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カスタマーハラスメントの相談窓口はどこ?社内に設置すべき理由も解説

2024年10月4日
カスタマーハラスメントの相談窓口はどこ?社内に設置すべき理由も解説

近年、顧客から企業に対する理不尽なクレームなどのカスタマーハラスメント(カスハラ)の問題が深刻化しています。

カスハラを放置すると、精神的なダメージを受けた従業員が離職したり、企業の業績が悪化したりして、深刻な被害を受けることにもなりかねません。
このようなカスハラ被害を回避するためには、従業員や事業主がすぐに相談できる窓口を知っておくことが重要です。

そこで今回は、実際にカスハラ被害を受けてお困りの経営者の方や、カスハラ対策の構築をお考えの事業者の方のために、以下の事項について分かりやすく解説します。

  • 事業主や従業員が利用できる外部のカスハラ相談窓口
  • 社内にもカスハラ相談窓口を設置すべき理由と設置する方法
  • 社内のカスハラ相談窓口を有効に活用する方法

現在の社会状況において、カスハラ対策を構築することは急務となっています。
カスハラ問題で専門家へのご相談をお考えなら、企業法務に強い弁護士へお問い合わせください。

1.企業がカスハラ問題で利用できる相談窓口5選

企業がカスハラ問題で利用できる相談窓口として、以下の5つが挙げられます。

ここに掲げた相談窓口はいずれも、カスハラ被害を受けた従業員が直接相談することもできますし、事業主や人事・労務の担当者などが相談することも可能です。
社内のみでの対応が難しいと感じたときは、積極的に利用するとよいでしょう。

  1. 総合労働相談コーナー
  2. ハラスメント悩み相談室
  3. こころの耳
  4. 警察
  5. 弁護士

(1)総合労働相談コーナー

総合労働相談コーナーは、各都道府県の労働局や労働基準監督署内などに設置されている相談窓口です。
労働問題について、専門の相談員があらゆる相談を受け付けています。

カスハラ問題について相談すると、一般的な解決方法を提案してもらえますが、直接的にトラブル解決を図ってくれるわけではありません。
具体的な対処が必要な場合には、弁護士会や裁判所など他の紛争解決機関を紹介されることもあります。

受付時間や相談方法は窓口によって異なりますが、基本的に平日の9時ころ~17時ころの間に、面談による相談となっています。
予約制ではありませんが、相談員が不在のときもあるので、事前の電話連絡が推奨されていることにご注意ください。

総合労働相談コーナーは無料で利用できるので、とりあえず相談してみたい場合に問い合わせてみるとよいでしょう。

(2)ハラスメント悩み相談室

ハラスメント悩み相談室は、厚生労働省が委託事業として設置した、ハラスメント問題に特化した無料の相談窓口です。
カスハラ問題に関する相談も受け付けています。

相談後の対応は総合労働相談コーナーと同様、一般的な解決方法の提案にとどまり、弁護士会や裁判所などの関係機関を紹介されることもあります。

相談方法は電話(フリーダイヤル)の他、メールやSNSによる相談も可能です。
365日、24時間、相談を受け付けていて、原則として72時間以内に返信されます。

メールやSNSで気軽に相談してみたいという場合は、ハラスメント悩み相談室の利用がおすすめです。

(3)こころの耳

こころの耳は、働く人のメンタルヘルスに関する情報を提供するために、厚生労働省が運営しているポータルサイトです。
メンタルヘルスに関する相談も、無料で受け付けています。

労働者やその家族は、主に労働問題を原因とする心の悩みについて相談できます。
さまざまな悩みに耳を傾けてもらえますが、具体的なトラブルの解決方法や、精神疾患の治療方法などに関するアドバイスは得られません。

事業主や人事労務の担当者が相談した場合には、従業員のメンタルヘルスケアに役立つ情報を提供してもらえます。

相談方法は電話(フリーダイヤル)の他、メールやSNSによる相談も可能です。

顧客からのカスハラ行為を受けて精神的なダメージを負った従業員の方が、悩みを聞いてほしいという場合には、こころの耳の利用がおすすめです。

(4)警察

以下のような犯罪に該当するカスハラが発生した場合は、警察への相談が有効です。

  • 脅迫罪…大声で従業員を怒鳴りつけた場合など
  • 侮辱罪…店内で特定の従業員を誹謗中傷した場合など
  • 強要罪…従業員に土下座による謝罪を強要した場合など
  • 恐喝罪…言いがかりで金品を要求した場合など
  • 暴行罪…従業員に暴力を振るったり、物を投げつけたりした場合など
  • 傷害罪…暴行の結果、従業員が負傷した場合
  • 威力業務妨害罪…店内での恫喝や執拗なクレームの電話などで業務遂行に支障をきたした場合
  • 信用毀損罪…SNSなどで企業や従業員に関する悪評を拡散した場合など
  • 建造物侵入罪…言いがかりをつける目的で社屋に立ち入った場合など
  • 不退去罪…社屋からの退出を求められても従わず居座った場合など
  • ストーカー規制法違反…従業員に対するつきまといや待ち伏せを行った場合など

カスハラで成立する犯罪は他にも考えられますが、悪質性が高いと感じた場合はすぐ警察に連絡しましょう。
緊急を要する場合は110番へ、継続的なカスハラで悩んでいる場合は「#9110」への電話連絡をおすすめします。

ただし、犯罪が成立しないと判断された場合は民事の問題となるため、警察では対応できません。

(5)弁護士

カスハラ問題に対処するための最も有効な相談窓口は、弁護士です。

弁護士は、警察が対応できない民事の問題についても個別に対応してくれます。
相談するだけでも適切な解決方法を状況に応じて提案してもらうことが可能です。
具体的な対処が必要な場合には、カスハラ顧客への警告や交渉から、民事裁判、刑事告訴などの法的措置までを依頼することもできます。

企業法務の実績が豊富な弁護士に相談すれば、カスハラ被害を防止するためのアドバイスを受けることも可能です。

カスハラ問題の悩みを抜本的に解決するためにも、困ったときはまず弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士への相談は原則として有料ですが、無料相談を受け付けている弁護士もいます。
顧問契約を結べば、一定回数の相談が無料となることもあります。

2.従業員向けのカスハラ相談窓口は社内にも設置すべき

従業員をカスハラから守るための相談窓口は、社内にも設置しておくべきです。

ここでは、その理由とメリット、社内に相談窓口を設置する方法について解説します。

(1)社内に相談窓口を設置しなければならない理由

社内に相談窓口を設置しなければならない理由をひとことで言えば、従業員をカスハラ被害から守るためです。

カスハラ顧客に直接対応するのは、現場の従業員です。
従業員が対応に困った場合には外部の相談窓口を利用することも可能ですが、心理的なハードルが高いと感じる従業員もいるでしょう。
外部に相談したとしても、すぐにトラブルを解決してもらえる可能性は低いです。

このような場合には、従業員1人で対応させるのではなく、上司やクレーム処理担当者などにすぐ連絡してもらい、組織的に対応することが重要となります。
そのための仕組みとして、社内に相談窓口の設置が必要です。

また、社内にカスハラ相談窓口を設置することは、法律上の要請でもあります。

労働施策推進法第30条の2第3項に基づき厚生労働省が策定した、いわゆる『パワハラ防止指針』で、カスハラ対策としての相談窓口を社内に設置することも推奨されました。

厚生労働省はさらに、カスハラが社会問題化したことから『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』を策定し、その中でもカスハラ対策としての相談窓口を社内に設置することを推奨しています。

現時点で、カスハラ相談窓口の社内設置が義務付けられているわけではありません。
しかし、労働者からの相談に応じて適切に対応するための体制を整備しておかなければ、安全配慮義務(労働契約法第5条)違反により企業が従業員に対して損害賠償責任を負う可能性もあります。

上記内容を考慮すると、社内にカスハラ相談窓口を設置することは必須といっても過言ではありません。

(2)社内に相談窓口を設置するメリット

社内にカスハラ相談窓口を設置することで、従業員にとっても企業にとっても、以下のように大きなメリットが得られます。

①従業員にとってのメリット

  • いつでも相談できる
  • 気軽に相談できる
  • 業務内容が分かっているので悩みを理解してもらいやすい
  • カスハラ顧客への対応を上司や担当者に任せられる
  • カスハラに1人で対応する必要がなくなるため、働きやすくなる

②企業にとってのメリット

  • 従業員から相談してもらうことでカスハラの実情を把握できる
  • 迅速に対処することでトラブルの深刻化を回避できる
  • 相談事例を蓄積することで、社内での啓発活動につなげることができる

(3)社内に相談窓口を設置する方法

社内の相談窓口といっても、必ずしもカスハラ専用の部署を設ける必要はありません。
最も重要なことは、従業員が悩んだり、顧客対応に困ったりしたときに、誰に連絡すればよいのかを明確にしておくことです。

そのためには、上司やクレーム処理担当者などの中から相談対応者を決めておく必要があります。
相談対応者は従業員の悩みに耳を傾けるだけでなく、カスハラが発生した際には現場に急行して顧客に対応できる人でなければなりません。

カスハラはいつ発生してもおかしくないので、従業員がいつでも相談できるように、相談対応者は複数名を指定しておいた方がよいでしょう。

また、カスハラで精神的なダメージを受けた従業員のメンタルヘルスを適切に行うために、産業医や精神科医等とも連携することが望ましいです。

3.社内に設置した相談窓口を有効に活用する方法

社内にカスハラ相談窓口を設置しても、名ばかりの窓口では従業員を守ることができません。
相談窓口を有効に活用するためには、以下の3つのことが重要です。

(1)カスハラ対策マニュアルを作成する

相談窓口の設置と併せて、カスハラ対策マニュアルを作成しましょう。

このマニュアルの中に相談窓口の連絡先や、どのような場合に相談すればよいのかなども記載し、全従業員に周知・徹底することです。
そうすることで、従業員が相談窓口を利用しやすくなります。

マニュアルには、その他にもカスハラに対する企業としての基本方針や、カスハラの判断基準と具体例、カスハラが発生した場合の対応の手順など、さまざまな事項を記載すべきです。

厚生労働省が策定した『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』を参照しながら、自社の実情に応じたマニュアルを作成するとよいでしょう。

参考:厚生労働省|カスタマーハラスメント対策企業マニュアル

(2)定期的に研修を実施する

マニュアルを作成したら、それに基づく社内研修を定期的に実施しましょう。

研修では、顧客と日々接する従業員に向けて、顧客への対応に関する基本ルールや、カスハラの判断基準、困ったときの連絡先や連絡方法などを分かりやすく伝える必要があります。

それと併せて相談対応者向けに、従業員から相談を受けたときの対応に関するルールを伝えて、対応のスキルアップを図らなければなりません。
なぜなら、相談対応者のスキルが高くなければ、相談窓口が有効に機能しないからです。

なお、従業員向けの研修と相談対応者向けの研修は、同時に行っても差し支えありません。

(3)弁護士へ相談できる体制を整えておく

カスハラ相談窓口は社内に設けるべきですが、困ったときは弁護士へすぐ相談できる体制も整えておくことが望まれます。

実際に生じたトラブルがカスハラに該当するかどうかの判断に悩む場合もあるでしょう。
社内の人材だけでは適切に対応しきれない、悪質なカスハラ事案も少なくないと考えられます。

社内だけで問題を抱え込むとトラブルが深刻化するおそれがあるので、困ったときは弁護士のサポートを受けましょう。
従業員にとっても、最終的には弁護士がトラブルの解決を図ってくれるという安心感から、働きやすくなるはずです。

なお、外部の弁護士には、すぐに相談できるとは限りません。
できる限り顧問弁護士の契約をして、困ったときにはすぐ相談できるように連携しておくことをおすすめします。

4.企業がカスハラ問題で弁護士に相談するメリット

本記事ではカスハラの相談窓口をご紹介しましたが、企業の相談先としては弁護士が最適です。
カスハラ問題で弁護士に相談することにより、以下のメリットが得られます。

  • 実際に発生したトラブルがカスハラに該当するかどうかを判断してもらえる
  • カスハラ顧客への適切な対応方法についてアドバイスしてもらえる
  • 従業員からの相談への適切な対応方法についてもアドバイスしてもらえる
  • カスハラ顧客との交渉や法的措置を代理してもらえる
  • 万が一、被害を受けた従業員から損害賠償請求を受けた場合に、適切な解決に導いてもらえる
  • カスハラ対策マニュアルの作成やカスハラ対策の体制の整備をサポートしてもらえる
  • 社内研修の助言を得たり、講師を依頼したりできる

企業法務に強い弁護士に相談すれば、このようにカスハラ問題全般についてトータルでサポートを受けることも可能です。

まとめ

カスハラ問題では外部の相談窓口を利用することもできますが、社内に相談窓口を設置することも欠かせません。

従業員をカスハラから守るためには、弁護士の力を借りることが効果的です。

企業法務に強い弁護士へ相談すれば、企業ごとの実情に応じたカスハラ対策に関する具体的なアドバイスが期待できます。
社内相談窓口の設置などカスハラ対策をお考えなら、お気軽に弁護士へご相談ください。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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