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労働審判にかかる費用とは?弁護士に相談するメリットやコストを安くするコツを解説
従業員から労働審判を申し立てられたときには、決して無視をせずに、すみやかに労働問題に強い弁護士までご相談ください。
なぜなら、事前に提出する答弁書・証拠書類や審判期日に向けて入念に準備をしておかなければ、労働審判委員会から会社側の主張を十分に理解してもらえず、従業員側に有利な審判結果が言い渡されるリスクが高まるからです。
とはいえ、弁護士への依頼には一定の費用が発生する点を踏まえると、「社内の人間だけで証拠書類等を準備して労働審判手続きに挑んだ方が低コストで済むのではないか」とお考えの経営者の方も少なくはないでしょう。
そこで今回は、
- 労働審判を申し立てられたときに発生する費用
- 労働審判を申し立てられたときに弁護士へ相談するメリット
- 労働審判をめぐる費用を抑えるコツ
などについてわかりやすく解説します。
労働審判を申し立てられたときには、あらかじめ弁護士に相談をして丁寧に手続きを遂行した方が、調停結果・審判内容が有利になって、トータルの費用を安くできる可能性が高いです。
弁護士事務所に直接確認をすれば事前に見積もりを出してくれるので、まずは相談することを強くおすすめします。
1.労働審判とは
そもそも、労働審判とは、「個別労働関係民事紛争(個々の労働者と事業主との間の労働関係のトラブル)」について、迅速・適正かつ実効的に解決することを目的として、労働審判委員会の審理を受ける制度」のことです(労働審判法第1条)。
多くの労働審判では、従業員側の申立てによって手続きが開始されて、会社側は期日前に答弁書の提出を求められます。
期日中に労使間で調停が成立すればその時点で手続きが終結する一方で、調停不成立に終われば労働審判によって裁定が下されます。
そして、労働審判の内容に異議があれば、引き続き訴訟手続きで争うことも可能です。
労働審判の特徴として、以下のものが挙げられます。
- 労働審判官1名と労働審判員2名で構成する労働審判委員会による専門的な介入を期待できる
- 訴訟手続きよりも迅速な紛争解決を見込める(原則3回以内の期日。平均審理期間は6日)
- 労働審判に至る前に調停による民事的解決もあり得る
- 労働審判には強制力がある
2.労働審判で会社が負担する費用とは
従業員から労働審判を申し立てられた場合、会社側は以下の費用を負担するのが一般的です。
- 弁護士費用
- 解決金
(1)弁護士費用
従業員から申し立てられた労働審判に対応するために弁護士へ依頼をした場合、会社側は「弁護士費用」を負担しなければいけません。
弁護士費用は、「相談料」「着手金」「報酬金」に大別されます。
弁護士事務所によって費用体系は異なります。
まず、従業員から労働審判を申し立てられたことを踏まえて、現状の確認と今後の展望についてアドバイスを求める場合には、「相談料」が発生することがあります。
そして、労働審判について委任契約を結ぶと、「事件を受任してもらったこと」に対して「着手金」を支払わなければいけないのが通常です。
着手金は、労働審判の結果とは関係なく支払う必要がある費用です。
さらに、労働審判を弁護士に委任した結果、一定の成果が出た場合には、成功報酬として「報酬金」を支払う必要があります。
たとえば、【従業員から未払い残業代500万円を請求されて、労働審判の結果300万円の解決金を支払うことで調停が成立したケース】だと、500万円という請求額を基準にした着手金に加え、減額できた200万円の経済的利益を基準にした報酬金が弁護士費用になってきたりします。
その他、裁判所までの交通費などの実費・日当が発生する点に注意が必要です。詳しくは、依頼を検討中の法律事務所までお問い合わせください。
(2)解決金
従業員に労働審判を申し立てられたとしても、審理の途中で「調停」が成立することがあります。
調停とは、「労働審判による終局的な解決ではなく、労使間の合意に基づいて和解契約を締結すること」を意味します。労使トラブルの内容次第ですが、「会社側から従業員に対して一定額の『解決金』を支払うこと」が調停条件に掲げられることが多いです。
解決金の金額について「相場」は存在しません。
ただ、労働審判が法律上の請求権を争う以上、たとえば解雇であれば月の給与額、残業代であれば基本時間給と証拠上認定できる超過労働時間数が基軸になります。
そして、法律上請求が認められそうなら請求に近い金額を、請求権が認められないのであれば前記基軸に小さめの数字をかけて割り引いた数字などが和解案になることも多いです。
3.労働審判の費用を安くする方法
労働審判の費用を少しでも安くしたいなら、労働審判などの労使紛争を専門とする弁護士事務所に依頼するのがオススメです。
労働審判は、交渉による和解を模索する手続であり、明確に法的主張や事実認定について白黒つける手続ではありません。
一方で、裁判所で行われる手続である以上、申し立てた側の請求権が成立しているかどうかは、和解金額の基準を大きく左右させます。
労働審判では答弁書の提出期限も短く、また期日当日もその場での柔軟な対応や判断が必要になることも多いため、労働事件に精通した弁護士がついているかどうかでその方向に差も出てきます。
解決金額が低額で済めば、弁護士費用がかかってもトータルでは出費をおさえることもできますし、労働訴訟に進んでより出費が大きくなるのを避けることも出来ます。
優れた弁護士に依頼し、正しく問題を処理できるのが、結局のところ出費を抑える王道ということになります。
まとめ
従業員から労働審判を申し立てられたとき、確かに費用面の心配も大切なことですが、「費用を安くすること」だけに気を奪われないようにしてください。
なぜなら、「弁護士費用を節約したいから会社の人間だけで労働審判に対応する」「実績は無視して一番安い見積もりを出してくれた弁護士に依頼する」などの選択をしてしまうと、労働審判手続きや訴訟手続きが不利に進行し、結果として高額の経済的負担を強いられる可能性があるからです。
最初から労働審判や労使紛争の経験豊富な弁護士に相談しておくことで、結果としてトータルの費用を大幅に節約できるケースは少なくありません。
「費用」「実績」「早期解決の可能性」を総合的に考慮して、信頼できる弁護士までご相談ください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています