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法務DD(デューデリジェンス)-最低限抑えるべきポイントについて

2020年6月30日
法務DD(デューデリジェンス)-最低限抑えるべきポイントについて

1. はじめに

企業は、規模が大きくなってくると、M&Aを行い、既存ビジネスに関するシナジーの追及や新たなビジネスの展開などを求めていくことがあるでしょう。
もっとも、財務諸表などを見るだけではリスクの内容を分析することはできないでしょう。
DDをすることによって、どういったリスクがあるのか調査をしていくことが大切となります。
しかし、法務DDだけでも法律事務所に依頼をすれば、100万円以上の金額が必要となることもあります。
予算の関係上、法務DDを企業の内部で行うことが必要な場合もあるでしょう。

以下では、法務DDを行う上で最低限抑えるべきポイントをご説明してまいります。

なお、以下ではM&Aのうち、Mergerを合併、Acquisitionを買収と言って区別しまた、合併または買収する企業を買収企業、合併または買収される企業を買収対象企業と言います。

2. 法務DDの目的ごとのポイント

法的DDの目的は様々ありますが、その中でも、重要な目的と考えられるもののポイントをお伝えしていきます。

(1)ビジネス達成において支障を来すリスクの調査

買収対象企業が行っているビジネスが買収企業においては継続ができないとなれば、買収する意味が乏しくなってしまいます。

そこで、以下のような点のチェックは必要となってくるでしょう。

① 重要な取引先との取引は継続できるか

単にM&Aが契約の解除事由となり得るかという視点だけではなく、ビジネス上、取引ができなくなる可能性がないかという視点に着目することが必要です。
つまり、買収対象企業との信頼関係に基づき、取引がなされているのであれば、買収により、今後継続的な取引ができなくなるリスクがないかということは見落としてはならない点です。
例えば、当該取引先が製品製造に関する重要な仕入れ先であれば、ビジネス上大きなリスクが残ってしまいます。

また、その仕入先と買収企業との関係も重要です。
仕入先等がChange of Control条項で契約解除を選択するのは買収企業との関係によります。

② 第三者の知的財産権を侵害していないか

例えば、買収対象企業が製造、使用している製品が第三者の特許権を侵害している場合、当該製品を使用することができないだけではなく、第三者から損害賠償請求を受けるリスクがあります。
買収企業は、当該第三者と協議をして、実施権の許諾を受けるか、特許権を譲り受けなければなりません。
当該製品の特許権がビジネスを展開する上で必須なものであれば、買収企業は、第三者の態度次第では、買収の取り止めや買収価格の減額交渉を検討しなければなりません。

弁理士や知的財産部門が類似製品の調査等、知的財産権侵害がないか詳しく調査をすることが大切です。

③ 保有する不動産が環境汚染等をしていないか

例えば、買収対象企業が工場を保有している場合、特に注意が必要です。
大気汚染防止法や土壌汚染対策法等環境法に違反をしていれば、工場を使用できない可能性があります。
それだけではなく、法務DDにより環境法違反の事実が発見することができず、後々、発見された場合には、重大なレピュテーションリスクが生じることになってしまいます。

④ 許認可等が承継できるのか

株式買収して子会社化した場合は買収対象企業の株主に変更があるだけですから買収対象企業の許認可の承継の問題はありませんが、事業買収した場合は許認可は事業単位ではなく法人として持っていますので、新たに許認可の申請が必要です。
また、買収対象会社を吸収合併した場合、買収対象会社の持つ許認可が当然に包括承継される訳ではありません。
許認可が問題なく承継できるかということは必ず確認すべき点です。

例えば、一般旅客自動車運送事業については、合併する際には国土交通大臣の合併の認可が必要となります。
M&Aの際に、許認可の承継にどういった手続が必要か事前に確認し、M&A完了後、スムーズにビジネスが開始することができるよう段取りをすることが大切です。
つまり、株式買収などの場合と異なり、特に吸収合併の場合にはPMI(Post Merger Integration.合併後統合施策)の策定・実施が重要です。

また、当たり前ですが、買収される企業が必要な許認可を漏れなく取得しているのかを確認することが不可欠です。

⑤ 会社法等の法令違反がないか

中小企業等に多いのが、株主総会等の手続に瑕疵があるといったことです。
譲渡制限会社において、株式譲渡に関して株主総会の承認を得ていない株主が株主総会に参加するなど会社法の手続に瑕疵があれば、買収ができない可能性もあるため、株主総会議事録等の内容は確認し、買収に支障を来す瑕疵がないか確認することが大切です。

(2)合併等により必要となる処理、手続はないか

例えば、下請法は資本金の金額によって規制対象になる場合があるため、吸収合併した企業が行っていた取引が資本金額の大きな買収企業の元では下請法の規制対象になるといったことがあります。
事業買収のケースでも同様のことが起こり得ます。
そのため、合併後の時点においても、当該取引は適法かということも考慮した上で、DDを行う必要があります。
上記のように、合併後、一定の取引が下請法の規制対象となるのであれば、下請法の規制を遵守できる体制の構築が必要となります。

このように、買収対象企業が行っていた取引がその時点で適法であっても、合併や事業買収の結果、規制の対象になるということがあり得えます。
そのため、法務DD担当者は、幅広い法律の知識を頭に入れた上で、M&A完了後の状況をふまえて、DDを行う必要があります。

(3)潜在する法的な紛争リスクの調査

例えば、以下のような法的リスクが存在すれば、金銭の支払義務、企業価値の損失等が発生する可能性があります。

① 時間外労働等に対する未払賃金

就業規則、賃金規程、労働者の労働実態などを確認した上で、未払賃金の有無は確認すべきです。
時間外労働等の時間が長ければ、多額の支払義務が発生し、リスクは大きいものとなります。

② 従業員の不正等

背任、業務上横領、窃盗等によって多額の金銭が会社から流出していないか、会計不正がないか、などの調査が必要でしょう。
財務DDと連携して、不正がないのかチェックが大切です。
また、不正が発覚した後の対処についても、どうすべきか検討が必要です。

③ 知的財産権侵害

上記(1)①のとおり、知的財産権侵害はビジネス上大きな支障を来すリスクがあるだけでなく、多額の損害賠償義務を負いかねないため、調査は入念に行うべきです。

④ 取引先との契約違反

各種契約の内容、契約違反がないかチェックをし、多額の損害賠償義務を負うリスクがないか確認することが必要です。

⑤ 第三者に対する不法行為の可能性

例えば、製造する製品が第三者の生命、身体、財産を侵害する可能性があれば、多額な損害賠償義務を負うリスクがあります。

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3. 法務DDにより見つかったリスクに対する解決策

買収企業は、法務DDにより、様々な法的問題を発見することがあるでしょう。
そうした場合、どのような解決を図るのか検討が必要です。

(1)まず、M&Aを止めることです。金額に見合っていない買い物は避けるべきだからです。
(2)次に、買取金額を下げることです。

例えば、今後、法的な紛争が発生するリスクやビジネスに支障を来す問題があるのであれば、価値の低い物を高く買う理由はありませんし、それらのリスクを買主だけが負担することは不適当であります。

(3)更に、表明保証に詳細な内容を記載し、保証違反があった場合の損害賠償義務の内容を明確に記載することです。

なお、表明保証条項は株式買収や事業買収にはある程度の効果がありますが、買収対象企業が消滅する合併のケースでは履行義務者不在であり意味のない条項であることに注意が必要です。

そのほかにも、M&Aによって発生するリスクを軽減する方法はいくつかあるかもしれません。
法務DDによって発見されるリスクは内容によって企業価値に与える影響の程度が異なるため、リスクの内容は精査されなければなりません。

4. まとめ

以上のように、今回は、法務DDを行う上で、最低限抑えるべき点を見てまいりました。
買収する企業の規模、取引の内容などに応じて、チェックすべき項目は異なるとは思います。
特に、ビジネスを達成する上で支障がないか、多額の損害賠償義務を負う可能性がないかという観点から、チェックをすることが重要でしょう。
もちろん、企業内部の担当者だけで法務DDを行うことには限界がありますし、また、取締役等に対する株主代表訴訟の対応リスクを最小化するため、ある程度知名度のある法律事務所に法務DDを行わせるのが望ましいでしょう。

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中井 和也
弁護士中井  和也
九州大学法学部卒業,九州大学法科大学院修了。離婚事件を多く取り扱う法律事務所に勤務をした後,東証一部上場企業で契約書作成,レビュー,新規ビジネスの法的スキーム検討,個人情報保護法改正に伴う対応,その他法令調査等企業法務を中心とする業務を担当。その後,ベリーベスト法律事務所に入所し,民事事件,刑事事件等を担当。依頼者のニーズをふまえて,法律のみならずビジネス的な観点も考慮し,解決の着地点を見定めて,柔軟なアドバイスをするよう心掛けております。
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