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建築請負契約作成のポイントについて解説 ~ 民法改正を踏まえて

2021年3月11日
建築請負契約作成のポイントについて解説 ~ 民法改正を踏まえて

1.はじめに

皆様もご存知の通り、改正民法が2020年4月1日に施行されました。
本稿では、建築請負契約書に関連する民法改正の内容を中心に解説します。

2.建築請負契約書の必要性

改正民法において、契約の方式は自由とされています(改正民法522条2項)。
しかし、建設業法上、建設工事請負契約については、署名又は記名押印され、一定の事項が記載された契約書を作成することが必要とされています(建設業法19条1項)。
なお、電子契約書の方式も認められています(建設業法19条3項))。
そのため、書面又は電子的手段による建築請負契約書を作成する必要があります。

3.建築請負契約書に記載するべき事項

上記のとおり、建築請負契約を初めとする建設工事の請負契約の当事者は、建設工事の請負契約を締結する際、書面で、一定の事項を定めなければなければならないとされておりますが(建設業法19条1項)、以下の事項がそれに該当します。

1 工事内容
2 請負代金の額
3 工事着手の時期及び工事完成の時期
4 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
5 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
6 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
7 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
8 価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
9 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
10 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
11 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
12 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
13 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
14 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
15 契約に関する紛争の解決方法
16 その他国土交通省令で定める事項

記載が必要とされている事項が多いので、漏れがないよう、弁護士に相談しながら作成するか弁護士に作成を依頼する方が安心できるでしょう。

4.民法改正による主な改正点

今回の民法改正によって、請負契約では、以下の点が改正されました。

(1)工事全てを完成させなくても割合に応じた請負報酬請求ができる旨が明文化されたこと

改正民法634条は、①注文者の責めに帰することができない理由によって仕事を完成することができなくなったとき又は②請負が仕事の完成前に解除されたときにおいて、③請負人が既にした仕事によって注文者が利益を受けるときは、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができると規定しています。

これは、既になされた工事の結果は、程度の差こそあるものの、注文者に利益を残すものであり、注文者は、その除却を要求するよりも一定の報酬を支払い、引き取ることが合理的である場合が多いことを理由とするものです。

改正前民法ではこのような規定はありませんでしたが、判例上、請負人の破産により工事を完成できなくなった事例(①の事例です)において、同様の解釈がされていました(最判昭和56年2月17日民集132号129頁)。

改正民法634条では、上記判例を②仕事の完成前の解除の事例にも広げたものです。

上記改正を踏まえますと、仕事の完成前の解除がされた場合に備え、仕事の進捗度に応じた段階的な報酬額を契約書に明記することが望ましいでしょう。
具体的な記載例は、後述します。

(2)仕事の目的物が契約に適合しない場合における請負人の責任として、代金減額請求権や土地の工作物の請負契約の解除が規定されたこと

改正前民法では、仕事の目的物に「瑕疵」があった場合、注文者は、①修補請求、②損害賠償請求、③解除(土地の工作物の請負契約は除く)ができると規定していました(改正前民法634条、635条)。
しかし、改正民法では、「瑕疵」という言葉を使わず、「目的物が…契約の内容に適合しないものであるとき」という表現即ち契約不適合に改められました(改正民法559条、562条)。
また、責任の内容として、改正前は上記①から③のみでしたが、改正民法によって①から③に加え、④代金減額請求権が認められました(改正民法559条、562条乃至564条)。
加えて、改正前民法では土地の工作物の請負契約の解除はできませんでしたが、改正民法では解除が可能になりました(改正前民法635条の削除)。
これらの改正を踏まえ、請負人の担保責任の具体的内容を契約書に記載することが望ましいでしょう。
具体的な記載例は、後述します。

(3)請負人の責任を追及できる期間が変更されたこと

① 責任を追及できる期間の原則

改正前民法では、改正民法下での契約不適合に相当する仕事の目的物に「瑕疵」があったときの責任追及期間について、「引渡したる時より1年内」(改正前民法637条)に請求しなければならないとされていました。

しかし、改正民法では、原則として、「注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知」(改正民法637条)しなければならないと改正されました。

② 土地の工作物に関する責任追及制限期間

改正前民法では、土地の工作物の請負人は、「引渡しの後5年間」担保責任を負うとされていました(改正前民法638条1項本文)。また、石造り等の丈夫な構造の工作物については、「10年」とされていました(改正前民法638条1項ただし書)。

しかし、改正民法では、この638条の規定が削除されたため、土地の工作物についても、「不適合を知った時から1年以内」に請負人に不適合を通知する必要があり、これを過ぎると請負人に対する契約不適合責任の追及ができなくなります。

もっとも、住宅に関しては、住宅の品質確保の促進等に関する法律により、一般の新築住宅における構造耐力上主要な部分等に関しては、従前と同様、引渡しから10年間は請負人の責任の追及が可能です。

(4)注文者が破産した場合における請負人の解除権の制限

改正前民法では、注文者が破産宣告を受けたときは、請負人は請負契約を解除することができました(改正前民法642条1項)。
これは、請負契約では、仕事の完成が先履行であることから、注文者が危機的状況になっても、請負人は仕事を完成させないと報酬債権を得られないため、請負人は仕事を完成させなければならず、そのために請負人が大きな損害を被るのを回避するための規定でした。

しかし、上述の不都合が生じるのは仕事完成前の請負人に限られるため、改正民法では、仕事完成後の請負人の解除権が否定されました(改正民法642条1項ただし書)。

5.改正点をふまえた契約書の記載例

以上の改正点を踏まえ、建物建築請負契約を例に、契約書の条項例を挙げると、以下のようになります。注文者を甲、請負人を乙としています。
もっとも、注文者側にとって有利な記載例と、請負人側にとって有利な記載例は異なります。
そのため、下記をそのまま引用した契約書が、立場によっては不利になるおそれもあります。
したがって、契約書を作成又は検討する場合は、弁護士に相談した方が良いでしょう。

(1)履行の割合に応じた報酬に関する改正をふまえた記載例

第●条 (注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)
次に掲げる場合において、乙が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付があった場合は、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、乙は甲が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができ、具体的な報酬額については、別表記載の通りとする。
(別表) 一 ●●が完了した場合    金●●円
二 ●●が完了した場合    金●●円
三 ●●が完了した場合    金●●円

(2)請負人の担保責任の改正をふまえた記載例

第●条 (担保責任)

1 甲は、引き渡された本建物が、種類、品質又は数量に関して本契約の内容に適合しないとき(以下「契約不適合」という。)は、乙に対し、本建物の修補その他の履行の追完を請求することができる。

2 引き渡された本建物に契約不適合がある場合において、甲が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、甲は、その契約不適合の程度に応じて請負代金の減額を請求することができる。

3 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、甲は、同項の催告をすることなく、直ちに請負代金の減額を請求することができる。

⑴ 履行の追完が不能であるとき

⑵ 乙が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき

⑶ 前二号に掲げる場合のほか、甲が前項の催告をしても履行の追完を受ける 見込みがないことが明らかであるとき

4 契約不適合が甲の責めに帰すべき事由によるものであるときは、甲は、前三項の規定による請求をすることができない。

5 本条第1項から第3項までの規定は、本契約又は法令の規定による損害賠償の請求及び解除権の行使を妨げない。

6 甲は、甲の供した材料の性質又は甲の与えた指示によって生じた契約不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、乙がその材料又は指示が不適当であったことを知りながら告げなかったときは、この限りでない。

7 甲が、契約不適合を知った時から1年以内にその旨を乙に通知しないときは、甲は、その契約不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。

8 前項の規定は、乙が本建物を甲に引き渡した時において、乙がその契約不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。

9 住宅の品質確保の促進等に関する法律施行令第5条第1項及び第2項に定めるものの契約不適合については、甲は、乙から甲に対する引き渡しの日から10年間、乙に対し、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができる。

⑶ 注文者の破産等による請負人の解除権の制限

これに関しては、不要な規定が削除されただけですので、あまり契約書実務に影響は大きくないのですが、注文者が危機的状況にある場合における請負人による解除を定める場合の条項例をご参考までにあげてみます。やや請負人に有利に、破産手続開始決定よりも前に解除ができるように作成してあります。

第●条 (乙の中止権・解除権)

次の各号のいずれかに該当するときは、乙は、工事を中止することができ、本契約を解除することができる。

一 甲の支払停止(資金不足による手形、小切手の不渡り等)などにより、甲が請負代金の支払能力を欠くと認められるとき

二 甲の破産開始手続開始の申立てがあったとき

三 甲の民事再生手続開始の申立てがあったとき

6.最後に

今回は、建築請負契約書に関連する民法改正について記述いたしました。
旧民法に基づく従前の約款や契約書を使用されてきた皆様も、民法改正を踏まえて、内容を見直す必要があります。

契約書を作成する際には、個々のニーズや法的リスクに応じた契約書を作成する必要がありますから、建築請負契約書の作成や改訂にご不明点やご不安な点がある場合は、企業法務の経験豊富な法律事務所に一度ご相談されることをお勧めします。

 

■参考文献
建設業法令遵守ガイドライン(第5版)国土交通省土地・建設産業局建設業課
民法(債権関係)改正法の概要 潮見佳男
最新契約書モデル文例集 新日本法規
業種別ビジネス契約書作成マニュアル
最高裁判所判例解説民事篇昭和62年度711頁 瀬戸正義

ベリーベスト法律事務所
ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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