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セクハラ対策を弁護士に依頼すべき3つの理由とは?メリットも解説
すべての企業は、職場におけるセクハラを防止する対策を講じることを法律で義務づけられています。
しかし、多忙などの理由で十分な対策を講じることができていない企業も多いのではないでしょうか。
セクハラ問題を放置すると、従業員のモチベーションが低下して生産性が落ちるだけでなく、会社が損害賠償請求を受けたり、企業イメージが低下したりするおそれがあります。
重大なダメージを回避するためにも、社内でセクハラ対策の構築が進まない場合は、弁護士の力を借りた方がよいでしょう。
今回は、企業がセクハラ対策を弁護士に依頼すべき具体的な3つの理由と、弁護士への依頼で得られるメリットについて解説します。
1.企業がセクハラ対策を弁護士に依頼すべき理由
企業がセクハラ対策を弁護士に依頼すべき理由として、次の3点が挙げられます。
- セクハラ対策は企業の法的義務だから
- セクハラ対策には専門的な知識と経験を要するから
- セクハラが発生した場合には法的対応が必要となるから
特に、法務部がない中小企業では、弁護士のサポートを受ける必要性が高いといえるでしょう。
(1)セクハラ対策は企業の法的義務だから
男女雇用機会均等法第11条第1項により、事業主は、職場におけるセクハラを防止するための措置を講じるべきことが義務づけられています。
具体的には、同条4項に基づき厚生労働省が策定した、いわゆる「セクハラ防止指針」に従い、様々な措置を講じる必要があります。
参考:厚生労働省|事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針等の一部を改正する告示
セクハラ防止指針のとおりに対策を講じなくても、罰則はありません。
しかし、十分な対策を講じない状態でセクハラ被害が発生したとなれば、会社が安全配慮義務(労働安全衛生法第5条)違反に基づく損害賠償義務を負ったり、労働基準監督署により企業名を公表されたりするおそれがあります。
そのため、セクハラ防止指針で定められた措置は最低限講じるべきですが、その内容は複雑であり、やるべきことは多岐にわたります。
的確な措置を講じるためには、法律の専門家である弁護士のサポートを受けるべきといえるでしょう。
(2)セクハラ対策には専門的な知識と経験を要するから
企業が講じるべき措置の具体的な内容は後述しますが、例えば、セクハラに該当する言動を明確化して、従業員に周知・啓発しなければなりません。
これだけでも、セクハラに関する専門的な知識を要します。
また、セクハラ被害に遭った従業員からの相談に応じて、適切に対応することも必要です。
そのためには、専門的な知識に加えて経験も要求されます。
社内にセクハラに関する専門的な知識と経験を豊富に有する人材がいればよいですが、適任者が見当たらないことも多いでしょう。
しかし、弁護士に依頼すれば、その専門的な知識と経験に基づき、適切なセクハラ対策を構築することが可能となります。
(3)セクハラが発生した場合には法的対応が必要となるから
社内でセクハラが発生した場合、会社が被害者から損害賠償請求を受けることもあります。
その場合には、被害者と和解交渉をしたり、裁判に応訴したりなどの法的対応が必要となります。
具体的には、まず被害者や目撃者などの関係者から事情を聞き取り、会社に安全配慮義務違反(労働安全衛生法第5条)や使用者責任(民法第715条1項)といった法的責任が認められるかどうかの検討が必要です。
法的責任を回避できない場合は、被害者に謝罪した上で、妥当な条件での和解を目指して交渉することになるでしょう。
会社の法的責任が認められないと考えられる場合には賠償金の支払いを拒否すべきですが、被害者が裁判を起こした場合は応訴しなければなりません。
その場合には、被害者が裁判所へ提出する主張や証拠に応じて、会社側も反論の主張や証拠を提出していく必要があります。
このような法的対応を、法律の素人が的確に進めることは困難といえます。
法的対応は、法律の専門家である弁護士に任せるべきです。
2.企業がやるべきセクハラ対策
企業がやるべきセクハラ対策としては、厚生労働省のセクハラ防止指針を参照しつつ、各企業の実情に応じて様々な措置を講じていくことになります。
セクハラ防止指針では、事業主は以下の措置を講じるべきとされています。
- 事業主の方針の明確化と従業員への周知・啓発
- 相談に適切に対応できる体制の整備
- セクハラ発生時の迅速かつ適切な対応
- 関係者のプライバシーを保護するための措置
- 相談等により不利益な取り扱いを受けないことの周知・啓発
それぞれの措置について、具体的にみていきましょう。
(1)事業主の方針の明確化と従業員への周知・啓発
まずは、職場におけるセクハラを許さないという事業主の方針を明確化し、管理監督者を含む全従業員に周知・啓発しなければなりません。
その前提として、セクハラに該当する言動の内容や具体例もピックアップし、明確に示す必要があります。
また、セクハラを行った者に対して厳正に対処する旨の方針と懲戒規定も定め、その内容を全従業員に周知・啓発することも必要です。
周知・啓発の方法としては、就業規則その他の服務規律に規定した上で、社内報、パンフレット、社内ホームページ等に掲載して配布・配信することや、社内研修を実施することなどが有効です。
(2)相談に適切に対応できる体制の整備
職場におけるセクハラを禁止したとしても、実際にはセクハラが発生する事態も想定しておかなければなりません。
そのため、被害に遭った従業員が相談できる窓口を設置しておくとともに、相談に対しては、その内容や状況に応じて適切に対応できる体制を整備しておく必要があります。
セクハラの相談に適切に対応するためには、専門的なスキルが要求されます。
従業員向けの社内研修とは別に相談窓口担当者向けの専門的な研修を実施したり、あるいは専門の外部相談窓口への委託を検討したりする必要があるでしょう。
(3)セクハラ発生時の迅速かつ適切な対応
万が一、職場でセクハラが発生した場合には、事後の迅速かつ適切な対応が求められます。
具体的には、まず事実関係を正確に確認しなければなりません。
そのためには、相談者、加害者(とされる者)、周囲の第三者などから丹念に事情を聞き取るなどの事実調査を速やかに行う必要があります。
セクハラの事実が認められた場合には、被害者に対する適正な配慮の措置をとらなければなりません。
具体的には、加害者に謝罪させたり、配置転換によって被害者と加害者を引き離したり、被害者のメンタルケア(カウンセリングの利用など)をサポートしたりすることなどが考えられます。
加害者に対しては、就業規則その他の服務規律の規定に従い、懲戒処分などの措置を厳正かつ適正に行う必要があります。
そして、再発防止のための措置をとることも必要です。
その方法としては、社内報、パンフレット、社内ホームページ等の配布・配信や、社内研修の実施などを改めて行うことが考えられます。
(4)関係者のプライバシーを保護するための措置
セクハラに関する相談内容には、相談者や加害者(とされる者)など関係者のプライバシーにかかわる情報が含まれます。
そのため、相談への対応や事後の対応に当たっては、関係者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じなければなりません。
その方法としては、プライバシー保護のために必要な事項をあらかじめ相談対応マニュアルに定めておくとともに、相談窓口の担当者向けに必要な研修を実施することが考えられます。
また、従業員が安心して相談できるようにするため、関係者のプライバシーが保護される旨を社内報、パンフレット、社内ホームページ等により全従業員に周知しておくことも必要です。
(5)相談等により不利益な取り扱いを受けないことの周知・啓発
セクハラに関する相談をしたことで、減給や降格、解雇などの不利益な取り扱いを受けることがあったのでは、従業員は安心して相談することができません。
また、事情聴取等による事実確認に協力したことで、不利益な取り扱いを受けることがあったのでは、事実を知っている従業員も話しにくくなります。
このような状況では、企業がセクハラの事実を把握して適切な対応をとることは困難です。
そこで、相談や事実確認への協力等を理由に不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、その旨を全従業員に周知・啓発しておく必要があります。
具体的には、就業規則その他の服務規律において、セクハラに関する相談や、事実確認への協力をしたことを理由として減給や降格、解雇などの不利益な取り扱いを受けることはない旨を規定し、社内報、パンフレット、社内ホームページ等で周知することが考えられます。
3.セクハラ対策を弁護士に依頼する具体的なメリット
前項で紹介した5つの措置を一通り講じれば、事業主に課せられたセクハラ対策の法的義務は果たしたことになります。
しかし、すべての措置を万全に講じることは難しいと感じる方が多いのではないでしょうか。
その点、セクハラ対策を弁護士に依頼すれば、以下のメリットが得られます。
- 社内体制の構築についてアドバイスが受けられる
- 社内研修の講師を務めてもらえる
- 被害者・加害者への対応を任せられる
- 従業員が安心して働けるようになる
- セクハラの法的リスクを最小限に抑えて健全な経営につながる
(1)社内体制の構築についてアドバイスが受けられる
まず、セクハラの防止や事後の対応に必要な社内体制の構築について、専門的なアドバイスが受けられます。
そのため、「どうすればよいのかが分からず、セクハラ対策の構築が進まない」といった事態を回避できます。
具体的には、事業主の方針やセクハラの内容の明確化から相談への対応方法、事後の対応方法まで、会社の実情に応じてマニュアル化する作業をサポートしてもらえます。
相談窓口担当者が知っておくべき知識や習得すべきスキル、事後の対応における注意点などについても、具体的なアドバイスが得られます。
(2)社内研修の講師を務めてもらえる
セクハラを防止するためには、従業員向けの社内研修を定期的に実施し、必要な知識を周知・啓発するとともに、「セクハラを許さない」という風土を形成することが大切です。
しかし、研修を実施するためには体系的な専門知識が要求されますし、充実した研修を定期的に実施するとなれば、その準備のために多大な労力や時間も要します。
そんなときは、セクハラ研修の講師は弁護士に任せることも可能です。
企業法務の経験が豊富な弁護士に社内研修の講師を依頼すれば、法的なポイントを的確に押さえた内容で、実践的な研修を実施してもらえます。
セクハラの防止に大きく役立つことでしょう。
(3)被害者・加害者への対応を任せられる
セクハラが発生してしまった場合には、被害者・加害者(とされる者)への対応を弁護士に任せることができます。
この点、社内の担当者が対応するとすれば、担当者に専門的な知識やスキルが不足する場合には被害者への対応を誤り、二次被害を招くことにもなりかねません。
加害者(とされる者)への対応を誤ると、言い逃れを許してしまうおそれや、逆に加害者と決めつけて追及することで名誉毀損などの問題を招くおそれもあります。
セクハラへの事後の対応には高度な専門知識・スキルが要求されますので、法律の専門家である弁護士に任せた方が賢明です。
(4)従業員が安心して働けるようになる
弁護士の主導でセクハラ対策を講じていれば、従業員にも安心感と信頼感を与えることができます。
社内の人員のみで対応している場合は、会社の実情にもよりますが、従業員が「万が一、セクハラ被害を申告しても何もしてくれないのではないか」といった不安を抱えるケースが多いようです。
しかし、セクハラ対策に弁護士が関与しているとなれば、セクハラが発生した場合には厳正に対処してもらえると感じることでしょう。
その結果、従業員が安心して働けるようになり、生産性の向上につながることも期待できます。
(5)セクハラの法的リスクを最小限に抑えて健全な経営につながる
セクハラ対策が不十分であれば、会社は安全配慮義務違反(労働安全衛生法第5条)や使用者責任(民法第715条1項)に基づく損害賠償責任を負うリスクがあります。
その他にも、労働基準監督署による行政処分や、企業イメージ低下のおそれもありますし、そもそもセクハラが横行する職場では従業員のモチベーションが低下などによる業績悪化の可能性があります。
しかし、弁護士に依頼して万全なセクハラ対策をとることで、セクハラ防止の効果を最大限に高めることができます。
万が一、セクハラが発生してしまった場合も事後の対応を弁護士に任せることで、会社が被るダメージを最小限に抑えることが可能です。
弁護士にセクハラ対策を依頼することで、セクハラの法的リスクを最小限に抑えて健全な経営の維持につながるといえるでしょう。
4.企業のセクハラ対策を相談するならベリーベストの顧問弁護士契約がおすすめ
企業のセクハラ対策を相談する際には、弁護士選びも重要です。
セクハラ問題に精通した弁護士に相談しなければ、万全なセクハラ対策をとることは困難だからです。
また、効果的なセクハラ対策を構築するためには、弁護士に会社の実情を把握してもらうことも必要です。
この観点からは、普段から会社の実情を熟知している顧問弁護士にセクハラ対策を依頼するのが望ましいといえます。
セクハラ対策で弁護士へのご相談をお考えなら、ベリーベスト法律事務所の顧問弁護士契約がおすすめです。
当事務所には顧問企業数1,900社以上(2024年9月3日時点)の豊富な実績があり、ハラスメント対策に関する専門的な知識やノウハウも蓄積されています。
顧問弁護士の契約をしていただければ、豊富な専門知識・経験に基づき、会社の実情に応じたセクハラ対策の構築を継続的にサポートいたします。
顧問弁護士の費用については、月額3980円から豊富なプランをご用意しています。
ご契約前の初回相談は30分まで無料なので、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
企業がやるべきセクハラ対策の内容は、厚生労働省が策定したセクハラ防止指針で示されています。
しかし、この指針を読んだだけで、会社の実情に応じた実践的な対策を講じるのは難しいことも多いでしょう。
そんなときは、悩まず弁護士の力を借りることをおすすめします。
弁護士の主導でセクハラ対策を講じることにより、企業の法的リスクを最小限に抑えることができますし、従業員にも安心感と信頼感を与えることにつながります。
セクハラ対策は、企業の法的義務です。企業法務の経験が豊富な弁護士へ早めにご相談の上、万全な対策を講じていきましょう。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています