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労働基準監督署の調査とは?流れや弁護士に相談するメリットを解説
労働基準監督署の調査(臨検監督)はさまざまなシチュエーションで実施されますが、どのような事情があったとしても、会社側は労働基準監督署の調査を拒絶することはできません。
特に、企業側に労働基準法違反などの兆候が見られる場合には、労働基準監督署の調査に対して誠実な対応をしなければ、是正勧告や指導が実施されるだけではなく、刑事罰や企業名公表などのペナルティが課されるリスクに晒されます。
そこで今回は、労働基準監督署から調査予告をされて今後の流れについて不安を感じている企業経営者のために、以下の事項について分かりやすく解説します。
- 労働基準監督署の調査とは
- 労働基準監督署の調査対象
- 労働基準監督署の調査の流れ
- 労働基準監督署の調査への対応策
労働基準監督署の調査に適切に対応するには企業法務に強い弁護士への相談がおすすめです。
労基署への対応から個別労働事案の交渉・労働審判・訴訟対応などをすべて任せることができるでしょう。
1.労働基準監督署の調査とは
労働基準監督署はさまざまな状況で事業所に対する調査を行います。
まずは、労働基準監督署の調査について解説します。
(1)労働基準監督署の調査の目的
労働基準監督署は、管轄区域内の事業所が労働関係法令を遵守しているかを監督する公的機関のことです。
事業所が労働基準法などの諸規制を遵守しているかをチェックします。
また、従業員の賃金・安全・健康が脅かされていないかを確認するために、調査(臨検監督)を実施しています。
(2)労働基準監督署の調査の種類
労働基準監督署の調査は以下の4種類に大別されます。
定期監督 | 労働基準監督署の監督計画に基づいて任意に実施される調査のこと。 |
災害時監督 | 労災事案(労働災害)が発生したときに、原因究明・再発防止・指導を目的として実施される調査のこと。 |
申告監督 | 労働者側からの告訴・告発をきっかけに実施される調査のこと。従業員の秘密を守るために定期監督を装って実施される場合もあれば、労働者からの申告を前提に呼出状を出す場合もある。 |
再監督 | 定期監督・災害時監督・申告監督の結果、是正が必要と判断された場合に、指導通りに是正が実施されたか否かを確認するために後日再度実施される調査のこと。 |
(3)労働基準監督署の調査は拒否できない
労働基準監督署の調査は拒否できません。
なぜなら、労働基準監督官には、事業所や寄宿舎、附属建築物に臨検し、帳簿や書類の提出を求めたり、使用者・労働者に対して尋問を実施する権利が認められているからです(労働基準法第101条)。
また、以下のような場合は「30万円以下の罰金刑」が科されます(労働基準法第120条第4号)。
- 労働基準監督署の臨検を拒否した場合
- 労働基準監督署の臨検を妨害した場合
- 労働基準監督官の尋問に対して陳述しなかった場合
- 労働基準監督官の尋問に対して虚偽の陳述をした場合
- 帳簿書類を提出しなかった場合
- 虚偽記載の帳簿書類を引き渡した場合
したがって、労働基準監督署の調査には、必ず誠実に対応してください。
(4)労働基準監督署は突然来ることもある
事業所の経営が労働関係法令に違反していないかどうかを調査するには、帳簿書類や勤怠管理システムなどを精査する必要があります。
そのため、調査に必要な書類などを準備させるために、調査前に日時などが予告されることが多いです。
また、状況次第では労働基準監督署から出頭要求が出されることもあります。
その一方で、労働基準監督署の調査は「事業所が労働関係法令に違反していないか」を確認するために実施されるものなので、事前予告なしに突然労働基準監督官が調査にやってくることも少なくありません。
そして、事前に予告があるか否かとは関係なく、臨検監督への対応義務は生じます。
したがって、いつ労働基準監督署の調査が入っても大丈夫なように、普段から企業法務に強い弁護士のチェックを受けながら健全な企業経営を目指しましょう。
2.労働基準監督署の調査対象
労働基準監督署の代表的な調査対象項目は以下の通りです。
- 従業員の労働時間管理は適切か
- 労働基準法や36協定違反の違法な就労実態は存在しないか
- 労働時間に対して適切な賃金・残業代などが支払われているか
- 就業規則は届け出られているか、従業員に周知されているか
- 休暇の取得日数は適正か
- 年次有給休暇の取得状況は適法か
- 健康診断の実施時期・実施回数は適切か
- 従業員の衛生管理体制は適切に構築されているか
- 懲戒処分の内容に問題があったり、不当解雇の実態が存在しないか
事業所は、労働基準法・労働契約法・労働安全衛生法などのさまざまな法規制に縛られます。
経営陣だけの判断で適法な環境を作り出すのは簡単ではないでしょう。
労働基準監督署の幅広い調査項目をすべてクリアするには、普段から法令遵守精神を維持した企業経営が不可欠です。
トラブルが発生していない平素から弁護士のチェックを受けておくことを強くおすすめします。
3.労働基準監督署の調査の流れ
労働基準監督署が調査を実施する場合、以下の流れで手続きが進められるのが一般的です。
- 予告
- 立ち入り調査
- 是正勧告書や指導票などの交付
(1)予告
労働基準監督署が調査を実施する場合、訪問日時について事前予告されます。
指定された日時に労働基準監督官へ対応できるように、帳簿書類などを準備しておきましょう。
また、労働基準監督署から出頭要求書が届くこともあります。
帳簿書類など事前に指定された書類などを持参して、約束通りの期日に所轄の労働基準監督署まで訪問してください。
なお、労働基準監督署の調査は予告や出頭要求なしで当日いきなり実施されることもあります。
(2)立ち入り調査
調査当日は、事業所や関係エリアに対して立ち入り調査が実施されます。
通常、労働基準監督官2名がやってきます(担当官1名だけのこともあり得ます)。
立ち入り調査では、事前に告知された書類などについてチェックが入るほか、以下のような資料なども確認されることが多いので、必ず準備しておきましょう。
- 会社の組織図
- 就業規則
- 雇用契約書、労働条件通知書
- 労働者名簿
- 出勤簿・タイムカード・勤怠管理システムなど
- 賃金台帳
- 有給休暇の取得状況管理資料
- 健康診断個人表
- 時間外労働・休日労働に関する協定届
- 変形労働時間制やフレックスタイム制などに関する労使協定
- 総括安全衛生管理者・産業医に関する資料
- 安全委員会・衛生委員会に関する資料
これらの書類についての調査では、事業主や責任者の同席が求められます。
これは、労働基準監督官の質疑に対して応答する必要があるからです。
次に、事業場内の立ち入り調査が行われて、適宜労働者に対するヒアリングが実施されます。
労働者側からの説明や意見を聴取することによって、経営陣の説明内容の真偽を明らかにする目的です。
一連の立ち入り調査の結果、労働基準法違反の点が一切見つからなかった場合には、無事に労働基準監督署による調査は終了します。
その一方で、軽微な違反などが発見された場合には、口頭で改善指導が行われたり、よりコンプライアンス等を徹底するための指示が下されます。
(3)是正勧告書や指導票などの交付
立ち入り調査の結果、重大な問題点が発覚した場合には、労働基準監督署から後日書面で指摘が行われます。
労働基準監督署から届く可能性がある書面は以下の通りです。
- 是正勧告書:法律違反が存在する場合に違反事項と改善期限が通知される書面
- 指導票:法律違反は存在しないが改善を要する場合に通知される書面
- 使用停止等命令書:施設・設備に不備があって労働者に差し迫った危険がある場合に通知される書面
是正勧告書や指導票の指摘内容を踏まえて改善策を実施し、報告書を提出した時点で、労働基準監督署の調査をきっかけにスタートした一連の手続きは終了します(なお、改善内容を確認するために2回目の調査が実施されることもあります)。
4.労働基準監督署の調査への対応策
労働基準監督署の調査が入ることが判明したときには、以下の対応策をご検討ください。
- 労働基準監督署の調査に必要な書類を用意する
- 労働基準監督署の調査に対応できる担当者と打ち合わせをする
- 労働基準監督署の調査前に弁護士へ相談する
(1)労働基準監督署の調査に必要な書類を用意する
労働基準監督署の調査予告を受けたときには、事前告知された内容以外の調査にも即時に対応できるように、上述の書類を用意しておきましょう。
特に、就業規則や労使協定に関する書類は、未提出だったり内容に瑕疵があったりすると是正勧告書の発付に繋がってしまうので、速やかに瑕疵の補正に向けて社内手続きを進めてください。
(2)労働基準監督署の調査に対応できる担当者と打ち合わせをする
労働基準監督署の立ち入り調査では、担当者などの立会いを求められます。
例えば、普段部門担当者が業務等に直接関与していない場合には、入念な打ち合わせをしていなければ、従業員のヒアリング内容と齟齬が生じかねません。
担当者と従業員の説明内容に乖離があると、それだけで労働基準監督官が不信感を抱く理由になってしまうでしょう。
したがって、会社の内情を丁寧かつ正確に説明できるように、事前に打ち合わせをしておくことを強くおすすめします。
(3)労働基準監督署の調査前に弁護士へ相談する
労働基準監督署の調査予告を受けたときや、労基署の突発的な立ち位置調査へのリスクヘッジをしておきたいときには、必ず企業法務に強い弁護士に相談してください。
なぜなら、弁護士への相談によって以下のメリットを得られるからです。
- 労働基準監督署の調査に必要な書類を漏れなくピックアップしてくれる
- 事前に社内体制を確認して労働基準監督署から指摘される可能性があるポイントを指摘してくれる
- 労働基準監督署の立ち入り調査で深掘りが予測されるポイントへの反論内容を提案してくれる
- 労働基準監督署の調査前に違法状態が発覚したときには事前に改善策を提示してくれる
- 労働基準法違反などが発生しないような社内体制構築に向けて必要な施策を提案してくれる
なお、労働基準監督署の調査対策の依頼先を決めるときには、必ず「企業側の弁護経験豊富な専門家」とご契約ください。
労働基準監督署への対応だけではなく、今後生じる可能性がある従業員との示談交渉や労働審判・訴訟などにも尽力してくれるでしょう。
まとめ
労働基準監督署の調査はどのタイミングで実施されるか分かりません。
つまり、企業側は、常に労働基準監督署による外部調査に備えて、法令遵守を意識した企業経営を求められるということです。
ただし、労働関係法令は多岐にわたるため、経営陣だけですべての法令を遵守するのは簡単ではありません。知らないうちに違法状態が発生しているというケースも少なくありません。
したがって、労働基準監督署の調査があるか否かにかかわらず、企業側は日常的に法律のプロフェッショナルとコミュニケーションを取っておくことが重要だと考えられます。
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています