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債権譲渡と債務引受に関する民法改正の内容と実務への影響

2020年6月15日
債権譲渡と債務引受に関する民法改正の内容と実務への影響

令和2年4月1日、ついに改正民法が施行されました。
今回は債権法の分野の改正ということで、企業の皆様の取引に大きな影響があるところです。
改正の対象となった債権譲渡及び債務引受も、商法に規定がありませんし、明確な商慣習もないようですから、商人である企業に適用されることになります(商法1条2項)[1]
本稿では、この債権譲渡と債務引受をめぐる改正について、改正の概要と実務への影響を解説いたします。

1.債権譲渡

債権譲渡

(1)改正の背景:債権譲渡による資金調達のニーズ

資金調達の方法として、保有する債権の価値を利用するニーズがあります。
その具体的な方法としては、大きく以下の2種類のものがあります。

真正譲渡 債権を売却して代金を取得する方法です。

債権額から一定程度割り引いた価格で債権を買い取って早期現金化を実現する、ファクタリングという金融サービスも登場しています。

譲渡担保 債権を担保にして融資を受ける方法です。

その担保の方法として、債権を譲渡する形式を借ります。ABL(Asset Based Lending)といわれる手法がこれに当たります。

(2)改正前民法の問題点:譲渡禁止特約の物権的効力による資金調達の阻害

改正前の民法下でも、債権を他人に譲渡することができるとされていましたが、その債権の譲渡を禁止する特約(譲渡禁止特約)が付いている場合、債権を譲渡しても、その譲渡は原則として無効であり、譲受人はその債権を取得することができないと考えられていました。

例外として、債務者である売掛先(顧客)が債権譲渡を承諾した場合(禁止を解除した場合)と、譲受人が譲渡禁止特約を知らなかったことについて重大な過失がない場合には、債権譲渡が有効となりますが、後者の場合、債務者が、譲受人に悪意又は重過失があったことを立証した場合には譲渡は無効とされました。
特に譲受人が金融の専門機関などであった場合、譲渡禁止特約の存在を知っていたか知らなかったことについて重大な過失があったことを立証することは困難ではありません。

そうすると、譲渡禁止特約のついた債権の譲渡を受けたり、債権を担保に取ったりしても、債権を取得できず回収できないリスクがあり、債権譲渡の方法による資金調達を阻害するという実情がありました。

とはいえ、動産や不動産を担保に資金調達をするにも限界がありますし、ある程度価値の大きな動産・不動産を保有しない企業にとっては特に、その保有する債権の価値を有効に利用できないかというニーズが叫ばれていたところでした。

(3)大きな改正点

① 譲渡制限特約付き債権の債権譲渡を原則有効に

ア 譲渡の効力

今回の改正で、譲渡制限特約のついた債権の譲渡の効力について、以下のように変更されました。
なお改正法では、債権譲渡を禁止する特約と制限する特約とをあわせて「譲渡制限の意思表示」と整理していますので、改正法下では「譲渡制限特約」と呼ぶことにします。

 

<改正前の解釈>

  • 譲渡を禁止された債権を譲渡しても、原則としてその譲渡は無効で、譲受人がその債権を取得することはできない

 

<改正後>

  • 譲渡制限特約があったとしても、その債権の譲渡は原則有効(改正466条)

 

イ 債務者の利益保護

譲渡制限特約を付けたのに債権の譲渡が有効となると、債務者は見ず知らずの債権者(譲受人)への弁済を迫られることになりかねません。
そこで、以下のようにして債務者の弁済の相手方を固定する利益を保護しつつ、債権を譲り受けた譲受人との調整を図っています。

  • 供託を認める(改正466条の2、後述(4)参照)
  • 譲渡制限特約について悪意(=知っていた)又は重過失(=知らなかったことに重大な過失がある)の譲受人に対しては、履行を拒絶し、あるいは、譲渡人への弁済など債務を消滅させる事由を譲受人に対抗することができる

ただ、そうすると、譲受人が悪意・重過失の場合は、債権譲渡が有効であるにもかかわらず、債務者がいつまでたっても履行を拒み続け、その債権の実質的な回収が困難になりかねません。そのため、

  • 悪意又は重過失の譲受人は、債務者に対して、譲渡人への履行を請求することができる

ということになっています。
このような履行請求がなされた後、相当期間が経過したにもかかわらず、譲渡人に対して履行をしなければ、債務者は譲受人に対して履行拒絶できなくなります。

ウ 小括

このように、今回の債権法改正では、譲渡制限特約が付されていても、債権譲渡を原則有効とすることで、確実な債権回収という譲受人の利益を保護しつつ、弁済の相手方を固定するという債務者の利益を引き続き保護することを実現しようとしています。
それによって、譲渡人が債権譲渡によって資金調達を行いやすくするというのが、この改正の大きな趣旨です。

② 「異議をとどめない承諾」の廃止

今回の改正による大きな制度変更としてはもうひとつ、「異議をとどめない承諾」の廃止が挙げられます。

改正前は、債権譲渡について債務者が「異議をとどめない承諾」をした場合、債権譲渡の通知よりも前に譲渡人に対して主張できた抗弁であっても、譲受人に対して主張できなくなるとされていました(旧468条1項)。
これに対しては、債権譲渡を承諾することによってそのような予期せぬ抗弁の喪失は妥当でないとの批判があり、今回の改正でこの制度は廃止されました。

改正後は、債権譲渡の通知又は承諾という対抗要件を具備した時点までに譲渡人に対して生じた抗弁は、譲受人に対しても主張できるというルールに統一されました(改正468条1項)。
そして、債務者が主張可能な抗弁を個別に放棄したときに、その抗弁を主張することができなくなるということになりました。

これにより、債権譲渡の承諾への躊躇・抵抗感の低減が期待されるところです。

(4)その他の改正点

その他、今回の改正で変更される主な点は以下のとおりです。

供託

(改正466条の2、3)

債権が譲渡されると、債務者は過失の有無を問わず供託ができます(無過失を要求される「債権者不確知」でなくてよい)。

この供託は債務の履行地の供託所にすることができ、その履行地が「債権者」の現在の住所で定まるなら、「譲渡人」の現在の住所の供託所でもよいことになります。

債務者が供託をしたときは、遅滞なく譲渡人・譲受人に通知する義務があります。

供託金は、譲受人のみが還付請求できます。

譲渡人について破産手続開始決定があると、第三者対抗要件を具備した譲受人は債務者に供託させることができます(供託請求権)。譲受人は悪意・重過失でも構いません。

差押え

(改正466条の4)

譲渡制限特約により差押禁止財産を作り出すことはできないという判例が明文化されました。

すなわち、譲渡制限特約を付けたとしても、その債権が差し押さえられれば、差し押さえた債権者に履行拒絶したり、元の債権者への弁済を主張したりすることはできません。

ただし、譲受人が悪意・重過失だった場合には、債務者は譲受人の債権を差し押さえた債権者に対して、履行拒絶や抗弁事由の対抗ができます。差押債権者も、譲受人が持っている以上の権利を得られるわけではないということです。

預金・貯金

(改正466条の5)

預貯金債権の譲渡については、改正前の解釈が維持されます。すなわち、悪意・重過失の譲受人との関係で、譲渡制限特約付債権の譲渡は、無効です。

ただし、預貯金債権を差押えた債権者に対しては譲渡制限特約を対抗できません。

なお、差し押さえたのが悪意・重過失の譲受人なら、債権譲渡が無効ゆえに譲受人は「債権者」に当たらず、差押えが奏功しないと考えられています。

将来債権の譲渡

(改正466条の6)

将来発生すべき債権も譲渡でき、譲渡された債権の発生時に譲受人がその債権を当然に取得するという判例法理が明文化されました。

将来債権譲渡の対抗要件が具備される前に譲渡制限特約が結ばれていたときは、譲渡制限特約について譲受人は悪意であるとみなされます。

一方、対抗要件具備の後に結ばれた譲渡制限特約は譲受人に対抗できないと解されます。

相殺権

(改正469条)

債権譲渡の対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺を、譲受人に対抗できるとしたものです。

対抗要件具備時より後に取得(発生)した債権であっても、対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権(将来債権)や、譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権(例えば、譲渡された債権と同じ取引基本契約から生じた債務者側の債権など)であれば、債務者はその債権で相殺することを譲受人に主張できます。このように、「譲渡人に対する債権」には将来債権も含まれ、相殺への期待利益が広く保護されています。

債権譲渡による融資について、譲受人が債務者から相殺を対抗されるリスクがありますので、債務者が譲渡人に対して有する債権を調査することで対応すべきでしょう。

経過措置

(附則22条)

改正民法施行日である令和2年4月1日より前に債権の譲渡の原因である法律行為がなされた場合におけるその債権の譲渡については、改正前の民法が適用されます。

(5)実務への影響

① 債権譲渡による資金調達の促進

今回の債権譲渡に関する改正の趣旨は、中小企業等の円滑な資金調達のニーズに応えるというところにありますので、当然、債権譲渡を活用した資金調達が行いやすくなっていくことが期待できます。
将来債権の譲渡についても明文化されましたので、これを活用した資金調達の促進も期待されるところです。

② 下請事業者

ア 親事業者と下請事業者との間の債権

実務上、譲渡制限特約付きの債権はなお存在しますし、今後も、これまでどおり譲渡制限特約付きで契約が締結される場面もあると思われます。

特に、請負契約において、下請事業者の親事業者に対する債権に譲渡制限特約が付される場合に、事業者間の力関係から、下請事業者がこの債権を資金調達に活用することが難しくなることは容易に想定されるところです。

イ 下請振興基準

これに対しては、下請中小企業振興法第3条第1項の規定に基づく振興基準第8-5)が、親事業者に対し、下請事業者との間での以下のような基本契約締結の際の努力義務を課しています。

  • 譲渡禁止特約を締結する場合であっても、信用保証協会や金融機関など適切な相手先に対しては譲渡や担保提供を禁じない内容とするよう努める。
  • 債権の譲渡や担保提供のために下請事業者から譲渡禁止特約の解除の申出があった場合には、申出を十分尊重して対応するとともに、その申出を理由とする不利な取り扱いをしてはならない。
  • 下請事業者からの要請に応じ、債権譲渡の承諾(対抗要件具備)に適切に努める。

これらは現時点では努力義務という形にとどまるものですが、今回の改正の趣旨に沿って徐々に実務慣行が変わっていくことが期待されています。
したがって、請負契約を締結する際には、資金調達目的での債権譲渡は禁止の対象外とするなど、これらの努力義務を意識した条項を設ける必要もあるでしょう。

③ 譲渡制限特約違反による損害賠償請求と解除

ア 譲渡制限特約違反

改正法の下では、譲渡制限特約に反する債権譲渡も有効とされることはこれまでに述べたとおりです。
しかし、債権者と債務者との間では、譲渡制限特約違反は文字どおり契約違反、すなわち債務不履行を生ずることになります。

債務不履行は、損害賠償(改正415条)や契約解除(改正541、542条)の原因になります。
資金調達のために債権譲渡をしたところ、契約を解除されて損害賠償債務を負ってしまったりすると、資金調達という目的を達成できなくなってしまいます。

イ 対応

ただ、既に述べたとおり、譲受人が譲渡制限特約について悪意・重過失であれば、債務者は譲渡人に弁済をすることで債務を消滅させることができるので、弁済先固定という債務者の利益は特に害されていません。
改正法の趣旨にも照らせば、資金調達目的の譲渡制限特約違反という債務不履行は損害賠償や契約解除の原因にはならない、あるいはこれを理由とする解除や取引の打ち切りが権利濫用に当たるとも考えられます。

とはいっても、譲渡制限特約付債権の譲渡が契約違反に当たることは確かです。
そこで、譲渡人としては、譲渡制限特約を定める際、「資金調達目的で銀行などに対して債権譲渡をすることは禁止しない」といった例外規定を予め定めておく必要があるでしょう。

他方、債権譲渡を望まない債務者としては、譲渡制限特約に違反した場合の違約金や解除についての特則を定めておく必要があるでしょう。

④ シンジケートローン

ア シンジケートローンの概要

シンジケートローンとは、一人の借入人に対し複数の貸付人が同一契約書に基づいて貸付を行うことと一般に説明されます。
複数の貸付人がシンジケート団を結成し、各々が貸付を行っていくのですが、間にエージェントが入り、借入れの申込みや弁済に関して一本化された窓口になるというものです。

イ シンジケートローンと債権譲渡

シンジケートローンでは、貸付人間の公平性維持が非常に重要とされていますので、今回の債権法改正により、貸付人が契約上認められていない者に貸付債権を譲渡することを防ぐことができなくなるのではないかという懸念も示されています。

通常貸付人が金融機関であることから、このような懸念は不要とする見方もありますが、リスクが全くないとはいえないでしょう。

ウ 対応

改正法下では、契約上認められていない者への貸付債権の譲渡も有効となるというのが論理的な帰結です。
これに対しては、債権譲渡の効力とシンジケートローン契約上の地位の移転の問題を区別しつつ(債権の譲受人が必ずしも当然に契約上の地位をも引き継ぐわけではありません)、弁済受領権限のエージェントへの固定や債権譲渡後の分配方法などについて定めておくことで、貸付人間の公平性をなるべく損なわないようにする工夫が必要となってくるでしょう。

2.債務引受

債務引受

(1)改正の背景:判例法理の明文化

改正前の民法には、債務引受についての規定がありませんでしたが、債務引受が可能であることについては、判例・学説ともに異論のないところでした。
また、賃貸不動産の譲渡に伴い敷金返還債務が承継される場面や、一括決済システム[2]における債務の引受けなどを理解するにあたり、債務引受の概念が重要であることは広く認識されていました。

しかし、法律上の明文規定がなければ、債務引受の要件や効果が明らかでないという問題がありました。

(2)併存的債務引受

① 併存的債務引受とは

債務者の債務はそのまま残しつつ、引受人がこれと同一内容の債務を負担するというものです。
これによって債権者は、元の債務者と引受人の両方に対して同じ内容の債権を持つことになります。

② 要件と効果(改正470条)

ア 要件

ⅰ.債権者と引受人との契約(2項)

ⅱ.債務者と引受人との契約+債権者の引受人に対する承諾(3項)

ⅲ.債権者、債務者、引受人の三面契約

条文上定められているのは、ⅰとⅱのみですが、ⅲによってもすることができます。

なお、ⅱの場合には、「第三者のためにする契約」の規定(改正537条~539条)に従うことになります。

イ 効果

引受人が、債務者と連帯して同一内容の債務を負担する(1項)

併存的債務引受では、債務者と引受人は連帯債務者の関係となり、債権者は、債務者及び引受人の一方又は両方に対して、債務の一部又は全部の履行を請求することができるようになります(改正436条)。

なお、今回の改正で、連帯債務者の一人について生じた以下の事由の効力が他の債務者に及ばないとされましたので、この点注意が必要です。

  • 履行請求(旧434条削除)
  • 免除(旧437条削除)
  • 消滅時効の完成(旧439条削除)

③ 引受人の抗弁等(改正471条)

引受人は、債務引受の効力発生時に債務者が主張できた抗弁を、債権者に主張することができます(1項)。

なお、債務者と引受人との契約によって債務引受がなされた場合(⑵②アのii)は、第三者のためにする契約に関する改正539条により、債務引受契約に基づき引受人が債務者に対して主張できる抗弁を債権者にも主張できることになります。

また、債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、その行使によって債務者が債務を免れる限度で、引受人が債務の履行を拒むことができます(2項)。

債務者が債権者に相殺できるような債権を持っている場合には、引受人は連帯債務者として、債務者の負担部分の限度で履行を拒むことができます(改正439条)。

(3)免責的債務引受

① 免責的債務引受とは

債務者の債務と同一内容の債務を引受人が債権者に対して負担し、債務者を当該債務から免れさせることをいいます。
併存的債務引受では引受人が債務者と一緒に債務を負担するのに対し、免責的債務引受では債務者から引受人へ債務が引き継がれるというようなイメージです。

② 要件と効果(改正472条)

ア 要件

ⅰ.債権者と引受人との契約+債権者から債務者への通知(2項)

ⅱ.債務者と引受人との契約+債権者の引受人に対する承諾(3項)

ⅲ.債権者、債務者、引受人の三面契約

併存的債務引受の場合と似ていますが、ⅰの契約の場合に、債権者からの通知が必要とされています。
そしてこちらも併存的債務引受と同様、条文上はⅰとⅱのみですが、ⅲによってすることも可能です。

なお、ⅰの場合に「債務者の意思に反しないこと」が要件とされていない点と、ⅱの場合「承諾」の時に債務引受の効力が生じる点は、改正前の解釈と異なります。
改正前は、債務者の意思に反しないことが要件とされていましたし、また、債権者の承諾を得ることにより、債務者と引受人の合意時に遡って当初から有効となるとの解釈が通説でした。

イ 効果

引受人は、債務者が債権者に対して負担する債務と同一内容の債務を負担し、債務者は債務を免れる(1項)

債務が、元の債務者から引受人に引き継がれるような形になります。

③ 引受人の抗弁等(改正472条の2)

引受人は、債務引受の効力発生時に元の債務者が債権者に対して主張できた抗弁をもって、債権者に対抗することができます(1項)。

ただ、併存的債務引受と異なり、債務者の債権者に対する相殺可能な債権があったとしても、引受人が債務者の相殺権を行使して履行を拒むことはできません。債務者は既に契約関係から離脱しており、完全に免責されていますし、相殺権は債務に付着する抗弁ではないからです。

債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有する場合は、併存的債務引受と同様です。
免責的債務引受がなされなかったとすれば、取消権又は解除権の行使によって債務者が債務を免れられた限度で、引受人は債務の履行を拒むことができます(2項)。

④ 引受人の求償権(改正472条の3)

引受人は求償権を取得しません。ただし、引受人が元の債務者に対して債務相当額の支払を請求できるといった合意をすることは可能です。

⑤ 担保の移転(改正472条の4)

引き受けられる債務に担保が設定されていた場合に関して、以下のような規定が置かれました。

  • 債権者は、元の債務に設定されていた担保権を引受人の債務に移転することができます。ただし、担保の設定者が引受人以外の者(物上保証人)なら、その設定者の承諾が必要です(1項)。
  • 担保権を移転させるには、あらかじめ又は債務引受と同時に、引受人に対して担保移転の意思表示をすることが必要です(2項)。
  • 引受の対象となる債務が保証されている場合についても同様ですが、その場合の保証人の承諾は、書面又は電磁的記録でなされる必要があります(3~5項)。

(4) 実務への影響

債務引受は、事業譲渡、事業承継や債務引受型の一括決済サービスなどの場面で、既に活用されています。
今回の改正は、基本的にはこれまで実務上認められてきた制度を明文化したものということになりますので、実務への影響は限定的でしょう。

ただし、特に免責的債務引受については、引受人・債権者間の契約によって免責的債務引受の効力を生じさせるための通知や、担保権の移転に関する意思表示、物上保証人・保証人の承諾などのルールが規定されましたので、これらの点には注意しておく必要があるでしょう。

3.まとめ

以上のとおり、債権譲渡に関しては制度の原則が大きく変わり、債務引受については、これまでの制度が明文で制定されるような形で民法が改正されました。
いずれの領域でも、実務上の取扱いや法的リスクに影響のあるところですので、契約書の内容の見直しや、新しいスキームの構築などに際して、弁護士に相談されてみることをお勧めします。
<参照条文>

(債権の譲渡性)

第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。

4 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。

(譲渡制限の意思表示がされた債権に係る債務者の供託)

第四百六十六条の二 債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができる。

2 前項の規定により供託をした債務者は、遅滞なく、譲渡人及び譲受人に供託の通知をしなければならない。

3 第一項の規定により供託をした金銭は、譲受人に限り、還付を請求することができる。

第四百六十六条の三 前条第一項に規定する場合において、譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、譲受人(同項の債権の全額を譲り受けた者であって、その債権の譲渡を債務者その他の第三者に対抗することができるものに限る。)は、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかったときであっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託させることができる。この場合においては、同条第二項及び第三項の規定を準用する。
(譲渡制限の意思表示がされた債権の差押え)

第四百六十六条の四 第四百六十六条第三項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。

2 前項の規定にかかわらず、譲受人その他の第三者が譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった場合において、その債権者が同項の債権に対する強制執行をしたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって差押債権者に対抗することができる。

(預金債権又は貯金債権に係る譲渡制限の意思表示の効力)

第四百六十六条の五 預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という。)について当事者がした譲渡制限の意思表示は、第四百六十六条第二項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。

2 前項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた預貯金債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。

(将来債権の譲渡性)

第四百六十六条の六 債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。

2 債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。

3 前項に規定する場合において、譲渡人が次条の規定による通知をし、又は債務者が同条の規定による承諾をした時(以下「対抗要件具備時」という。)までに譲渡制限の意思表示がされたときは、譲受人その他の第三者がそのことを知っていたものとみなして、第四百六十六条第三項(譲渡制限の意思表示がされた債権が預貯金債権の場合にあっては、前条第一項)の規定を適用する。

(債権の譲渡の対抗要件)

第四百六十七条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。

2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

(債権の譲渡における債務者の抗弁)

第四百六十八条 債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

2 第四百六十六条第四項の場合における前項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第四百六十六条第四項の相当の期間を経過した時」とし、第四百六十六条の三の場合における同項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第四百六十六条の三の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする。

(債権の譲渡における相殺権)

第四百六十九条 債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。

2 債務者が対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権であっても、その債権が次に掲げるものであるときは、前項と同様とする。ただし、債務者が対抗要件具備時より後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。

一 対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権

二 前号に掲げるもののほか、譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権

3 第四百六十六条第四項の場合における前二項の規定の適用については、これらの規定中「対抗要件具備時」とあるのは、「第四百六十六条第四項の相当の期間を経過した時」とし、第四百六十六条の三の場合におけるこれらの規定の適用については、これらの規定中「対抗要件具備時」とあるのは、「第四百六十六条の三の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする。

(併存的債務引受の要件及び効果)

第四百七十条 併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。

2 併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。

3 併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。

4 前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。

(併存的債務引受における引受人の抗弁等)

第四百七十一条 引受人は、併存的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。

2 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(免責的債務引受の要件及び効果)

第四百七十二条 免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。

2 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。

3 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。

(免責的債務引受における引受人の抗弁等)

第四百七十二条の二 引受人は、免責的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。

2 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、免責的債務引受がなければこれらの権利の行使によって債務者がその債務を免れることができた限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(免責的債務引受における引受人の求償権)

第四百七十二条の三 免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しない。

(免責的債務引受による担保の移転)

第四百七十二条の四 債権者は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができる。ただし、引受人以外の者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。

2 前項の規定による担保権の移転は、あらかじめ又は同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならない。

3 前二項の規定は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の保証をした者があるときについて準用する。

4 前項の場合において、同項において準用する第一項の承諾は、書面でしなければ、その効力を生じない。

5 前項の承諾がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その承諾は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。

 

[1] 商法1条2項「商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法(明治二十九年法律第八十九号)の定めるところによる。」

[2] 支払企業と納入企業の資金決済を、ファクター(金融機関)を介した決済方法にすることです。納入企業は、支払期日を待たずに売掛金の支払いを受けることができます。

鈴木正之
弁護士鈴木 正之
ベリーベスト法律事務所アソシエイト。東京大学文学部卒業、創価大学法科大学院修了。一般民事事件、刑事事件、企業法務やインターネット関連事件など、幅広い分野を取り扱う。
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