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薬機法の広告表現とは?規制内容と違反時のペナルティを解説

2023年9月15日
薬機法の広告表現とは?規制内容と違反時のペナルティを解説

化粧品・医薬品・健康食品などを販売するときには、広告の表現に注意しなければいけません。
なぜなら、これらの製品は保健衛生に関わるものなので、薬機法で厳しい広告表現規制が定められているからです。

そこで今回は、薬機法の広告表現規制ルールについて解説します。
あわせて、法令違反が疑われる場合のペナルティも紹介するので、最後までご一読ください。

1.薬機法とは

「薬機法」の正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。
2014年11月25日に、従来の「薬事法」から薬機法へと法改正されました。

(1)薬機法が定められた趣旨・目的

薬機法が定められている目的は次の通りです(第1条)。

  • 医薬品等(医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品)の品質・有効性・安全性の確保
  • 指定薬物の規制
  • 医薬品・医療機器・再生医療等製品の研究開発の促進
  • 保健衛生上の危機の発生・拡大の防止、保健衛生の向上

つまり、薬機法とは、「医薬品等の運用ルールなどを厳密に定めて、国民全体に適切な公衆衛生環境を提供すること」を目的とした法律だと言えます。
そして、薬機法第1条~第1条の6では、国・都道府県・医薬品等関連事業者・医薬品関係者・国民に対して、それぞれ果たすべき責務・役割を提示しています。

(2)薬機法の規制対象

「保健衛生の向上」という大きな目的を掲げるとなると、「世の中に存在する食品などがすべて薬機法の規制対象に含まれるのではないか」と思われる人も少なくはないはずです。

ただ、薬機法では、添付文書の記載義務・製造販売業者情報の表示義務・医薬品の製造販売許可・治験に関するルールなどの数々の規制が定められているため、薬機法の規制対象が広くなり過ぎると業界への新規参入への抵抗感が高まり、結果として、国民全体の「保健衛生の向上」が危ぶまれるリスクが生じます。

そこで、薬機法では、規制対象を以下のものに限定し、該当しないものについては薬機法の厳しい規制ルールの対象外とする運用をとっています(第2条)。

  1. 医薬品
  2. 医薬部外品
  3. 化粧品
  4. 医療機器(高度管理医療機器・管理医療機器・一般医療機器・特定保守管理医療機器)
  5. 再生医療等製品

たとえば、原則として、いわゆる「健康食品」は医薬品等には含まれないので、薬機法の対象外です。

ただし、製造・販売している健康食品について、まるで「病気が治癒する」などの宣伝文句で集客行為をしている場合には実質的に医薬品等に該当して薬機法の規制対象に含まれるため、承認・許可プロセスを経ていなければ薬機法違反として行政指導などが下されます(なお、機能性表示食品制度特定保健用食品制度を利用する場合には一定範囲の表示が可能となります)。

このように、薬機法の規制対象に含まれるか否かによって、事業者の営業方法は大きく左右されるものです。
したがって、販売予定の商品が薬機法の規制対象に含まれるかの判断が難しい場合には、かならず弁護士のアドバイスを参考にしたうえで、法令違反を問われないような万全の体制を整えるべきでしょう。

(3)薬機法違反のペナルティ

薬機法違反が発覚した場合には、次のような方法で法的責任が追及されることになります。

  • 立入検査(第69条)
  • 緊急命令(第69条の3)
  • 廃棄命令・回収命令(第70条)
  • 検査命令(第71条)
  • 改善命令(第72条)
  • 違反広告に対する措置命令(第72条の5)
  • 医薬品等総括製造販売者責任者等の変更命令(第73条)
  • 承認・許可・登録などの取消処分
  • 罰金
  • その他、民法上の損害賠償責任

このように、薬機法違反事由が生じた場合には、行政による厳しい措置が採られるだけではなく、実被害が生じた消費者に対する賠償責任などを負担する可能性が生じます。
また違反の事実が措置命令にあわせて周知されてしまうことにより、取引先や消費者からの信用を大きく損なうこともビジネス上の障害になるでしょう。

医薬品等や健康食品などに関与する事業者は、自分たちの業務が保健衛生に関わる重要な責務を担っていると理解したうえで、法令を遵守して事業を展開しましょう。

2.薬機法の広告表現に関するルールとは

ここからは、薬機法において定められている諸規制のうち、特に広告表現に関するルールに焦点を絞って解説します。

もし、薬機法の規制対象である医薬品等の広告が適正な内容を欠くものであると、消費者が製品購入時に適切な判断ができず、結果として重大な健康被害を生じかねません。
インターネット広告などを通じたマーケティング戦略が一般的になっている現状において、健康問題に関わる製品の広告表現に一切の制限がないと、広く保健衛生の向上が毀損されるリスクがあるのは言うまでもないでしょう。

そこで、薬機法・医薬品等適正広告基準では、医薬品等の広告について次のような表現規制ルールを定めています(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ・ウェブサイト・ソーシャル・ネットワーキングサービスなどの媒体全ての広告が対象です)。

  • 医薬品等の誇大広告等の禁止
  • 特定疾病用の医薬品・再生医療等製品に対する広告制限
  • 承認前の医薬品・医療機器・再生医療等製品に対する広告規制

参照:「医薬品等の広告規制について」厚生労働省HP

参照:「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について

(1)【薬機法の広告表現規制①】誇大広告等

(誇大広告等)第66条

第1項 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

第2項 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。

第3項 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。

まず、医薬品等などの名称・製造方法・効能などについて、噓偽りの内容を記載する(「虚偽広告」)、誇張表現などを使用して消費者の判断を誤らせる(「誇大広告」)などの広告表現は全般的に禁止されています。これは、消費者が商品を購入するかを適切に判断できる状況を担保する趣旨です。

(2)【薬機法の広告表現規制②】特定疾病用の医薬品・再生医療等製品の広告の制限

(特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限)第67条

第1項 政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品又は再生医療等製品を指定し、その医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品又は再生医療等製品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。

第2項 厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事・食品衛生審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。

がん・肉腫・白血病などの特定の疾病については、医薬品等の製造・販売について高度な専門的知識が要求されます。
たとえば、効果・効能だけではなく、激しい副作用に対する配慮も必要であり、そもそも広告という形での情報を専門知識を有さない一般人に提供すること自体が問題につながると考えられています。

そのため、上記のような特定の疾病に関する医薬品や再生医療等製品は、医業関係者にしか表示してはいけません。

(3)【薬機法の広告表現規制③】承認前の医薬品・医療機器・再生医療等製品の広告の禁止

(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)第68条

何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

承認前の医薬品等については、そもそも申請内容が認証されるか不明な状況です。

つまり、承認前の医薬品等に関する広告は、認証結果次第ですべて虚偽内容になる可能性があるため、誇大広告・虚偽広告などを事前に予防する観点から、全面的な広告禁止が定められています。
なお、「未承認の医薬品」として広告する人は普通いませんので、医薬品の定義にあたるような内容を広告する場合は、承認を受けていないと違反になると考える方が、わかりやすいです。

(4)薬機法の広告表現規制に抵触しない方法

このように、薬機法では広告表現について厳しい規制ルールを置いているため、広告表現について精査しなければ事業継続自体が危ぶまれる状況に追い込まれかねません。

そこで、医薬品や化粧品・健康食品などの製造・販売する場合には、次の2つの方法で広告表現規制への抵触を回避しましょう。

  • 薬機法・広告法務分野に強い弁護士に相談する
  • チェックツールなどを活用して使用ワードの合法性を確認する

スピード感を重視するのならチェックツールを使用して広告表現内容を確認する方法がおすすめですが、チェックツールは万全なものではありませんし、万が一合法性に疑いが生じた場合に「チェックツールを使用したから大丈夫だと思った」という抗弁は通用しない点に注意が必要です。

万全の環境で医薬品等の製造・販売業に注力するのなら、専門家の意見を参考にするのがおすすめです。

3.薬機法の広告表現規制に違反した場合のペナルティとは

薬機法で定められている広告表現規制に違反した場合には、次のようなペナルティが科されます。

  • 違反広告に係る措置命令(第72条の5)
  • 課徴金納付命令(第75条の5の2)

これらの行政罰が下された場合、当該製品の製造・販売が難しくなるだけではなく、事業者のブランド自体が失墜することによって事実上生じる悪影響が甚大なものとなり、他製品の信用も失墜する可能性があります。

したがって、基本的には事前の予防体制をしっかりと確立するのが最善策と言えるでしょう。

【まとめ】

薬機法では医薬品等について厳しい広告表現ルールが定められているため、事業者がこれらの製品を製造・販売する際には、かならず法令の遵守を意識する必要があります。

ただし、健康食品のなかには「そもそも薬機法の規制対象に含まれるのか」の判断が難しい場合がありますし、「薬機法の規制対象に含まれるとして、どこまでの広告表現が許容されるのか」についても、ケースバイケースでの吟味が求められます。
つまり、一般事業者がどれだけ注意しても法令違反を問われるリスクを避けられないということです。

したがって、薬機法に抵触する可能性がある製品を製造・販売する場合には、事前に「法令違反が存在しない状況」を整備するのが最重要課題になると考えられます。
チェックツールや専門家の意見を参考にしながら、NGワードの掲載を避けて合法的な医薬品等の事業展開を目指しましょう。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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