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スマートフォンゲームの「景品類」規制

2019年4月5日

スマートフォンゲームの「景品類」に関する規制については、キャラクタのカードを集めるタイプのゲームで採用されていた「コンプガチャ」が問題となった件が有名です。これは後でも触れますが、ゲーム上で提供される「コンプガチャ」が、「カード合わせ」というものに該当するとして、禁止されることとなったものです。
この「コンプガチャ」の問題以外にも、ゲームの「景品類」については法的な問題が発生しやすいところですので、ここで関連する規制を概観した上、最近弊事務所で取り扱った事例について説明していきたいと思います。

1、「景品類」に関する制限

(1)「景品類」とは何か

景表法は、「景品類」について、政府の指定によってその定義を定めるべきこと(同法2条3項)及び政府が不当な顧客の誘引を防止するために必要と認めるときには、景品類の価額の最高額・総額、種類・提供の方法等の景品類の提供に関する事項の制限・提供の禁止を行うことができること(同法4条)を定めています。

この景表法の規定を受けて、「不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件」(公正取引委員会の告示の一つであり、インターネット上でも公開されています。)は、景品類を、「顧客を誘引するための手段として、方法のいかんを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に附随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益」であって、次の①から④までに掲げるものをいうと定義しています。

 

①   物品及び土地、建物その他の工作物

②   金銭、金券、預金証書、当せん金附証票及び公社債、株券、商品券その他の有価証券

③   きょう応(映画、演劇、スポーツ、旅行その他の催物等への招待又は優待を含む。)

④   便益、労務その他の役務

 

この①から④までの記載は限定列挙ではなく、広く色々なものを含み得るものです(ちなみに、コンプガチャ問題において、消費者庁は、コンプガチャにより獲得できるキャラクタやアイテムを④と認定しています。なお、以下では、キャラクタ、アイテムその他のゲームで獲得できる電子データを「キャラクタ等」と呼びます。)。
そうしますと、「顧客を誘引するための手段」であること(顧客誘引性)、「取引に附随」すること(取引付随性)及び「経済的利益」であること(経済的利益性)がポイントとなってきます。

①顧客誘引性

第一に、ゲーム内で配布されるキャラクタ等は、まだゲームをしていない潜在的なユーザにゲームに参加してもらい(「今ならプレイを始めた方に人気キャラクタを付与します!」というキャンペーンが典型例です。)、また、現にゲームをプレイしているユーザを引き留める目的のものと考えられますので(引き留め行為も誘引の一種と考えられます。)、顧客誘引性があるといえるでしょう。

②取引付随性

第二に、ゲームをしたことによって提供されるものであれば、ゲームという取引に附随するものといえますので、取引付随性が否定されるケースはあまり考えられません。

③経済的利益性

第三に、現金と交換できるゲーム内のポイント(本記事では特定のゲームにのみ使えるポイントを指し、以下これを「ゲーム内通貨」と呼びます。)や、ゲーム内通貨を使ってゲーム内のショップ等で交換できるキャラクタ等については、経済的利益性があることは明らかです。
問題は、ゲーム内通貨で直接交換することができないキャラクタ等(これは、一般に「ガチャ」を回すことで入手できます。)ですが、コンプガチャ問題では、「『コンプガチャ』で提供されるアイテム等は、その獲得に相当の費用をかけるといった消費者の実態からみて、提供を受ける者の側から見て、金銭を支払ってでも手に入れるだけの意味があるものとなっていると認められるので、『通常、経済的対価を支払って取得すると認められるもの』」であるから、経済的利益性があると認定されました(消費者庁が2016年4月1日付けで公表した「オンラインゲームの『コンプガチャ』と景品表示法の景品規制について」によります。)。
そうしますと、ゲーム内でユーザがお金を掛けてまで獲得しようとしないアイテムというものがあるとして、このようなものぐらいしか、経済的利益性が否定されないこととなります。

なお、ゲーム内通貨に関しましては、「資金決済に関する法律」に定める自家型前払式支払手段に該当し、6か月以内に消滅するなどの例外事由がなければ、財務局への届出が必要になりますが、本記事では詳細を省略します。

(2)景品類の額の制限

①懸賞について

このうち、懸賞により獲得できる景品類については、「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」と題する公正取引委員会告示(以下これを「懸賞制限告示」と呼びます。)に具体的な定義や制限が規定されています。
まず、「懸賞」の定義ですが、「くじその他偶然性を利用して定める方法」又は「特定の行為の優劣又は正誤によって定める方法」によって、景品類の提供の相手方又は提供する景品類の価額を定めることであるとされています(懸賞制限告示1項)。
そして、「懸賞」による景品の提供については、景品類の最高額は、「懸賞に係る取引の価額の20倍の金額(当該金額が10万円を超える場合にあっては、10万円)」を超えてはならないとされています(懸賞制限告示2項)。

②総付景品について

他方、「懸賞」の方法によらないで提供される景品類は、「総付景品」と呼ばれており、その例としては、(ⅰ)商品の購入者に対し、購入額に応じて、若しくは購入額の多少を問わないでもれなく提供する景品類、(ⅱ)店舗への入店者に対して、商品の購入を条件とせずにもれなく提供する景品類及び(ⅲ)購入や入店の先着順によって提供する景品類などがあります。
スマートフォンゲームに即していえば、サーバの緊急メンテナンスやアップデート時の不具合があった場合に、ユーザ全員に付与されるアイテム(宝石のようなものが多いことから、「詫び石」といわれることがあります。)は、総付景品といってよいでしょう。
このような「総付景品」については、「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」(内閣府告示の一つです。)の1項に規定があり、「景品類の提供に係る取引の価額の10分の2の金額(当該金額が200円未満の場合にあっては、200円)」に制限されています。

(3)コンプガチャは何が問題か

他方で、コンプガチャのような「カード合わせ」については、「カード合わせ」によって得られるものの金額とは関わりなく、懸賞制限告示5項で禁止されています。

ちなみに、「カード合わせ」の規制は、もともと、お菓子のおまけ等として提供されていたプロ野球選手やアニメキャラクタのカードのうち、特定の何種類かのものを集めるとそれなりに豪華な景品類がもらえるという懸賞が爆発的な人気となったことが発端となっています。
特に子どもがカード欲しさに商品を買い続けることに親から苦情が多く寄せられたことや、特定カードの枚数を制限してカードを集めにくくするなど(「カード合わせ」は、その仕組み上、一つでも入手しにくいカードがあると、相当の金銭を費やさなければ景品類が入手できなくなってしまいます。)、企業側が不正行為をする可能性が指摘されたことがあり、懸賞制限告示5項で規制されるに至ったという経緯があります。

最近になってこの規制が注目を集めたのが、数年前にスマートフォンゲーム等で「コンプガチャ」が流行した時です。
「コンプガチャ」というのは、典型的には、あらかじめ指定された種類のキャラクタ等を集めると、レアなキャラクタ等を入手することができるものです。
このカード集めが「ガチャ」と呼ばれるランダムなキャラクタ等の獲得システムにより行われることと、指定されたカードを一式揃えることを「コンプリートする」と表現することから、「コンプガチャ」と呼ばれるようになりました。

時代は変われども人の性質はそれほど変わらないもので、昔のカード集めと同様、ゲームのキャラクタ等を集めるために尋常ではない金額を注ぎ込む人が出て来たことや、ゲーム運営会社が特定のキャラクタ等の出現確率を著しく低く設定している疑いが生じたことなどをきっかけに、平成24年6月28日、消費者庁長官の通達により「『懸賞による景品類の提供に関する事項の制限』の運用基準」(以下これを「懸賞運用基準」と呼びます。)が改正され、「ゲーム上で使用することができるアイテム等を、偶然性を利用して提供するアイテム等の種類が決まる方法によって有料で提供する場合であって、特定の二以上の異なる種類のアイテム等を揃えた利用者に対し、・・・ゲーム上で使用することができるアイテム等その他の経済上の利益を提供するとき。」は「カード合わせ」に当たるという解釈が明示され、それ以後、「コンプガチャ」は鳴りを潜めました(ただし、現在も微妙な形態のものが残存していることについては、後でも触れます。)。

なお、「カード合わせ」と似て非なるものとして、1点券、2点券、5点券というように、異なる点数の表示されているカードがあり、購入者が購入したカードの点数の合計があらかじめ指定されている点数になると、点数に応じて景品類を提供するというものがあり、これは「カード合わせ」にはならないとされています(懸賞運用基準4(2)イ)。
したがいまして、スマートフォンゲームでも、「点数の記載されたカードをランダムに獲得できるようになっており、一定の点数を集めるとキャラクタ等を獲得できる」という仕組みであれば、「カード合わせ」の規制に抵触することはありません。

2. 事例の検討

(1)二つの事例

弊事務所が最近取り扱った事例のうち本記事のテーマに関連するものとして、次のようなものがあります。なお、実際の事例とは微妙に事実を変えておりますが、ご了承ください。

 

【事例Ⅰ】

スマートフォンゲームAにおいては、毎月1回程度、ユーザが保有しているゲーム内通貨(このゲーム内通貨は、ゲームA内で無償で集めることができるほか、1ポイント1円で購入することもできます。)の一定額をゲーム内の寺社のような機関に奉納すると、奉納したゲーム内通貨が1.1倍から3倍までの間でランダムに決まる倍数で戻ってくるというものです(とはいえ、当然ながら高い倍率は出にくいように調整されています。)。

具体的には、100ポイントを奉納すると110ポイントから300ポイントが、1000ポイントを奉納すると1100ポイントから3000ポイント、1万ポイントを奉納すると1万1000ポイントから3万ポイントが戻ってくるという仕組みです。

この仕組みは、景品類の規制に抵触するでしょうか。

【事例Ⅱ】

スマートフォンゲームBにおいては、ゲーム内のキャラクタを主にガチャで獲得できるようになっていますが、属性などに共通性があるキャラクタを一定種類集めてデッキ(もともと「トランプのカード一組」という意味がありますが、ここでは、ユーザの手持ちキャラクタのうち、戦闘に参加するものの組合せを意味します。)の中に揃えると、特定のスキルが発動し、ゲームB内で戦闘を有利に進められるという特典が与えられるという仕組みが取られています。

これは「カード合わせ」に該当するでしょうか。

(2)「景品」該当性

事例Ⅰでも事例Ⅱでも、顧客誘引性や取引付随性があることは、比較的明らかと思われます。
そうしますと、経済的利益性の有無が問題となりますが、事例Ⅰでは、ゲーム内通貨が金銭をもって購入できるものですから、経済的利益性があるといえます(前記2(1)③の「第三に、」で始まる段落を読み直してみてください。)。

他方で、事例Ⅱでは、ゲームB内で発動するスキルに経済的価値があるのか、疑問の余地はあります。
とはいえ、消費者庁は、「アイテム等の攻撃力が増強されたり、必殺技を使えるようになることが、『通常、経済的対価を支払って取得すると認められるもの』といえれば、経済上の利益に該当します。」(消費者庁サイトの「インターネット上の取引と『カード合わせ』に関するQ&A」におけるQ21の回答)としています。
そうしますと、このようなスキルも一種の「便益」であり、ユーザもゲームBを有利に進めるためにお金を支払ってでも獲得したいものといえるでしょうから、こちらも経済的利益性があると判断される可能性が非常に高いと考えられます。

(3)事例Ⅰ―懸賞か総付景品か

この事例は、ゲームAの運営会社が、アプリケーション提供プラットフォーム会社(代表例として、GOOGLE社及びAPPLE社が挙げられます。)から「事例Ⅰの懸賞は景表法に違反するのではないか」と指摘されたことから、その適法性の確認を弊事務所に求めてきたものです。

確かに、事例Ⅰでは、奉納をしたユーザ全員にゲーム内通貨という景品類が提供されますから、一見すると総付景品に当たりそうです。
そうであるならば、総付景品では前述のとおり取引価格の20%相当額(これが200円未満の場合は200円)を超える景品類は許されませんから、奉納したゲーム内通貨と戻って来たゲーム内通貨の差(増差分)が景品類に当たるという解釈をしたとしても、戻ってくるゲーム内通貨は1.2倍までに制限されることとなり、事例Ⅰは景品類の規制に抵触します。

他方で、懸賞になるのであれば、取引価格の20倍相当額か10万円のうち低い金額までは景品類として提供することが許されますから、奉納して戻って来たゲーム内通貨の全額を景品類と捉えたとしても、景品類の規制には抵触しないこととなります。

実は、事例Ⅰの景品類が総付景品か、懸賞によるものかという問題については、懸賞運用基準に答えが書かれております。
懸賞運用基準1(4)を読んでみますと、懸賞の要件である「くじその他の偶然性を利用して定める方法」の例として「全ての商品に景品類を添付するが、その価額に差等があり、購入の際には相手方がその価額を判別できないようにしておく方法」が挙げられています。

ここで、事例Ⅰでユーザに提供されるゲーム内通貨は、全てのユーザに提供されるものですが、「その価額に差等」があり、事前には「その価額を判別できない」ものですから、懸賞の方法による景品類の提供になります。したがいまして、結論として景品類の規制に抵触しません。

このことを弁護士の意見書の形でプラットフォーム会社にお伝えしたところ、無事にご納得をいただくことができました。

(4)事例Ⅱ―「カード合わせ」になるか

これについては、ゲームBの運営会社から弊事務所に、「ユーザから、事例Ⅱのような仕組みはカード合わせに該当し、違法なのではないかというクレームが入った。」という相談がありました。
前記(2)で述べたとおり、発動するスキルが景品類である可能性が高いとなりますと、カード合わせには該当してしまいますので、事例Ⅱは景品類の規制に抵触することとなります。そのため、弊事務所もゲームBの運営会社に対し、「規制に抵触する可能性が高い」旨を回答しました。

もっとも、やや微妙なところもあります。事例Ⅱには記載しませんでしたが、実際にはゲームB内のキャラクタは、ガチャ以外にも、ユーザのレベルを上げることによって獲得できる場合や、ある特定のアイテムを一定数以上集めることにより、好きなキャラクタと交換できる場合もあります。
そこで、これらの事情で「カード合わせ」になることを否定できるかが問題となります。

しかしながら、キャラクタ等を獲得する手段が主に「ガチャ」であるという仕組みである限りは、「カード合わせ」に該当しないと判断することは困難ではないかと考えられます。

3. おわりに

上述のとおり、スマートフォンゲームで提供されるキャラクタ等も景品類に該当することが多く、これに該当した場合には、景品類の額の規制に抵触しないか、また、「カード合わせ」に該当しないか等を慎重に検討する必要があります。
もちろん、これらのほかにも考慮しなければならない要素が出てくることもあり得ます。
スマートフォンゲームのユーザとしては、もらえるものであれば景品類は豪華な方が嬉しいものですが、ゲームの提供側に立った場合、様々な制限があることに留意していただければと思います。

升村紀章
弁護士升村 紀章
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、東証一部上場企業(メーカー)、外資系金融機関の法務担当者等として勤務。司法修習修了後、企業法務を中心に取り扱う法律事務所での勤務を経て、2017年7月ベリーベスト法律事務所に入所。M&A、金融法務、租税訴訟から離婚、相続紛争まで幅広い経験を積みつつ、近年はIT法務、知財法務(著作権・商標権)、会社組織再編を中心に手掛ける。
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