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監査役の責任限定契約締結手続きを解説!要件・効果や雛形も紹介

2023年4月14日
監査役の責任限定契約締結手続きを解説!要件・効果や雛形も紹介

適正な会社運営実現にあたって監査役は重要な役割を担っていますが、任務懈怠責任による萎縮効果が原因で、優秀な人材を確保しにくいのが実情です。

そこで今回は、社内監査役・社外監査役の登用を促進する「責任限定契約」について解説します。
あわせて、監査役が責任限定契約を締結する際の手続きの流れや注意事項も紹介するので、さいごまでご一読ください。

1.監査役が責任限定契約を締結する趣旨

まずは、企業活動が多様化する現代社会において、監査役が責任限定契約を締結する意義について見ていきましょう。
あわせて、そもそも責任限定契約の内容・要件・効果についても簡単に紹介します。

(1)監査役が締結できる責任限定契約とは

責任限定契約とは、「非業務執行取締役等の任務懈怠責任(会社法第423条1項の責任)について、職務を行うにつき善意・無重過失の場合には、あらかじめ定款で定められた金額と最低責任限度額のいずれか高い額を限度とする」ことを旨とする契約のことです(会社法第427条1項)。

ポイントは次の4点です。

  • 責任限定契約を締結できるのは「非業務執行取締役等」に限られる
  • 任務懈怠に基づく損害賠償請求額を一部制限できるのは「善意・無重過失」の場合のみ
  • 減額の限度は「事前に定款に規定されている金額と最低責任限度額の高い方」
  • 責任限定契約について事前に定款の定めが必須

会社法上、非業務執行取締役等は、業務執行取締役等以外の取締役・会計参与・監査役・会計監査人の4者を指すとされています。

したがって、社内監査役・社外監査役のいずれであっても責任限定契約を締結することは可能です。

(2)監査役は株式会社の重要機関

そもそも、監査役は株式会社の重要機関であるということを忘れてはいけません。

ポストの重要性は、次のような監査役の性質からも明らかでしょう。

  • 監査役は株主総会決議で選任される役員
  • 取締役の業務執行について業務監査(適法性監査)・会計監査を実施する
  • 監査報告を作成する
  • 取締役会に出席して意見を陳述する
  • 一定事項について株主総会への報告義務が課されている
  • 監査役設置会社では、取締役と会社の訴訟では監査役が会社を代表する
  • 一定規模の会社組織の場合には、監査役のうち半数以上を社外監査役とすることを義務付けられる

つまり、株式会社にとって「従業員と雇用契約を締結すること」と「監査役を招聘すること」とはまったく次元の異なるものだということです。

内部統制制度の構築や経営判断の充実のためには、優秀な人材を監査役として迎え入れる必要があると言えるでしょう。

(3)責任限定契約で多様な人材を監査役に登用できる

ここまで紹介したように、優秀な人材を監査役に登用することは株式会社の繁栄に不可欠ですが、「役員等の任務懈怠責任が人材確保の障壁になっている」という現実から目を背けるべきではありません。

というのも、取締役・監査役などの「役員等」が任務を怠って会社に損害を生ぜしめた場合には、高額な損害賠償責任を追及される可能性があるからです。

たとえば、社外監査役として適任な人材がいたとしても、「株主から責任追及されるリスクを負うのは嫌だ」「高額な賠償責任と隣り合わせの状況では監査役としてスキルを発揮できない」などの理由から萎縮し、招聘できない可能性があります。

このような人材確保の障壁を打開する有効策が「責任限定契約」制度です。

責任限定契約を締結すれば、監査役に就任する前に将来的に負担を強いられる可能性がある任務懈怠責任の上限額が決まるので、任務懈怠責任の負担が大幅に制限され、また、賠償責任の範囲について予見可能性が高まることによって、監査役に就任することに対する萎縮作用が軽減することになります。

以上のことから、責任限定契約は、株式会社にとって優秀な人材を登用しやすくなるというメリットをもたらすものだと言えるでしょう。

2.監査役が責任限定契約を締結する手続きの流れ

人材確保という目的から責任限定契約制度を利用する場合には、次のような手続きを履践する必要があります。

  1. 責任限定契約を締結できる旨について定款で定める
  2. 責任限定契約について定款変更した旨について登記する
  3. 取締役会決議などの適正プロセスを経て責任限定契約を締結する
  4. 責任限定契約通りに責任を一部免除する際には株主総会へ情報開示をする

(1)責任限定契約についての定款の定めを置く

監査役と責任限定契約を締結するには、株式会社の定款に責任限定契約についての定めを置かなければいけません。
つまり、原始定款に責任限定契約の定めが存在しない場合には、定款変更手続きを経る必要があるということです。

責任限定契約について定款変更をする際には、株主総会の特別決議が必要です(会社法第466条・会社法第309条2項11号)。

なお、責任限定契約についての定款変更議案を株主総会に提出する際には、会社組織構成ごとにそれぞれ同意権者が定められています(会社法427条3項、425条3項)。

  • 監査役設置会社:監査役全員
  • 監査等委員会設置会社:監査等委員全員
  • 指名委員会等設置会社:監査委員全員

(2)責任限定契約について登記する

責任限定契約についての定款変更手続きが終了すると、定款変更の効力発生日から2週間以内に登記をしなければいけません(会社法第915条1項・会社法第911条3項25号)。

登記未了の場合には責任限定契約を締結していることを主張できなくなるのでご注意ください。

(3)取締役会決議を経て監査役と責任限定契約を締結する

責任限定契約を締結できる旨の定めが定款に置かれている場合でも、それだけで自動的に責任限定契約の効果が発動するわけではありません。

責任限定契約はあくまでも当事者間の合意によって成立する「契約」なので、株式会社と当該人物との間で責任限定契約を締結することになります。

この際に注意を要するのが、株式会社側の手続きです。
つまり、責任限定契約の締結は「重要な業務執行」にあたるため、取締役会非設置会社なら「取締役の過半数の賛成」、取締役会設置会社なら「取締役会決議」が必要です(会社法362条4項、369条1項)。

(4)監査役の責任一部免除時は株主総会に情報開示する

責任限定契約を締結した社外監査役・社内監査役が任務懈怠責任を問われる場面が発生し、責任限定契約の内容通りに賠償責任の一部免除が実施される場合には、その後最初に招集される株主総会において、次の項目について報告しなければいけません(会社法第427条4項)。

  • 責任の原因となった事実
  • 賠償の責任を負う金額
  • 責任限定契約により免除できる金額の限度及びその算定根拠
  • 責任限定契約の内容及び契約を締結した理由
  • 任務懈怠によって生じた損害のうち当該監査役が責任を負わないとされた金額

なお、株主総会への「情報開示」が義務付けられているだけで、「同意」「賛成決議」などは不要です。

3.監査役の責任限定契約書の雛型を紹介

責任限定契約は口頭でも成立しますが、任務懈怠責任発生時は株式会社への報告義務がある点などを考慮すると、「責任限定契約書」という形で文書化しておくのが無難でしょう。

監査役の責任限定契約書に記載される代表的な項目は次の通りです。

  • 責任限定契約を締結する目的
  • 賠償責任の限定
  • 会社法上の制約等(新株予約権の行使等)
  • 責任限定契約の効力
  • 法令・定款と責任限定契約の関係
  • 税務処理の方法
  • 契約内容の変更及びその方法
  • 完全合意
  • 分離可能性
  • 準拠法及び合意管轄
  • 責任限定契約の解釈をめぐる協議方法

企業法務に強い弁護士に相談し、個々の事案に即した適切な契約書を取り交わしておくべきでしょう。

まとめ

社内監査役・社外監査役のいずれについても、事前に責任限定契約を締結すれば将来的な賠償責任リスクを軽減できます。

経済活動が複雑化するなかで、適切な内部統制システムの構築・運用が求められている現代社会を乗り越えていくには、監査役に優秀な人材を招聘するのは不可欠です。

責任限定契約やD&O保険などのリスクヘッジ体制を整えて、多様な人材スキルを企業活動に反映させましょう。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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