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2020年 株主総会想定問答集 – コロナウイルス対策関係質問対応

2020年5月12日
2020年 株主総会想定問答集 – コロナウイルス対策関係質問対応

1.はじめに

今年度の株主総会については、企業、特に上場企業の株式課や経企、人事、財務経理、法務の方々は、1~2月頃に株主総会対策チームを編成し、今頃は各関係部門からの想定問答のドラフトを収集し第一次チェックは終えているところが多いものと思います。そして、このゴールデンウイーク明けに最終チェックのスケジュールを入れておられるものと思います。

 

コロナウイルス感染拡大の影響で海外子会社等の決算の数字の集計が遅れ、株主総会の期日の延期を決定し、又は、検討されている企業もあるかと思います。ただ、今年の株主総会の特徴は言うまでもなく、a) コロナウイルスの感染拡大による第4四半期の業績悪化の具体的な事実・数字およびサプライチェーンの確保など講じた対策とその効果などに加えて、b) コロナウイルス対策の実施(過去)、現状および計画であろうと思います。

 

本記事では、後者b) のコロナウイルス対策の実施(過去)、現状および計画に関する想定質問の整理を試みます。今後予定されている想定問答集の想定質問の抜け漏れの最終チェックに役立てて頂ければと思います。また、企業は労働者に対して安全配慮義務(労働者の生命や健康を危険から保護する義務)を負っています。労働契約法第5条[1]はこの点を明記しており、社員の生命や身体の健康に必要な配慮をする法的な義務があります。

 

更に、今後の社内のリスクマネジメント体制改善の参考になれば幸いです。また、本番の株主総会では、既にコロナウイルス感染が終息して、以下の質問や回答の文章が過去形の文章で行われることを願います。

 

2.コロナウイルス対策関係質問の分類

コロナウイルス対策関係質問の分類

(1)BCP[2]、BCM[3]、CM[4](Crisis Management. 危機管理)

  • BCP、BCM、CM(Crisis Management. 危機管理)など、制定していたか。
  • 国内外のグループ会社でも同様に制定していたか。
  • 派遣社員も対象としていたか。
  • リハーサル等の訓練を実施していたか。
  • 大地震等の自然災害の外に、今回のコロナウイルス拡大のようなパンデミックにつき、想定した内容だったか。
  • (想定したBCPを作成していなかった場合)大地震についてBCPなどを作成したのに、パンデミックにつき作成しなかったのは何故か。判断基準を説明して下さい。
  • 今回のコロナウイルス対応のために、新たにBCP、BCM、CMなどを策定したか。
    • eg. 厚生労働省の指針やガイドライン、経済産業省のBCP策定指針などを参考に作成した。
  • 改訂計画はあるか。
  • (想定したBCPを作成していた場合)今回のコロナウイルス拡大のようなパンデミックにつき、有効に機能したか。
  • 改訂計画はあるか。

(2)対策策定・実施の体制

  • 今回のコロナウイルス対策のために対策本部、危機管理委員会などを立ち上げたか。
  • どのような体制か。
    • eg. 本部長、責任者の役職・役割、会議開催、情報伝達体制など。
  • 国内子会社や海外グループ会社の役職員もメンバーに入っているか。

(3)会社方針・ガイドラインの策定・周知

  • 社員に対してコロナウイルス対策の方針・対応の案内文やガイドラインを配布・周知したか。
  • PCを貸与していないラインのワーカーや派遣社員にも、案内文を配布・周知したか。
    • eg. 紙で配布した。各部屋や廊下にポスターを掲示している。

(4)派遣会社との連携

派遣社員への対応につき、派遣会社と連携をしているか。

(5) 情報収集

  • コロナウイルス感染防止対策を講じる上で、どのような方法で最新かつ必要な情報を収集しているか。
  • なぜ、その情報源が正確だと判断したのか。
  • 海外のグループ会社の所在国の情報はどのように収集したのか。

(6)社内の感染者対策

  • 当社および国内外グループ企業でコロナウイルス感染者は出たか。[5]
  • (出た場合)具体的にどのような対策を講じたか。
    • eg. 濃厚接触の可能性のある社員へは14日間の自宅待機の指示やオフィスの消毒作業の実施、他のオフィスやグループ会社からの代替要員の確保などを行い、その後は保健所と連携を取り、情報提供を行った。
  • 退院または陰性となった後の職場復帰の基準は。
    • eg. その基準は、a) 〇〇(条件)、b) 〇〇(期間) … etc. である。

(7)体調不良の社員への対応

  • 社員が発熱やだるいなどの体調不良を訴えたら、どのような対応をしているか。
    • eg. 社員がただの風邪か何かだと思うと言っても、症状により、直ちに帰宅させて自宅療養させるか、リモートワークなど自宅勤務に切り替えている。
    • eg. 休ませる場合は、会社判断として、労働基準法第26条[6]を適用して〇〇%の手当てを支給している。
  • 社員が自発的に体調不良で休むと言ってきた場合はどう処理しているのか。
    • eg. 厚生労働省の指針[7]に従い、通常の病欠と同様に、社内規程に従って処理しています。当然、社員からの申請がなければ、有給休暇とはしていませんし、奨励もしていません。
  • 解熱など体調回復の職場復帰の基準は。
    • eg. その基準は、a) 〇〇(条件)、b) 〇〇(期間) … etc. である。

(8)相談窓口

  • 専門の健康相談窓口または問合せ窓口の設置・周知、または、既存の相談窓口の強化・周知をしたか。
  • 産業医との対応協議・連携をしているか。

(9)具体的な対策

具体的な対策については、回答の参考になるよう、多くの会社や先進的な企業が取っている具体例を挙げることとしますので、貴社が取っている対策で想定問答集の回答で抜けているものがあれば補充をして下さい。

①出入口でのチェック

  • 敷地、ビル、オフィスなどの出入口等での社員および来客用の手の消毒液の備置と実施を行った。
  • 敷地、ビル、オフィスなどの出入口等での社員および来客の検温(体温チェック)を実施した。
    • eg. 携帯型体温計で一人一人を検温、または、来客に配慮してサーモグラフィを設置
  • 社員については、出社時だけでなく、退社時にも検温を実施した。

②オフィス、工場

  • オフィスや工場の空調による換気、および、窓やドアなどの常時または定期的な開放による換気を行った。
  • ウイルス拡散防止のため、洗面所にはジェットタオルの代わりに、ペーパータオルを置いた。
  • ドアノブ、共用PCのキーボード、照明や空調のスイッチ、エレベーターのボタン、カウンターなど、複数の社員や人が手を触れる物や場所について、マスク、手袋等を着用した者による定期的な、または、随時の消毒を実施した。
  • 一度に乗るエレベーターの人数制限(4人など)を実施した(3密回避)。[8]

③通勤、勤務場所・時間など

  • リモートワーク、テレワークを実施した。
  • フレックスタイムを実施または推奨した。
  • (社外での感染防止のため)通勤ラッシュを回避するために、時差出勤、オフピーク通勤を実施した。
  • 通勤電車内での感染回避のため、マイカー通勤を許可した。また、タクシー券を配布した。
  • (社内での感染防止のため)オフィスでの社員間の濃厚接触を回避するために、出退社時間と休息時間の分散化を実施した。
  • これまで制度があり実施していたテレワーク、リモートワークや時差出勤などにつき、日数の上限制限などを撤廃した。
  • 社員間の物理的な距離を離すため、オフィス等のレイアウトを変更した。
  • 喫煙者間の感染リスクの防止や喫煙者の重症化リスクが高いことを考慮して、喫煙室を廃止した。
  • 顧客等からの感染防止のため、透明カーテンを設置した。
  • リモートワーク環境にない社員や感染リスクの分散のため、サテライトオフィスを利用した。
  • リモートワークなどにした社員の勤怠管理については、緊急事態であり、柔軟に対応して管理している、具体的には、…。
  • 課やチームの朝会や夕会などは、自宅勤務の社員なども参加できるよう、webで行うようにした。これにより、ある程度、勤怠管理にもなった。
  • 社食を停止し、弁当に切り替えて、社食の食堂の椅子を減らし距離を置き且つ対面で座らないよう椅子を配置し、また、各自のデスクまたは換気をした会議室で距離を置き昼食を取るようにした。

④重症化リスク・家族のケアがある社員対応

  • 持病を持つ社員、50歳以上の社員、ヘビースモーカーの社員、妊娠中の社員、親族の介護をしている社員等へ配慮し、リモートワーク、在宅勤務などを推奨した。
  • 幼児や休校となる小中高の子供を持つ社員への配慮や対応をした。
  • 保育施設へ子供を預けられなくなった社員へのベビーシッター費用の一部負担をした。

⑤出張規制

  • 飛行機、電車、バスなどの公共交通機関の利用による感染リスクを回避するため、国内外の出張を原則禁止とした。
  • 社員の海外への渡航を制限した。

⑥海外からの来客や帰国者

  • 海外からの来客対応については、政府による上陸拒否対象地域などを参考に対応を決めた。
  • やむを得ず社内で会議をすることになった場合、できるだけ広い部屋を予約し、または、予約を変更してもらい、人と人との距離を〇m以上とし、換気を十分に行うことにした。
  • 海外の赴任先から帰国した社員については、〇〇日間の自宅待機をさせ、体調を確認した上で、出社させることにした。

⑦イベント、セミナー、会議

  • 会社または部署主催の懇親会などを自粛した。
  • 会議や(採用)面接につきウェブ化、オンライン化した。
  • 自社イベントの開催は自粛や延期した外、オンライン開催に切り替えた。
  • 社外イベントへの参加はオンライン開催を除き原則禁止とした。
  • セミナーは自粛や延期した外、ウェブセミナーへ切り替えた。

⑧マスク

  • 社員への不織布マスクの着用要請(マスク表面への手の接触や使い回しの禁止)を行った。
  • マスク購入ができなかった社員のため、必要最小限のマスクの確保と配布を行った。
  • マスクの需給逼迫のない国のグループ会社からマスクの供給を受けた。
  • マスクを着けていない来客にはマスクを提供などして着用を要請した。

⑨社員への指導

  • 社員の手洗いの徹底、および、手洗いしていない手で粘膜(目、鼻、口など)へ触れないよう指導した。
  • マスクをしていないときに咳きやくしゃみをする際は、素手で口を覆わず、ティッシュペーパーや腕などで覆うよう指導した。
  • 通勤のため電車に乗る場合は、近くの窓を開けるよう指導した。
  • 海外からの来客の場合でも、理由を説明し、握手を避けるよう指導した。
  • 休息時や特にマスクを外さざるを得ない昼食時は、複数で集まって休息や食事を取らないよう指導し、且つ、休息室や食事を取る部屋の中では十分な距離(〇m以上)を置くように指導した。
  • 食事中はマスクをはずさざるを得いないので、飛沫が飛ばないよう、なるべく会話は控え、大きな声で話さないよう指導した。
  • 3密( 1.密閉空間(換気の悪い密閉空間)、 2.密集場所(多くの人が密集)、 3.密接場面(短い距離での会話や発声)を避けるよう要請した。

3.まとめ

業界、職種、地域によってコロナウイルス対策の手段は異なるものと思いますが、以上は多くの業種において検討するであろう一般的な対策を挙げましたので、中には自社ではとらないという対策もあるものと思います。

 

この記事は株主総会対応という視点からコロナウイルス対策の想定問答策定への情報提供を試みましたが、昨今のコロナウイルス感染に関するSNSやマスメディアの状況からしますと、安全配慮義務違反があったとの風評が立ったり、損害賠償請求事件の被告となったりした場合、SNSやマスメディアによる企業のレピュテーションリスクは非常に大きなものとなる可能性があります。

 

政府は、今週、今月(5月)末まで非常事態宣言の期間を伸ばすことを決定しました。これまでの旧来の制度に固執せず、変化する状況に応じた「柔軟」な対策を取ることが重要です。自社およびグループ会社の社員、その家族、および、取引先の社員等の生命、健康などの安全を確保するために必要な配慮をしたといえる対策を策定・実施することが各企業の社会的責任としても求められています。

 

[1] 労働契約法第5条 「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」

[2] 事業継続計画(Business Continuity Planning):地震等の自然災害やシステム障害などの緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画。または、事業の中断・阻害に対応し、事業を復旧し、再開し、あらかじめ定められたレベルに回復するように組織を導く文書化された手順(ISO22301:2012)。

[3] 事業継続マネジメント(Business Continuity Management):企業リスク発生時にいかに事業の継続を図り、取引先に対するサービスの提供の欠落を最小限にするかを目的とする経営手段。または、組織への潜在的な脅威、及びそれが顕在化した場合に引き起こされる可能性がある事業活動への影響を特定し、主要なステークホルダの利益、組織の評判、ブランド、及び価値創造の活動を保護する効果的な対応のための能力を備え、組織のレジリエンスを構築するための枠組みを提供する包括的なマネジメントプロセス(ISO22301:2012)。事業継続のための運用全体がBCMであり、企業またはグループ全体のリスクマネジメント(リスク管理)の一部です。そして、BCMの成果物である「計画」がBCPです。

[4] 今回のコロナウイルス感染拡大のように実際にriskが顕在化してcrisisの状況になったときの対応(management)の手順(process)を定めるのが危機管理(crisis management)です。

[5] 社内で感染者が出たのに出ていないと回答して後日事実が発覚すると、隠蔽したと非難されます。個人情報の開示とならないよう(個人を特定できないよう)注意して回答して下さい。

[6] 労働基準第26条「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」

[7] 「… 療養のため労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間、直近 12 か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額を、傷病手当金として支給することとなる。」(令和2年3月6日付け事務連絡)

[8] 武漢では、出退社時の混雑したエレベーター内での感染により、ビルに入居している全オフィスの社員への感染例があります。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

弁護士斜木 裕二
国際法律事務所、大手メーカー等の法務責任者を経て、2018年ベリーベスト法律事務所に入所。国際カルテルなどの競争法、国際・国内商取引一般、国家プロジェクト、M&A, JV会社設立等の国際投資案件、グローバルでのグループ子会社の法務体制やコンプライアンス体制、危機管理体制の構築などを手掛る。
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