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「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」の公表についてわかりやすく解説

2020年4月27日
「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」の公表についてわかりやすく解説

目次

1. はじめに

「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供 する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独 占禁止法上の考え方」のポイント_検討の経緯

引用:公正取引委員会

(1)プラットフォーマー型ビジネスの台頭

昨今,個人情報等の取得または利用と引き換えにデジタル・プラットフォームを提供するというビジネス(定義は2.(2))が拡大してきています。
このような、デジタル・プラットフォーム事業者の提供するサービスは、ネットワーク効果、低廉な限界費用、規模の経済等の特性を通じて拡大する一方で、独占化・寡占化が進みやすい性質を持っています。
また、データが集中すると、利用者の効用が増加するため、デジタル・プラットフォーム事業者にデータが集積・利活用され、データを基礎とするビジネスモデルが構築されるとさらにデータの蓄積・利活用が進展し、競争優位を維持・強化する循環が生じるとも考えられています。
そのような中、多くのデジタル・プラットフォーム事業者は、個人情報等の取得または利用と引換えに財やサービスを無償で提供するというビジネスモデルを採用することで大量のデータを集積する方法を採用しています。
しかし、このようなデータ集積の方法に乗じて不公正な手段により個人情報等を取得又は利用することにより、消費者に不利益を与えるとともに、公正かつ自由な競争に悪影響を及ぼすことがあることが問題視されてきました。
また上記のような消費者への影響に加えて、デジタル・プラットフォーム事業の拡大に伴って、膨大なデータ収集力を背景に、GAFAなどの巨大IT企業が市場の支配力を持ち始めるという状況も生じます。
この状況に対して、公正取引委員会としては国内の中小企業が巨大IT企業の下請けになってしまうという危機感を持っていました。

(2)独占禁止法の観点からの規制の検討

以上のような実態の中、プラットフォーム事業者(通称、プラットフォーマー)に対する我が国の「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(以下「独占禁止法」といいます)の観点からの規制の検討は生成30年(2018年)6月に閣議決定された「未来投資戦略」で本格化し、省庁の壁を超えた経済産業省、総務省、公正取引員会(以下「公取委」)などが研究会などを開催して検討に入り、令和元年(2019年)9月の閣議決定で「デジタル市場競争本部」が設置されました。
公取委は、平成30年(2018年)12月18日に取りまとめられた「プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備の基本原則」において,「サービスの対価として自らに関連するデータを提供する消費者との関係での優越的地位の濫用規制の適用等,デジタル市場における公正かつ自由な競争を確保するための独占禁止法の運用や関連する制度の在り方を検討する。」こととされたことを踏まえ、「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(以下「本考え方」)を取りまとめ、バプコメを経て、令和元年(2019年)12月17日に,上記「本考え方」が公表されました。
本考え方では公正取引委員会から,かかるビジネスの中で独占禁止法において規制される優越的地位の濫用(第2条9項5号)に該当するかについて,考え方が示されています。
今回はこの考え方の内容について解説していきます。

2.デジタル・プラットフォームとは

「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供 する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独 占禁止法上の考え方」のポイント_検討の経緯_概要

引用:公正取引委員会

(1)概要

「デジタル・プラットフォーム」とは,情報通信技術やデータを活用して第三者にオンラインのサービスの「場」を提供し、そこに異なる複数の利用者層が存在する多面市場を形成し、いわゆる間接ネットワーク効果が働くという特徴を有するものです。

(2)デジタル・プラットフォームを提供する事業者について

「デジタル・プラットフォームを提供する事業者」とは,以下のサービスを提供する事業者です。

  • オンライン・ショッピング・モール(楽天市場等)
  • インターネット・オークション(ヤフーオークション等)
  • オンライン・フリーマーケット(メルカリ等)
  • アプリケーション・マーケット(Google Play,App Store等)
  • 検索サービス(Google,Bing,MSN等)
  • コンテンツ(映像、動画、音楽、電子書籍等)配信サービス(Amazonプライム・ビデオ,Hulu等)
  • 予約サービス(じゃらんnet,食べログ予約サービス等)
  • シェアリングエコノミー・プラットフォーム(スペースマーケット等)
  • ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)(Twitter,Facebook,LINE等)
  • 動画共有サービス(YouTube,ニコニコ動画等)
  • 電子決済サービス(Coiney,PayPay等) など

3.問題となる行為

本考え方の対象となる行為は「デジタル・プラットフォーム事業者が提供するデジタル・プラットフォームにおける個人情報等の取得又は当該取得した個人情報等の利用における行為」です。

(1)個人情報とは?

①  「個人情報等」とは,個人情報保護法第2条第1項が規定する「個人情報」[1]および「個人情報以外の個人に関する情報」 [2]のことです。
② 単体で個人を識別できないウェブサイトの閲覧情報や,携帯端末の位置情報は対象とならないのでしょうか。
本考え方の「個人情報等」には,ウェブサイトの閲覧情報,携帯端末の位置情報等,一般には,それ単体では個人識別性を有しないものも含まれる場合があります。
それは,ウェブサイトの閲覧情報,携帯端末の位置情報等であっても,他の情報と容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができる場合です。

(2)「個人データ」,「消費者」とは?本考え方には「個人データ」,「消費者」といった言葉が使われています。

① 「個人データ」とは,個人情報保護法第2条第6項に規定する「個人データ」 [3]をいいます。
② 「消費者」とは,個人をいいますが,事業として又は事業のためにデジタル・プラットフォーム事業者が提供するサービスを利用する個人は含みません。

4.優越的地位の濫用の考え方

独占禁止法は,以下のような規定を置いて「優越的地位の濫用」を規制しています。

独占禁止法第2条第9項第5号

自己の取引上の地位が相手方に優越[4]していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に[5] 、次のいずれかに該当する行為[6]をすること。

イ 継続して取引する相手方に対して、当該取引に係る商品または役務以外の商品または役務を購入させること
ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払いを遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、もしくは変更し、または取引を実施すること。

「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供 する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独 占禁止法上の考え方」のポイント_検討の経緯_概要_「優越的地位の濫用」

引用:公正取引委員会

(1)何故優越的地位の濫用になるの?

「デジタル・プラットフォーム事業者が提供するデジタル・プラットフォームにおける個人情報等の取得又は当該取得した個人情報等の利用における行為」がなぜ優越的地位の濫用になるのでしょうか。

事業者がどのような取引条件で取引するかについては,基本的に,取引当事者間の自主的な判断に委ねられるものです。しかし事業者と消費者との取引においては, 「消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差」 (消費者契約法〔平成12年法律第61号〕第1条)が存在しており,消費者は事業者との取引において取引条件が一方的に不利になりやすい関係にあります。

このような関係の中で,デジタル・プラットフォーム事業者が,消費者に対し,その地位を利用して,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは,当該取引の相手方である消費者の自由かつ自主的な判断による取引を阻害します(縦の関係)。
さらには,デジタル・プラットフォーム事業者はその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあります(横の関係)。
そのため,デジタル・プラットフォームにおける個人情報等の取得又は当該取得した個人情報等の利用をする行為は,公正な競争を阻害するおそれがあります。
以上のような理由から,不公正な取引方法の一つである優越的地位の濫用として,独占禁止法により規制されます。

(2 )「取引の相手方(取引する相手方) 」の考え方

消費者に対して金銭の交付は要求せず,個人情報等の提供のみを要求する場合でも,「取引の相手方」に当たるのでしょうか。
個人情報等は,消費者の属性,行動等,当該消費者個人と関係する全ての情報を含み,デジタル・プラットフォーム事業者の事業活動に利用されていることから,経済的価値を有します。
そのため,消費者が,デジタル・プラットフォーム事業者の提供するサービスを利用する際に,その対価として自己の個人情報等を提供していると認められる場合は,消費者はデジタル・プラットフォーム事業者の「取引の相手方(取引する相手方) 」に該当すると判断されます。

(3)「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して」の考え方

① 優越した地位にあるとは

デジタル・プラットフォーム事業者が個人情報等を提供する消費者に対して「優越した地位」にあるとは,消費者がデジタル・プラットフォーム事業者から不利益な取扱いを受けても,消費者が当該デジタル・プラットフォーム事業者の提供するサービスを利用するためにはこれを受け入れざるを得ないような場合です。

② 優越した地位にあることをどのように判断するのか

該当するかどうかの判断には消費者にとっての当該デジタル・プラットフォーム事業者と「取引することの必要性」が考慮されます。
具体的には以下のような分類が考えられます。

 消費者にとって,他に当該サービスと代替可能なサービスを提供するデジタル・プラットフォーム事業者が存在しない場合です。
当該サービスと代替可能であるかどうかについては,サービスの機能・内容,品質等を考慮して判断します。その判断に当たっては,一般的な消費者にとって代替可能であるかどうかで判断されます。個々の消費者についての判断ではありません。

 消費者にとって,他に代替可能なサービスを提供するデジタル・プラットフォーム事業者が存在していたとしても、当該サービスの利用をやめることが事実上困難な場合です。
当該サービスの利用をやめることが事実上困難かどうかについては,サービスの機能・内容,当該サービスを利用する他の消費者と形成したネットワークや,当該サービスを利用することにより蓄積したデータを,他の同種のサービスで利用することが可能かどうかなどの特徴等を考慮して判断します。
その判断に当たっては,一般的な消費者にとって利用をやめることが事実上困難かどうかで判断します。これも個々の消費者についての判断ではありません。

 消費者にとって,当該サービスにおいて,当該サービスを提供するデジタル・プラットフォーム事業者が,その意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の取引条件を左右することができる地位にある場合です。

③ 優越的地位を「利用して」とは

優越的地位にあるデジタル・プラットフォーム事業者が,消費者に対して不当に不利益を課して取引を行えば,通常, 「利用して」行われた行為であると認められます。

(4)「正常な商慣習に照らして不当に」の考え方

「正常な商慣習に照らして不当に」という要件は,優越的地位の濫用の有無が,公正な競争秩序の維持・促進の観点から個別の事案ごとに判断されることを示すものです。
ここで,「正常な商慣習」とは,公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものをいいます。
したがって,現に存在する商慣習に合致しているからといって,直ちにその行為が正当化されることにはなりません。

5.優越的地位の濫用となる行為類型

優越的地位の濫用に当たる行為は,(1)個人情報等の不当な「取得」と(2)個人情報等の不当な「利用」に分けられます。以下では,具体的な行為類型についてみていきます。

(1)個人情報等の取得

① 利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得すること
② 利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を取得すること。
③ 個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに,個人情報を取得すること。
④ 自己の提供するサービスを継続して利用する消費者に対して,消費者がサービスを利用するための対価として提供している個人情報等とは別に,個人情報等その他の経済上の利益を提供させること。

① 利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得すること。

ア 想定例

デジタル・プラットフォーム事業者A社が,個人情報等を取得するに当たり、その利用目的を自社のウェブサイト等で知らせることなく、消費者の個人情報を取得した場合です。

イ ウェブサイトの記載について注意すべき配慮

以下の点を実施している場合,この類型は通常問題となりません。

  • 自社のウェブサイトの分かりやすい場所に利用目的を掲載している。
  • 消費者に対して,電子メール等により利用目的を通知している。
  • 一般的な消費者が容易にアクセスできる場所に分かりやすい方式で,明確かつ平易な言葉を用いて,簡潔に,一般的な消費者が容易に理解できるように利用目的に関する説明を行っている。

以上に対して,以下のような記載の場合は,一般的な消費者が利用目的を理解することが困難な状況において,消費者の個人情報を取得したとして,利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得したと判断される可能性があります。

  • 利用目的の説明が曖昧である
  • 難解な専門用語によるものである
  • 利用目的の説明文の掲載場所が容易に認識できない
  • 利用目的の説明文の掲載場所が分散している
  • 他のサービスの利用に関する説明と明確に区別されていない

ウ 取得する個人情報等の注意点

ウェブサイトの閲覧情報,携帯端末の位置情報等,一般には,それ単体では個人識別性を有しない情報であっても,当該情報を個人を識別して利用する場合は,そのことを消費者に知らせずに取得すると問題となります。

② 利用目的の達成に必要な範囲を超えて,消費者の意に反して個人情報等を取得すること

ア 想定例

通常、利用目的について記載をしている場合、①には該当しません。しかし、その場合であっても,優越的地位の濫用にあたると判断される場合があります。
例えば、デジタル・プラットフォーム事業者B社が,個人情報等を取得するに当たり,その利用目的を「商品の販売」と特定して消費者に示していたところ,商品の販売に必要な範囲を超えて,消費者の性別・職業に関する情報を,消費者の同意を得ることなく取得したというような場合です。

イ 「商品の販売」を利用目的とするデジタル・プラットフォームを提供する場合の注意点

まず,以下の情報取得については通常問題とはなりません。

  • 消費者の氏名や,氏名と紐付いて取得されるメールアドレス,決済情報等といった利用目的の達成に必要な個人情報を取得すること
  • 氏名と紐付いて取得される消費者の性別や職業等といった利用目的の達成に必要な範囲を超える個人情報であっても,消費者本人の明示的な同意を得て取得すること

ただし,消費者が,サービスを利用せざるを得ないことから,利用目的の達成に必要な範囲を超える個人情報等の取得にやむを得ず同意した場合には,当該同意は消費者の意に反するものと判断される場合があります。
やむを得ず同意したものであるかどうかの判断においては,同意したことにより消費者が受ける不利益の程度等を勘案することとし,その判断に当たっては,一般的な消費者にとって不利益を与えることとなるかどうかで判断します。
個々の消費者ごとの判断ではありません。

なお,「商品の販売」に加えて追加的なサービスを提供しているときに,当該追加的なサービスの提供を受ける消費者本人の明示的な同意を得て,当該追加的なサービスの提供に必要な個人情報を取得する場合は,通常,問題となりません。

③ 個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに,個人情報を取得すること。

ア 想定例

取得する際の消費者への説明とは無関係に、優越的地位の濫用にあたる場合があります。
例えば、デジタル・プラットフォーム事業者C社が,個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに,サービスを利用させ,消費者の個人情報を取得した婆です。
より具体的には、取得した個人情報についてデジタル・プラットフォーム事業者と消費者以外の第三者が容易に情報を盗み見ることができる状態で保管している場合があたります。
対応策としては,パスワード等でデータの閲覧者を管理制限できる状態で保管しておくことが考えられます。

④ 自己の提供するサービスを継続して利用する消費者に対して,消費者がサービスを利用するための対価として提供している個人情報等とは別に,個人情報等その他の経済上の利益を提供させること。

ア 想定例

例えば、デジタル・プラットフォーム事業者D社が,提供するサービスを継続して利用する消費者から対価として取得する個人情報等とは別に,追加的に個人情報等を提供させた場合です。
より具体的には、商品の販売を利用目的としている場合に、「利用者全員にお願いしているアンケートです」などと称して,回答を拒むことのできないフォームで性別や職業などを入力させる場合などです。

イ 問題とならない場合と問題となる場合

以下のような場合は,通常この類型④では問題とはなりません。

  • 任意のアンケート調査による場合等,消費者が対価として提供している個人情報等とは別に個人情報等を任意に提供する場合
  • 従来提供していたサービスとは別に,追加的なサービスを提供する場合であって,消費者が当該追加的なサービスの提供を受けるに当たり,その対価として追加的な個人情報等を提供させる場合
  • サービスの品質の向上等,消費者が対価として提供している個人情報等とは別に個人情報等を提供することで消費者に生じる利益を勘案して,当該個人情報等を提供させることが合理的であると認められる範囲のものである場合

なお,追加的な個人情報等の取得は,上記類型①,②及び③において問題とされているような行為を伴わずに行われた場合であっても,問題となりますのでご注意ください。

⑤ その他について

上記類型①~④に該当しない行為であっても,例えば,デジタル・プラットフォーム事業者が第三者をして,消費者から取得する「個人情報以外の個人に関する情報」と他の情報を照合して個人情報等とさせ,消費者に不利益を与えることを目的に当該個人情報等を利用させるために,消費者から「個人情報以外の個人に関する情報」を取得する場合等は,優越的地位の濫用として問題となります。

(2) 個人情報等の不当な利用

① 利用目的の達成に必要な範囲を超えて,消費者の意に反して個人情報等を利用すること
② 個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに,個人情報等を利用すること。

① 利用目的の達成に必要な範囲を超えて,消費者の意に反して個人情報等を利用すること。

ア 想定例

利用者からの個人情報の取得方法に問題がない場合でも、優越的地位の濫用となることがあります。例えば以下のような場合が想定がされます。

(ア) デジタル・プラットフォーム事業者E社が,利用目的を「商品の販売」と特定し,当該利用目的を消費者に示して取得した個人情報等を,消費者の同意を得ることなく「ターゲティング広告」に利用した。

(イ) デジタル・プラットフォーム事業者F社が,サービスを利用する消費者から取得した個人情報等を,消費者の同意を得ることなく第三者に提供した。

イ 「商品の販売」を利用目的とするデジタル・プラットフォームを提供する場合の注意点

以下のような点を実施した上で得た個人情報等の利用については通常問題となりません。

  • 新たに,ターゲティング広告に個人情報を利用することについて,電子メールによって個々の消費者に連絡し,自社のウェブサイトにおいて,消費者から取得した個人情報を当該目的に利用することに同意する旨の確認欄へのチェックを得ている場合
  • 個人情報を第三者に提供することについて,電子メールによって個々の消費者に連絡し,自社のウェブサイトにおいて,消費者から取得した個人情報を第三者に提供することに同意する旨の確認欄へのチェックを得ている場合
  • 同一社内で,提供された個人情報を,消費者の同意なく,ある部門から別の部門に提供する場合

ただし,消費者が,サービスを利用せざるを得ないことから,利用目的の達成に必要な範囲を超える個人情報の利用や個人情報の第三者への提供にやむを得ず同意した場合には,当該同意は消費者の意に反するものと判断される場合があります。
やむを得ず同意したものであるかどうかの判断においては,同意したことにより消費者が受ける不利益の程度等を勘案することとし,その判断に当たっては,一般的な消費者にとって不利益を与えることとなるかどうかで判断します。
個々の消費者ごとではありません。

② 個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに,個人情報等を利用すること。

ア 想定例

①の他,取得時点では適切な説明をして,管理状況も必要な措置を講じていたとしても,利用者の同意を得て第三者に提供する時点で,管理状況に不備が生じていた場合には,優越的地位の濫用とされる場合があります。
例えば、デジタル・プラットフォーム事業者G社が,個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに,サービスを利用させ,個人情報等を利用した場合などが想定されます。

③ 第三者に利用させるための個人情報の提供について

上記①,②の他,例えば,デジタル・プラットフォーム事業者が第三者をして,消費者から取得した「個人情報以外の個人に関する情報」と他の情報を照合して個人情報等とさせ,消費者に不利益を与えることを目的に当該個人情報等を利用させるために,「個人情報以外の個人に関する情報」を当該第三者に提供した場合等は,優越的地位の濫用として問題となります。

6.終わりに

独占禁止法第2条第9項第5号に該当する取引は,同法19条において禁止され,これに違反した場合には当該取引は「排除措置命令(同法20条),差止請求権(同法24条)の対象となり,無過失の損害賠償責任を発生させる可能性があります(同法25条)。
このような事態に陥らないよう,一般消費者から氏名や生年月日等の個人情報やその他個人に関する情報を取得するにあたっては,一般消費者に対して必要な説明や措置がなされているか、専門家に相談し、法的なチェックをしてもらうことをお勧めいたします。

 

[1]個人情報保護法第2条1項の規定する「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であり、①氏名、生年月日、住所等により特定の個人を識別することができるもの又は②個人識別符号が含まれるものを指します。個人識別符号とは,具体的には顔認識のデータやマイナンバー等があたります。
[2]例えば、ウェブサイトの閲覧情報,携帯端末の位置情報等は,一般には,それ単体では個人識別性を有しないため,個人情報保護法上の個人情報とは考えられていません。ただし,このような情報であっても,他の情報と容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができる場合は,本考え方においては、個人情報にあたります。
[3]個人情報保護法第2条6項の規定する「個人データ」とは、個人情報データベース等を構成する個人情報とされています。典型例は、顧客用データベースを構成する顧客の氏名を指します。個人情報データベース等から外部記録媒体に保存された個人情報や個人情報データベース等紙面に出力された帳票等に記載された個人情報も「個人データベース」に該当します。
他方、個人情報データベース等を構成する前の入力用の帳票等に印字された個人情報は、個人情報データベース等を構成していないため「個人データ」には該当しません。
[4]独占禁止法第2条9項5号の優越的地位の濫用の成立要件は、1.行為要件:a) 優越的地位、b) 濫用行為、2.効果要件:正常な商慣習に照らして不当に、の3つです。公取委の優越的地位ガイドライン第2に依りますと、要件1.行為要件:a) 優越的地位は、①取引依存度(相手方に対する売上高÷全体の売上高など)、②市場における地位、③取引先変更可能性、④その相手方と取引することが必要であることを示す事実(相手方との取引額、相手方の今後の成長可能性、取り扱い商品・役務の重要性、取引によって生じる信用の確保など)、の4つの要素を総合的に考慮し得判断します。
[5]優越的地位の濫用の成立要件2.効果要件:正常な商習慣に照らして不当に、とは、公正競争阻害性のことです。つまり、自由競争基盤(自由・自主的な判断により取引が行われること)が侵害されることです。違反行為者はその競争者との関係で競争上有利になり、違反行為者の相手方はその競争者との間で競争上不利となる可能性のある効果があることです。
[6]優越的地位の濫用の成立要件1.行為要件:b) 濫用行為、は、相手方に不当に不利益を与える行為です。独占禁止法第2条9項5号各号に例示があり、ハ号後段がキャッチオール規定(バスケット条項)になっています。不当か否かは、相手方との交渉態度の誠実さがキーになります。要請を呑まないと取引を削減するなどと言ったり、仄めかしたりすると、不誠実な交渉態度と認定されます。法律の文言(「相手方」)上は「個人」に対する濫用行為を除外していませんが、公取委は伝統的に「事業者」に対する濫用行為のみを規制対象としてきました。そして、昨年(2019年)12月の「本考え方」で、消費者(個人)に対する優越的地位の濫用が規制対象である旨が明記されました。

髙島星矢
弁護士髙島 星矢
中央大学法学部法律学科卒業、東京大学法科大学院修了、ベリーベスト法律事務所に入所後、労働事件、離婚事件等の一般民事、中小企業からの法律相談や契約書のリーガルチェックを中心に、交通事故、インターネット訴訟、刑事事件、なども手掛けている。
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