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M&Aを活用した成長戦略~飲食業~

2019年6月11日
M&Aを活用した成長戦略~飲食業~

飲食業では、新規開業の個人事業主から、全国に多数店舗を出店している大企業まで、M&Aを積極的に活用している企業が多々存在しています。
効率的に店舗を増やし成長を続ける方法として、事例を交えて解説させていただきます。

1.飲食業界におけるM&A

(1)飲食業界の市場動向

飲食店の市場規模は、平成9年の29.1兆円をピークとし、平成28年に25.4兆円まで減少しました。
その後は、安定的に推移しているものの、今後少子高齢化による人口の減少が見込まれることから、さらなる市場規模の縮小が予想されています。

また、コンビニ・スーパー等による弁当・総菜販売や宅配・給食といった中食の拡大も、市場規模の縮小に影響しています。

(2)飲食業界の経営動向

市場が縮小している中で、拡大する中食業界との競争にさらされる中で、飲食業界各社は様々な経営努力を続けています。
例えば、ある企業は、スケールメリットによる利益の増大を企図して、店舗数の拡大戦略をとり、また、ある企業は、消費者の流行に左右されやすい業界の特殊性に対応するために、流行の業態へ既存店舗の業態転換を企図しています。

もっとも、拡大戦略においては、限られた好立地や人手不足を背景に店舗で働く人材の確保や、新規店舗出店に伴う初期投資の負担の増大などが大きな経営課題となっている一方、流行に合致した業態開発に成功する確率は低く、開発コストの高さや開発失敗のリスクが問題となっています。

さらに、競争の激しい国内展開に見切りをつけ、海外での店舗展開を試みる企業も増えていますが、国内と海外とでは、国民性、言語、商習慣、法規制など様々な点が異なるため、国内での展開以上に様々な経営課題が発生し、対応に苦慮することが多いようです。

飲食業界では、企業規模の大小を問わず、これらの経営課題を解決する施策として、M&Aが大いに活用されているので紹介します。

2.事例研究

飲食業界M&Aの事例研究

(1)コロワイド

コロワイドは、昭和52年に居酒屋「甘太郎」逗子店を出店後、順調に店舗数を拡大し、成長を続けていましたが、平成10年頃には、庄屋・白木屋・和民と言った競合他社の店舗数拡大の影響もあって、手ごろな価格で気軽に利用できる居酒屋チェーンの競争は激化し、成長が鈍化してしまいました。

そこで、高級路線の居酒屋チェーンである北の味紀行と地酒「北海道」を展開する平成フードサービスの子会社化を皮切りに、居酒屋以外の業種・業態を経営する企業の買収や事業譲渡の手法を用いることで、次々に傘下に収めていきました。

特に焼肉チェーン「牛角」や居酒屋「土間土間」などを1000店舗以上展開していたレックスホールディングス(現レインズインターナショナル)や回転すしチェーン「かっぱ寿司」を展開するカッパ・クリエイトなど大規模チェーンを傘下に収めたことが大きく影響し、積極的なM&A戦略を開始した頃の売上高284億円(平成14年3月期決算)から、約15年の間に売上高2459億円(平成30年度3月期決算)と大きく成長することに成功しています。

もちろん、買収された側の企業には、不採算店舗も存在していましたが、買収後に業態転換して収益化するなど、スクラップ&ビルドを行うことで、企業収益の増大に成功しています。
特に平成25年から平成30年の間には、業態の選択と集中により、73業態を38業態まで減少させるとともに、売上の約60%を占めた居酒屋事業の比率も約25%まで低下させることで、居酒屋依存体質からの脱却も図り、経営の安定化を実現しています。

(2)ゼンショー

ゼンショーは、昭和57年に牛丼チェーン「すき家」の1号店を開店した後、順調に店舗を拡大し、成長を続けていた企業です。
平成12年にファミリーレストラン「ココス」を食品スーパーカスミから譲り受けた後、ファミリーレストラン「CASA」の一部を譲り受けた後に、譲受店舗を「ココス」に業態転換して店舗数を急拡大するなど積極的な拡大路線をとりました。

その後も、牛丼も販売する「なか卯」の他、ファミリーレストラン、焼肉、回転寿司、パスタなど様々な業態を運営する外食チェーンだけでなく、宅配ピザと言う中食やスーパーマーケットと言う小売・中食分野まで、M&Aを有効に活用して傘下に収め、多角化経営に成功し、平成23年には日本マクドナルドホールディングスを抜き、外食産業における売上高1位まで上り詰めています。

また、ゼンショーは、M&Aにより、他社を自社の傘下に収めるだけでなく、自社の事業をM&Aにより、他社へ売却することにも積極的な企業です。
回転寿司チェーンのカッパ・クリエイト、宅配ピザのシカゴピザ、ミスタードーナツやモスバーガーを経営する大和フーヅなどは、企業風土の差異や自社内競合により、自社の傘下での収益化が困難であるとの判断により、他社へ売却しているのです。

事業拡大とリストラの両面でM&Aを積極的に活用し、急成長と高収益の維持を両立している企業と言えるでしょう。

(3)零細企業である有限会社L社

L社は起業を決意した社長が設立した会社であり、1店舗を出店したところ繁盛したため、1店舗目を出店した1年後に2店舗目の出店を考えました。

しかし、1店舗目の出店費用は銀行からの借り入れで賄っており、2店舗目の出店費用を追加で借り入れることは困難な状況でした。

そのような状況下で、近所で20年以上続いていた喫茶店が閉店する話を聞きつけ、その喫茶店のオーナーに店舗の買収を持ちかけました。
喫茶店のオーナーは閉店した後に、内装を撤去する費用が高額であることに悩んでいたため、店内のゴミを処分してもらうことを条件に無料で店舗を譲渡する契約が成立しました。

L社はゴミを処分し、内装の補修改装を行った上で、新たな設備を設置して開店に至りましたが、出店費用は1店舗目の出店費用の5分の1で済んだため、新たな借り入れをせずに出店をすることができたのです。

L社の2店舗目は、出店から10年近く経営を続けたのちに、出店コストと同額で他社に売却されました。

L社は出店コストと撤退コストを削減できたうえに、設備の減価償却を考慮すれば売却益を得つつ、撤退を行うことに成功したのです。

3.飲食業界におけるM&Aパターン

飲食業界におけるM&Aパターン

(1)会社買収型

比較的企業規模の大きな会社がよく用いる形態と言えます。
買収対象会社の株式を過半数以上買い取って子会社化し、支配権を取得する方法です。
事業譲渡と比較すると、契約条項の交渉は少なくて済み、クロージングまでの個々の権利義務の対応等の細かな手続は不要です。

(2)事業譲受型

買収対象会社の全部または一部の事業を譲り受ける方法です。

売り手側は不採算事業も含めて売却したいですし、また、できるだけ債務や義務等も含めて譲り渡したいと考えます。
これに対して、買い手側は収益性のある事業のみを買いたいですし、また、できるだけ既存の債務を承継したりその他の義務を負うことを嫌がります。
従って、事業譲渡の場合の契約交渉は通常非常に難航します。

加えて、既存債務については免責的債務引受承諾書や契約書などを作成し承諾や署名を取ったり、各種契約書につき契約当事者の変更について契約の相手方の承諾を得たり新規契約を締結したりする外、不動産、知的財産権や車など登記や登録のあるものについては名義変更の手続きを行うなど多くの作業が必要となります。

(3)店舗譲渡型

店舗の内装などを譲り受ける「居抜き」や運営している店舗をそのまま譲り受け、営業を引き継ぐ「営業譲渡」という、大きく分けて2つのパターンが存在します。
小規模の企業や個人事業主などにも広く活用されている形態です。
専門的に手掛ける仲介業者も多く、手続きは簡易である反面、法的不備や知識不足に起因するトラブルが多い類型でもあります。

4.M&Aのデメリットと対策

売り手側のメリットとしては、固定資産である事業を現金や株式など流動資産に変換し、資金繰りを改善できることや、撤退することで発生する撤退コストを削減できることがあげられます。

買い手側のメリットとしては、会社や事業、店舗を譲り受けることで、売上や利益に加え、売り手が築きあげたブランドやノウハウ、育成した従業員など様々な事業資産を自社に組み入れることができます。
また、店舗の譲渡では、通常の流通に乗らない好立地の取得や、従来の内装設備の一部を活用することにより、出店コストを削減できることもあげられます。

一方で、デメリットとしては、負の財産を引き継ぐという点があげられます。
もちろん、事前に想定していた負の財産であれば、大きな問題となることは稀ですが、M&A成立前の調査で判明していない負の財産がM&A成立後に発覚する場合や、存在するはずの正の財産が存在しないことにより、負の財産の負担が割合的に増大する場合に、経営計画は変更を余儀なくされ、自社の経営に大きなダメージを受けることもありえますから、専門家による財産調査はリスクを避けるために重要です。

また、取引先や従業員との契約に関するトラブルも散見されます。
売り手側企業は、取引先や従業員と、買い手側がそれまで取引先や従業員と結んでいた契約とは異なる契約を締結しているのが通常です。
従来の契約を自社の契約に変更することは簡単ではなく、紛争に発展しうるため、M&A成立前に、契約内容がどのように違っていて、自社の契約内容へ変更可能なのか、変更できない場合にはどのようなリスクがあり、どのような対策を必要とするのかなど、契約に関するリスク対策にも専門家のチェックは極めて重要です。

5.専門家のチェック(デュ―デリジェンス)不足によるリスク例

専門家のチェック(デュ―デリジェンス)不足によるリスク例 2

(1)営業許可などの許認可

飲食店の営業許可など許認可関係の引継ぎは、会社買収型と事業譲受型・店舗譲渡型と言う類型ごとに、大きく分かれます。

会社買収型では、会社そのものが売買されるため、従来の会社が取得していた営業許可などの許認可が買収した承継されるのが通常です。
しかし、許認可の要件によっては、許認可の変更や再取得の手続きが必要になることがあるため、必要な手続きを調査して実施しなければ、無許可営業となるリスクが存在します。
例えば、飲食店の営業許可については、店舗設備などの「物」に対する審査と経営者の「人」に関する審査が行われているため、買収した会社の存続形態によっては、営業許可の変更手続きが必要になります。
また、防火管理者の届出は「人」に依存するため承継されますが、防火管理者が作成する消防計画については、会社の存続形態によっては、改めて作成・提出が必要になる場合があります。

一方で、事業譲受型や店舗譲渡型では、許認可を新規に取得する必要があります。
取得するかどうかの判断に迷うことはまずないのですが、承継した設備によっては、法改正や設備の老朽化により、新たな許認可を取得できないリスクが発生します。

以上のように、許認可の変更や取得について、専門家のチェックを欠いたことで、予期せぬ損害賠償責任や、想定していた営業を行えないことにより損失が発生することが起こりうるのです。

(2)店舗設備・什器や備品の承継

店舗設備・什器や備品は、契約により承継される為、一般的な契約内容に関するリスクが存在します。

また、飲食業特有の問題も存在します。
飲食業は個人経営規模の1店舗であっても、調理器具、食器、食材、清掃用具等の器材や消耗品など多くの物品が存在し、営業を続けている状態でM&Aの交渉をすることが多いため、交渉中に承継すべき物品が変動し続けます。

そして、承継すべき多くの物品について、例えば、店舗に所在する皿の枚数や洗剤の残量までを正確に把握して契約に盛り込むことはコストがかかりすぎるため、現実的には不可能です。
一方で、正確に把握せずに契約しては、あるべき物品が存在せず、新たに物品を購入するために過度な出費が発生することが起こり得ます。
その為、飲食業のM&Aに精通した専門家が、リスクに配慮しつつ、実現可能性を踏まえたチェックを行うことが極めて重要になります。

飲食業に精通した専門家であれば、物品それぞれの価値だけでなく、持出される可能性や予想する性能を有しない可能性などに配慮して重要性に差をつけ、重要な物品についてはしっかりと把握してチェックする一方で、重要ではないものは一定のルールに基づいてまとめてチェックするなど、買収対象に合わせたチェックを行い、コストを抑えつつ、リスク対策をしっかりと行うことになります。

(3)取引先との契約の承継

取引先との契約は、見直されるのが一般的です。
飲食業において特に問題になるのは、テナントの貸主との賃貸借契約の承継です。

飲食業のテナント賃貸借契約では、一般的なテナントの賃貸借契約の雛型が用いられることが多く、飲食業特有の問題である匂い、騒音、来客問題、内装施工や原状復帰などのトラブルに関する条項が充分に検討されず、不都合な状態が放置された結果、紛争化するケースが多く発生します。
また、既に紛争が発生していた場合などは、貸主や管理会社の知識不足から、極端な内容への変更を要請され、M&Aの成立に影響を及ぼす場合もあります。

その為、紛争を予防し、予期せぬコストの発生を防ぐためや、極端な内容を妥当な内容に変更するために、草案を作成し、契約交渉をサポートするなど、飲食業に精通した専門家の関与は極めて重要になると言えます。

(4)従業員との契約の承継

従業員との契約の承継も重要な問題です。
一般的な問題に加え、飲食業ではまかないや休憩などについて多くの慣習が存在することも多く、一般的なチェックでは予想しえない問題が発生することもあり得ます。
そして、慣習を見過ごしてM&Aを行った場合には、従前の従業員と買収した会社から承継した従業員の労働条件が異なることによる二次的なトラブルが発生することもあるのです。

その為、書面等のチェックのみでは足りず、慣習も含めた専門家のチェックが重要になると言えるでしょう。

6.おわりに

M&Aにおいて、デメリットを抑えることが重要となることは言うまでもありません。

繰り返しになりますが、デメリットを抑えるために重要となるのは、M&A成立前の調査(デューデリジェンス)と、契約や名義変更などの手続きをもれなく実施することです。

飲食業のM&Aに関しては、資産の評価、仕入先・テナントオーナー・従業員等の契約関係、許認可や食中毒、未成年飲酒や客引きなどのコンプライアンスリスク、ビジネスモデルの正確な評価など、業界独自の特性に対応できる専門性と案件に応じた専門的作業に対応できるマンパワーを備えていなければデメリットを抑えるための作業は行えません。

一方で、飲食業界のM&Aに精通していて、案件に応じた専門的作業に対応できるだけのマンパワーを備えた法律事務所は多くは無いのが現状ですから、事前調査や契約手続きについては、しっかりと対応できる法律事務所に依頼することで、リスクを限定してデメリットをコントロールし、企業の成長を加速する有効な一手であるM&Aを活用してはいかがでしょうか。

 

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

弁護士石毛 孝一
コンサルティングファーム勤務後に起業。約9年の会社経営の後、中央大学法務研究科を経て、2018年ベリーベスト法律事務所に入所。 自らの会社経営経験を活かした中小企業法務、M&A、労働事件の他、建築紛争、破産事件、インターネット紛争、医療過誤事件に特に注力しつつ、広く一般民事事件にも取り組んでいます。
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