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解雇予告手当とは?計算方法や解雇通知をするときの流れを解説

2024年4月18日
解雇予告手当とは?計算方法や解雇通知をするときの流れを解説

解雇予告手当とは、解雇日と解雇予告日との間が30日に満たないときに企業側に支払い義務が課される金銭を意味します。

今回は、従業員の解雇を検討していたり、解雇予告手当の算定方法に疑問を抱いていたりする経営者の方に、以下の事項について分かりやすく解説します。

  • 解雇予告手当の概要
  • 解雇予告手当の計算方法
  • 解雇予告手当を支払う流れ

1.解雇予告手当とは

解雇予告手当とは、解雇日の30日以上前に解雇予告をせずに解雇を実施する場合に当該従業員に対して支払う必要がある金銭のことです。

本来、原則として、使用者が労働者を解雇しようとするときには、不可抗力や労働者に帰責性があるケースを除いて、解雇予定日の30日以上前に解雇予告をしなければいけません(労働基準法第20条第1項)。
これは、解雇日に近接したタイミングでの解雇処分が有効と扱われると、解雇処分によって強制的に雇用される地位を奪われる従業員が経済的に困窮するおそれがあるからです。

しかし、解雇原因や業務状況次第では、30日を待たずして当該従業員を退職させるのが適切なケースも少なくはありません。

そこで、充分な期間の猶予なく解雇処分を下す場合には、従業員の経済的生活基盤を確保するために、解雇予告期間に不足する日数に応じた解雇予告手当を支払わなければいけないとされています。

なお、解雇予告手当の支給対象は正社員だけではなく、パート・アルバイト・派遣社員などの非正規雇用も幅広く含まれる点に注意が必要です。

(1)解雇予告手当の支給額は解雇を言い渡す日によって異なる

解雇予告手当の支給額は、解雇を言い渡すタイミングと解雇日の関係性によって決定されます。

解雇を言い渡す日 解雇予告手当の支給額
解雇日の30日以上前 不要
解雇日の1日前~29日前 解雇予告期間30日に満たない日数分の平均賃金
解雇日の当日 平均賃金の30日分

例えば、解雇日の30日以上前に解雇を言い渡したケースでは、解雇予告手当を支給する必要はありません。

また、解雇日の20日前に解雇を言い渡した場合、10日分の平均賃金相当額である解雇予告手当の支払い義務が生じます。

さらに、30日分の解雇を言い渡す日にそのまま退職をしてもらう場合には、30日分の平均賃金相当額を解雇予告手当として支給することによって即日解雇が可能です。

なお、従業員を懲戒解雇処分に下す事案では、労働基準監督署の除外認定制度を利用することによって、解雇予告手当を支給せずに当該従業員を解雇することができます。

2.解雇予告手当の計算方法

解雇予告手当の金額は以下の計算式で求められます。

解雇予告手当 = 平均賃金 × 解雇予告期間に足りなかった日数(30日に満たない日数)

ここからは、解雇予告手当の金額を実際に算出するときの流れ、特に、「平均賃金」の計算方法について解説します。

(1)直近3ヶ月の賃金総額を計算する

まずは、直近3ヶ月の賃金総額を計算します。

対象期間は、解雇日の直前の締め日から3ヶ月分です。

例えば、給与体系が「毎月末締め、翌月10日払い」の企業において、従業員を7月15日に解雇する事案について考えてみましょう。

この場合、解雇日の直近の締め日は6月30日です。そして、ここから3ヶ月間さかのぼると、賃金総額は4月1日~6月30日までの賃金の合計額ということが分かります。

なお、賃金総額を算出するときの金額は、所得税や住民税を源泉徴収する前、社会保険料を控除する前であり、かつ、通勤手当・皆勤手当・時間外手当などの諸手当を含むものです。
ただし、以下のものは賃金総額算出時に考慮しません(労働基準法第12条第4項、第5項)。

  • 労災で休業した期間に対応する賃金
  • 産休・育休・介護休暇中の期間に対応する賃金
  • 会社都合で休業した期間に対応する賃金
  • 試用期間中の賃金
  • 賞与やボーナスなどの臨時で支給される賃金

(2)直近3ヶ月の総日数を計算する

次に、平均賃金を算出するための基礎になる直近3ヶ月の総日数を算出します。
総日数は、就労日数ではなく暦日数を意味します。

4月1日~6月30日の場合、4月は30日、5月は31日、6月は30日の合計91日です。

ただし、以下の日数については総日数のカウントから除外します(労働基準法第12条第3項)。

  • 労災によって休業した期間
  • 産休、育休、介護休暇を取得した期間
  • 会社都合で休業した期間
  • 使用期間中の期間

(3)1日あたりの平均賃金を計算する

直近3ヶ月の賃金総額と直近3ヶ月の総日数が判明すると、以下の計算式で1日あたりの平均賃金を求めます。

1日あたりの平均賃金 = 直近3ヶ月の賃金総額 ÷ 直近3ヶ月の総日数

(4)最低賃金と比較する

さいごに、「1日あたりの平均賃金 = 直近3ヶ月の賃金総額 ÷ 直近3ヶ月の総日数」という計算式で求められた数値が最低賃金を上回るかを確認してください。

最低賃金は、以下の計算式で求めることができます。

最低賃金 = 直近3ヶ月の賃金総額 ÷ 直近3ヶ月の出勤日数 × 0.6

1日あたりの平均賃金額が最低賃金を上回る場合には、1日あたりの平均賃金額が解雇予告手当を計算するときの公式に代入されます。

これに対して、1日あたりの平均賃金額が最低賃金を下回るときには、最低賃金額を使って解雇予告手当を算出しなければいけません。

3.解雇予告手当を支払う流れ

解雇予告手当を支払うときの流れについて解説します。

(1)解雇原因について事実確認する

解雇予告手当について判断する前に、解雇に至った原因や事実をしっかりと調査・確認する作業が必要です。

なぜなら、従業員を解雇するときにはその理由を当該従業員に伝えなければいけないからです。
また、客観性のある合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められない場合、解雇処分は不当解雇に該当し無効なものと扱われるので、そもそも解雇処分に相当する原因があったかを事前に慎重に判断することが求められます。

例えば、懲戒解雇を実施する事案では、そもそも就業規則に懲戒規定が存在しているか、就業規則が従業員に適切な形で周知されているか、懲戒解雇事由に相当する事実関係が存在するのかを判断しなければいけません。
その際には、当該従業員から直接事情聴取する機会も必要でしょう。

懲戒解雇・整理解雇・普通解雇のいずれのパターンでも、解雇処分は従業員の地位・雇用契約に大きな影響を与えるものです。
解雇予告手当をどれだけ支払おうが、解雇するだけの理由がなければ不当解雇と評価されません。

したがって、解雇処分を下す時には、可能な限り労働問題の経験豊富な弁護士に相談をして、後から労使紛争が生じないように適切な状況で諸手続きを進めてもらいましょう。

(2)解雇日を決定する

解雇処分を実施することが決まった場合、社内で協議をして実際の解雇日を決定しましょう。

解雇日を決定する際には、以下の事情を総合的に考慮する必要があります。

  • 解雇予告日と解雇日の関係から、いくらの解雇予告手当の支払い義務が生じるのか
  • 解雇予告手当を支払うだけの財政的な余裕があるのか
  • 解雇日までの期間中に当該従業員に割り当てる業務量
  • 引継ぎに要する時間
  • 代わりの従業員を配置するのに必要な期間
  • 解雇関係で必要になる事務手続きの所要日数

(3)解雇理由証明書を作成する

従業員を解雇するときには、解雇理由証明書を作成することを強くおすすめします。

本来、解雇理由証明書の発付義務が生じるのは、当該従業員から解雇理由証明書の提出を求められた場合だけです(労働基準法第22条第2項)。
従業員サイドからの発付請求がない時には、解雇理由証明書は作成しなくても差し支えありません。

ただし、解雇は後から有効性が争われるリスクがある強力な処分ですし、労働審判などの争訟に発展した時には、会社側もさまざまな証拠を準備・提出する必要があります。
解雇予告通知書を送付する段階で解雇理由証明書も併せて交付しておくことによって、従業員本人や労働組合の納得感も得やすくなるでしょう。

解雇理由証明書は後の紛争のエビデンスにもなるものです。
可能な限り顧問弁護士や労使紛争の実績豊富な弁護士に作成してもらいましょう。

(4)解雇通知書を作成する

解雇する旨を伝える手段に法的な規制は存在しません。
そのため、当該従業員に対して口頭で解雇の旨を伝えることも可能です。

ただし、解雇することを口頭で伝えただけでは証拠が残りませんし、後から解雇処分の有効性や解雇時期を争われた時に、会社側から証拠を提出できなくなってしまいます。

したがって、従業員に対して解雇する旨を伝えるときには、必ず解雇通知書(解雇予告通知書)を作成しましょう。

なお、解雇通知書に決まった方式は存在しませんが、以下の内容を記載しておくことを強くおすすめします。

  • 従業員の氏名、所属部門
  • 企業名、会社代表者名
  • 解雇通知書の作成日、通知日
  • 解雇理由
  • 解雇日
  • その他の諸条件(特別退職金に関すること、転職先のサポートに関することなど)

(5)解雇を通知する

解雇をめぐる準備が終了したら、当該従業員に対して解雇を通知します。
通知日が解雇予告手当の算定基準になる点に注意が必要です。

なお、解雇を通知する方法は、対面、メール、郵送などのいかなる手段でも問題ありません。
特に、対面での受け取りを拒絶された場合には後から解雇日をめぐるトラブルが生じるリスクがあるので、配達証明付内容証明郵便で送付するのが安全だと考えられます。

(6)源泉徴収票を作成する

解雇予告手当は退職所得扱いです。

そのため、従業員が退職してから1ヶ月以内に離職者と税務署に源泉徴収票を交付しなければいけません(所得税法第226条第1項)。

(7)解雇予告手当の支払い

解雇予告手当の支払い時期については、以下のタイミングが望ましいとされています。

  • 即日解雇の場合:解雇日
  • 解雇日までに猶予がある場合:解雇予告日

解雇予告手当は解雇される従業員を経済的にサポートする役割を担うものなので、あまりに支払い時期が遅れると従業員との間でトラブルが生じかねないのでご注意ください。

まとめ

解雇予告日と解雇日の間に30日以上の猶予がなければ解雇予告手当の支払い義務が生じます。

また、解雇をするときには、解雇予告手当以外にもさまざまな注意事項を踏まえなければいけません。
適切な手続きを履践して解雇手続きを実施しなければ、労使紛争に発展する危険性が生じるからです。

したがって、従業員を解雇するときには、事前に労働問題に強い弁護士へ相談することを強くおすすめします。解雇予告手当や懲戒解雇などをめぐる問題について適切なアドバイスを提供してくれるでしょう。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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