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不当労働行為とは?具体例一覧と弁護士に相談するメリットを解説

2023年12月14日
不当労働行為とは?具体例一覧と弁護士に相談するメリットを解説

不当労働行為とは、労働者の団結権・団体交渉権・団体行動権を保障する目的で制定されている法規制のことです。
労働者の権利・自由を保護するために、使用者・企業側は不当労働行為に該当する行為類型に及ぶことを禁止されています。

特に、団体交渉を申し入れられた場面など、労働者と企業側の利害が対立する状況では、企業側の対抗措置が不当労働行為に抵触するリスクがあるため注意が必要です。

そこで今回は、団体交渉などを契機として不当労働行為問題を抱えるに至った経営者の方のために、以下の事項について分かりやすく解説します。

  • 不当労働行為とは
  • 不当労働行為とパワハラの違い
  • 不当労働行為の具体例一覧
  • 不当労働行為について争いが生じたときに弁護士へ相談するメリット

不当労働行為に抵触するとされると、状況次第ではさまざまなペナルティが科されかねません。

紛争長期化を避けて、かつ、将来的に労使トラブルが生じない環境整備をするために、速やかに企業法務に強い弁護士までご相談ください。

1.  不当労働行為とは

不当労働行為とは、日本国憲法28条及び労働組合法に規定される労働者の団結権・団体交渉権・団体行動権を保護するための制度です。

経営者や企業側の一定行為を「不当労働行為」として禁止することによって、労働者が自分たちの権利・利益・自由を守るために団結・行動することを保障しています。

不当労働行為の内容は労働基準法第7条各号において規定されています。

2.  不当労働行為とパワハラの違い

組織の権力構造の中で行われる違法行為として「パワーハラスメント」が存在します。

パワーハラスメントとは、以下3つの要件全てを満たすもののことです(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第30条の2第1項)。

  1. 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
  3. 労働者の就業環境が害されること

つまり、パワーハラスメントは、当該従業員が労働組合に加入しているか否かや、労働組合の団体交渉権の行使に関連した場面か否かなどとは一切関係なく発生する事象だということです。
また、状況次第では、パワーハラスメントと不当労働行為の両方が同時に問題になる可能性もあります。

3.  不当労働行為の具体例一覧

労働組合法第7条各号では、不当労働行為に該当する行為類型として以下のものを掲げています。

  • 不利益取扱い
  • 黄犬契約
  • 団交拒否
  • 不誠実団交
  • 支配介入
  • 組合間差別
  • 経費援助
  • 報復的不利益取扱い

(1)不利益取扱い

不利益取扱いとは、「労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、もしくは、これを結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたことを理由に、当該労働者を解雇したり、その他の不利益な取扱いをすること」です(労働組合法第7条第1号前段)。

本来、労働組合に加入することなど、ここに列挙されている事由は、すべて労働者が自由に決定できます。

しかし、企業側が不利益取扱いを実施する可能性があるとなると、従業員が組合活動に従事することに恐怖心を抱きかねません。

そこで、労働組合法では不利益取扱いを不当労働行為の1つに掲げ、従業員への萎縮作用の回避・軽減を目指しています。

なお、不利益扱いの具体例は以下の通りです。

  • 労働組合に加入したことを理由に減給・降格処分を下した
  • 団体交渉に参加した従業員を懲戒解雇した
  • 労働組合の活動としてビラ配りをした従業員を「職場の規律を乱した」という別の理由付けで戒告処分にした

(2)黄犬契約

黄犬契約とは、「労働組合に加入しないこと、労働組合から脱退することを雇用条件に掲げる契約」を意味します(労働組合法第7条第1号後段)。

黄犬契約の具体例は以下の通りです。

  • 採用面接の際、求職者に加入済みの労働組合から脱退するように迫った
  • 雇用契約を締結するときに、労働組合に加入しない旨の誓約書にサインをさせた

(3)団交拒否

団交拒否とは、「正当な理由がない状態なのに、使用者が雇用する労働者の代表者との団体交渉を拒否すること」です(労働組合法第7条第2号)。

団体交渉とは、「労働組合の代表者や労働組合の委任を受けた者が、労働組合や組合員のために、使用者や企業との間で、労働協約の締結その他の労働契約に関する事項について交渉をすること」を指します(日本国憲法第28条労働組合法第6条)。

団体交渉は法律上認められた労働者側の権利なので、この権利行使を阻害するような団交拒否は不当労働行為として規制されます。

なお、原則として拒絶できない労働者からの団体交渉ですが、以下のような事情が存在する場合には、例外的に団交拒否をしても不当労働行為とは扱われません。

  • 複数回の団体交渉を経ても和解に至っていない場合
  • 平和な団体交渉を期待できない場合
  • 子会社従業員や関連会社従業員から団体交渉を申し入れられた場合
  • 弁護士を代理人として参加させることを労働組合側が拒否した場合
  • 感染症対策などの正当な理由がある場合
  • 交渉内容が任意的団交事項に該当する場合

(4)不誠実団交

形式的には団体交渉に応じている外形があったとしても、実質的には団体交渉を拒否したと評価できる事案は、「不誠実団交」として不当労働行為に該当します(労働組合法第7条第2号)。

例えば、団体交渉開催日に議題の決定権を有する担当者や会社代表が出席しない場合や、「スケジュールが合わない」などを理由にいつまでも団交の開催日を先延ばしにする場合には、正当な理由なく団体交渉を拒絶していると評価できるので、不当労働行為として禁止対象になるでしょう。

(5)支配介入

支配介入とは、「労働者が労働組合を結成・運営することを支配すること、労働組合の結成・運営に対して介入すること」です(労働組合法第7条3号)。

例えば、「労働組合が団体交渉に踏み出した場合に参加従業員に対して減給処分を下す」などと不利益な事実を告知し、労働組合の健全な活動を阻害するケースが不当労働行為として禁止される支配介入に該当します。

なお、支配介入の主体は会社代表者だけに限られません。
支配・介入行為によって労働組合の結成や運営などに悪影響を与え得る権限を有する担当者による支配・介入も不当労働行為に該当する場合があるのでご注意ください。

(6)組合間差別

組合間差別とは、「複数の労働組合が存在する場合に、特定の労働組合だけを優遇したり、逆に、不利益な待遇をすること」です(労働組合法第7条第3号)。

例えば、特定の労働組合だけを優遇すると、その他の労働組合が弱体化しかねません。
これでは、使用者側に都合の良い労働組合だけが肩入れされる形になり、従業員が対等な立場で会社側と交渉できなくなってしまいます。

また、社内の労働組合と外部の労働組合を差別的に取り扱うことも不当労働行為の組合間差別に該当すると考えられます。
労働組合は常に労働者の利益を代表する組織である以上、社内・社外は関係なく、常に平等な取扱いをしなければいけません。

(7)経費援助

経費援助とは、「労働組合の運営のための経費の支払いについて会社側が経理上の援助を与えること」です(労働組合法第7条第3号)。

そもそも、労働組合は従業員を代表して会社側と対等な立場から諸条件の交渉の役割を担う機関です。
会社から従業員にとって有利な条件等を引き出すためには、ある程度の独立性を備える必要があります。

しかし、労働組合が会社から経理上の援助を受けてしまうと、「経済的援助を受けているから会社側に気を遣わなければいけない」「労働者の権利・利益を最大化するための交渉をしにくくなる」などのデメリットが生じかねません。

そのため、経理援助は不当労働行為の1つとして禁止されています。

なお、社内の1室を労働組合に貸すこと、団体交渉に参加中の組合員の給与を保証することなど、最低限のフォローは経費援助には該当しません。

(8)報復的不利益取扱い

報復的不利益取扱いとは、「労働者が労働委員会や中央労働委員会に対して不当労働行為の救済申立てをしたり、審査請求や審尋、和解などの場面で証拠の提示や発言をしたことを理由に、解雇などの不利益な取扱いをすること」です(労働組合法第7条第4号)。

そもそも、救済申立てや審査請求は、労働者が自分の権利を保全するために認められた法的制度です。
そして、不利益取扱いを怖れてこれらの法的制度の活用を躊躇するようになると、労働者は使用者側に言われるがままの劣悪な就労条件を強いられかねません。

したがって、労働者が自らの権利・利益を守るために不安なくこれらの法的手続きを利用できるようにするために、報復的不利益取扱いは不当労働行為として禁止されるに至っています。

4. 不当労働行為について争いが生じたときに弁護士へ相談するメリット

企業側の行為が不当労働行為に該当すると争われたときは、労働紛争に強い弁護士へ相談することをおすすめします。

なぜなら、弁護士の助けを借りることで以下4点のメリットを得られるからです。

  1. 救済申立てに対応してくれる
  2. 訴訟提起に対応してくれる
  3. 団体交渉に対応してくれる
  4. 不当労働行為問題が生じないような環境整備に向けてアドバイスをしてくれる

(1)救済申立てに対応してくれる

企業側の不当労働行為が行われた場合、労働組合や労働者は、労働委員会に対して救済申立てをすることができます。

つまり、企業は、不当労働行為に関する救済申立て手続きに対して、答弁書を準備したり、審尋に向けた対策に力を入れる必要があるということです。

弁護士は、「不当労働行為には該当しないこと」などを労働委員会に説明するための資料等を用意してくれるでしょう。

(2)訴訟提起に対応してくれる

不当労働行為の内容次第では、労働組合や労働者が民事訴訟を提起して賠償請求をする可能性も否定できません。

救済申立てと同様、口頭弁論期日に向けた書面・証人の準備などに時間を割く必要があるので、労働紛争の経験豊富な弁護士の助力が不可欠です。

(3)団体交渉に対応してくれる

不当労働行為は団体交渉の場面で問題になることが少なくありません。

弁護士は、団体交渉開催日に同席して説明役を担ってくれたり、ICレコーダーやスマートフォンの録画機能等を通じて交渉が適切に行われていることを示す証拠を収集してくれたりするでしょう。

(4)不当労働行為問題が生じないような環境整備に向けてアドバイスをしてくれる

労働紛争に強い弁護士に相談をすれば、不当労働行為をめぐるトラブルが生じないような安定的な企業経営基盤を作るためのノウハウを提供してくれます。

例えば、杜撰な勤怠管理が原因で賃金問題について団体交渉を申し入れられたとき、会社側に不都合だという理由で団交期日を先延ばしにすると不当労働行為を指摘されかねません。

弁護士は、勤怠管理システムを見直したり、適正な業務配分・人員配置などについてアドバイスを提供してくれるので、そもそも団体交渉が生じないような企業体質を醸成してくれるでしょう。

まとめ

不当労働行為は、企業側・使用者を縛るルールです。使用者側について予め一定範囲の行為を制限することによって、労働者の権利・利益を守ろうとしています。

したがって、企業側としては、不当労働行為の指摘を受けないような状況を作り立つことが何より重要です。

当サイトでは労働紛争や労働組合対策の実績豊富な弁護士を多数掲載中なので、実績や年齢などを総合的に考慮して、信頼できそうな法律事務所までお問い合わせください。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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