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話し合いでの解決~民事調停や国際調停の活用~

2019年10月24日
話し合いでの解決~民事調停や国際調停の活用~

1.はじめに

一般的に、債権回収などの紛争処理について弁護士に依頼する場合、訴訟をイメージされる方々が多いと思われます。
確かに、一般的には弁護士に依頼した場合、最終的には訴訟による解決を図り、判決をもって強制的に債権を回収するという流れになります。

もっとも、訴訟になった場合、弁護士費用や訴訟費用が高額になる傾向がありますし、また、訴訟の相手方はいわば「敵」になってしまい、取引先を失うことになります。
そのため、訴訟をすることを躊躇する方もいらっしゃると思います。

しかし、紛争解決の手段には「訴訟」のように「戦い」によって解決する手段だけではなく、「調停」という「話し合い」によって解決する手段もあります。
事案によっては、話し合いによって解決を図るのが適切な場合もあります。
そこで、今回は話し合いでの解決を目的とする民事調停及び国際調停についてご紹介したいと思います。

 

2.民事調停

民事調停

(1)民事調停の概要

民事調停は訴訟と同様に裁判所に出廷しますが、訴訟のように当社者がそれぞれの主張を繰り広げるわけではなく、中立的な立場として裁判官と調停委員が当事者の間に入って、話し合いを行います。

調停の具体的な手続きの流れは、当事者が交互に調停委員に意見を伝えて、調停委員は当事者の意見から妥協点を探り、様々な解決案を出す、とうふうになります。

また、訴訟になった場合の見通しも裁判官から伝えられる場合がありますので、当事者だけで話し合いをするよりも妥協点を見つけやすく、相手方も訴訟をしてもメリットがないと理解し、妥協をしてくる可能性があります。

一方、訴訟は、裁判官が当事者の主張及び証拠からどちらの主張が適法かを判断し、判決という形で解決をします。
例えば、原告は被告に1000万円を支払え、というように勝ち負けが明確になる解決方法をとることになります。
他方、調停では、訴訟のように金銭的解決に至る場合もありますが、当事者の意向によっては、取引の継続を妥協案として出されるなど、判決ではとり得ない解決方法をとる場合もあります。

さらに、民事調停では一般的に以下のようなメリットがあります。

(2)民事調停のメリット

①早期解決が期待できる

民事調停は基本的には調停委員を交えての当事者の話し合いですので、話し合いがすぐにまとまれば、早期に解決することができます。
事案にもよりますが、概ね3か月程度での紛争解決が見込まれます。
また、取引の継続など柔軟な解決方法を採用することができますので、金銭的解決を必ずしもする必要がないことから、早期の解決に至りやすいといえます。

一方、訴訟になると判決が出るまでは通常は1~2年はかかるので、紛争解決が長期になることを覚悟しなければなりません。

②秘匿性が守られる

民事調停は原則として公開されません。
そのため、紛争が生じていることが、第三者に知られる可能性がなく、会社のレピュテーションが守られます。
また、会社の企業機密も公の目に触れることはありません。
特に中小企業にとっては、会社の生命線ともいえる特許の内容が第三者に知られるリスクがありません。

一方、訴訟になると、原則として公開されますので、紛争が生じていることが、第三者に知られる可能性があり、会社の信用が下がる可能性があります。
また、会社の企業機密が公に晒される可能性もあります。

③訴訟に比べて費用を抑えられる

一般に、民事調停は訴訟に比べて費用を抑えることができます。
例えば、500万円の債権を請求した場合、訴訟だと3万円、民事調停だと1万5000円、1000万円の債権を請求した場合、訴訟だと5万円、民事調停だと2万5000円と訴訟費用は裁判と比べて半額程度に抑えられます。

また、上述したように、民事調停だと早期解決が期待できますので、弁護士費用も抑えることができます。

④民事調停での合意の効力は判決と同じ

民事調停において当事者によって形成された合意には、訴訟における判決と同一の効力があります。
そのため、一度、民事調停での話し合いで決まった合意に基づいて強制執行をすることができます。

⑤取引相手と円満な関係を続けられる可能性がある

民事調停では、手続き自体が、話し合いでの解決を目的としていますので、調停の内容次第で調停終了後も相手方と円満な関係が続き、取引が継続される場合もあります。

一方、訴訟をすると、相手は「敵」になりますので、相手との人間関係は悪化しやすく、訴訟終了後に関係が続くことはほとんどありません。

(3)民事調停のデメリット

①和解に至らなければ調停は終了する

民事調停では、あくまで話し合いの場であるため、当事者は、調停委員から提案された調停案を拒むことができます。
この場合、調停が不成立となり、その後は訴訟提起をするか検討することになります。

一方、訴訟は途中で当事者が和解に至らなければ、最終的には判決が出て紛争が解決されますので、必ず何らかの解決が出る手続きということができます。

②相手に欠席されたら調停は終了する

民事調停にそもそも欠席された場合、相手方を強制的に出頭させる手立てがないので、話し合いが行われずに調停が終了します。
一方、訴訟では、相手が欠席した場合、欠席判決により原告の主張通りの判決が出ます。

(4)民事調停のまとめ

上記のように、民事調停は、秘匿性の保持などのメリットがある一方、相手方が和解に応じる姿勢がなければ、調停が不成立になり、結局は訴訟提起をせざるを得ません。
そのため、民事調停をするかは、こちらも譲歩できる点があり、かつ、相手がそれに応じるかという相手の態度の見極めが重要です。この点を見極めるために弁護士に一度ご相談されることをお勧めします。

訴訟 民事調停
コスト 高い 安い
公開性 原則として公開 原則として非公開
迅速性 遅い 速い
強制的解決の有無 有り 無し
執行力 有り 有り

3.国際調停

日本のビジネスにおいて国際取引の比重が多くなっていくと同時に、国際紛争の数も増えてきました。
国際紛争でも上述した民事調停や国内訴訟を提起するという方法もありますが、後述するようなメリットがあることから、国際紛争の場合は国際調停を利用することも検討するべきでしょう。

(1)国際調停の概要

国際調停とは「企業間の国際取引」の紛争を「話し合い」で解決するための手段です。
民事調停との大きな違いは、裁判所に出頭するのではなく、民間の機関である国際調停センターという場所で実施します。

また、民事調停は訴訟と比較されるのに対し、国際調停は国際仲裁と比較されます。
国際仲裁は民間の機関であることは国際調停と同様ですが、国際調停が話し合いでの解決を目的とするのに対し、国際仲裁は訴訟でいう判決に相当する仲裁判断を出すことから、訴訟と同様に勝ち負けが明確になる点で異なります。

従来、国際調停はホテルの一室などを利用していたため、その利用料や通訳人の準備、待機室のセッティング、関係者の滞在費など多額の費用と労力がかかりました。
しかし、近年、一定の国では設備が整い、かつ、多くの調停人の名簿を確保した国際調停センターが開設されております。
例えば、日本では京都に設備が整えられ、かつ、多くの調停人の名簿を有する京都国際調停センターが開設されましたので、コストを抑えて、国際調停を実施することができるようになりました。
また、一般に国際仲裁は費用がかかること、解決に期間を要することから、近年は国際調停での解決が注目されております。

(2)国際調停のメリット

①早期解決が期待できる

通常、1~2ヶ月程度の事前準備期間は必要ですが、当事者が一堂に集まる調停期日は通常わずか1~2日で終了し、多くの場合、和解に至ります。
日本にある京都国際調停センターでも約80%以上が解決に至っている実績があります。

②秘匿性が守られる

国際調停は非公開の場で行われ、かつ、調停人には厳格な守秘義務が生じますので、調停での議論や証拠は第三者に知られることはありません。

一方、ほぼ全ての国では「裁判の公開の原則」があるので、裁判所での全て議論や証拠が公開されます。
そのため、企業機密や重要な知的財産も公にされます。また、裁判になっていることが顧客に知れれば、企業のレピュテーションが下がることを気にして、訴訟に踏み切れないこともあります。

③国際仲裁に比べて費用が抑えられる

上述のように国際調停の期日は1~2日で終了するので、滞在費や手数料、弁護士費用を節約することができます。

一方、国際仲裁は解決に長期間を要することが多いので、その分だけ上記の費用がかかることになります。

④取引相手と円満な関係を続けられる可能性がある

話し合いでの解決を目的とする点は民事調停と同様で、取引相手と今後も取引関係を続けることができる可能性があります。

⑤調停人を当事者が選ぶことができる

国際調停は調停センターの名簿に載っている弁護士など国際取引に精通した専門家を調停人として選択することができます。
これにより、事案の内容をすぐに理解してもらうことができ、結果として紛争の解決がスピーディーになります。

一方、一般的に訴訟の判断権者は裁判官で、当事者が裁判官を指名することができません。
また、担当となった裁判官が必ずしも国際取引に精通しているとは限らず、裁判官に事件の内容やポイントを理解してもらうのに時間を要する可能性があります。

判断権者を当事者が選ぶことができるという点は国内訴訟や民事調停とは大きな違いと言えます。

⑥調停手続での主張及び内容が後の手続で利用されない

国際調停では、当事者の言動や意見等が後の手続で利用されることはないので、当事者は調停人に、安心して本音を語ることができます。
このことから、当事者は本音ベースでの議論をすることができ、建前ではなく本音を反映させた和解をすることができます。

一方、訴訟のように、法廷での言動や意見等が、後の手続で利用されるとすると、当事者は後続する手続きに自己の言動や意見等が利用されるリスクを常に意識しなければならないため、当事者は本音を主張しにくく、失敗のリスクを恐れて主張が散漫になります。

(3)国際調停のデメリット

①和解に至らなければ国際調停は終了する

国際調停は、調停人が両当事者の和解をもって解決する手続きであるので、当事者が合意に至らなかった場合には和解は成立しません。
もっとも、調停の手続をしても和解を強制されないため、交渉に応じない相手方も調停になら応じる可能性があり、紛争解決に向けての入り口になることは期待できます。

一方、国際仲裁は、訴訟である判決に相当する仲裁判断を出します。
この仲裁判断には裁判所が言い渡した確定判決と同一の効力があるとされていることから、必ず何らかの判断をし、事件が終了いたします。

②外国での執行力は現在は不十分

多くの国では、手続法上、外国の判決などを自国で執行するには、自国の承認が必要とされています。
そのため、国際調停における合意を外国で執行する場合は、判決と同様に当該外国による承認が必要となります。
このとから、国際調停の合意には、外国で承認されず強制執行できないという執行リスクがあります。

この点は、国際調停と国際仲裁との大きな違いと言えます。
国際仲裁の判決は、当該外国の承認なく執行をすることができるとするニューヨーク条約があります。
かかる条約の締約国であれば、仲裁判決を当該外国の承認なく執行ができます。
そのため、強制力という点では、国際調停は国際仲裁に劣ると言えます。

もっとも、現在、国際調停における合意にも国際仲裁の判決と同様な執行力を認めるシンガポール国際商事調停条約の発効が期待されています。
かかる条約は強制執行をする財産が外国にあり、当該外国が上記条約の締約国である場合、国際調停における調停の合意が、国際仲裁と同様に、当該外国の承認なく執行することが可能になります。
これは、いわば、ニューヨーク条約の国際調停版と言うことができます。
2019年8月7日の時点で、シンガポール国際商事調停条約に、米国や中国など46か国が署名し、各国で最低3か国の批准によって上記条約が発効されることになりました。

国際調停に執行力が付与されることが予想され、国際調停の活用が注目されています。

(4)国際調停のまとめ

以上より、国際調停は、国際仲裁に比べると、現段階では執行力の点で難点があるものの、今後はシンガポール国際商事調停条約により、執行力の難点が解決される方向にあります。
国際取引においては、時間がかかり、かつコストがかかる国際仲裁よりも、迅速かつコストを抑えられる国際調停の活用が期待されております。
また、国際調停の特徴である話し合いでの解決を志向される方には勧めることができる解決方法ということができます。

国際仲裁 国際調停
コスト 高い 安い
公開性 非公開 非公開
迅速性 遅い 速い
強制的解決の有無 有り 無し
執行力 有り 現段階では無し

4.まとめ

今回は訴訟や国際仲裁などの強制的な解決方法以外の民事調停や国際調停の紹介になりました。
訴訟や国際仲裁と異なり、調停は話し合いによる解決になりますので、話し合いでの解決の可否の見極めが重要になります。
具体的な事案によって、調停を選ぶことのメリット・デメリットについて詳細に検討する必要がありますので、弁護士にご相談されることをお勧めします。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

弁護士池内 満
法政大学法学部卒業・首都大学東京社会科学研究科(法科大学院)修了。ベリーベスト法律事務所に入所後、契約書レビュー等の一般企業法務や債権回収等の一般民事事件・労働事件・家事事件と業務内容を問わず、予防法務及び紛争解決に広く関与。国際紛争にも関心を持っています。訴訟リスクに対するアドバイスの他、依頼者様のビジネスの内容や行政への対応、取引先等との関係も踏まえ、将来を予測した総合的なアドバイスをするよう心掛けています。

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