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解雇予告や解雇予告手当なしに労働者を即時懲戒解雇し得るか。

2019年3月19日
解雇予告や解雇予告手当なしに労働者を即時懲戒解雇し得るか。

労働者を解雇する場合は、解雇についてあらかじめ予告(以下「解雇予告」といいます。)をしたり、30日分以上の平均賃金(以下「解雇予告手当」といいます。)を支払ったりすることになりますが、懲戒解雇の場合には、それらが必要ないと思っておられる方もいらっしゃるかもしれません。懲戒解雇の場合には、解雇予告をせず、解雇予告手当も支払わずに、労働者を即時解雇することはできるのでしょうか。

1.原則と解雇予告除外認定

労働基準法(以下「法」といいます。)第20条第1項は、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」と規定しており、原則は懲戒解雇の場合を含む解雇全般につき、解雇予告や解雇予告手当の支払が必要とされています。

しかし、同項ただし書は、「但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。」としており、労働者側に帰責事由がある場合は、解雇予告や解雇予告手当の支払をしないでよいことになります。
そして、同条第3項では、同条第1項ただし書の場合に法第19条第2項の規定が準用されており、労働者側の帰責事由については所轄労働基準監督署長の認定(以下「解雇予告除外認定」といいます。)を受けなければなりません(労働基準法施行規則第7条)。

このような法20条の規定に違反した場合は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます(法第119条第1号)。

2.労働者の責に帰すべき事由の認定

(1)労働者の責に帰すべき事由の認定

どのような場合に、労働者側に帰責事由が認められるかについては

  • 事業場内における盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為のあった場合
  • 賭博、風紀紊乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合
  • 採用条件の要素となり、あるいは不採用の原因となるような経歴を詐称した場合
  • 他の事業場へ転職した場合
  • 2週間以上無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
  • 出勤不良又は出欠常ならず、数回に亘って注意を受けても改めない場合

などが例示されていますが、認定に当たっては、これらの例示に拘泥せず、総合的、実質的に判断することとされています。
また、就業規則に規定されている懲戒解雇事由にも拘束されるものではないとされています(昭和23年11月11日基発1637号、昭和31年3月1日基発111号)。

(2) 認定を受けるべき時期等

この認定は、「原則として、解雇の意思表示をなす前に受けるべきものであるが、・・・法第20条第1項ただし書の認定は、ただし書に該当する事実があるか否かを確認する処分であって、認定されるべき事実がある場合には使用者は有効に即時解雇をなし得るものと解されるので、即時解雇の意思表示をした後、解雇予告除外認定を得た場合はその解雇の効力は使用者が即時解雇の意思表示をした日に発生する」とされています。
ただし、「使用者が認定申請を遅らせることは、法・・・第二十条違反である。」とされていることにも留意する必要があります(昭和63年3月14日基発150号)。

3.認定行為の性質と不認定に対する抗告訴訟

解雇予告除外事由の認定がされなかった場合、その行為の取消しを求めて抗告訴訟ができるのでしょうか。

昭和28年9月28日最高裁決定は「所論長官の承認は解雇効力発生の要件ではない」としています。
上記2(2)で引用した通達(昭和63年3月14日基発150号)でも「法第20条第1項ただし書の認定は、ただし書に該当する事実があるか否かを確認する処分であって、認定されるべき事実がある場合には使用者は有効に即時解雇をなし得る」として、解雇予告除外認定がされるか否かとは別に、認定されるべき事実は別に客観的に存在するものとされています。

そして、東京地裁平成14年1月31日判決は、「抗告訴訟の対象となる公権力の行使に当たる行為とは、公権力の主体である国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうのであるから(最高裁昭和39年10月29日判決・民集18巻8号1809頁参照)、そのような意味で国民の法律上の地位に直接の影響を及ぼすものとはいえない行為は、たとえ国又は公共団体が行う行為であっても抗告訴訟の対象とはならないものと解される。・・・解雇予告除外事由の認定の制度に関する上記規定の内容、体裁等に照らして考えると、解雇予告除外事由の認定の制度は、解雇予告除外事由の存否に関する使用者の恣意的な判断を抑止するという、行政取締り上の見地から、使用者に対して解雇予告除外事由に該当する事実の存在についての行政官庁の認識の表示を受けるべきものとしたものであって、その認識の表示自体に直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することを認めているものではないと解される。
したがって、解雇の効力は行政官庁による解雇予告除外事由に関する労働基準法20条3項、19条2項の認定の有無・内容にかかわりなく、専ら同法20条1項ただし書の定める客観的な解雇予告除外事由の存否によって決せられ、使用者は、不認定行為を受けた場合であっても有効に即時解雇をすることを妨げられず、反対に認定行為を受けた場合であっても、客観的に見て解雇予告除外事由が存在しないときは、即時解雇を有効なものとすることはできないこととなるものであり、そうとすれば、行政官庁による解雇予告除外事由の認定の有無・内容は、使用者の雇用契約上の地位に何らの影響を及ぼすものではないこととなる。
もっとも、使用者は、行政官庁による不認定行為にもかかわらず即時解雇を行えば、刑事手続に付されて刑罰に処せられる可能性の存することは、労働基準法119条1号の規定内容に照らして明らかであって、不認定行為があった場合、使用者は、労働基準法20条3項違反の罪により処罰を受ける危険を冒さなければ、即時解雇をすることができないという事実上の制約を受けることは否定できない。
しかし、この場合においても、使用者が刑事手続に付されるか否かは何ら確定的なものではないし、仮に使用者が刑事手続に付された場合であっても、解雇予告除外事由の存在を主張して処罰を免れることが可能であって、不認定行為に従わないことのみをもって直ちに処罰を受けるものではないことからすれば、同法119条1号の規定内容との関係から見ても、不認定行為が使用者の法律上の地位に直接の影響を及ぼすものとはいえないというべきである。」

として、解雇予告除外事由の認定をしない旨の行為は、抗告訴訟の対象とならないものとしています。

4.まとめ

3.認定行為の性質と不認定に対する抗告訴訟」に記載した判例や通達からすれば、解雇予告除外認定は、労働者の責に帰すべき事由が客観的に存在するかを確認するものにすぎず、労働者の責に帰すべき事由が客観的に存在しているのであれば、解雇予告除外認定を受けなくても有効に即時懲戒解雇できる場合があることになります。
しかし、そのような事由が客観的に存在することの立証はかなりの困難を伴う場合もありますし、解雇予告除外認定手続を履践しない場合に罰則も規定されていることからすると、即時懲戒解雇をする場合には、解雇予告除外認定を受け、その上で解雇予告手当の支払を免れる方法をとるのが妥当と思われます。

ただ、労働基準監督署長の認定を受ける場合、「法第二十条一項ただし書による認定申請書が提出された場合には、・・・当該書面だけについて審査することなく、必ず使用者、労働組合、労働者その他の関係者について申請事由を実地に調査の上該当するか否かを判定すべきものである(昭和63年3月14日基発150号)」とされています。このため、懲戒解雇の対象者にもそのような認定申請をしていることが知られてしまうとともに、認定までにはかなり時間がかかることが予想されます。

よって、即時懲戒解雇の場合でも、実際には、多くの会社は、解雇予告除外認定を受けるよりも解雇予告手当を支払う方を選んでいるのではないかと思われます。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

弁護士本川 朱美
ベリーベスト法律事務所パートナー 東京大学 法学部、ニューヨーク大学法科大学院 修了(New York University School of Law LL.M.) 国家公務員として政府機関及び国会に勤務した後、都内の渉外・企業法務・著作権事務所に勤務し、政府機関にて条約担保法制定作業に参画後、ベリーベスト法律事務所に参画。 多国間の貿易協定に係る国内法制度のハーモナイゼーション、知財関係、政府開発援助を含む国際協力、議員立法等を担当。各国との二国間貿易会議や国連主催の開発会議などに政府メンバーとして出席。 外国企業と国内企業との取引契約等の審査、国内外の企業のregulation compliance、国内企業と外国企業とのJV設立等を中心に、外国での仲裁に係る国内での求償訴訟等の訴訟経験も積んでまいりました。
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