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働き方改革―関連法

2018年7月6日に公布された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)では、8つの法律について主要な改革が行われました。

<8つの法律>(→は改正に伴って名称変更されました)

  • 雇用対策法→労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
  • 労働基準法
  • 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
  • 労働安全衛生法
  • じん肺法
  • 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律→短時間労働及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
  • 労働契約法
  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

 

働き方改革は、労働時間法制を見直して長時間労働を防止し、多様で柔軟な働き方の実現することと、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を目的とするものです。

今回は、前者に関連する労働基準法の改正部分について、ポイントとなる部分を説明していきます。

1.フレックスタイム制

(1)清算期間を3か月に延長(労基法32条の3)

①改正前

フレックスタイム制の清算期間の上限が1か月であったため、1か月単位で週平均の労働時間を算出し、週平均40時間超の場合には割増賃金の支払が必要でした。
そのため、フレックスタイム制を採用した場合、1か月を超える単位で業務の繁忙に合わせて弾力的に労働時間を変形させることができませんでした。

②改正後

フレックスタイム制の清算期間の上限が1か月から3か月に延長されました。

例えば、清算期間を3か月とした場合、1月と3月は繁忙期、2月が閑散期であれば、2月の労働時間を減らして、1月と3月に割り振ることができるようになりました。

その結果、清算期間を平均して週40時間以下の範囲で、かつ、1か月平均週50時間の限度まで労働させることが可能になりました(労基法32条の3第1項第2号、第2項(※1))。

ただし、清算期間が1か月を超える場合のフレックスタイム制の労使協定は、行政官庁に届け出る必要があるため(労基法32条の3第4項)、届出がなければ、通常の労働時間制に従った割増賃金の支払が必要となります。
また、1か月平均週50時間超により割増賃金を支払った場合、清算期間平均週40時間超による割増賃金から控除されることになりますので、ご注意ください。

<2019年4月1日施行>

(2)完全週休二日制の特例(労基法32条の3第3項)

①改正前

これまでは、例えば、月31日の総法定労働時間は、31日÷7日×40時間=177.1時間とされていました。
そのため、完全週休二日制のフレックスタイム制で、1日平均8時間労働であったとしても、曜日のめぐり合わせによって、労働日数が多い月には時間外労働が発生していました。

②改正後

完全週休二日制のフレックスタイム制でも、「8時間×清算期間の所定労働日数」を労働時間の限度(総枠時間)とすることを労使協定で締結しておけば、所定休日が少ない清算期間においても、平均8時間以内の労働に対する時間外労働の発生を防ぐことができるようになりました。

これによって、例えば、月31日の総枠時間は、出勤日が23日であれば、23日×8時間=184時間ということになります。
従いまして、1日平均8時間労働、月31日、出勤日数23日であった場合、改正前には6.9時間分(184時間-177.1時間)の時間外労働割増賃金を支払う必要があったところ、改正後は、労使協定を締結しておけば、時間外労働割増賃金を支払わなくてもよくなりました。

<2019年4月1日施行>

2.時間外労働の上限規制の導入

(1)36協定の記載事項(労基法36条第2項)

36協定の記載事項は労働基準法施行規則で定められていましたが、労基法で定められることとなりました。

<2019年4月1日>施行>

(2)時間外労働の上限規制(原則)(労基法36条第3項、第4項)

①改正前

労基法上の上限規制はありませんでした(ただし、「労働基準法36条1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年12月28日労働省公告154号)には改正後の内容と同様の上限規制が定められていました)。

②改正後

時間外労働は原則として月45時間、年360時間(1年単位の変形労働時間制において3か月を超える時間を対象期間と定めて労働させる場合には、月42時間、年320時間)を超えることはできなくなりました(上限規制)。
つまり、原則として、1日当たり2時間程度しか時間外労働をさせてはいけません。

<2019年4月1日施行>

(3)時間外労働の上限規制(例外)(労基法36条第5項、第6項)

①改正前

上限規制の例外の定めもありませんでした。

②改正後

特別な事情がある場合には、特別条項付き36協定を締結し、当該協定に基づいて臨時的に上限規制を超えて労働させることができます。
ただし、その場合にも以下の限度枠を超えることはできません。

  • 時間外労働時間+休日労働時間の合計時間→月100時間未満
  • 時間外労働時間が年720時間
  • 直近2か月~6か月のそれぞれの期間における時間外労働及び休日労働の平均が月80時間以内←罰則との関係で注意が必要
  • 月45時間の上限規制を超えることができるのは年6回まで

<2019年4月1日施行>

(4)上限規制の適用除外又は猶予

以下の事業・業務については、その業務の特殊性から、時間外労働の上限規制の適用除外又は猶予することとされています。

適用除外

  • 新技術、新商品等の研究開発業務(労基法36条第11項)
    • 適用猶予(2024年3月31日まで)
  • 建設事業(労基附則139条)
  • 自動車運転の業務(労基附則140条)
  • 医師(労基附則141条)
  • 鹿児島県および沖縄県における砂糖製造事業(労基附則142条)

(5)罰則(労基法119条)

36協定に定められた上限を遵守していても、労基法36条第6項の要件を満たさない場合、例えば、特別条項で休日労働を含み上限が90時間と定められている場合において、対象労働者の時間外労働及び休日労働が2か月連続で80時間を超えた場合などは、同項第3号違反として、従前の36協定違反の場合と同様の罰則の適用対象となります。

従いまして、今回の改正に伴い、時間外労働と休日労働の合計時間を把握し、1か月や年間単位の上限だけでなく、直近2か月~6か月までのいずれの期間においても月平均80時間を超えていないかを確認しなければなりませんので、ご注意ください。

<2019年4月1日施行(中小企業については2020年4月1日施行)>

3.中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金(5割)の猶予措置の廃止

割増賃金率は、時間外労働が月60時間までは2割5分以上ですが、月60時間を超える場合は、中小企業でも、2023年4月1日から(※2)、月60時間超の時間外労働に係る割増賃金率が5割以上に引き上げられます。

4.使用者の年5日の年次有給休暇の付与義務(労基法39条第7項、第8項)

使用者は、年次有給休暇付与の日数が10日以上の労働者について、年次有給休暇を付与した日から1年以内に、労働者ごとに5日の年次有給休暇について時季を指定しなければなりません。

ただし、労働者が時季を指定したり、労使協定に基づき計画的に付与した日数は、5日から控除することができます。

<2019年4月1日施行>

5.特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設

特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設

(1)高度プロフェッショナル制度の適用要件

労働者が自己裁量で時間を選ばず(深夜・休日如何を問わず)自由に働き、事業者は時間ではなく成果に見合った賃金を支払うというシステム、つまり、労基法の労働時間規制が適用されない高度プロフェッショナル制度が創設されました。

当該制度により、高度の専門的知識等を必要とし、従事した時間と成果との関連が通常高くない業務に従事する労働者を対象に、以下の①~④の条件を満たす場合、労基法上の労働時間、休憩、休日、深夜の割増賃金の規定の適用除外となります。

<2019年4月1日施行>

  • 労使委員会(賃金、労働時間その他の労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し意見を述べる委員会で、使用者及び労働者を代表する者が構成員となります)の設置
  • 労使委員会において委員の5分の4以上の賛成で以下の事項を決議
  • 対象業務
  • 対象労働者の範囲
    • 使用者との書面等による合意に基づき職務が明確に定められていること
    • 使用者から支払われると見込まれる賃金が厚生労働省で定める額(1075万円)以上であること
  • 健康管理時間(対象労働者が事業場内にいた時間+事業場外で労働した時間)の把握措置
  • 休日確保措置(年間104日以上、かつ、4週4日以上の休日付与)
  • 選択的健康福祉確保措置(※1
  • 健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置(※2
  • 同意撤回の手続
  • 対象労働者からの苦情処理措置
  • 不同意による不利益取り扱いの禁止
  • その他厚生労働省令で定める事項
  • 労基署への決議の届出
  • 対象労働者の同意

 

①※1 選択的健康福祉確保措置

(ア)勤務間インターバルの確保(11時間以上)+深夜業の回数制限(1か月に4回以内)

(イ)健康管理時間の上限措置(1週間当たり40時間を超えた時間について、1か月について100時間以内又は3か月について240時間以内とすること)

(ウ)1年に1回以上の連続2週間の休日を与えること(労働者が請求した場合は連続1週間を2回以上) 年次有給休暇(労基法39条)とは別で付与する必要があります。

(エ)臨時の健康診断の実施(1週間当たり40時間を超えた健康管理時間が1か月当たり80時間を超えた労働者又は申出があった労働者が対象)

脳・心臓疾患との関連が認められるもの及び当該労働者の勤務状況、疲労蓄積の状況その他心身の状況の確認をするための健康診断です。具体的には①既往歴及び業務歴の調査、②自覚症状及び他覚症状の有無の検査、③身長、体重、腹囲の検査、④血圧の測定、⑤血中脂質検査、⑥血糖検査、⑦尿検査、⑧心電図検査となります。

 

②※2 健康・福祉確保措置

(ア)選択的健康福祉確保措置のいずれかの措置(※1の決議で定めたもの以外)

(イ)医師による面接指導

1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間が1か月当たり100時間を超えた対象労働者については、安衛法に基づき、本人の申し出によらず一律に、医師による面談指導を実施しなければなりません。

(ウ)代償休日又は特別な休暇の付与

(エ)適切な部署への配置転換

(オ)産業医等による助言又は保健指導

(2)導入後の留意点

健康福祉確保措置の履行確保のため、休日(年間104日以上、かつ、4週4日以上)の確実な付与、選択的健康福祉確保措置、健康管理時間に応じた年休付与等の措置の実施状況を6か月ごとに所轄労働基準監督署に報告しなければなりません(労基法41条の2第2項)。
もっとも、特段罰則はないため、報告しなかったことにより高度プロフェッショナル制度が適用できなくなるという効果は定められてはいません。

これに対し、医師による面談指導の履行確保のため、面接指導の基準に該当するものに対し、医師による面接指導を実施しなかった場合には、50万円以下の罰金に処せられる可能性があります(安衛法66の8の4条第1項、120条第1項)。

また、休日確保措置を実施しなかった場合等には、高度プロフェッショナル制度の適用要件を欠くことになるため、労働時間規制が及ぶことになります。
その場合には、高度プロフェッショナル制度適用当初に遡って割増賃金を支払う義務を負うことになります。

まとめ

働き方改革に伴って、労働者もワークライフバランスの実現を重視する働き方を求めるようになり、過重労働や職場のストレス等による過労死等が大きな社会問題となる中、以上のように長時間労働を是正するための様々な改正が行われました。
その結果、労務管理に大きな影響が出ることが予想されます。

本年度は、本社および現場の人事部並びに法務部による教育や内部監査室、監査役のモニタリングなどコンプライアンス・リスクマネジメント体制の中で重点事項とするべきです。
また、お客様の事業に迷惑を掛けないよう或る程度の期間緊急対応を迫られることなどを想定した制度設計を行うことも必要です。

改正によって労基法に抵触することがないように、以上でご説明した点を参考にしていただければ幸いです。

 

(※1)1か月平均週50時間超の場合、1か月ごとに割増賃金の支払が必要となります。
(※2)時間外労働の上限規制の導入に対応して時間外労働を削減していけば、3年後に引き上げられる5割の割増賃金を支払うリスクも軽減することができます。

水野奈也
弁護士水野 奈也
明治大学法学部卒業。検察官として約2年半勤務した後、都内法律事務所にて、使用者側代理人として労基署対応・組合対応・労働審判(訴訟)対応等労働事件を中心に、契約審査等の企業法務、離婚事件等の経験を積み、2019年4月にベリーベスト法律事務所に入所。
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