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退職勧奨通知書とは?記載内容や弁護士へ相談するメリットを解説

2024年4月18日
退職勧奨通知書とは?記載内容や弁護士へ相談するメリットを解説

退職勧奨通知書とは、従業員の自主退職を促すために送付する書面のことです。

退職勧奨通知書に法的拘束力は存在しませんが、送付後に一定の交渉を実施することで、懲戒解雇処分を検討せずに問題行動がある従業員を退社に導くことができます。

ただし、強制力の存在しない退職勧奨ですが、退職勧奨通知書の記載内容が曖昧だったり、退職勧奨交渉に行き過ぎた点があったりすると、企業側が金銭負担等を強いられるリスクが生じる点に注意しなければいけません。

そこで今回は、従業員に対して退職勧奨通知書を送付することを検討している経営者の方のために、以下の事項について分かりやすく解説します。

  1. 退職勧奨通知書とは
  2. 退職勧奨通知書に記載するべき項目
  3. 退職勧奨通知書のテンプレート・例文
  4. 退職勧奨通知書を出す前に弁護士へ相談するべき理由

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1.退職勧奨通知書とは?

退職勧奨通知書とは、従業員に対して自主的な退職を促す旨を記載した書面のことです。
退職勧奨通知書は退職勧告書・退職勧奨同意書とも呼ばれます。

そもそも、退職勧奨は、企業が従業員に退職するように勧める行為のことです。
あくまでも自主的に退職するように説得する趣旨で実施される行為なので、退職勧奨に強制力は存在しません。

つまり、退職勧奨通知書を送付したからといって従業員の退社が確約されるわけではありませんし、退職勧奨通知書を受け取ったからといって当該従業員に対して退職する義務が課されるわけでもないということです。

なお、退職勧奨通知書との違いが問題になるものとして解雇予告通知書・退職証明書・解雇理由証明書が挙げられます。

まず、解雇予告通知書とは、使用者が労働者を解雇しようとするときに交付義務が生じる書面のことです(労働基準法第20条)。
退職勧奨通知書とは異なり、労働者側が合意するか否かとは関係なく、企業側が一方的に雇用契約を終了させる旨を通知します。

原則として、労働者を解雇するときには、解雇予定日の30日以上前までに解雇予告通知書を送付しなければいけません。
これは、解雇される労働者に転職活動等をする期間を保障するためです。
解雇予定日から30日に満たないタイミングで解雇を言い渡すときには、平均賃金に不足日数を乗じた金銭を支払う必要があります。

次に、退職証明書とは、従業員が確かに退職したことを証明する目的で当該従業員に交付される書面のことです。

労働者側から退職証明書の発行を求められたときには、必ず退職証明書を渡さなければいけません(労働基準法第22条第1項)。

また、解雇理由証明書とは、労働者を解雇しようとする理由を記載した書面のことです(労働基準法第22条第2項)。
従業員側が自らが解雇処分を下される理由を把握して、当該処分への対応策を判断できるようにする目的で交付されます。

2.退職勧奨通知書に記載するべき項目

労働基準法によって交付が義務付けられている解雇予告通知書とは異なり、退職勧奨通知書は退職について労働者側からの合意を引き出すことをも目的とした書面です。

そのため、退職勧奨通知書のフォーマットや記載方法、記載内容などについて一切ルールは存在しません。

ただし、退職勧奨通知書は雇用契約や当該従業員の立場に大きな影響を与えるものであることを踏まえると、一定の事項については記載しておくことが好ましいでしょう。

ここでは、退職勧奨通知書に記載するべき項目について解説します。

(1)作成日・発行日

退職勧奨通知書の作成日・発行日を記載しましょう。

そもそも、退職勧奨の交渉は長期間に何度も実施してはいけません。
執拗な退職勧奨交渉はパワハラの疑いをかけられかねませんし、無理矢理退職に応じさせたとしても、後から実質的な不当解雇に当たることを理由に退職自体が無効になる可能性もあるからです。

退職勧奨通知書に作成日・発行日を掲載しておけば、退職勧奨のスタート時期を証明できるので、長期間不当な交渉が行われたという疑いを回避しやすくなるでしょう。

(2)従業員の名前

退職勧奨通知書には、退職勧奨の対象従業員の名前を記載してください。

誰に対して退職勧奨を実施したのかを明示するためです。

(3)会社名、代表者名

退職勧奨は雇用契約の終了への合意を求めるものなので、雇用契約の当事者双方の名称を記載することが好ましいです。

そのため、退職勧奨通知書を受け取る従業員の氏名だけではなく、退職勧奨通知書を発付する会社の名称も必ず記載してください。

なお、退職勧奨通知書を送付するときには、企業名だけではなく、責任者である代表取締役などの氏名も記載しておくべきでしょう。

(4)退職勧奨通知理由

退職勧奨通知書には、企業側が退職勧奨に踏み出す判断をした理由・原因をはっきりと記載する必要があります。

退職勧奨通知理由を明示するべき理由は以下2点です。

  1. 退職勧奨の原因・理由がはっきりすることで従業員側の合意を引き出しやすくなるから
  2. 不当解雇の疑いを回避しやすくなるから

以下のように、退職勧奨に至るケースにはさまざまな原因が存在します。
いずれのパターンであったとしても、退職勧奨には明確な理由があることを示しましょう。

  • 遅刻や無断欠勤などが絶えない、ハラスメントなどの問題行動を起こす
  • 業務上のミスが多い、能力不足、業務内容とスキルとのミスマッチ
  • 社長や役員、上司、同僚などとのトラブルが多い、協調性が欠けている
  • 業務内外で犯罪行為に及んだ(業務上横領罪、窃盗罪、痴漢など)
  • 経営不振による人員整理を目的としている

(5)退職に際して支払う金額

退職勧奨を受け入れた従業員に対して特別退職金・解決金を支払う場合には、書面にて金額を明示しておきましょう。

特別退職金の金額はいくらを定めても問題ありません。
ただし、退職勧奨に従業員が応じてくれるだけの金額を提示する必要があります。

一般的には、平均賃金の約3ヶ月~6ヶ月程度の金額が目安です。

(6)特別退職金を支払う日時

退職勧奨通知書に特別退職金の条件を記載するときには、支払い日・支払い方法も明示してください。

特別退職金の支払い時期について具体的な決まりはありませんが、あまりに遅いタイミングだと従業員の経済的不安が高まるので注意が必要です。

(7)その他特記事項

退職勧奨交渉においてその他の条件が付されるときには、必ず書面に記載しておきましょう。

例えば、退職時期に関する特約、転職活動支援に関する内容、退職勧奨通知書などが挙げられます。

3.退職勧奨通知書のテンプレート・例文

一般的な退職勧奨通知書のテンプレート・例文を紹介します。

なお、退職勧奨通知書には形式面・内容面について一切法的な規制がかけられていないので、分かりやすい形で記載することが望ましいでしょう。

                                  (作成日・通知日)〇〇年〇〇月〇〇日

(従業員の配属部署)____

(従業員の氏名)____

(企業名)____

(代表名)____

退職勧奨通知書

このたび、当社は、貴殿に対して、〇〇年〇〇月〇〇日付にて退職するよう退職勧奨致します。本退職勧奨へのご回答は、△△年△△月△△日までにお願い致します。

1.退職勧奨事由

〇〇のため

2.退職年月日

✕✕年✕✕月✕✕日

3.退職特別金の支払いに関すること

退職特別金〇〇万円を、〇〇年〇〇月〇〇日、指定口座に振り込む

以上

4.退職勧奨通知書を出す前に弁護士へ相談するべき理由

従業員に対して退職勧奨通知書を出すときには、事前に弁護士へ相談することをおすすめします。

なぜなら、労使紛争や労働問題に強い弁護士のアドバイスを参考にすることで、以下4点のメリットを得られるからです。

  1. 退職勧奨の交渉時の注意点を教えてくれる
  2. 退職勧奨を拒否された場合の対処法を検討してくれる
  3. 懲戒解雇の可否を検討してくれる
  4. 退職勧奨トラブルが深刻化したときの法的措置へ対応してくれる

(1)退職勧奨の交渉時の注意点を教えてくれる

退職勧奨自体に法的拘束力は存在しません。

しかし、強制力がないからといって、どのような退職勧奨行為に及んでも良いというわけではない点に注意が必要です。

例えば、退職勧奨交渉時に以下のような行為態様が発覚すると、パワーハラスメントや不当解雇の疑いをかけられて、損害賠償金や慰謝料の負担を強いられたり、後から退職自体が無効と扱われたりする危険性が生じます。

  • 従業員が退職について合意をするまで何度も執拗に退職勧奨交渉を実施する
  • 退職勧奨に対して明示的に拒否をしている従業員に対して長期間に及ぶ交渉を実施する
  • 退職勧奨に応じない従業員を追い出し部屋に入れたり、対応不可能な業務量を強いる
  • 退職勧奨に応じない従業員のスキル・経験では対応できない部署に異動させる
  • 退職勧奨時に暴言・暴力を使ったり、従業員が苦手な役員を交渉担当者に選んだりする

弁護士へ事前に相談をすれば、退職勧奨行為の注意点を教えてくれるので、不当解雇・パワハラの疑いをかけられるリスクを回避・軽減してくれるでしょう。

(2)退職勧奨を拒否された場合の対処法を検討してくれる

退職勧奨には強制力がないので、従業員に拒否されることもあり得ます。

退職勧奨交渉の経験豊富な弁護士は、以下のようなノウハウを活かして、退職勧奨を拒否されたケースにも備えてくれるでしょう。

  • 退職勧奨の原因行為を分析して、原因自体を改善できるか検討してくれる
  • 従業員が退職勧奨に応じてくれるような条件を提示する(特別退職金の金額交渉、転職活動支援など)
  • 弁護士自身が退職勧奨交渉を代理して感情的になっている労働者と冷静に話し合いを進めてくれる

(3)懲戒解雇の可否を検討してくれる

数々の努力を経ても退職勧奨を拒否された場合、企業側としては当該従業員に対して懲戒解雇処分を下す選択肢を検討することになります。

ただし、「退職勧奨を拒否されたから懲戒解雇処分を下す」という理屈は通りません。
なぜなら、懲戒解雇処分は労働者の立場を一方的に剥奪するものなので、厳格な要件を満たさない限り無効と扱われてしまうからです。

懲戒解雇処分の要件として、以下のものが挙げられます。

  • 就業規則に懲戒解雇事由が記載されていること
  • 就業規則の懲戒解雇規定が従業員に周知されていること
  • 懲戒解雇事由に該当する事実関係が存在すること
  • 他の懲戒事案と比べて懲戒解雇処分のバランスがとれていること(懲戒権の濫用にあたらないこと)
  • 懲戒解雇処分を下す前に当該従業員に弁明の機会を与えていること

例えば、企業側が適切な指示を与えてもミスが繰り返される状況において、いきなり懲戒解雇処分を下すのは行き過ぎです。
訓告、戒告などの手順を踏みながら、それでも改善が見られずに企業に大きな損害を生じたときに、ようやく懲戒解雇処分の可否が問題になります。

このように、従業員が退職勧奨に応じないとしても、懲戒解雇処分を下すことができるか否かは別の視点で客観的に判断しなければいけません。
必ず労使紛争に強い弁護士に相談のうえ、懲戒解雇処分を下せる状況か否かを分析してもらいましょう。

(4)退職勧奨トラブルが深刻化したときの法的措置へ対応してくれる

弁護士に事前相談することなく行き過ぎた退職勧奨交渉を実施してしまった場合や、一旦は退職勧奨に応じた従業員が後から不当解雇を主張してきたケースでは、示談交渉、労働審判、民事訴訟への対応を強いられます。

労使紛争が深刻化すると、法的手続きへ対応するために費用・労力を割かなければいけません。
特に、労使紛争に労働組合が関与してくると、経営陣側の負担は甚大なものになり、企業経営自体へも悪影響が生じる可能性が高いです。

一般的に、労使紛争は解決までの期間が長引くほど企業に与えるダメージが大きくなります。
早いタイミングで弁護士に依頼をすれば、話し合い段階での解決を目指しやすくなるので、速やかに労働問題の実績豊富な法律事務所までお問い合わせください。

まとめ

退職勧奨通知書を送付したからといって当該従業員が退職に合意をしてくれるとは限りません。

また、退職勧奨通知書を送付した後の交渉方法に行き過ぎた部分があると、その点を攻撃されて企業側が余計な金銭負担を強いられるリスクが生じます。

したがって、従業員に対して退職勧奨を検討しているのなら、退職勧奨通知書を送付する前に弁護士へ相談することを強くおすすめします。
退職勧奨通知書の作成・添削だけではなく、従業員に拒否された場合を想定してさまざまなリスクヘッジを提案してくれるでしょう。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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