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相続税と贈与税の基礎知識:税率と損得比較、贈与の活用方法

2020年1月6日
相続税と贈与税の基礎知識:税率と損得比較、贈与の活用方法

贈与税は相続税に比べて税率が高いと言われています。しかし、実際の税率やさまざまな税額控除等についてご存知でしょうか。相続税対策や資産・事業承継を考える際に不可欠な知識ですが、意外と印象だけで語ってしまうことが多いように思います。

この記事では、知っておくと役に立つ相続税と贈与税の基礎知識を説明します。

 

この記事を読むと、

  • 相続税と贈与税の税率がどうなっているのか
  • 相続税と贈与税のどちらが得なのか
  • 相続税や贈与税をなるべく抑えて資産・事業承継を行う方法

このようなことがわかるようになります。

 

1.贈与税の速算表と計算方法

贈与税の計算方法

(1)贈与税の速算表

贈与税の税額は、以下に記載する速算法を使って計算することができます。

贈与税の基礎控除額は年間110万円です。1年間に贈与された財産の金額から基礎控除額である110万円を差し引き、それに対して税率が決まっています。

なお、平成27年1月1日以後に直系尊属(父母や祖父母)からの贈与により財産を取得した者(贈与を受けた年1月1日において20歳以上の者に限ります。)の場合、特例税率を適用して税額を計算します。その特例税率の適用がある財産が「特例贈与財産」になります。そして、特例贈与財産に該当しないものが「一般贈与財産」になり、一般税率が適用されます。

なお、速算表では婚姻期間20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合に適用できる配偶者控除は考慮していません。

 

【贈与税の速算表】

【特例贈与財産】

直系尊属から20歳以上の子・孫等への贈与(特例税率)

【一般贈与財産】

左記以外の贈与(一般税率)

 

基礎控除後の課税価格 税率 控除額 税率 控除額
200万円以下 10% 10%
300万円以下 15% 10万円 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 20% 30万円 30% 65万円
1000万円以下 30% 90万円 40% 125万円
1500万円以下 40% 190万円 45% 175万円
3000万円以下 45% 265万円 50% 250万円
4500万円以下 50% 415万円 55% 400万円
4500万円超 55% 640万円

 

(2)贈与税の計算方法

上記速算表によって基礎控除後の課税価格×該当税率-控除額=贈与税額の計算式で算出することができます。上記速算表は、相続税法第21条の7及び租税特別措置法第70条の2の5で規定する贈与税の計算を容易に行うための計算表です。

 

(3)贈与税の計算例

4000万円の贈与を受けた場合、贈与税は次のような計算となります。

基本控除後の課税価格 4000万円-110万円=3890万円
特例税率を適用する場合の贈与税 3890万円×50%-415万円=1530万円
一般税率を適用する場合の贈与税 3890万円×55%-400万円=1739万円5000円

2.相続税の速算表と計算方法

相続税の計算方法

(1)相続税の速算表

以下に記載するのが、相続税の速算表です。「法定相続分に応じた取得金額」を対象として、税率が決まっています。贈与税とは異なり、相続税は速算表だけで税額を計算することはできません。「法定相続分に応じた取得金額」の算出方法及び相続税の計算方法は、下記「(2)相続税の計算方法」をご覧ください。

 

【相続税の速算表】

法定相続分に応じた

取得金額

税率 控除額
1000万円以下 10%
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

 

(2)相続税の計算方法

相続税の税額は、次のような手順で計算します。

① 相続や遺贈によって取得した財産(遺産総額)の価額(相続時精算課税の適用を受けた場合は、その財産の価額を合計します)から、債務、葬式費用、非課税財産を差し引き、さらに相続開始前3年以内の贈与財産の価額を加算して「正味の遺産額」を算出します。

② 正味の遺産額から基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いて「課税遺産総額」を算出します。

③ 課税遺産総額を各法定相続人が民法に定める法定相続分どおりに取得したものと仮定して、「法定相続分に応じた取得金額」を計算します。

④ 上記速算表によって、「法定相続分に応じた取得金額×該当税率-控除額」の計算式で「各法定相続人別の税額」を算出します。上記速算表は、相続税法第16条で規定する相続税の計算を容易に行うための計算表です。

⑤ 各法定相続人別の税額を合計して「相続税の総額」を算出します。

⑥ ここからが実際の相続人等各人の納税額の計算です。相続税の総額を、各相続人、受遺者及び相続時精算課税を適用した人が実際に取得した正味の遺産額の割合に応じて按分し、さらに、いわゆる2割加算や配偶者の税額軽減や各種の税額控除を差し引いて、実際に納める税額を計算します。

(3)相続税の計算例

相続財産が現金4000万円のみ、債務、葬式費用及び相続開始前3年以内の贈与財産がなく、相続人は長男1人だけとし、税額控除等の特殊な事情がないことを前提とした場合、その長男の相続税は次のように計算できます。

①正味の遺産額 4000万円
②課税遺産総額 4000万円-(3000万円+600万円×1人)

=400万円

③法定相続分に応じた取得金額 400万円
④各法定相続人別の税額 400万円×10%=40万円
⑤相続税の総額 40万円
⑥長男の相続税の税額 40万円

3.贈与税率と相続税率の比較

上記1(1)及び2(1)の各速算表を見比べると、贈与税の税率が非常に高く見えます。例えば、上記1.贈与税の速算表を見ると、「基礎控除後の課税価格」が1000万円の場合、税率は軽減税率で30%、一般税率で40%です。これに対し、上記2.相続税の速算表を見ると、「法定相続分に応じた取得金額」が1000万円の場合、税率は10%です。さらに5000万円のラインで見た場合、贈与税は税率55%であるのに対し、相続税は20%です。このように見ると、「相続税に比べ、贈与税の税率は非常に高い」ということになります。

そうだとすれば、贈与ではなく相続で財産を取得した方が節税になるでしょうか。答えは否です。

(1)必ずしも相続した方が節税になるわけではない

贈与税は生前に財産を取得したときに、相続税は亡くなった時にかかります。同じ財産でも、生前で受け取るのか、亡くなってから受け取るかによって、そして亡くなった時の他の財産や相続人の状況によって、適用される税率は変わってきます。詳しくは上記1(2)及び2(2)に記載した贈与税及び相続税の計算方法の説明をご覧いただければと思いますが、簡単な例を挙げてみましょう。

(2)贈与の方が節税につながるケース

例えば、贈与税の場合、今すぐ1100万円の財産を長男1人に贈与しようとすれば、税率は30%となり、207万円もの贈与税を納付しなければならなくなります。しかし、相続税はどうでしょうか。1100万円とは別に10億円の財産を持っていたとしましょう。負債等がなく、法定相続人は長男1人しかいなかった場合、相続税の税率は55%です。贈与するかどうか迷った1100万円の財産は、その時に贈与しておけば税率30%であったのに、相続発生まで保持していたために55%の税率となってしまいました。上記2(2)相続税の計算方法の説明で記載したように、他にも相続財産がないか、非課税財産や債務があるか、3年以内の贈与があったか、そして法定相続人の数などによっても計算は大きく変わってきます。

つまり、具体的な事情をもとに、実際にシミュレーションしてみないと、相続発生まで贈与せずにいた方がよいか、それまでに贈与した方がよいかは判断できないのです。

4.相続税や贈与税が少なくなるようにするための基本的な考え方と方法

それでも、相続税や贈与税がなるべく少なくなるようにする方法や、そのために知っておいた方がよい基本的な考え方というものはあります。以下ではその方法や考え方をご紹介します。

(1)計画的に贈与する

相続は時期を選べませんが、贈与は選ぶことができます。相続は死亡によって開始しますので、普通は時期を選んで相続を計画することは出来ません。これに対し、贈与は時期を選んで計画的に実施することが可能です。

また、生前贈与することで相続財産は減少しますから、その分、相続税が減る効果も見込むことができます。

ただ、注意が必要なのは、上記「2(2)相続税の計算方法」で説明したとおり、相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年以内にその被相続人から贈与を受けていた場合には、その贈与財産は相続財産に含めて相続税が計算される点です(相続税法第19条第1項)。この場合、相続財産から外したいと思って贈与しても、相続税の対象となってしまうことに注意が必要です。

(2)暦年贈与を利用する

暦年贈与」とは、贈与税の課税制度のうち暦年課税の制度を利用して贈与を行う方法です。1人の人が1月1日から12月31日までの1年間に受領した財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対して贈与税がかかります(租税特別措置法第70条の2の4)。そのため、毎年110万円以内で贈与を行えば、贈与税がかからず、相続税の節税をすることができます。

① 受贈者の人数を多くする方法

基礎控除は、「財産を取得した者にかかる贈与税」について設定されます。従って、贈与する相手(受贈者)が多数いれば、それだけ節税ができることになります。

例えば、父親の所有する財産4000万円を唯一の法定相続人である長男1人(20歳以上)のみに贈与した場合、上記「1(3)贈与税の計算例」で記載したように、贈与税は1530万円です。しかし、長男の他に次男、三男及び四男(いずれも20歳以上)も存在し、それぞれに1000万円を贈与した場合、長男・次男ともに、110万円の基礎控除を差し引いた後の課税価格は890万円となります。その場合、税率は30%、控除額90万円ですので、それぞれ贈与税額177万円となります。4人合計では708万円で、長男1人だけで全額贈与を受けた場合に比べて納付する贈与税の合計額は822万円減り、半分未満になります。

② 複数年に分けて贈与する方法

また、基礎控除は年間110万円ですので、父親の4000万円の財産を2年に渡って長男・次男・三男・四男それぞれに毎年500万円ずつ贈与した場合、それぞれ1年当たりの贈与税の税額は48万5000円となります。2年間4名の納付する贈与税は合計388万円となります。長男1人が1年ですべての贈与を受けた場合に比べ、贈与税の税額は1142万円減ることになります。

もし、父親が長男・次男・三男・四男の4人に毎年110万円ずつ贈与した場合にはどうなるでしょうか。贈与税の基礎控除額は年間110万円ですから、1年当たりの課税価格は0円となり、贈与税を納付することなく10年目で4000万円の財産すべてを子供たちに承継できるのです。

(3)相続時精算課税制度の利用

暦年贈与の場合、毎年の贈与税が課税されないようにするには、毎年の贈与額を基礎控除額の110万円以下にする必要があります。ところが、多額の財産を有している高齢者が特定の者にその財産を承継したい場合、暦年贈与でこれを行おうとすると非常に多くの年数をかけなければならず、事実上、相続や遺贈を待つのと変わらないというようなケースがあります。そのような場合に利用するのが相続時精算課税制度です。

相続時精算課税」は、暦年課税と並ぶもう1つの贈与税の課税方法です。相続時精算課税を選択した贈与者ごとに、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から2500万円の特別控除額を控除した残額に対して20%の税率で贈与税がかかります。そして、相続時には、贈与した財産を相続時の遺産総額に含めて計算した相続税額からすでに納付した贈与税額を控除します。

2500万円の特別控除が非常に大きな節税メリットですが、暦年贈与とは異なり相続時精算課税の場合には相続財産が減少することにはならないことに注意が必要です。

また、原則として贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上の子又は孫に対し財産を贈与する場合という条件があります。

さらに、この制度を選択すると、それ以降は同じ贈与者からは暦年贈与ができなくなります(暦年課税の選択ができなくなります)。相続時精算課税には、その他にも様々な条件や留意点があるため、注意が必要です。

それでも、例えば80歳の祖父が2500万円の財産を20歳以上の孫に承継したいという場合に、単純に贈与すれば810万5000円の贈与税が課せられ、贈与税が掛からないように暦年贈与しようとすると23年を要するため現実的は難しいところ、相続時精算課税を選択すれば贈与税の課税が生じない点では、財産の承継や事業承継の促進に役立つ税制であるといえます。

5.暦年贈与の注意点(連年贈与の問題)

暦年贈与の中でも、複数年に渡って贈与することを、贈与者と受贈者との契約の内容とされている場合を「連年贈与」といいます。この場合、契約を締結した年に、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利の贈与とみなされ、契約時に一括して贈与税がかかります(国税庁のタックスアンサー 贈与税No.4402「贈与税がかかる場合」で指摘されています。)。

このような定期金給付契約に基づくものではない場合、すなわち、毎年、贈与契約を締結し、それに基づき毎年贈与が実行される場合には贈与税はかかりません。

定期金給付契約書(文書)がなくても連年贈与をするとの契約(取り決め)があったと認定される可能性があるため、連年贈与であるとの疑義を生じさせないために、多くの税理士は、毎年贈与契約書を作成して締結し、贈与する金額を変え、贈与する時期も一定にしないことや、毎年贈与していることを明確にするべく毎年の贈与額を基礎控除額以上にして少しの贈与税を納付し申告することを勧めています。贈与税の申告をしない110万円以下の毎年の贈与を税務署に連年贈与ではないと認めてもらうのは難しいからです。

6.まとめ

相続や事業承継を考えている人が、ある財産を生前贈与した方が得か、生前贈与はせずに相続まで保持していた方が得かを考える場合、単純に相続税や贈与税の税率を見ればよいのではなく、その方の親族関係やその他の財産、負債などの多くの要素に照らしてシミュレーションをしてみないと判断が出来ません。また、贈与を実行しようとする場合にも、注意しなければ思わぬ課税が生じてしまう可能性がありますので注意が必要です。

相続税や贈与税のことが気になる方、そして相続税対策や資産・事業承継について考えておられる方には、一度、専門家にご相談されることをお勧めします。特に、このような分野は、税務のみならず、法務・金融などの専門知識も必要となります。税理士・弁護士・司法書士・金融コンサルタント等の士業・専門家が連携してサービスを提供しているような総合的な専門事務所にご相談されてみられるのがよいと思います。

 

長谷川裕史
弁護士長谷川 裕史
ベリーベスト法律事務所パートナー。1995年慶應義塾大学法学部を卒業し、同年司法試験合格。1997年慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了後、最高裁判所司法研修所に入所。1999年司法修習修了後、2002年までキャピタルマーケッツ法務を中心に扱う法律事務所に在籍。その後慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)にて経営を学び、2004年修士(MBA)取得。東証一部上場会社の法務担当部長を経て、2005年2月から2018年までキャラクターコンテンツ会社にて勤務。順次、経営企画・海外事業・ライセンス・商品・人事・システムの部署長となる一方、2006年から2013年にかけては同社の韓国法人を設立し、理事及び代表理事として現地駐在。2018年2月にベリーベスト法律事務所に参画。ビジネス経験を生かして企業法務中心に従事。事業承継案件は、年間30件以上を担当しています。

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