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英文契約解説~準拠法と非準拠法に関する知っておくと役立つお話

2020年2月3日
英文契約解説~準拠法と非準拠法に関する知っておくと役立つお話

1.準拠法とは

準拠法とは、私人間の国際的な法律関係が問題となっているときに、ある法的問題について判断基準として選択、適用される法であり、英語ではgoverning law又はapplicable lawといいます。渉外契約においては、ほぼ必ず準拠法を定めます。

 

典型的な二当事者間の契約の場合、何れかの国の法律を準拠法にする場合が多いですが、例えば、何れの当事者も自国の準拠法を主張して譲らない場合などは、中立国の第三国法にすることもあります。
比較的よく見られる例として、日本当事者と中国その他のアジア当事者間でシンガポール法、日本当事者と欧州当事者間で英国法、スイス法、ニューヨーク州法等があります。

 

但し、第三国法を選択した場合、当該第三国法が自国と異なる二国間の準拠法として機能し得るかどうかについては、当該第三国法の内容次第では否定される可能性があることに注意する必要があります。
例えば、ニューヨーク州(NY州)のGeneral Obligations Lawでは、取引の総額が$250,000を下回らなければ、契約当事者がNY州と何ら関わりがない場合においてもNY州法を準拠法として選択することができると定められています[1](カリフォルニア州でも同様の法律があります)。
但し、$250,000を下回る場合においても、NY州のUniform Commercial Code(米国統一商法典。モデル法案であり、米国各州が一部修正の上採択しています。)によれば、NY州と合理的な関わり(reasonable relation)があれば、NY州法を準拠法として選択することができるとも定められています[2]
そのため、NY州と何ら関わりがない場合には、取引の総額が幾らなのかを確認した上で、$250,000を下回るのであれば、NY州法以外の準拠法を選択する方が妥当かもしれないということになります。

何故NY州にはこのような法律があるのでしょうか。
第三国法を準拠法とする場合には、紛争解決地も必然的に当該第三国になるわけですが、もしNY州と何ら関わりのない当事者間で一切の制限なくNY州法を準拠法にできるとすると、些末な紛争までNY州の裁判所に持ち込まれることになり、NY州の裁判所にとっては煩雑極まりないからです。
極東の島国であることと言語の観点から、日本以外の二当事者間で日本と日本法が紛争解決地と準拠法として選択されることはおよそあり得ませんが、それと比較すると、NY州は司法の分野においても世界の中心地であるといえそうです。

2.準拠法の記載例と法の抵触

日本法を準拠法にする場合の例文を以下に示します。

This Agreement shall be governed by, and construed in accordance with, the laws of Japan.
(本契約は日本法に準拠し、同法に従って解釈される。)

 

米国ニューヨーク州法を準拠法にする場合の例文を以下に示します。

This Agreement shall be governed by, and construed in accordance with, the laws of the State of New York, without giving
effect to any conflict of law principles.
本契約は、法の抵触の原則を適用することなく、ニューヨーク州法に準拠し、同法に従って解釈される。)

 

このwithout以下の文言は、米国の州法を準拠法とする場合に頻繁に登場します。
というのは、法の抵触の原則とは、法律問題が異なる国や州をまたいで発生した場合に、どの国やどの州の法律を適用させるかを定める原則であるところ、この原則は、他国と国境を接しておらず、比較的細かな条例を除き法令が全国共通である日本では問題となることが少ないのと異なり、他国と国境を接している上に各州によって適用法が異なる米国で頻出する法の抵触問題を解決に導くために発展してきた法理論だからです。
そして、かかる文言は、本来なら法の抵触の原則により他国や他州の法令が適用されるような場面においても、同原則を排除してニューヨーク州法のみに準拠することを明示する意味があります。
日本法を準拠法とする場合においても、同様の文言を置くことはあります。

 

ここで、法の抵触問題とはどういう問題なのか、具体例を挙げてみましょう。
ランドマークケースといわれているBabcock v. Jackson[3]です。
この事件は、ニューヨーク州の住民であるJacksonが、同州の住民であるBabcockを好意で同乗させ、カナダのオンタリオ州交通事故を起こしたためにBabcockに怪我をさせ、損害賠償請求を受けた事案です。
伝統的な不法行為地法主義によれば、オンタリオ州法に従って損害賠償義務の有無や範囲が決まることになるところ、オンタリオ州法では、運転者の好意同乗者に対する損害賠償義務は免責されることになっていました。
このような事案につき、ニューヨーク州最高裁判所は、当事者間の関係、同乗の判断、事故地との関連性等を考慮の上、関係者は、オンタリオ州とは実質的な関連を持っておらず、同地での事故は殆ど偶然の産物であるから、オンタリオ州法を適用することは公正を欠くとして、オンタリオ州法による損害賠償義務の免責を認めず、ニューヨーク州法に従って損害賠償義務を認めました。

3.準拠法の選択と裁判管轄の選択

日本の当事者は、渉外契約で日本法を準拠法とすることを好む傾向がありますが、自国の法を準拠法とすることは紛争解決手段との関係で必ずしも最善とは限りません。
例えば、米国当事者との契約で、準拠法は日本法とするが、紛争解決手段は被告地主義の裁判を採用したとしましょう(日本当事者が米国当事者を訴える場合は米国の裁判所で、米国当事者が日本当事者を訴える場合は日本の裁判所で訴訟提起する)。
この場合、日本当事者は、米国の裁判所で米国当事者を訴えるわけですが、米国の裁判官は日本法については門外漢ですから、日本の法律家が英語でOpinion Letter(意見書)を作成したり、Expert Witness(専門家証人)としてDeposition(証言録取)で証言したり、更にはTrial(公判審理)での証言まで求められる可能性があり、その場合想定外の時間、コスト、労力を費やすことになります。

この問題を避けるために、日本の裁判所の専属管轄に合意したとしても、日本の裁判所で外国当事者を訴えるには、まず訴状の送達からして困難を伴います。
例えば、米国当事者に訴状を送達する場合、日本は民訴条約[4]と送達条約[5]を締結していますが、米国は送達条約のみを締結しているため、送達条約による原則的な送達方法である中央当局送達(外国の中央当局を経由する方法)により送達をすると、約12ヵ月もかかるようです。
ただ、送達条約に加盟している国では領事送達(外国に駐在する本国の領事官に送達させる方法)もまた原則的に認められているのですが、それでも約3ヵ月はかかるといわれています[6]

加えて、送達が完了し、日本の裁判所から欠席判決又は米国当事者と係争した結果として確定勝訴判決を得ても、米国において判決の内容を強制的に実現するには、米国の裁判所において当該日本の確定判決を承認してもらう手続が必要になり、これもまた余分な時間、コスト、労力といえるでしょう。

 

このように、米国当事者相手であれば、余分な時間、コスト、労力がかかるとはいえ、まだ訴状の送達と米国裁判所による日本の裁判所の確定判決承認を期待できるのですが、その他の国ではそもそも訴状を送達できるのか、日本の裁判所の確定勝訴判決を得てもその国でその国にいる相手方当事者に対し強制執行できるのかにつき綿密なリサーチと執行を求める先の国の法令や判例、先例の確認が必要で、それで確信が持てないのであれば、日本の裁判所を選択すべきではありません。
特に、台湾当事者との契約の場合は、日本と正式な国交を樹立していないわけですから、外交ルートを用いた訴状の送達さえ絶望的で、日本の裁判所にすると身動きが取れなくなります。

 

そうしますと、裁判を通じて得た確定勝訴判決の内容を相手方当事者に対し強制執行していくためには、相手方当事者の国の裁判所の確定勝訴判決を得た方が確実であるといえます。
どの国の裁判所も、自らが出した確定判決を自国内にいる自国民に執行できないとはいわないだろうからです。

4.準拠法先送り・不定

それでは、この問題を解決するために、以下のような条項を設けたらどうなるでしょうか。

This Agreement shall be governed by, and construed in accordance with, the laws of the jurisdiction where the defendant
resides.
(本契約は、被告が居住する法域の法律に準拠し、同法に従って解釈される。)

 

これによれば、契約準拠法と裁判所が準拠する法が常に一致するメリットがあるので、このような条項は見られないわけではありません。しかしながら、このような条項では、紛争が裁判所に持ち込まれるまで準拠法が不明なこと、そもそも紛争解決の予測を目的として準拠法を定めるのに、どちらが提訴するかによって準拠法が異なるのでは紛争解決の予測がつかないという大きなデメリットがあるので、余り採用されることはありません。
とはいえ、提訴が行われるまでは、法廷地の国際私法を適用して準拠法を再密接関連地法(その他法廷地の国際私法の定める基準によって決定された法)とし、提訴が行われて一応準拠法が定まったときは、当該準拠法の可否は法廷地の国際私法によって決するという考え方も不可能ではないことからすれば、直ちにかような条項を無意味又は無効であると断ずる必要はないように思われます。

全く準拠法の定めがない場合は、基本的に国際私法の問題となり、紛争が持ち込まれた各国の裁判所の考えに基づいてどの国の法律が適用されるかが判断されることになると考えられます。
なお、準拠法の定めがないのに、紛争解決地だけを指定してある場合、当事者は黙示で紛争解決地法を準拠法としたと考えられる可能性があります。

5.準拠すべきでない法(非準拠法?)

さて、ここまで準拠法即ち準拠すべき法について述べてきましたが、準拠すべきでない法というのは存在するのでしょうか。
また、存在するとしてもそれをわざわざ契約書に記載する必要はあるのでしょうか。
それがあるのです。x正確には法ではなく法律より上位にある条約ですが、それが国際物品に関する国際連合条約(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods)[7]で、通称ウィーン売買条約といいます。

ウィーン売買条約は、異なる国の間で物品を売買する場合において、当事者の所在する国がいずれも締約国である場合は自動的に適用されます。
また、一方が非締約国であっても、国際私法により締約国の法を適用するとされる場合には、同条約が適用されます。
つまり、非締約国の当事者との売買契約であっても、日本はウィーン売買条約の締約国ですから、準拠法を日本法としていたり、国際私法の定めにより日本法が適用されることになったりすると、自動的にウィーン売買条約が適用されることになります。
その結果、日本の民法や商法は適用されません。外国当事者との物品売買でも、契約書を作成せず、単に発注書と請書のやり取りである場合も多々あるわけですが、この場合、日本を含めウィーン売買条約の締約国は多数に上ることから[8]、何ら意識していなくても実はウィーン売買条約の適用下である売買取引が数多く存在していることになります。

 

ウィーン売買条約と日本の民法や商法との相違点は様々です。その中でも典型例とされているのは、ウィーン売買条約が定める物品の保証期間は、一般的な国際売買契約で適用される保証期間よりも長く、物品の引渡しから2年間とされている点です。
これは売主の立場からすれば、是非とも適用を除外したい点でしょう。これ以外の相違点についても、101条あるウィーン売買条約の中からその全てを洗い出し、売主・買主それぞれの立場から有利・不利を検討するのは骨の折れる作業に違いありません。
そうだとすれば、いっそのことその全ての適用を排除し(個別条項の適用排除も可能ですが)、売主と買主の権利義務は全て契約書で規律したいと考えるのは当然のことでしょう。

幸い、ウィーン売買条約は、当事者の合意によりその全ての適用を排除することが可能です。そのための例文を以下に示します。

The parties hereto expressly agree that the application of the United Nations Convention on Contracts for the International
Sale of Goods to this Agreement shall be strictly excluded.
(本契約当事者は、本契約へのウィーン売買条約の適用が厳格に排除されることに明示的に合意する。)

6.まとめ

筆者は、日々の弁護士業務において、これまで数え切れないほどの渉外契約書を見てきましたが、誰もが知るような一流上場企業においても、中国当事者との契約で準拠法を日本法とし、専属的合意管轄を東京又は大阪地方裁判所としている例が散見されること、台湾当事者とさえそのような例が見られることに驚かされます。
この場合、中国又は台湾当事者は東京又は大阪地方裁判所で日本当事者を訴えるという至極当たり前のことをすれば良いわけですが、日本当事者は東京又は大阪地方裁判所で中国又は台湾当事者を訴えるという、それまでに経験があるのかという程のことを余儀なくされ、既述した訴状の送達と確定外国判決の承認の問題に直面することになります。
台湾当事者の場合は、いずれも全く不可能なので万事休すです。
ちなみに、日本の確定判決が中国で承認された例はないと思われます。台湾は当然ありません。
自社にとって有利と信じて作成した契約書が、実は紛争の発生という肝心なときに自社の首を絞めるという何とも間の抜けた結果となっているのです。

 

本稿が、渉外法務に携わる皆様の準拠法に対する意識を向上させ、適切な契約書作成の一助となれば幸いです。
英文契約書については、蓄積されたノウハウと確固たる自信がない限り、英文契約書に精通した弁護士に作成・レビューを依頼することをお勧めします。

[1] N.Y. General Obligations Law § 5-1401. Choice of law.

1. The parties to any contract, agreement or undertaking, contingent or otherwise, in consideration of, or relating to any
obligation arising out of a transaction covering in the aggregate not less than two hundred fifty thousand dollars, including
a transaction otherwise covered by subsection (a) of section 1–301 of the uniform commercial code, may agree that the law of
this state shall govern their rights and duties in whole or in part, whether or not such contract, agreement or undertaking bears
a reasonable relation to this state. This section shall not apply to any contract, agreement or undertaking (a) for labor or personal
services, (b) relating to any transaction for personal, family or household services, or (c) to the extent provided to the contrary
in subsection (c) of section 1–301 of the uniform commercial code.

[2] N.Y. Uniform Commercial Code § 1-301. Territorial Applicability; Parties’ Power to Choose Applicable Law.

(a) Except as otherwise provided in this section, when a transaction bears a reasonable relation to this state and also to another
state or nation, the parties may agree that the law either of this state or of such other state or nation shall govern their rights and
duties so long as none of the parties to the transaction is a consumer and a resident of New York. Where a consumer is
a resident of the state of New York, New York state law shall apply.

[3] 191 N.E.2d 279, 12 N.Y.2d 473 (N.Y. 1963)

[4] 民事訴訟手続に関する条約(昭和45年6月5日-条約第6号)(http://www.pilaj.jp/text/minso.html

[5] 民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約(昭和45年6月5日-条約第7号)(http://www.pilaj.jp/text/soutatsu.html

[6] 参考URL(https://eu-info.jp/ICPL/9.html

[7] 参考URL(https://lex.juris.hokudai.ac.jp/~sono/cisg/cisg_ej.pdf

[8] 「1988年1月の条約発効以来、締約国が増えており、2019年9月現在、米国、カナダ、中国、韓国、ドイツ、イタリア、フランス、オーストラリア、ロシア等、92カ国が締約しています。日本では2009年8月1日に発効しています。」(https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-010709.html)。

折田忠仁
弁護士折田 忠仁
ベリーベスト法律事務所パートナー。1986年に早稲田大学法学部を卒業し、同年司法試験合格。1989年に最高裁判所司法研修所修了後、主に知財案件を扱う特許法律事務所に入所。1994年に米国ロースクールに留学し、LL.M.修了。1995年にNY州司法試験に合格し、同年NY州弁護士登録。帰国後、米国法律事務所との外国法共同事業事務所、大手渉外事務所を経て、2018年9月にベリーベスト法律事務所に参画。帰国以来、外国企業との商取引、内国企業による外国企業及び外国企業による内国企業の買収、外国企業と内国企業との合弁事業の組成・解消等に係る契約審査を中心に、国内一般民商事案件や内外紛争案件も加え、幅広い経験を積んでおります。
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