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マネーロンダリングとは?企業が知っておくべき7つのこと

2022年8月9日
マネーロンダリングとは?企業が知っておくべき7つのこと

マネーロンダリング(Money Laundering)とは、犯罪による収益として得たお金の出所や真の所有者が分からないようにする行為のことです。
日本では「資金洗浄」や「マネロン」とも呼ばれています。

マネーロンダリングは、正当な取引や合法的なビジネスへの資金提供を装って行われることもあるため、金融機関のみならず、あらゆる企業が関与してしまう可能性があります。

企業がマネーロンダリングに関わってしまうと、取引先や金融機関との

  • 取引停止
  • 風評被害

などのリスクによって事業に多大な影響を受けてしまいかねません。

そのため、企業においても、マネーロンダリングに関する正しい知識を持ち、巻き込まれることを水際で防止するための対策をとっておくことが極めて重要です。

そこで今回は、

  • マネーロンダリングとは
  • マネーロンダリングに該当する行為
  • マネーロンダリングに対して企業がやるべき対策

などについて、弁護士が分かりやすく解説していきます。

この記事が、

  • マネーロンダリングとは何か
  • 巻き込まれないためにはどうすればよいのか

などで悩んでいる企業の担当者の方等の手助けとなれば幸いです。

犯罪収益移転防止法については以下の関連記事をご覧ください。

[nlink url=”https://best-legal.jp/crime-profit-transfer-prevention-law-22619/”]

1、マネーロンダリング(資金洗浄)とは

マネーロンダリング(資金洗浄)とは

まずは、マネーロンダリングとは、どのようなものなのかを詳しくみていきましょう。

(1)定義

マネーロンダリングという言葉は、法律用語ではありませんが、警察庁のホームページでは、次のように定義されています。

マネー・ローンダリング(Money Laundering:資金洗浄)とは、一般に、犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関等による収益の発見や検挙等を逃れようとする行為を言います。

引用元:警察庁|マネー・ローンダリング対策の沿革

金融庁のホームページでは、少し異なる表現が用いられていますが、意味するところは同じです。

つまり、犯罪によって得た収益を、そうでないお金であるかのように見せかけるために、何らかの手段で「洗浄」するという点が、マネーロンダリングの本質であるといえます。

(2)仕組み

マネーロンダリングの手口は多岐にわたるため、非常に複雑な仕組みとなっています。
しかし、その構造を大きく分けると、次の3つのステップに分類できます。

①プレイスメント(Placement)

プレイスメントとは、犯罪収益を健全な金融システムに入金する段階です。
つまり、犯罪で得た現金を、別の形に変えるプロセスに当たります。

分かりやすいのは銀行口座に預金することですが、それでは捜査機関等に発覚しやすいため、以下のような手口が用いられることが多いです。

  • 不動産を購入する
  • 外貨や暗号資産(仮想通貨)に換える
  • 株や投資信託に投資する
  • 架空取引による利益として計上する
  • ギャンブルに使う
  • 負債を返済する

他にも、プレイスメントの手口は無数にあります。

②レイヤリング(Layering)

レイヤリングとは、犯罪収益の出所を分からないようにする段階です。
プレイスメントだけでは、まだ出所が容易に判明する可能性が高いため、資金を次々に移転させて、経路を複雑化するプロセスです。

特に、複数の国や地域にまたがる資金の移転は、追跡することが難しいので、海外の企業や金融商品などに投資されるケースが多いです。

③インテグレーション(Integration)

インテグレーションとは、洗浄された資金を回収する段階です。

この段階でも、不動産の売却や芸術作品の売却など、手口は無数にあります。

以上の3ステップを簡単にまとめると、例えば、犯罪で得た現金で、まず不動産を購入します(プレイスメント)。
このとき支払った代金は汚れていますが、その不動産を売却して得る資金は、きれいなものとなります(インテグレーション)。

この2ステップだけでは、資金の出所が容易に判明してしまうので、レイヤリングで経路を複雑化するのです。
資金の移転経路が複雑化すればするほど、その資金は洗浄されることになります。

(3)該当する行為

マネーロンダリングに該当する行為(手口)は無数にありますが、企業として注意すべき行為は、以下の3つです。
これらの行為は、「組織的犯罪処罰法」で規制されており、処罰の対象にもされています。

①法人等の事業経営を支配すること

犯罪収益等で株主等の地位を取得し、その法人の経営を支配するために、経営権を行使するようなケースがこれに当たります。

②犯罪収益等を隠匿すること

犯罪収益等を取得したことや処分したことについて事実を仮装したり、犯罪収益等を隠したり、その発生原因を隠すようなケースがこれに当たります。

③犯罪収益等を収受すること

犯罪収益であることを知って、その財産を受け取る行為も規制されています。

2、マネーロンダリングに対する規制が強化されている理由

マネーロンダリングに対する規制が強化されている理由

なぜマネーロンダリングに対する規制が強化されているのかというと、終局的には

  • 犯罪を防止し、安全で平穏な国民生活を守るため
  • 経済活動の健全な発展を促進するため

の2点です。

マネーロンダリングを放置していると、犯罪収益がさらなる犯罪のための活動や、犯罪組織を維持・強化することに使われてしまいます。
そうすると、組織的かつ大規模な犯罪も発生しやすくなりますし、テロリズムが発生するおそれもあります。

さらには、犯罪組織が事業活動に不当な干渉を行うことによって、社会の経済活動にも重大な悪影響が及んでしまう可能性があります。
そのため、犯罪収益の流通や洗浄を阻止する必要性があります。

また、日本国内で、マネーロンダリングに対する規制が強化されている理由として、近年では、国際的なマネロン対策が進んでおり、日本に対しても規制強化が強く求められていることも挙げられます。

そこで次に、世界におけるマネロン対策の動きをご紹介した上で、国内での動きをご紹介します。

(1)世界における動き

世界では、以下の流れでマネーロンダリング対策が進められてきています。

時期

具体的な動き

1988年12月

・国連で麻薬新条約を採択。

・薬物犯罪による収益の隠匿等を犯罪化することや、それを剝奪する制度の構築が締約国に義務付けられた。

1989年7月

・マネーロンダリング対策への国際的な協力を強化するためFATF(金融活動作業部会)が設立された。

1990年4月

・FATFがマネーロンダリング対策の基準として「40の勧告」を策定。

・麻薬新条約の批准、マネーロンダリングを取り締まるための国内法の整備、金融機関による顧客の本人確認、疑わしい取引の報告の義務づけ等が提言された。

1996年6月

・FATFが「40の勧告」を一部改訂。

・前提犯罪を薬物犯罪だけでなく、重大犯罪に拡大すべきとされた。

1998年5月

・バーミンガム・サミットの参加国がFIU(資金情報機関)を設置することに合意。

・各国においてFIUを設置し、マネーロンダリング情報を一元的に集約した上で整理・分析し、捜査機関等に提供することとされた。

1999年12月

・国連で「テロ資金供与防止条約」を採択。

・テロ資金の提供や収集行為を犯罪化すること、テロ資金を没収すること、金融機関による本人確認や疑わしい取引の届出等の措置が締約国に求められた。

2003年6月

・FATFが「40の勧告」を改訂。

・非金融業者や職業的専門家に対しても勧告を適用することが提言された。

2012年2月

・FATFがさらに「40の勧告」を改訂。

・大量破壊兵器の拡散や公務員の汚職等にも対処することが提言された。

  2013年6月

 

・ロック・アーン・サミットの参加国が「G8行動計画原則」に合意。

・マネーロンダリングや租税回避のために法人等が利用されていることから、法人及び法的取り決めの悪用を防止するための措置が求められた。

2015年6月

・FATFが「仮想通貨交換業の規制に関するガイダンス」を公表。

・仮想通貨交換業者等に対し、登録・免許制を課すことや、顧客の本人確認、疑わしい取引の届出、記録の保存を義務化することなどが求められた。

2018年10月

・FATFが勧告を改訂。

・仮想通貨に関連するサービス業者に対し、マネロン・テロ資金供与規制を課すべきことが提言された。

時代が進むにつれて、犯罪の種類や内容、金融システムが変容し、それに合わせてマネーロンダリング対策も拡充・強化されつつあります。

(2)日本での動き

日本におけるマネーロンダリング対策の動きは、以下のとおりです。

時期

具体的な動き

1990年6月

・大蔵省銀行局長から金融団体に対して「顧客の本人確認実施を要請する旨の通達」を発出。

1992年7月

・「麻薬特例法」が施行された。

・マネーロンダリングが犯罪化された。

・薬物犯罪収益に関する疑わしい取引について、金融機関等による届出制度が創設された。

2000年2月

・組織的犯罪処罰法が施行された。

・前提犯罪を薬物犯罪だけでなく重大犯罪に拡大された。

・FIUを金融監督庁に置き、庁内に「特定金融情報室」が設置された。

2002年7月

・テロ資金提供処罰法が施行された。

・テロ資金提供等の行為が犯罪化された。

・組織的犯罪処罰法が一部改正された。

・前提犯罪にテロ資金提供等の罪が追加された。

・テロ資金の疑いがある財産に関する取引が、疑わしい取引の届出の対象とされた。

2003年1月

・「金融機関等本人確認法」が施行された。

・金融機関が特定取引を行う際に、顧客の素性を公的証明書で確認すべきことが義務づけられた。

2004年12月

・「金融機関等本人確認法」が改正された。

・預貯金通帳等の譲受・譲渡およびその勧誘・誘引行為等が犯罪化された。

・「テロの未然防止に関する行動計画」が策定された。

・入国審査における外国人の指紋採取の義務づけなどが提言された。

2005年11月

・我が国のFIUが金融庁から警察庁に移管された。

 2008年3月

・「犯罪収益移転防止法」が施行された。

・これに伴い、「金融機関等本人確認法」は廃止された。

・金融機関や特定取引業者等に対し、特定取引において本人確認をすることや、ハイリスクな取引においては本人確認をより厳格に行うこと、確認記録や取引記録を作成・保管することなどが義務づけられた。

2008年10月

・FATFによる相互審査(第3次対日相互審査)の結果が公表された。

・日本は非常に厳しい評価を受けた。

 2013年4月

・犯罪収益移転防止法の改正法が全面施行された。

・振り込め詐欺等にも対応するため、罰則の強化などが行われた。

 2013年6月

・「法人及び法的取極めの悪用を防止するための日本の行動計画」が策定された。

・「G8行動計画原則」を踏まえて、リスク評価を行うこと等が盛り込まれた。

2016年10月

・犯罪収益移転防止法の再改正法が全面施行された。

・FATFの勧告の水準を満たすための改正が行われた。

 2017年4月

・犯罪収益移転防止法の再々改正法が全面施行された。

・特定事業者に仮想通貨交換業者が追加された。

・資金決済法の改正法が施行された。

・仮想通貨交換業者に対する登録制の規制等が導入された。

 2017年7月

・組織的犯罪処罰法の改正法が施行された。

・犯罪収益の前提犯罪が拡大された。

 2018年2月

・金融庁が「マネロンガイドライン」を策定・公表した。

・金融機関等に求められるマネーロンダリング防止のための対応策がとりまとめられた。

 2018年7月

・「特定複合観光施設区域整備法」が成立した。

・2019年4月以降、段階的に施行されている。

・特定事業者にカジノ事業者が追加された。

 2021年2月

・「マネロンガイドライン」が改正された。

・リスクベースアプローチの徹底が求められた。

 2021年8月

・FATFによる相互審査(第4次対日相互審査)の結果が公表された。

・日本は再び非常に厳しい評価を受けた。

このように、日本でも、社会情勢の変化を踏まえて、立法や法改正を重ねて対応していますが、FATFによる対日相互審査では厳しい評価を受けており、さらなる規制の強化が求められているところです。

3、マネーロンダリングで注意が必要な「犯罪収益」と「前提犯罪」

マネーロンダリングで注意が必要な「犯罪収益」と「前提犯罪」

マネーロンダリングに関連する法律や政府のガイドライン等を調べていると、「犯罪収益」「前提犯罪」という言葉がよく出てきます。
これらの言葉の意味を、正確に確認しておきましょう。

(1)犯罪収益とは

既にご説明したように、マネーロンダリングとは、「犯罪収益」を洗浄する行為を規制するものです。

犯罪収益とは、その名のとおり、犯罪によって得られる経済的利益のことです。
ただ、マネーロンダリングで規制の対象となる「犯罪収益」は、あらゆる犯罪を対象とするものではなく、一定の「前提犯罪」に限られています。

したがって、何が犯罪収益に当たるかを知るためには、前提犯罪の種類を知っておく必要があります。

(2)前提犯罪とは

マネーロンダリングの規制の対象となる「前提犯罪」は、極めて多岐にわたりますが、ひとことで言うと、不法な収益を生み出す犯罪ということができます。

具体的には、組織的犯罪処罰法の別表と麻薬特例法に掲げられていますが、その数は刑法犯とその他の特別法犯を併せて200以上にのぼります。

実際に検挙されることが多い罪名でいうと、

  • 窃盗罪
  • 詐欺罪
  • 出資法違反
  • 貸金業法違反
  • 売春防止法違反
  • わいせつ図画頒布等罪

などが挙げられます。

企業の経済活動に関連する犯罪としては、法人税法をはじめとする

  • 各種税法違反
  • 背任罪
  • 横領罪

などに、特に注意すべきでしょう。

ただ、反社会勢力と関わると、多岐にわたる犯罪による収益を受け取ってしまうおそれもあります。

したがって、企業がマネーロンダリング対策を検討する際には、前提犯罪かどうかを問わず、不法な収益ではないかと疑われる金品は受け取らないという姿勢が必要になると考えられます。

4、マネーロンダリングについて、企業が知っておくべき法律等

マネーロンダリングについて、企業が知っておくべき法律等

マネーロンダリングの規制に関する法律等は非常に数多くありますが、企業が最低限知っておくべきものとして、以下の3つが挙げられます。

(1)組織的犯罪処罰法

組織犯罪処罰法(正式名称は「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」)は、組織ぐるみで行われた犯罪を重く処罰することで、国民の平穏で健全な社会生活を守るための法律です。

また、犯罪収益が組織的犯行を助長したり、事業活動への不当な干渉によって、経済活動に重大な悪影響を及ぼすことから、

  • 犯罪収益の隠匿
  • 収受
  • 犯罪収益を使って法人等の事業経営の支配を目的とする行為

などの処罰も定められています。

さらには、犯罪収益にかかる財産の没収や追徴に関する特例等も規定されています。

企業としては、たとえ商品やサービス代金としてであっても、相手方から差し出される金銭が犯罪収益であることを知りながら受け取ると同法違反となりますので、注意が必要です。

(2)犯罪収益移転防止法

犯罪収益移転防止法(正式名称は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」)は、特に、犯罪収益が組織的な犯罪を助長するために使用されたり、事業活動に使われることによって、健全な経済活動に重大な悪影響を与えることを重視して、特定事業者に対して、取引時の

  • 本人特定事項の確認
  • 取引記録等の保存
  • 疑わしい取引の届出

などの義務を定めた法律です。

この法律で規制の対象とされる「特定事業者」は多岐にわたりますが、主な業種は以下のとおりです。

  • 銀行をはじめとする金融機関等
  • 貸金業者
  • ファイナンスリース事業者
  • クレジットカード事業者
  • 保険会社
  • 暗号資産交換業者
  • 商品先物取引業者
  • カジノ事業者
  • 宅地建物取引業者
  • 宝石・貴金属等取扱事業者
  • 郵便物受取サービス事業者
  • 電話受付代行業者
  • 電話転送サービス事業者
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 行政書士
  • 公認会計士
  • 税理士

まだ他にもありますので、より詳しくは同法第2条2項でご確認ください。

自社が特定事業者に該当する場合は、顧客との取引時に、本人特定事項を確認することや、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出などを徹底しなければ、マネーロンダリングに巻き込まれてしまうおそれがあります。

特定事業者に該当しない企業でも、金融機関からの確認に対して、適切に応じなかったり、反社会的勢力との取引があるような場合には、金融機関から取引を停止されてしまうことがあります。

そうなると、資金面の問題や風評被害などによって、事業の継続に支障をきたすおそれがあるので注意が必要です。

(3)マネロンガイドライン

マネロンガイドライン(正式名称は、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン)は、金融庁から2018年2月に公表されました。

その後、金融機関等へのモニタリングを通じて判明した事情を踏まえて、より実効的な体制整備を徹底するため、2021年2月に改正されました。

本ガイドラインでは、「リスクベース・アプローチ」という手法が採用されています。
リスクベース・アプローチとは、リスクを特定・評価した上で、そのリスクの高低に見合った対策を講じることをいいます。

具体的には、金融機関等が、

  • 自社の商品やサービス
  • 取引形態
  • 取引先の国や地域
  • 顧客の属性

などのリスクを検証し、マネロン・テロ資金供与のリスクを「特定」します。
そして、当該リスクの自社への影響度等を「評価」します。

このようにして、特定・評価されたリスクを前提として、金融機関等は、以下のようなリスク低減措置を講じるべきこととされています。

  1. 顧客の属性や取引内容等を調査し、講じるべき低減措置を判断・実行すること
  2. 取引そのものに注目し、異常取引等を検知すること
  3. 顧客管理の状況や結果等の記録を保存すること
  4. 疑わしい取引があった場合は、行政庁に届け出ること
  5. データを適切に管理し、ITシステムを有効に活用すること

マネロンガイドラインの基本的な内容を知っておくことは、金融機関以外の企業にとっても大切です。
なぜなら、金融機関から「疑わしい」と判断されると、取引を停止されるおそれがあるからです。

5、マネーロンダリングで成立しうる犯罪と刑罰

マネーロンダリングで成立しうる犯罪と刑罰

マネーロンダリングに関わると犯罪が成立し、処罰の対象となることがあります。
そこで、マネーロンダリングでどのような犯罪が成立するのか、どれくらいの刑罰を科せられるのかを知っておきましょう。

(1)組織的犯罪処罰法違反の罪

マネーロンダリングで成立しうる「組織的犯罪処罰法の罪」は、以下の3種類です。

罪名・罰条

規制される行為

刑罰

法人等事業経営支配罪

(第9条)

犯罪収益等で株主等の地位を取得し、その法人の経営を支配する目的で役員の変更等をさせること等

5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方

犯罪収益等隠匿罪

(第10条)

犯罪収益等の取得や処分の事実を仮装すること、犯罪収益等を隠すこと、犯罪収益の発生原因を仮装すること等

5年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方

犯罪収益等収受罪

(第11条)

犯罪収益等であることを知りながら、その金品を受け取ること

3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方

(2)犯罪収益移転防止法違反の罪

マネーロンダリングに関わることで、「犯罪収益移転防止法違反の罪」に問われることもあります。主な罪名と刑罰は、以下のとおりです。

罪名・罰条

規制される行為

刑罰

報告義務違反等

(第26条)

行政庁等への報告や資料の提出を拒むこと、虚偽の報告や資料提出を行うこと、立ち入り検査を妨害すること等

1年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方

本人特定事項等を偽る罪

(第27条)

特定事業者が、取引時確認を行う際に顧客等または代表者等の本人特定事項を偽ること

1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方

預貯金通帳等の譲渡等の罪

(第28条)

他人になりすまして特定事業者と預貯金契約を結ぶこと、預貯金通帳やキャッシュカードを正当な理由なく譲渡、または譲受すること等

1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方

為替取引カード等の譲渡等の罪

(第29条)

為替取引にかかる受取用カードや受取に必要な情報等について、第28条と同様の行為をすること

1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方

暗号資産交換用情報の譲渡等の罪

(第30条)

暗号資産交換契約に関して、第28条と同様の行為をすること

1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方

6、マネーロンダリングに対して企業がやるべき対策

マネーロンダリングに対して企業がやるべき対策

マネーロンダリングに巻き込まれないために、企業がやるべきことは数多くありますが、骨組みを示すと、以下のようになります。

(1)マネロンに関する知識を深める

まずは、マネーロンダリングとはどういうものかを正確かつ詳しく知ることが必要です。

マネーロンダリングに関する情報は、次々に新しいものが発表されるので、インターネットで確認するとよいでしょう。

JAFIC(警察庁 犯罪収益移転防止対策室)のホームページは、更新頻度が高いので、チェックすることをおすすめします。

参考:JAFICトップページ

(2)自社におけるリスクを洗い出す

具体的なマネロン対策としては、まず、自社の事業において、どのような場面で、どういったリスクが発生しやすいのかを洗い出します。

重点的に検討すべき事項は、特定事業者か否かによって大きく異なりますし、業種によっても異なります。自社の業種や事業内容、取引先や社内の状況に応じて、リスクを洗い出しましょう。

(3)リスクを社内に周知する

リスクを洗い出したら、そのリスクを社内全体に周知することが不可欠です。

経営者や役員のみがリスクを知っていても、マネーロンダリングを防止することはできません。
必ず、現場担当者もリスクを明確に理解できるように、周知を徹底しましょう。

(4)現場担当者が「疑わしい取引」を検知できるようにする

実際に「疑わしい取引」に接する可能性があるのは、現場担当者です。
したがって、現場担当者が、疑わしい取引を検知できるようにするための仕組みを構築する必要があります。

取引先の属性や取引の内容などについて、どういった事項を、どのような資料で確認すべきかについて、社内ルールを策定するなど、さまざまな対策が考えられます。

7、マネーロンダリング対策は弁護士に相談を

マネーロンダリング対策は弁護士に相談を

マネーロンダリングに関する法律やガイドライン等の内容は、非常に複雑かつ難解です。正確に把握するだけでも一苦労することでしょう。

さらに、自社に合ったマネロン対策として、具体的に何をすればよいのかが分からないことも多いと思います。

そんなときは、企業法務の経験が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

マネーロンダリングの基本的なことについてレクチャーを受けた上で、具体的な対策についてもアドバイスが得られます。安心して事業活動を継続できるようになることでしょう。

まとめ

近年では、犯罪の中でも経済犯罪が増え、手口も巧妙化、組織化が進んでいます。
特定事業者以外の一般企業でも、犯罪者集団からマネーロンダリングに利用されてしまう可能性があります。

このような状況で、健全な事業活動を継続していくためには、一般企業も、マネーロンダリング対策を推し進めていく必要があるでしょう。

分からないことや不安なことがある場合は、企業法務の経験が豊富な弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

[nlink url=”https://best-legal.jp/compliance-meaning-26636/”]

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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