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事例からみる商標権取得の必要性について

2019年11月1日

商品やサービスの名前について、商標権を取得しておく法的な義務はありませんが、商品の販売やサービスの開始前に、商標権を取得しておかなければ、様々な弊害が生じることがあります。

そこで、以下では、ある事例を参考しながら、商標権取得の必要性について、ご説明したいと思います。

1.事例

X社は、「●▲」とのブランド名からなる携帯電話のケース(以下、「本件商品」という。)を製造販売していたところ、ある日突然、X社と同業であるY社より、

 

1)Y社は、携帯電話のケースについて商標「●▲」の商標権を取得している。
2)X社が本件商品を製造販売する行為は、自社の商標「●▲」の商標権を侵害する。
3)よって、商標「●▲」の使用の中止を求める。

 

との警告を受けた。

これを受けた、X社の社長である甲は、「売れ行きが順調なため、これからも本件商品の販売を継続したいが、この警告によるY社の要求が妥当なものなら、商標「●▲」の使用を中止し、本件商品の名前を変更しなければならない。そうなると、これまで使っていた本件商品のパッケージやチラシ、パンフレット等を廃棄した上、これらを新たに作成しなければならないし、取引先にも、このことを説明しなければならない。どうしたものか。」と、大変困った状況に陥っている。

2.事例の検討

このように、Y社は、X社に対し、商標権侵害に基づく警告を行っているが、X社は、本当に、当該警告内容にあるY社の要求を受け入れる必要があるのでしょうか。

Y社の要求が妥当なものなら、甲の心配は的中することから、以下、本事例の内容について、順に検討してみたいと思います。

(1)Y社の要求の妥当性

他人が、商標権者に無断で、「指定商品役務」と同一又は類似する商品役務に、「登録商標」と同一又は類似する商標を使用した場合には、当該他人の行為は、その商標権を侵害することになります。

上記事例では、Y社は、指定商品「携帯電話のケース」について商標「●▲」の商標権を取得していることから(商標「●▲」は登録商標)、当該指定商品と同一の商品である「携帯電話のケース」に当該登録商標「●▲」と同一の商標である「●▲」を使用するX社の行為は、Y社の商標権を侵害するものといえます。

そして、商標権者は、自身の商標権を侵害する者に対して、侵害行為の差止や損害賠償の請求が可能であることから、商標権侵害を理由とするY社のX社に対する差止要求(上記3)参照)は、妥当であると考えます(内容をわかりやすくするため、先使用権の抗弁等は認められないものとして話を進めます)。

(2)想定外の損失

上記のように、商標権侵害を理由とするY社のX社に対する差止要求(上記3)参照)は、妥当であるといえることから、X社は、甲が心配していたとおり、商標「●▲」の使用を中止し、本件商品の名前を変更しなければなりません。

そのため、X社は、これまで使っていた、商標「●▲」が表示されている本件商品のパッケージやチラシ、パンフレット等を廃棄した上、これらを新たに作成しなければならないことから、X社には、これらに伴う廃棄料や新たなパッケージの作成料等の余計な費用が発生することになります。

このように、これらの余計な費用は、X社がY社の商標権を侵害しなければ発生しなかったものであることから、X社にとって、これらの費用を支出することは想定外の損失であるといえます。

また、X社が、本件商品の名前を変更することで、取引先に何らかの迷惑をかけてしまえば、X社には、取引先からの信用を失う等の無形の損失が発生すると考えられることから、これもまた、今回の事態によって発生した想定外の損失の一つであるということができます。

3.未然の防止策・・・X社はどうすればよかったのか?

上記のとおり、X社は、Y社の商標権を侵害することで、想定外の損失を被ることになりましたが、X社が、このような事態を防止するためには、未然に何をしておけばよかったのでしょうか。以下、この点について、みていきたいと思います。

 

<解説>

■答え
X社は、Y社よりも先に商標権を取得しておくべきだった。

 

■説明
同じ商品等を指定する商標の出願が複数の者の間で競合した場合には、いち早く出願した者のみが、その商標について登録を受けることができます(登録を受けるためには、商標法に規定する他の登録要件も満たす必要がありますが、内容をわかりやすくするため、他の登録要件を満たすことを前提に話を進めます)。

そのため、仮に、X社がY社よりも先に、商品「携帯電話のケース」について商標「●▲」を出願していた場合には、X社は、Y社を差し置いて、自らがこの商標についての商標権を取得できたことから、X社が、これについての商標権を有しないY社より、商標権侵害の責任追及を受けることはなく、また、これに伴い、上記のような想定外の損失も受けることはなかったはずです(むしろ、この場合、X社は、商標権者であることから、商品「携帯電話のケース」について商標「●▲」を独占して使用することができます)。

したがって、X社がY社に先じて、当該商標「●▲」に関する商標権を取得しておけば、X社には、上記のような想定外の損失は発生しなかったのであるから、X社による当該商標権の取得が、本事例における最大の防止策であったと考えます。

4.商標権取得の必要性

このように、商品の販売やサービスの開始前に商標権を取得しておくことは、他人の商標権を侵害することに伴う様々な弊害を未然に防止することにつながることから、ビジネスを安心して行う上で、商標権を取得しておく必要性は高いものと考えます。

したがって、商品やサービスの名前について、商標権を取得しておく法的な義務はありませんが、このような弊害を未然に防止するためにも、商品の販売やサービスを開始する前に、是非一度、商標権の取得についてご検討されてみてはいかがでしょうか。

児玉道一
弁理士児玉 道一
特許業務法人ベリーベスト国際特許事務所の代表弁理士。 都内法律事務所にて、10年近くパラリーガルとして知的財産に関する案件を担当。 その後、弁理士としてベリーベスト法律事務所に入所し、2016年6月特許業務法人ベリーベスト国際特許事務所を開設、代表弁理士に就任。 2014年4月~2016年3月まで日本弁理士会研修所の運営委員、2016年4月~2017年3月まで日本弁理士会貿易円滑化対策委員。 特許、意匠、商標等の知的財産に関する案件を数多く手がける。
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