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銀行口座差押えによる債権回収|相手方の銀行口座がわからない場合の対応方法

2021年12月14日
銀行口座差押えによる債権回収|相手方の銀行口座がわからない場合の対応方法

銀行口座は、わたしたちの生活にはもちろん、企業の取引においてもなくてはならないものです。そのため通常は、売掛金等の債権回収が行われる際に、債務者(取引の相手方)の銀行口座の差押えが選択される場合が多いです。

しかし、実際に銀行口座を差し押さえる場合には、段階ごとに注意点があり、やり方を間違えてしまえば、「差押えが空振りになる」ということも十分にあり得ます。

そんなリスクを回避するためにも今回は、

  • 債権回収のために銀行口座を差し押さえるときの流れや注意点

等について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。ご参考になれば幸いです。

[nlink url=”https://best-legal.jp/foreclosure-47053/”]

1、銀行口座の差押えで債権回収を行うときの流れ

銀行口座の差押えを行うときの基本的な流れは、次の通りになります。

支払期限の到来

  ↓

債務名義の取得(民事訴訟・督促手続)

  ↓

執行文付与の申立て

  ↓

債権執行(差押え)の申立て

  ↓

債権差押命令

  ↓

銀行口座(預金債権)の差押え

  ↓

債権者による取立て(債権の回収)

(1)支払期限の到来と民事訴訟等の提起

銀行口座の差押えは、まず民事訴訟や支払督促といった裁判所の手続を申し立てるところからはじまるのが一般的です。銀行口座をはじめたとした、債務者の財産を差し押さえるためには、確定した判決等の「債務名義」とよばれる書類が必要となるからです。 

したがって、支払期限までに貸金の返済や売掛金の支払いがなかったからといって、すぐに相手方の銀行口座を差し押さえられるわけではありませんので、注意が必要です。

(2)強制執行の申立て

銀行口座を差し押さえるための強制執行の申立てには、以下の書類等が必要となります。

  • 申立書(差し押さえる銀行口座の情報が記載されたもの)
  • 債務名義の正本(確定判決の正本等)
  • 執行文(債務名義作成機関に別途申立てをして取得する)
  • 債務名義の送達証明書
  • 法人の資格証明書(法務局発行の登記事項証明書)または住民票・戸籍謄本等

なお、債権執行の申立ての際は、申立手数料(4000円分の収入印紙。債権者・債務者の人数による)および手続に用いる郵便切手(裁判所ごとに定められる種類・枚数)も納付する必要があります。

(3)債権差押命令から取立てまで

裁判所が差押えを認めた場合には、債権差押え命令が下されます。この差押えの可否に関する判断は、債務者には一切通知されずに行われます。差押えの可能性を債務者に事前に知られてしまえば、差押えが失敗に終わる可能性があるからです。

銀行口座(預貯金債権)の差押えの命令は、債務者本人だけでなく、差押えの対象となる債権の債務者(第三債務者:銀行口座の差押えの場合には、その口座のある銀行)にも差押命令が送付されます。

銀行口座が差し押さえられたときには、その口座の預貯金が「差押え口」という別の口座で管理されることになります。差押命令の送達から1週間が経過した場合には、債権者は差し押さえた預貯金を銀行から取り立てることが可能となります。

2、銀行口座を差押える際の注意点

銀行口座の差押えによって債権回収を図る際には、次の点に注意することが大切です。これらのことを配慮せずに差押えの申立てを行ったときには、差押えが失敗してしまう(債権を回収できない)可能性が高いといえるからです。

(1)差押えのタイミングを見極める 

銀行口座(預貯金)の差押えをする際には、「差押えをするタイミング」が非常に重要となります。なぜなら、預貯金の差押えの効果は、「差押えの時点の預貯金額」にしか及ばないからです。つまり、差押えの時点での預貯金額が0円というケースでは、差押えをしても債権は1円も回収できないということになるわけです。特に、銀行口座の差押えによる債権回収を検討するケースでは、すでに債務者の資金繰りがかなり悪化している場合もあり、そもそも銀行口座に十分な預貯金がないということも珍しくないため、債務者の銀行口座に入金があるタイミングを狙って差押えをすることが重要となります。

債務者側の銀行口座に入金がある(口座残高が一定額以上ある)可能性が高いのは次のようなタイミングです。

  • 給料日の直後
  • 主要取引の決済日
  • 毎月の月末日

(2)銀行口座を特定して申立てしなければならない

債務者の財産を差し押さえるためには、債権者(申立人)が「差押えの対象となる財産」をあらかじめ特定しておく必要があります。つまり、「○○円分の財産を差し押さえてください」というような申立てはできないということです。

債務者の銀行口座を差し押さえる際には、その口座のある銀行名だけでなく支店名まで特定する必要があるとされています(最高裁判所平成25年1月17日決定)。

継続的な取引関係のある取引先(債務者)であれば、口座のある銀行名・支店名まで把握している場合も多いと思いますが、実際にその口座に預貯金残高がある保証はありません。資金繰りに行き詰まった債務者が、取引先に知られていない銀行口座に預貯金を移しているケースも珍しくないからです。

(3)給料や年金の振込口座を差し押さえる場合の注意点

個人の債務者の銀行口座を差し押さえるときには、債務者の給料や年金等の振り込み口座をターゲットにする場合が多いといえます。しかし、この場合には、口座に預けられている全額を差押えできない場合があることに注意しておく必要があります。

給料や年金は、債務者が生活をしていく上で必須の資金源であるため、法律が差押えを制限・禁止しているからです。もっとも、銀行口座の差押えは、あくまでも預貯金債権の差押えであって、直接給料・年金を差し押さえるものではありません。法律の建前としては、給料として振り込まれた金銭であっても、振り込まれた時点からは預貯金債権として取り扱われるとされています。

しかし、給料の支払いは銀行振込によって行われるのが当たり前といえる現在においては、預貯金であっても「明らかに給料(年金)」とわかる部分については、差し押さえるべきではないという考え方も有力に主張されているところです。

実際にも、債務者側から差押禁止範囲変更の申立てがなされた場合には、裁判所の裁量によって預貯金の差押え可能額が制限(年金については差押えが認められないと判断)されることがあります。

3、債務者の銀行口座がわからない場合の対応方法2つ

上でも書いたように、銀行口座の差押えは、十分な預貯金残額のある銀行口座を特定できないことも珍しくありません。

そのような場合には、次の2つの方法によって、債務者の銀行口座に関する情報を取得することができます。

(1)財産開示手続

強制執行(金銭の回収を目的とする強制執行)において、債権者が債務者の財産を特定しなければならないという負担は、かなり重いものといえます。他人の財産状況を正確に把握するこということは(登記制度の完備されている不動産をのぞいては)、簡単なことではないからです。実際にも、差し押さえる財産の見当が付かないことを理由に、泣き寝入りしてしまう債権者は少なくありません。

しかし、このような状況は必ずしも公平といえず、財産開示手続は、そのような状況を是正するための手続であるといえます。 

特に、銀行口座の差押えに関連しては、令和2年から施行された新しい民事執行法において、銀行に対して口座情報の開示を求めることができるようなったことから、今までよりも銀行口座の差押えはやりやすくなったといえます。

①情報提供を求めることのできる銀行

この制度によって、債務者の銀行口座に関する情報の提供を求めることのできる銀行等は、下記のとおりです(民事執行法207条1項1号)

  • 銀行(日本国内にある外国銀行の支店を含む)
  • 信用金庫 信用金庫連合会
  • 労働金庫 労働金庫連合会
  • 信用協同組合 信用協同組合連合会 
  • 農業協同組合 農業協同組合連合会
  • 漁業協同組合、漁業協同組合連合会
  • 水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会
  • 農林中央金庫
  • 株式会社商工組合中央金庫
  • 独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構

②財産開示手続で得られる銀行口座の情報

財産開示手続を利用した場合には、その銀行に債務者の銀行口座が開設されているかどうかについて情報開示を受けることができますが、銀行口座が開設されている場合には、さらに、次の情報についても入手することができます(民事執行規則191条1項)。

  • 預貯金口座のある支店名
  • 預貯金の種別
  • 口座番号
  • 金額

③財産開示手続の申立て要件

財産開示手続(銀行からの情報開示手続)を利用する場合には、一定の条件を満たす必要がありますが、そのうち最も重要なのは、次のいずれかを満たさなければならないということです。

  • 申立ての6ヶ月以内に、強制執行を実施し、債権を完全に回収できなかった
  • 債権者が認知している財産を差し押さえても、十分な債権回収がなされないことを明らかにできた場合(強制執行の不奏功)

実際に、財産開示手続が利用されるケースの多くは、このままでは強制執行が不奏功となること理由に、強制執行に先だって行われるものです。不奏功の可能性があることは、債権者が自ら具体的に明らかにする必要がありますが、一般的には「不奏功とはいえない」という理由で財産開示が認められないというケースは少ないといわれています。しかし、法律の建前としては、「債権者自らが債務者の財産を調査する」ことが原則とされているため、裁判官から繰り返しの補正命令(疎明資料の出し直し等)を求められる場合もあるようです。

(2)弁護士会照会 

弁護士会照会は、弁護士が依頼業務を行う上で必要な情報提供を「弁護士会を通じて」情報を保持している機関・団体等(預貯金の場合は銀行等)に求める仕組みです。

弁護士会照会は、任意の制度なので、裁判所における財産開示手続のように厳格な要件(やその証明)を求められることもなく、機動的に利用しやすい点で大きな利点があります。

「任意の仕組み」であることから、「銀行が情報開示に応じてくれないのでは?」という不安を持つ人もいるかと思いますが、弁護士(会)は社会的な信頼も高く、弁護士自身にも厳しい守秘義務が課されていることから、照会に応じてもらえるケースも少なくありません。

まとめ

ここまで解説してきたように、債務者の銀行口座(預貯金)を差し押さえることで債権回収を図る方法は、簡単そうにみえて、実はハードルの多い方法といえます。 

弁護士にご依頼いただければ、それぞれのケースに応じて、臨機応変に最善の方法で債権回収を図ることができます。特に、弁護士会照会制度を利用することで、簡易迅速に債務者の口座情報を取得できることは、低コストかつ確実に債権回収を図る上で大きなメリットといえます。

取引先等からの未払い債権を回収したいとお考えのときには、是非とも当事務所までご相談ください。

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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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