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労災としてのうつ病の慰謝料相場は?会社が注意すべきポイントも解説

2024年8月30日
労災としてのうつ病の慰謝料相場は?会社が注意すべきポイントも解説

業務上のストレスでうつ病になった従業員が労災に認定された後に別途、当該従業員が会社に対して慰謝料を請求することがあります。

慰謝料とは被害者が受けた精神的苦痛に対する損害賠償金のことであり、労災保険からは支給されないため、一定の条件を満たす場合には会社が慰謝料を支払わなければいけません。

しかし、慰謝料をいくら支払えばよいのかが分からないことも多いでしょう。
うつ病になった従業員との問題を適切に解決するためには、慰謝料の相場を知っておくことが重要です。

そこで今回は、うつ病で労災に認定された従業員から慰謝料を請求された経営者の方のために、以下の事項について分かりやすく解説します。

  • うつ病になった従業員に対して会社に慰謝料の支払い義務が生じるケース
  • うつ病で労災認定を受けた場合の慰謝料相場
  • 従業員から慰謝料請求を受けた場合に会社側が注意すべきポイント

労使紛争や労働問題に強い弁護士に相談すれば、慰謝料の支払い義務から慰謝料相場、当該従業員と交渉する際のポイントについてまで、個別具体的なアドバイスが得られるでしょう。

1.従業員がうつ病で労災認定を受けた場合、慰謝料の支払いは必要?

うつ病で労災認定を受けた従業員には、労災保険から一定の給付金が支払われます。
それにもかかわらず、会社は慰謝料を支払わなければならないのでしょうか。

(1)基本的に労災保険で慰謝料は支払われない

結論からいうと、労災保険で慰謝料は支払われないため、従業員がうつ病になった責任が会社にある場合には、会社が慰謝料を支払う必要があります。

慰謝料とは、他人の不法行為による被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償金のことであり、民法第709条および第710条に基づき請求が認められる損害賠償金の一種です。

それに対して労災保険制度は、業務が原因で怪我や病気をした労働者に対して迅速かつ必要な保護を行うために、労災保険法の規定に従い一定の給付金が支給される制度です。
国が労働者の福祉の増進を目的として政策的に設けた制度なので、被災者が受けた損害が完全に補償されるわけではありません。

労災保険制度でカバーされない損害については、会社に責任があると認められる場合には、被災労働者から会社に対して別途、損害賠償請求が可能です。
慰謝料は労災保険制度でカバーされない損害の一種なので、業務が原因でうつ病になった従業員から請求された場合、会社に支払い義務が生じることがあります。

(2)会社に慰謝料支払い義務が生じるケース

うつ病になった従業員に対して会社に慰謝料の支払い義務が生じるのは、次の2つの条件を両方満たす場合です。

  • 業務が原因でうつ病を発症したこと
  • うつ病を発症したことについて会社の責任が認められること

従業員が労災に認定されたということは、「業務が原因でうつ病を発症したこと」が労働基準監督署で認められたことを意味します。
しかし、「うつ病を発症したことについて会社の責任が認められること」という条件を満たさなければ、会社に慰謝料の支払い義務は生じません。

うつ病を発症したことについて会社の責任が認められるのは、会社(事業主)に「使用者責任」または「安全配慮義務違反」が認められる場合です。

①使用者責任が認められる場合

使用者責任とは、従業員が業務中の不法行為によって他人に損害を及ぼした場合には、会社(使用者)が被害者に対して損害を賠償しなければならないという責任のことです(民法第715条第1項本文)。

例えば、被災労働者が上司や同僚からパワハラやセクハラなどのハラスメントを受け、それが原因でうつ病になった場合、使用者がハラスメントをしたわけではなくても会社が使用者責任を負うことになります。

被災労働者としては、直接の加害者である上司や同僚のみに対して慰謝料を請求することもできます。
しかし、個人の加害者は支払い能力が十分でないことが多いので、会社に対しても併せて慰謝料を請求するのが一般的です。

直接の加害者と会社の両方に対して慰謝料を請求された場合、両者は「共同不法行為者」となり、被災労働者に対して連帯して慰謝料を支払う義務を負います(民法第719条第1項)。

②安全配慮義務違反が認められる場合

安全配慮義務とは、社員が健康で安全に働けるようにするための必要な配慮をしなければならないという会社(使用者)の義務のことです(労働契約法第5条)。
会社は1人でも従業員を雇えば、雇用契約に基づき当然に安全配慮義務を負います。

会社が安全配慮義務に違反したことにより従業員に業務上の強い心理的負荷がかかり、それが原因でうつ病を発症した場合には、債務不履行責任として損害賠償義務が生じます(民法第415条第1項)。
この場合の「損害」には、民法第710条の類推適用により慰謝料も含まれます。

被災労働者がうつ病を発症する前に以下のような事情があった場合は、会社に安全配慮義務違反が認められるでしょう。

  • セクハラやパワハラの発生を防止するための措置を何も講じていなかった
  • セクハラやパワハラが発生していることを知りながら放置していた
  • 長時間労働や過重労働が常態化していたにもかかわらず改善措置を講じなかった

2.うつ病で労災認定を受けた場合の慰謝料相場

ここでは、会社に慰謝料の支払い義務が生じる場合に、支払わなければならない慰謝料の相場をご紹介します。

慰謝料額は本来、被害者の精神的苦痛の程度に応じて算出すべきものです。
しかし、苦痛の感じ方は人それぞれなので、主観を考慮して慰謝料を算出すると不公平な結果が生じます。

裁判所の民事訴訟では、公平の見地から一定の客観的な事情に応じて慰謝料が算出されるのが一般的となっており、この計算方法に基づく慰謝料額がひとつの目安となります。

(1)入通院慰謝料の相場

入通院慰謝料とは、被災労働者がうつ病にかかったことによる精神的苦痛に対する賠償金のことです。
治療に要した入通院期間が長ければ長いほど精神的苦痛が大きいと考えられるため、入通院慰謝料も高額化していきます。

裁判所では、基本的に以下の算定表を用いて入通院慰謝料が計算されます。

単位:万円

入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
通院 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326

例えば、3ヶ月通院した場合は73万円が入通院慰謝料の相場となります。

1ヶ月入院し、その後6ヶ月通院した場合は149万円が入通院慰謝料の相場です。

(2)後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料とは、医学的な治療を受けても疾病が完治せず、後遺障害が残ってしまったことによる精神的苦痛に対する賠償金です。

裁判所では、交通事故の被害者に支払うべき後遺障害慰謝料について、障害の内容や程度に応じて1~14級に分類された「後遺障害等級」に応じて基準が定められています。

うつ病は非器質性の精神障害に分類されることから、9級、12級、または14級に該当する可能性があります。
各等級に該当する症状の内容と後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。

後遺障害等級 障害の内容 後遺障害慰謝料
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 690万円
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの 290万円
14級9号 局部に神経症状を残すもの 110万円

労災としてのうつ病による後遺障害についても、これらの等級に相当すると判断されれば等級に応じた後遺障害慰謝料の請求が認められるでしょう。

(3)死亡慰謝料の相場

死亡慰謝料とは、うつ病で死亡した被災労働者本人およびその遺族が受けた精神的苦痛に対する賠償金です。

うつ病になった従業員が自殺に追い込まれたような場合、うつ病の原因と自殺という結果との間に因果関係が認められると死亡慰謝料の支払い義務が生じます。

死亡慰謝料の金額は被災労働者の家庭内での立場に応じて算出されるのが一般的であり、裁判所の基準では以下の金額が目安とされています。

被災労働者の立場 死亡慰謝料
一家の支柱 2800万円
母親、配偶者 2500万円
その他(独身者、高齢者、子どもなど) 2000~2500万円

例えば、妻子を扶養していた男性会社員が自殺した場合は、2800万円が死亡慰謝料の相場となります。

3.労災としてのうつ病の慰謝料が増額・減額される要素

前章で紹介した慰謝料相場は、あくまでも目安に過ぎません。
実際には、個別の事案ごとにさまざまな事情を総合的に考慮して慰謝料が算出されるため、相場よりも増額されるケースもあれば減額されるケースもあります。

慰謝料が増額される要素の代表的なものとして、以下のようなものが挙げられます。

  • ハラスメントなどの加害行為の態様が悪質だった
  • 加害行為が長期間にわたって継続していた
  • 複数の上司や同僚から加害行為を受けていた
  • 退職に追い込まれたなど被害が大きい

一方で、次のような要素が認められる場合には、慰謝料を減額できる可能性があるでしょう。

  • 業務上の指示に従わなかったなど、パワハラを受けた被災労働者にも落ち度がある
  • 無断で長時間の残業を行っていた
  • 加害者や使用者が真摯に謝罪した
  • 業務上のストレスだけでなく離婚や借金など個人的な事情もうつ病の発症原因になった

その他にも、さまざまな要素によって慰謝料が増額または減額される可能性があります。
慰謝料を適切な金額で取り決めるためには、労使紛争や労働問題に強い弁護士に相談して専門的なアドバイスを受けた方がよいでしょう。

4.労災としてのうつ病の慰謝料に関する注意点

労災認定を受けた従業員からうつ病の慰謝料を請求された場合は、慰謝料相場の他にも以下の点に注意する必要があります。

  • 労災認定を受けると慰謝料請求も認められやすくなる
  • 慰謝料請求権には時効がある
  • 示談交渉で慰謝料を減額できる可能性がある

(1)労災認定を受けると慰謝料請求も認められやすくなる

被災労働者が労災認定を受けると、慰謝料請求も認められやすくなる傾向にあります。
労働基準監督署と裁判所の判断は別ですが、業務が原因でうつ病を発症したことが労働基準監督署の調査によって認められたのであれば、裁判所でも同様の事実が認定される可能性が高いからです。

なかには民事訴訟で新たな証拠を提出することにより慰謝料請求を棄却できるケースもありますが、多くの場合は困難です。
労災認定を受けた後は事実を争うよりも、被災労働者との示談交渉によって妥当な解決を目指す方が得策となるケースが多いです。

慰謝料問題で会社が不利にならないためには、労災申請の際に「意見申出制度」(労災保険法施行規則第23条の2)を活用して、労働基準監督署の適切な判断を求めた方がよいケースもあるでしょう。

(2)慰謝料請求権には時効がある

慰謝料請求権には時効があります。そのため、被災労働者がうつ病を発症して何年も経過してから慰謝料を請求してきた場合には、消滅時効を援用することによって慰謝料の支払いを拒否できる可能性もあります(民法第145条)。

慰謝料請求権の時効期間は、使用者責任に基づく場合は被災労働者が損害および加害者を知ったときから3年(民法724条1号)、生命や身体を侵害する不法行為では5年(民法724条の2,2020年3月31日以前に不法行為が行われた場合は3年)です。

安全配慮義務違反に基づく場合は、請求権を行使できることを被災労働者が知ったときから5年(民法166条1項1号、2020年3月31日以前に知った場合は10年)が慰謝料請求権の時効期間となります。

このように時効に関するルールは複雑なので、消滅時効が気になる場合は労働問題に強い弁護士に相談して確認した方がよいでしょう。

(3)示談交渉で慰謝料を減額できる可能性がある

会社が慰謝料の支払い義務を免れない場合でも、被災労働者との示談交渉によって慰謝料を減額できる可能性があります。

示談とは、法的トラブルの当事者が話し合い、合意によって解決することです。示談する条件として慰謝料の金額を取り決めることになりますが、双方が合意すれば自由に金額を決めることができます。

一般的には、民事訴訟で争うよりも示談をした方が低額の慰謝料で解決できることが多いです。
そのため、うつ病の発症について会社に責任があると考えられる場合には、謝罪するなどして誠実に交渉し、被災労働者の納得を得て妥当な慰謝料額での示談成立を目指した方がよいでしょう。

労働問題に強い弁護士に示談交渉を依頼すれば、豊富な経験に基づく交渉力をもって、会社にとって有利な条件での示談成立が期待できます。

5.うつ病の慰謝料請求で困ったときはベリーベスト法律事務所がおすすめ

うつ病になった従業員からの慰謝料請求を受けて困ったときは、ぜひ一度、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。

当事務所には、労災や慰謝料請求をはじめとする労働問題を解決に導いてきた実績が豊富にございます。
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当事務所の弁護士にご依頼いただければ、被災労働者との示談交渉から必要に応じて民事訴訟への対応までを全面的にお任せいただけます。
これから労災申請をお考えの場合には、慰謝料問題で会社が不利にならないように労災の申請手続きをお任せいただくこともできます。

オフィスは全国74拠点を展開しており、各主要都市に拠点が存在するため、全国対応が可能です。

早期にご相談いただいた方が幅広い選択肢の中から最適な解決方法をご提案できますので、なるべく早めのご相談をおすすめします。

まとめ

労災保険からは慰謝料が支払われないため、うつ病で労災認定を受けた従業員が会社に対して慰謝料を請求するケースが多々あります。

労災に認定された場合、会社としては慰謝料の支払い義務を免れないケースも少なくありません。
多くの場合は、慰謝料相場を参照しつつも、被災労働者との示談交渉によって妥当な慰謝料額を取り決めることが得策となります。

対応を誤ると民事訴訟に発展して労力やコストの負担が増大することにもなりかねません。
うつ病の慰謝料請求でお困りの際は、労使紛争や労働問題に強い弁護士へ早めにご相談ください。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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