛金、C銀行に対する預金口座、というように複数の財産に対して仮差押えすることも可能です。
相手方が売掛先や取引銀行を把握していても、いくらの売掛金があるのかや、いくらの預金残高があるのかまでは把握できないことが多いでしょう。
そのため、できる限り複数の財産を仮差押えしておくことで、本差押えに進んだときに金銭を回収できる可能性が高まるのです。
また、相手方にかかるプレッシャーもそれだけ大きくなりますので、早期に債権全額を支払ってくることも期待できます。
(3)申立ての時期を調整する
3つめは、視点を変えて、仮差押えを行う時期を調整することで、より大きな効果を期待することもできます。
仮差押えは、「仮差押決定」が第三債務者(売掛先や銀行など)に送達された時点で効果が生じます。つまり、その時点における残高が仮差押えの対象財産となります。
ということは、できる限り残高が多い時期に仮差押えの効力を生じさせることで債務者に与えるプレッシャーが大きくなり、債権回収の効果も高まるといえます。
売掛金が入金される時期は様々ですが、月末の場合が多いでしょう。
前記「3(4)」でご説明したように、仮差押えを申し立ててから仮差押決定が出るまでに平均して3日~5日ほどかかります。その後、第三債務者に仮差押決定が送達されるまでに1日~2日かかるでしょう。
そのため、月末の4日~7日前に仮差押えを申し立てるのが最も効果的ということになるでしょう。
ただし、申立てが早すぎると売掛金の入金前に仮差押えの効果が生じてしまいますので、ご注意ください。
7、仮差押えによる債権回収をお考えなら弁護士へ相談を
仮差押えは、上手に活用すれば、債権回収において大きな効果を発揮するものです。
ただ、仮差押えの手続きは少し複雑ですし、効果を上げるためには相手方の財産調査や、申立てのタイミングをはかるなどのノウハウも重要です。
効果的に仮差押えを行うためには、弁護士へ相談することをおすすめします。
相談するだけでも様々なアドバイスが得られますが、依頼すれば複雑な手続きはすべて弁護士に任せられます。
財産調査も弁護士が行ってくれますし、最適なタイミングで申し立ててもらえるので、仮差押えによって最大限の債権回収効果が得られることでしょう。
まとめ
仮差押えは本差押えの前提となる手続きではあるものの、やり方次第では早期に債権を回収するために有効な手段となり得ることがお分かりいただけたでしょうか。
ぜひ、債権を回収する手段の一つとして検討していただければと思います。わからないことがあれば、お気軽にベリーベスト法律事務所の弁護士までご相談ください。
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