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令和2年著作権法改正について弁護士が解説(要旨版)

2021年1月29日
令和2年著作権法改正について弁護士が解説(要旨版)

1.はじめに

令和2年6月5日に「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、著作権法等が改正されました(公布日:同年6月12日)。

今回の改正の目玉は、海賊版コンテンツ対策ですが、その他にも、実務に大きな影響を及ぼすような改正点が含まれています。

以下では改正の内容について、説明していきます。

2.海賊版コンテンツ対策

施行期日:リーチサイト・リーチアプリ規制 令和2年10月1日
海賊版コンテンツのダウンロード違法化 令和3年1月1日

(1)リーチサイト・リーチアプリ規制

ア 改正の背景

海賊版サイト「漫画村」による被害額は約3000億円、漫画家・出版社の収入・売上が20%減少したとの試算があります[1]
こうした海賊版サイトの被害は、いわゆるリーチサイトの存在により拡大することが指摘されており[2]、リーチサイト「はるか夢の址」による被害は摘発までの1年間で約731億円にのぼります。

リーチサイトとは、一般的には海賊版コンテンツへのリンク情報等を集約してユーザーを海賊版コンテンツに誘導するものをいいます。

改正前の著作権法(以下、「旧法」といいます。)上は、リーチサイトのように他人の著作物に誘導するリンクをはるだけでは直ちに著作権侵害行為とは認められにくく(大阪地判平成25年6月20日(ロケットニュース24事件)判時2218号112頁、知財高判平成30年4月25日判時2382号24頁)、したがって、著作権侵害を理由とする差止請求や損害賠償請求等は困難な状況でした。

海賊版コンテンツへのリンクを貼る行為は、悪質な場合には、著作権侵害の幇助として刑事罰の対象となりうるものの、実際には立件困難な場合が多いという問題がありました。

イ 改正後

改正法では、リーチサイト、リーチアプリ(以下、「リーチサイト等」といいます。)上に海賊版コンテンツへのリンクの提供行為それ自体が著作権侵害行為とみなされるとともに(改正法113条2項)、リーチサイト等の運営者が上記リンク提供行為を放置する行為についても著作権侵害行為とみなされることとされました(改正法113条3項)。

また、海賊版コンテンツへのリンクの提供行為やリーチサイト等の運営行為が一定の要件の下で刑事罰の対象とされました(改正法120条の2第3号、119条2項4号、同5号)。

これにより、権利者側から、差止め・損害賠償請求や刑事告訴といった民事・刑事上の対抗手段をとることが可能となりました。

(ア) 民事上の責任

① リーチサイト、リーチアプリ上でのリンク提供行為

改正法上、侵害著作物利用容易化ウェブサイト等および侵害著作物利用容易化プログラムにおいて、リンク情報を提供することにより、ユーザーによる海賊版コンテンツ[3]の利用を容易にするような行為が、故意又は過失によって行われた場合には著作権侵害行為とみなされます。(改正法113条2項)。

侵害著作物利用容易化ウェブサイト等及び侵害著作物利用容易化プログラムは、それぞれ次のとおり定義されています。

  • 侵害著作物利用容易化ウェブサイト等(改正法113条2項1号)

公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等又は主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等

  • 侵害著作物利用容易化プログラム(改正法113条2項1号)

公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるプログラム又は主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるプログラム

「侵害著作物等に殊更に誘導するもの」の典型例は、「無料で読み放題!!ここをクリック↓↓」のように海賊版コンテンツの利用を促す文言を表示したり、海賊版コンテンツへのリンクを強調して表示したりしている場合です。

「主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるもの」の典型例は、ユーザーが海賊版コンテンツへのリンクを多数掲載するなどしている掲示板サイトです。

いわゆるリーチサイトは侵害著作物利用容易化ウェブサイト等に、いわゆるリーチアプリは侵害著作物利用容易化プログラムに、それぞれ該当するものと考えられます。

改正法では、侵害著作物利用容易化ウェブサイト等や侵害著作物利用容易化プログラムを用いて他人による(海賊版コンテンツの)利用を容易にする行為が著作権侵害とみなされます(改正法113条2項)。

条文の文言上は、「利用」の方法や「容易にする行為」に限定はありません。
したがって、ストリーミング形式の海賊版コンテンツへのリンクを提供する行為や、他のリーチサイトへのリンクを提供する行為についても、著作権侵害行為とみなされる可能性があります。

② サイト運営者が違法なリンク提供を放置する行為

改正法では、侵害著作物利用容易化ウェブサイト等や侵害著作物利用容易化プログラム上で、他人によって行われている海賊版コンテンツへのリンク提供行為について、技術的にそうした行為が防止可能であるにもかかわらず、これらのウェブサイト等又はプログラムを提示又は提供している者が、故意又は過失により、これを放置したような場合にも著作権侵害行為とみなされます(改正法113条3項)。

なお、FacebookやYouTubeのようなプラットフォーマーは原則として本規定の対象とならないとされていますが 、海賊版コンテンツへのリンクに関する削除請求が長期間放置されたような場合には、著作権侵害行為とみなされる可能性があります(改正法113条3項かっこ書)。

③ 民事上の対抗措置

権利者は、故意又は過失によって海賊版リンク提供行為を行った者に対し、リンク提供行為の差止め及び損害賠償の請求が可能です(改正法112条、民法709条)。

また、故意又は過失によってサイト・アプリ上の海賊版コンテンツへのリンクを放置したリーチサイト等の運営者・提供者に対しても、リンク情報を放置する行為の差止めすなわち特定のリンク情報を削除すること及び損害賠償の請求が可能です(改正法112条、民法709条)。

(イ) 刑事罰

① リーチサイト、リーチアプリ上でのリンク提供行為

侵害容易化ウェブサイト等において海賊版コンテンツへのリンク提供行為を行った者は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はこれが併科されます(改正法120条の2第3号)。

② サイト運営者が違法なリンク提供を放置する行為

著作権侵害コンテンツへのリンクを放置した者については、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はこれらが併科されます(改正法119条2項4号、同5号)。

なお、FacebookやYouTubeのようなプラットフォーマーは原則として本規定の対象とならないとされていますが、海賊版コンテンツへのリンクに関する削除請求が長期間放置されたような場合には、刑事罰が科される可能性があります(改正法119条2項4号かっこ書、同5号かっこ書)。

これらの罪は親告罪とされており、権利者等による刑事告訴がなければ、刑事罰が科されることはありません(改正法123条)。

(2) 海賊版コンテンツのダウンロード違法化

ア 改正の背景

旧法では、平成21年改正によってデジタル方式の録音・録画に限り、海賊版コンテンツのダウンロードが違法化されていましたが(旧法30条1項3号、同119条3項)、その他のコンテンツについては規制されていませんでした。

イ 改正後

改正法では、上述した漫画村等の海賊版サイトによる被害を踏まえ、漫画を含むすべての著作物について、海賊版コンテンツであることを知りながらダウンロードする行為が違法化され、民事上、刑事上の措置をとることができるようになりました(改正法30条1項3号、同4号、同119条3項1号、同2号)。

なお、あくまでも海賊版コンテンツであることを知りながらダウンロードしたことが必要であり、海賊版コンテンツであることを知らなかった場合には重過失の場合でさえ責任を問えないことには注意が必要です(改正法30条2項)。

また、ⅰ軽微なもの、ⅱ著作権者の利益を不当に侵害しないと認められる特別な事情がある場合のダウンロードについては違法化の対象外とされているほか、ⅲパロディを含む二次的著作物のダウンロードについては、当該二次的著作物の基となった著作物(原著作物)との関係では著作権侵害にあたらないとされています(改正法30条1項4号かっこ書)。

さらに、刑事罰の対象となるダウンロード行為については、より限定されており、録音・録画については、正規版が有償で提供されているものについて行った場合に、その他の著作物に関しては、正規版が有償で提供されているものについて、継続的に又は反復して行った場合に2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はこれを併科するとされています(改正法119条3項1号、同2号)。これらの罪も親告罪とされています。

3.著作物利用権の当然対抗制度

施行期日:令和2年10月1日

(1)改正の背景

著作物を利用する際には、著作権者との間でライセンス契約を結ぶことが一般的です。
ところが、契約に基づく権利については、契約当事者間でしか主張できないという契約法上の原則があります。

したがって、改正前は、ⅰライセンサーが、第三者に著作権を譲渡した場合、譲渡契約上手当てがされていないと、ライセンシーは当該第三者に利用権を主張できないといった事態や、ⅱライセンサーが破産した場合に、破産管財人によりライセンス契約が解除されてしまうといった事態が起こりえる状況でした。

(2) 改正後

改正法は、ライセンシーが特段の手続きなく利用権を対抗できる、すなわち、第三者に対しても主張できることとしました(改正法63条の2)。
これにより、上記ⅰ及びⅱのような事態が生じることはなくなりました。

しかし、改正によって、すべての問題が解決されたわけではありません。
特に、独占的利用権が設定されていた際に、第三者との関係でも独占利用を主張できるのか、また、著作権が第三者に譲渡された場合に、ライセンシーは誰にライセンス料を払うべきかといった問題については議論のあるところです。

今回の改正により、ライセンシーの保護は強化されたといえます。
しかし、上記のような問題はなお存在しているため、ライセンス契約を検討する際にどのように手当てしておくか、あるいは、そもそもライセンス契約ではなく著作権の一時的譲渡を選択するのか等、法的観点からの検討は依然として重要であるといえます。

4.写り込みに関する権利制限規定の拡張

施行期日:令和2年10月1日

(1)改正の背景

写り込みとは、具体的には、写真や動画撮影の際に背景等に他人の著作物(キャラクターや絵画等)が写り込んだ場合や、スマートフォン等でスクリーンショットを撮影した際に違法にアップロードされた画像が含まれていた場合などをいいます。
写り込みのように社会通念上軽微な利用の場合であっても、形式的には著作権侵害にあたってしまうという問題がありました。

上記のような事態に対応するため、米国におけるフェアユース規定のように裁判所による柔軟な対応を可能にする規定の必要性は、従来から議論されてきました。

フェアユース規定とは、著作権者の許諾を得ずに著作物を利用しても、一定の判断基準のもとで、公正な利用(フェアユース)と評価される場合には、著作権の侵害にあたらないとするものです。

旧法でも、著作物の写り込みについて、著作権侵害とならないよう除外規定が設けられていました(旧法30条の2)。

しかし、旧法の規定は、ⅰ写真の撮影、録音又は録画という行為について、ⅱ著作物を創作する場合で、ⅲ本来の撮影対象から著作物を分離することが困難なときにのみ、写り込みが著作権侵害とならないというものであったため、要件が厳格すぎるとの批判があったところです。

(2) 改正後

改正法では、上記ⅰないしⅲの要件はいずれも撤廃され、「正当な範囲内において」利用されているかという点で著作権侵害の有無が判断されることとなりました(改正法30条の2)。

改正法では、考慮要素を列挙したうえで、裁判所に大きな裁量を認めており、米国におけるフェアユース規定のように柔軟な対応が可能になったといえます。

次のような場面での写り込みは、改正前は、著作権侵害行為にあたる可能性がありました。
しかし、改正後は、いずれも著作権侵害にあたらないと判断されるようになることが予想されます。

  • 生放送や生配信での写り込み
  • 実在の風景等を模写やCGによって再現する際に生じる写り込み
  • スクリーンショットに伴い生じる写り込み
  • 固定カメラでの撮影に伴い生じる写り込み
  • 子供にキャラクター商品を抱かせて写真を撮影する際の写り込み

5.アクセスコントロール技術の保護強化

施行期日:令和3年1月1日

近年、コンテンツの販売はパッケージ販売からダウンロード販売へと移行し、アクティベーション方式でのライセンス認証が採用されることが増えています。
アクティベーションとは、ソフトの利用者が、メーカーから配布されたユーザー名やシリアルコードを登録することでソフトウェアが使用可能にという仕組みのことで、主にソフトウェアの不正コピーや不正利用を防止するために用いられます。
これに伴って、不正なシリアルコードを使用したライセンス認証の回避が問題となっています。

不正競争防止法上は、すでに上記のようなライセンス認証の回避を可能にするプログラムを提供する等の行為が、不正競争行為に該当することが明確化されていました(不正競争防止法2条1項17号、同18号、同条8項)。

しかし、旧法上は、不正なシリアルコード等を使用したライセンス認証の回避が、著作権侵害に当たるかどうかは必ずしも明確ではありませんでした。

改正法では、不正なシリアルコードの使用が著作権侵害行為にあたることが明確化され(改正法2条21号)、不正競争防止法との相違が解消されました。

6.その他の改正点

その他の改正点

(1)プログラムの著作物の登録制度の整備(プログラム登録特例法)

施行期日:公布日から1年を超えない範囲内で政令で定める日

プログラム登録特例法の改正により、自己の所有するプログラムと登録済のプログラムとの同一性の証明を受けることが可能になりました(プログラム登録特例法4条)。

これにより、訴訟の場面で、プログラムの創作年月日等のような事実関係の立証がより容易になることが期待されます。

(2)著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化

施行期日:令和3年1月1日

著作権侵害訴訟において、裁判所は、侵害立証等に必要な書類の提出を命じることができるとされています(改正法114条の3第1項)。

改正法では、必要性についての判断がより正確に行えるよう、提出の必要性を判断する際に、実際の書類を見たり、専門性の高い書類については専門委員のサポートを受けたりしながら検討できることとされました(改正法114条の3第2項、同4項)。

(3)行政手続に係る権利制限規定の整備

施行期日:令和2年10月1日

改正法は、地理的表示法[4](GI法)に基づく地理的表示の登録及び種苗法に基づく植物の品種登録について権利者の許諾を得ることなく必要な文献等の複製ができることとしました(改正法42条2項)。

これにより、より迅速で適切な審査が行われることが期待されます。

7.まとめ

知的財産法の分野は、近年、技術の発展に伴い、頻繁に法改正が行われています。
一方で、新しい技術分野をカバーするために条文が長文化したり、難解な定義規定が置かれたりすることが増えており、弁護士であっても、一読しただけではその内容を正確に把握することは容易ではありません。

知的財産分野の知識をアップデートする際に本コラムを一助にしていただければ幸いです。
また、不明な点があった場合には知財法に明るい弁護士にお問い合わせいただくことをお勧めします。

 

[1] 一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構による試算
[2] 一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会による調査
[3] 改正法の条文上は、「侵害著作物等」と定義されています。
[4] 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

弁護士安倍 悠輔
東京大学法学部卒業、東京大学大学院法学研究科修了。 ベリーベスト法律事務所に入所後、労働事件、離婚事件等の 一般民事事件や刑事事件を中心に従事。近年は企業法務案件も 経験を積んでいる。
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