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弁護士が解説!今おさえるべき、仮想通貨(暗号資産)に関する令和元年法改正 その1(資金決済法)

2020年2月3日
弁護士が解説!今おさえるべき、仮想通貨(暗号資産)に関する令和元年法改正 その1(資金決済法)

1.はじめに

仮想通貨に関しては、我が国においても、現在各種の法律上の規制があります。

とりわけ、平成28年(2016年)6月に改正された「資金決済に関する法律」(以下「資金決済法」といいます。)では、「仮想通貨」が日本で初めて法的に定義され、世界に先駆けて仮想通貨を業として取り扱うに当たっての各種規制が設けられました。

その後、仮想通貨が投機の対象とされることが多くなる一方、オンライン(いわゆるホットウォレット)で管理していた仮想通貨が流出する事案が複数発生するなど、利用者保護の要請はますます高まっています。

このような状況を受けて、更なる資金決済法の改正に向けた研究が開始され、令和元年(2019年)5月31日、資金決済法が新たに改正されました(施行は令和2年(2020年)5月1日。)。

以下では、仮想通貨に関する資金決済法の令和元年改正についてご紹介いたします。

2.「仮想通貨」は「暗号資産」に呼称変更

まず、「仮想通貨」という言葉は、我が国において広く定着しつつありますが、国際的な動向[i]や法定通貨(Fiat/Legal/Sovereign Currency/Tender = money)との誤認の可能性があったことなどを踏まえ、これまで資金決済法上「仮想通貨」と定義されていたものは、英語圏で使用されている”cryptocurrency”や”crypto asset”との呼称を参考に、令和元年改正により、「暗号資産」と呼ばれることになりました。これは、呼称の変更にすぎず、内容的な変更はありません。

なお、以下では、令和元年改正に合わせて、「仮想通貨」ではなく「暗号資産」という呼称を用い、また、便宜上、令和元年改正後の資金決済法を単に「資金決済法」といい、令和元年改正前の資金決済法を「改正前資金決済法」といいます。

3.「暗号資産交換業」該当行為の追加

令和元年改正以前から、資金決済法では「登録制」が採用されています。
つまり、暗号資産の売買などを業として行うためには、内閣総理大臣の登録を受けなければなりません(資金決済法63条の2)。
資金決済法上、業として行うに当たって内閣総理大臣の登録を受けなければならない行為は、「暗号資産交換業」と呼ばれ、具体的には次のものが該当します。

 

① 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換(同法2条7項1号)
② ①に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理(同法2条7項2号)
③ その行う①及び②に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は暗号資産の管理をすること(同法2条7項3号)
④ 他人のために暗号資産を管理すること(同法2条7項4号)

 

①から③までの行為については、改正前資金決済法上も規定されていましたが、令和元年改正により、新たに④が追加されました。

④の業務は、暗号資産の売買等を行わずに、利用者の暗号資産を管理し、利用者の指図に基づき利用者が指定するアドレスに暗号資産を移転させる業務をいいます。
このような業務についても、利用者の暗号資産が流出するリスク、また、そのリスクが顕在化した場合に④を行う暗号資産交換業者が経営破綻するリスクなどが想定されるため、①から③までの業務と同様に規制の対象とされました。

4.登録拒否事由の追加

暗号資産交換業者としての登録に当たっては、登録拒否事由に該当しないことが必要となり、登録拒否事由が認められる場合には、内閣総理大臣は登録を拒否しなければならないとされています(資金決済法63条の5第1項)。登録拒否事由は、次のとおりです。

  •  登録申請書若しくはその添付資料のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けている場合(同項柱書)
  •  同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合

②について、令和元年改正は同項6号を新設し、「暗号資産交換業者をその会員(資金決済法87条2号に規定する会員をいう。)とする認定資金決済事業者協会に加入しない法人であって、当該認定資金決済事業者協会の定款その他の規則[ii]に準ずる内容の社内規則を作成していないもの又は当該社内規則を遵守するための体制を整備していないもの」に該当する場合も、登録が拒否されることになりました。

このように、暗号資産交換業者は、認定資金決済事業者協会に加入するか、または、これに加入しない場合は、一定の社内規則を作成し、これを遵守するための体制を整備することが必要になりました。

5.暗号資産の名称等の変更に関する事前届出制

資金決済法においては、事前の「届出」も必要となります。
改正前資金決済法上は、暗号資産交換業者が登録申請書に記載した事項に変更があった場合、遅滞なく内閣総理大臣に届け出なければならないとされ、事後の届出のみが義務づけられていました。

しかし、令和元年改正により、「取り扱う暗号資産の名称」又は「暗号資産交換業の内容及び方法」のいずれかを変更する場合には、あらかじめ内閣総理大臣に届け出なければならいとされ、事前の届出も義務づけられました(資金決済法63条の6第1項)。
ただし、利用者の保護に欠けるおそれが少ない場合や暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行に支障を及ぼすおそれが少ない場合には、事前の届出は必要ありません(同項かっこ書)。

これは、移転記録が公開されず、いわゆるマネー・ロンダリングに利用されやすいなどの問題のある暗号資産が登場したことを受け、事前にそのような問題の有無をチェックする必要があると判断されたことから定められたものです。

6.勧誘・広告に関する規制

令和元年改正では、新たに、次のような勧誘・広告に関する規制も設けられました。

(1)広告に際しての表示義務

暗号資産交換業者は、暗号資産交換業に関して広告をするときは、内閣府令で定めるところにより、次の各事項を表示しなければなりません(資金決済法63条の9の2)。

① 暗号資産交換業者の商号(同条第1号)
② 暗号資産交換業者である旨及びその登録番号(同条第2号)
③ 暗号資産は本邦通貨又は外国通貨ではないこと(同条第3号)
④ 暗号資産の性質であって、利用者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものとして内閣府令で定めるもの(同条第4号)

なお、これらの事項を表示しなかった者は、6月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金、又はその両方が科され(同法112条9号)、法人も、50万円以下の罰金に処せられます(同法115条1項4号)。

(2)勧誘・広告に際しての禁止行為

暗号資産交換業者又はその役員若しくは使用人は、次のような行為をしてはなりません(資金決済法63条の9の3)。

 

① 利用者を相手方として暗号資産交換業としての行為を行うことを内容とする契約の締結又はその勧誘(「暗号資産交換契約の締結等」)をするに際し、虚偽の表示をし、又は暗号資産の性質その他内閣府令で定める事項(「暗号資産の性質等」)についてその相手方を誤認させるような表示をする行為(同条第1号)

② その行う暗号資産交換業に関して広告をするに際し、虚偽の表示をし、又は暗号資産の性質等について人を誤認させるような表示をする行為(同条第2号)

③ 暗号資産交換契約の締結等をするに際し、又はその行う暗号資産交換業に関して広告をするに際し、支払手段として利用する目的ではなく、もっぱら利益を図る目的で暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換を行うことを助長するような表示をする行為(同条第3号)

④ 上記①から③までのほか、利用者の保護に欠け、又は暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものとして内閣府令で定める行為(同条第4号)

 

上記のうち、①の違反を行った者は、1年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその両方を科され(同法109条8号)、②又は③の違反を行った者は、6月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金、又はその両方を科されます(同法112条10号)。
法人についても、①の違反については2億円以下の罰金に処され(同法115条1項2号)、②又は③の違反については50万円以下の罰金に処されます(同法115条1項4号)。なお、④の違反については今のところ罰則が定められていません。

7.利用者の保護等に必要な措置の追加

令和元年改正により、利用者保護等のために必要なものとして、暗号資産交換業者に対し求められる措置が次のとおり追加されました。

(1)利用者に信用を供与して暗号資産の交換等を行う場合の情報提供措置

暗号資産は、日本円やドルなどの法定通貨とは異なり、その価値の変動がきわめて激しいものです。
そのため、利用者に不測の損害が生じないように、十分な情報提供等を行う必要があります。
そして、暗号資産交換業者が利用者に信用を供与して暗号資産の交換等を行うことがありますが(いわゆる暗号資産信用取引)、この場合、利用者は、手持ち資金にレバレッジを掛けることによって多額の利益を得られる可能性がある反面、損失も過大なものとなる可能性もありますので、特に利用者に不測の損害が生じるおそれが高いといえます。

そこで、令和元年改正により、暗号資産交換業者が利用者に信用を供与して暗号資産の交換等を行う場合には、内閣府令で定めるところにより、当該暗号資産の交換等に係る契約内容についての情報提供その他の利用者の保護を図り、及び当該業務の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置をも講じなければならないこととされました(資金決済法63条の10第2項)。

(2)利用者金銭の信託義務

通常、暗号資産交換業者は、利用者の資産(金銭又は暗号資産)を管理することが想定されますが、その管理に当たって、利用者の資産が不正に流用されたり、暗号資産交換業者が経営破綻するなど、利用者が大きな不利益を受けかねないケースも考えられます。

そこで、資金決済法は、暗号資産交換業者に対し、利用者の金銭又は暗号資産と自己の金銭又は暗号資産を分別して管理する義務を課しており(資金決済法63条の11第1項・2項)、また、その実効性を確保するため、公認会計士又は監査法人の監査を受けなければならないとしています(資金決済法63条の11第3項)。

これに加え、令和元年改正では、暗号資産交換業者は、内閣府令で定めるところにより、自己の金銭と分別して管理する利用者の金銭を信託会社に信託しなければならないとされました(資金決済法63条の11第1項)。

8.履行保証暗号資産

周知のとおり、平成30年(2018年)1月におけるコインチェック事件において、利用者の暗号資産の外部流出が大きな問題となりました(なお、令和元年(2019年)改正後の令和元年7月にはビットポイント事件が発生しています。)。
これを受け、暗号資産交換業者は、内閣府令で定める一定の暗号資産について、これと同種・同量の暗号資産を自己の暗号資産(「履行保証暗号資産」)として保有しなければならず、また、履行保証暗号資産については、それ以外の自己の暗号資産と分別して管理しなければならないこととされました(資金決済法63条の11の2第1項)。

これは、特に、オンラインで管理する(いわゆるホットウォレット管理の)暗号資産については、利便性・流動性がより高い一方で、特に利用者の暗号資産の外部流出のおそれが高いことから、利用者保護のため、履行保証暗号資産として、利用者への暗号資産の売買等の「履行」を「保証」すべく、暗号資産交換業者に対し、別途、同種・同量の暗号資産を保有することを求めたものと思われます。

9.利用者の優先弁済権

暗号資産交換業者が倒産した場合、利用者の暗号資産に対する権利はどうなるでしょうか。

法律上は、原則として、当該暗号資産交換業者の債権者はみな平等に財産を分けることになります。

しかし、利用者は、令和元年改正により、優先的に弁済を得る権利が認められました。具体的には、暗号資産交換業者に暗号資産の管理を行わせることを内容とする契約を締結した利用者は、当該暗号資産交換業者に対して有する暗号資産の移転を目的とする債権に関し、対象暗号資産[iii]について、他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有する、とされたのです(同法63条の19の2第1項)。

したがって、暗号資産交換業者が倒産した場合でも、利用者が当該暗号資産交換業者に対し契約を締結して暗号資産の管理を行わせていたのであれば、同項により、利用者は、他の債権者に優先して当該暗号資産交換業者から弁済をしてもらえることになります。

10.まとめ

以上みてきましたように、令和元年改正により、暗号資産に関する法令上の新たな規制が定められました。
今後もますます規制の在り方が変化していく分野だと思われますので、暗号資産交換業者である会社や、暗号資産交換業者になろうとする会社はもちろん、取引先がこうした規制の対象になっているのであれば、今後も十分な注意が必要です。

もっとも、細かな規制についてはよく分からないということもあるでしょうから、何か悩まれるようであれば、フィンテック分野に詳しい弁護士が所属する法律事務所にお問い合わせをされることをお勧めします。

 

[i] Virtual CurrencyとCrypto Currencyとは歴史や実態が異なります。前者はゲーム内のデジタル仮想空間で使用されるゲームの主催者が発行する通貨に始まり、他方、後者はその後Bitcoinなど暗号を使用した発行体を不特定として投資目的として一般に普及し始めた通貨ですが、これらは必ずしも厳密な区別をされることなく使用されるようになりました。

[ii] 暗号資産交換業者の利用者の保護又は暗号資産交換業者の適正かつ確実な遂行に関するものに限ります。

[iii] 当該暗号資産交換業者が資金決済法63条の11第2項の規定により自己の暗号資産と分別して管理する利用者の暗号資産及び履行保証暗号資産をいいます。

渡瀬裕喜
弁護士渡瀬 裕喜
ベリーベスト法律事務所アソシエイト。中央大学法学部を卒業後、京都大学法科大学院を経て、司法試験合格。最高裁判所司法研修所修了後、ベリーベスト法律事務所に入所。個人と企業とを問わず、幅広い分野での経験を積んでいる。
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