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リストラとは?不当解雇を回避して正当に人員削減する4要件を解説

2024年3月22日
リストラとは?不当解雇を回避して正当に人員削減する4要件を解説

企業の業績が悪化するなどした場合、「リストラ」によって人件費を圧縮して経営合理化を目指す手法が選択肢に挙がってくることもあるでしょう。

ただし、「会社を存続させるために必要だから」という理由だけで、いきなり雇用契約を締結した労働者を一方的に解雇することはできません。
なぜなら、従業員の身分は民法労働基準法などの法律において手厚く保証されているからです。

そこで今回は、業務効率化や経営不振からの脱却を目指す手段としてリストラを検討している経営者のために、以下の事項について分かりやすく解説します。

  • リストラとは
  • 企業が正当な理由でリストラできる4要件
  • リストラが不当解雇になることを防ぐための流れ

法律を遵守してリストラを実行しなければ、団体交渉や労働審判・民事訴訟への対応を強いられかねません。労働問題に強い弁護士のアドバイスを参考に、不当解雇の疑いをかけられない人員整理を実現しましょう。

1.  リストラとは

リストラとは、「re-structuring(組織再編、組織再構築)」を略した用語のことです。

日本では、1990年代にバブル景気が崩壊して多くの企業が経営難に陥ったタイミングで「リストラ」という用語が広く普及するようになりました。

まずは、リストラの内容について解説します。

(1)リストラは整理解雇を指すのが一般的

リストラは「整理解雇」を指すとするのが一般的です。

そもそも、解雇とは「使用者側の一方的な意思表示によって雇用者との間で締結した労働契約を解除すること」を意味します。

そして、解雇の種類は次のように区分されます。

解雇の種類 解雇の内容
整理解雇 経営不振や事業方針の転換など、経営上の理由に基づく組織合理化を目指して実施される人員整理としての解雇のこと。
普通解雇 労働能力の低下、能力不足、勤務態度の不良、業務命令への違反など、各労働者の個別的な理由に基づいて実施される解雇のこと。
懲戒解雇 就業規則の懲戒事由に該当することを理由に下される解雇のこと。戒告・けん責・減給・停職(出勤停止)・降格・諭旨解雇などの懲戒処分の中で最も重い処分に位置付けられる。罪を犯したり経歴詐称があったりしたときに懲戒解雇処分が下されることが多い。
重責解雇 労働者本人が自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇されること。雇用保険法上の考え方。
諭旨解雇 懲戒解雇に相当する事由が存在する場合において、会社側が本人に対して自発的に退職を促す行為のこと。

これら5つに分類される解雇のうち、一般的な”リストラ”が意味するのは「整理解雇」です。
労働者側に問題があるのではなく、あくまでも「企業側が抱える原因によって実施される解雇処分」のことをリストラと捉えることが多いのが実情です。

(2)リストラは整理解雇以外の事象も含まれる

バブル景気が崩壊した不景気の最中に「リストラ」という用語が使われはじめたため、日本では「リストラ=整理解雇」という意味合いで認知されることが多いです。

しかし、本来「リストラ」という言葉は、「会社組織を再構築すること(再構築するために組織構造を変革すること)」というニュアンスが強い専門用語を指します。

そのため、以下のような”整理解雇以外の事象”も幅広く含まれることもあります。

  • 労働時間の削減
  • 給料やボーナスのカット
  • 雇用形態の切り替え
  • 異動・降格・配置転換・転籍
  • 退職勧奨

2.  企業が正当な理由でリストラできる4要件

経営不振・事業縮小など、企業側のやむを得ない理由によって従業員をリストラ(整理解雇)する必要に迫られたとしても、雇用されている労働者の立場を一切無視して解雇処分を言い渡すことは許されません。

過去の労働裁判が蓄積された結果、リストラ(整理解雇)が不当解雇にならないためには、以下4要件を満たす必要があると考えられています。

  1. 人員削減の必要性があること
  2. 解雇回避義務を履行していること
  3. 被解雇者選定に合理性があること
  4. 解雇手続きに妥当性があること

(1)人員削減の必要性があること

第1に、正当な理由でリストラ(整理解雇)するには、「人員削減の必要性があること」という要件を満たす必要があります。

例えば、感染症の影響で客入りが悪化して売上げが大幅に減少したり、海外情勢の影響で原材料の輸入コストが増加することで企業経営が逼迫したときには、経営状況を好転させるために人員削減する必要性があると言えるでしょう。

また、複数の事業を展開しているものの、一部の部門の財務状況が悪化して大幅な赤字が見込まれるときにも、リストラによる人員削減が有効な解決策になり得ます。

(2)解雇回避義務を履行していること

第2に、リストラ(整理解雇)に正当な理由があると認められるには、「解雇回避義務を履行していること」という要件が必要です。

そもそも、労働者の地位は労働関係法令で強く保護されているので、どれだけ企業側の経営が逼迫されたとしても、リストラはいわば「最終手段」に位置付けられます。

したがって、リストラに踏み出さざるを得ない状況であったとしても、リストラを回避するために事前に必要な経営上の努力を尽くしたか否かが問われると考えられます。

解雇回避義務を履行したと評価されるには、先んじて経営陣・役員などの報酬を減額していること、不動産などの会社資産を売却してキャッシュフローの改善を目指していることなどの措置がポイントとして挙げられます。

(3)被解雇者選定に合理性があること

第3に、リストラが合法的な整理解雇として認められるには、「被解雇者の選定に合理性があること」という要件を満たす必要があります。

懲戒解雇や普通解雇とは違って、リストラは会社側の事情によってやむを得ず実施される整理解雇です。
つまり、整理解雇という枠組みを悪用する形で恣意的に特定の従業員のクビを切るようなことはあってはいけないということです。

例えば、人員削減対象者を選定するための客観的基準が設けられているか、基準通りに対象者が選定されているか、リストラ対象者を選定する際に特定労働者の個別事情が過度に考慮されていないか、などの要素がポイントになるでしょう。

(4)解雇手続きに妥当性があること

第4に、リストラが正当な整理解雇に該当するには、「解雇手続きの妥当性」がなければいけません。

経営不振などの会社側の事情によってリストラをする以上、いきなり解雇処分を通知するような一方的な対応はあまりに不誠実でしょう。

例えば、リストラを実施する必要性について従業員説明会を実施したり、労働組合や従業員の代表者などと話し合いを重ねるなどして、従業員サイドの理解を得ようと努力する姿勢を見せることが重要です。

リストラについて従業員側からの納得を得るのは相当難易度が高いので、労使紛争や団体交渉などの経験豊富な弁護士のアドバイスを参考にすることを強くおすすめします。

3.  リストラが不当解雇になることを防ぐための流れ

リストラが不当解雇に該当すると判断されてしまうと、解雇処分自体が無効になるので、未払い賃金を後から請求されるなどのトラブルが波及的に発生しかねません。

そこで、円滑にリストラを実施するには、以下の手順を踏むことをおすすめします。

  1. 希望退職者を募集する
  2. 有期雇用契約の雇止めを検討する
  3. 不採算部門を整理する
  4. 業績を上げるための経営努力をする
  5. リストラの手続きについて弁護士へ相談する

(1)希望退職者を募集する

リストラのように会社側からの一方的通告によって整理解雇をするのは最終手段でなければいけません。

したがって、無理矢理雇用契約を打ち切るのではなく、リストラの前段階として「正社員に対して希望退職者を募集する手続き」を踏んでおくことをおすすめします。

希望退職は従業員サイドの自主的な意思に基づくものなので、整理解雇の4要件に配慮する必要はありません。
また、希望退職者を募るために通常よりも高額の退職金条件を提示するなどの恩恵を与えなければいけませんが、将来的に発生する人件費を節約できるというメリットを得られます。

(2)有期雇用契約の雇止めを検討する

正社員のような期間の定めのない無期雇用契約の従業員をリストラするには整理解雇の4要件を満たさなければいけませんが、有期雇用契約に基づいて働いてもらっている従業員の契約更新をしない「雇止め」なら、「契約期間の満了」という契約通りの方法によって人員を削減できます。

ただし、有期労働契約の雇止めも無制限にできるわけではない点に注意が必要です。

なぜなら、当該労働者が契約更新の申込みをすると、雇止めが客観的に合理的な理由を欠いて社会通念上相当であると認められない場合には、当該雇止めは無効と扱われるからです(労働契約法第19条)。

  • 有期労働契約が過去に反復継続して更新されて雇止めが実質的に社会通念上「解雇」と同視できるとき
  • 有期労働契約で雇用されている従業員が契約更新を期待することについて合理的な理由があるとき

(3)不採算部門を整理する

従業員をリストラする前に、不採算部門を縮小・廃止するなど、組織構造の変革を検討するのも選択肢のひとつです。

ただし、事業規模が縮小することによって人員が余る危険性もあるので、結果としてリストラを視野に入れる必要に迫られかねないでしょう。

(4)業績を上げるための経営努力をする

経営不振に対してリストラという手段を選択するのではなく、新規事業に手を広げるなど収益性向上を目指すのも選択肢のひとつです。

ただし、新規事業の成功が約束されているわけではないので、慎重な経営判断が求められるでしょう。

(5)リストラの手続きについて弁護士へ相談する

経営不振などによってリストラが視野に入っている場合には、労使紛争や企業法務に強い弁護士へ相談することを強くおすすめします。

なぜなら、専門家のアドバイスを参考にすることで、以下のメリットを得られるからです。

  • リストラや雇止めなどの諸手続きを合法的に実施するための助言を期待できる
  • 経営状況のコンサルティングによって業務効率化を達成できる
  • 安定的な経営基盤を確立するためのノウハウを提供してくれる
  • リストラ等が法的措置によって争われたときの団体交渉・労働審判・民事訴訟手続きに対応してくれる

まとめ

従業員のリストラを検討しているときには弁護士への相談が最優先事項です。

なぜなら、リストラをめぐる法規制や経営状況のテコ入れなど、幅広い観点からのアドバイスを期待できるからです。

当サイトでは、労使紛争や企業法務に強い弁護士を多数掲載しています。
企業側の法律相談経験豊富な法律事務所をご検索のうえ、アクセスの良い専門家までお問い合わせください。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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