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英文契約解説~紛争解決②仲裁

2020年6月30日
英文契約解説~紛争解決②仲裁

1.紛争解決-仲裁

渉外契約では、準拠法及び紛争解決についての条項が置かれることが一般的です。紛争解決条項は大きく裁判と仲裁とに分かれますが、本稿では仲裁について解説致します。

日本当事者間の契約では、仲裁条項が置かれることはまずありません。その主な理由は、筆者の思うところによれば、市民革命の経験がないからでしょうか、日本人はいわゆるお上意識が強いこと及び仲裁は上訴ができないことにあります。お上である司法機関が担う三審制の裁判でとことん争った結果なら納得するが(せざるを得ないが)、民間の仲裁機関はお上の裏付けを欠く上、上訴制度がない一発勝負なので、仲裁では負けたときに消化不良で納得し難いという背景があるのでしょう。ちなみに、日本で最も知られた仲裁機関は日本商事仲裁協会(JCAA=The Japan Commercial Arbitration Association)と思われますが、同協会は一般社団法人に該当します。

2.裁判と仲裁との比較

しかし、これが渉外契約になると様相を異にし、仲裁が選択されるケースが多くなります。以下、その理由について、主に裁判との比較の観点から説明します。

(1)他国の裁判制度に対する不信感

渉外契約で紛争解決を裁判に委ねた場合、どちらの国の裁判にするのかという問題でしばしば交渉が難航します。

日本当事者は、日本の裁判所と裁判官に対する信頼度が高いこともあって、渉外契約での準拠法を日本法、紛争解決機関を日本の裁判所とすることを好みがちですが、これにつき相手方である外国当事者の理解が得られたとしても、外国当事者の所在国での訴状送達の問題と当該国における勝訴判決の執行の可否の問題がありますので、寧ろ日本での裁判は避けるべきです。
逆に、外国当事者の所在国の裁判にしますと、こんどは外国当事者の方が同様に日本での訴状送達の問題と日本における勝訴判決の執行の可否という問題に直面してしまいます。この問題の詳細については、「英文契約解説~紛争解決①裁判」をご参照下さい。

上記問題は、被告地主義を採用し、日本当事者が外国当事者を訴える場合は外国当事者の所在国の裁判とし、外国当事者が日本当事者を訴える場合には日本の裁判とすることで解決できます。
しかしながら、お互いに、相手方の国の裁判所は、自国民と他国民間の紛争において自国民寄りの判断をするのではないかという漠然とした不安感がありますし、裁判では担当裁判官は無作為に決まるため、信頼できる裁判官や国際紛争に経験豊富な裁判官を選べない事実、とりわけ外国当事者の所在国が先進国ではない場合には、裁判官が賄賂を要求することさえあり得るという事実は不安感を増幅させます。
また、例えば、米国当事者相手に米国で裁判をするということになりますと、費用が莫大になり得るとの懸念もあります。

(2)仲裁手続の開始

上記のように、一方当事者の所在国での裁判にした場合は、上記のとおり、他方当事者の所在国での訴状送達という厄介な問題が生じます。
これは被告地主義を採用することで回避することができますが、仲裁手続においては、仲裁機関に対して仲裁申立書を提出すれば手続を開始できますので、もともと仲裁手続開始についてはそのような煩わしい問題はありません。

(3)外国仲裁判断の執行

一方当事者の所在国での裁判にした場合は、これもまた上記のとおり、他方当事者の所在国における勝訴判決の執行の可否という厄介な問題が生じます。
一国の裁判所で得られた勝訴判決を他国の敗訴当事者に対して執行するに当たり、国際的な取決めは何もありません。
ただ、この問題も、同様に被告地主義を採用することで回避できます。

この点、仲裁では、外国で下された仲裁判断の執行に関して、「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」(昭和36年条約第10号)が存在します。
この条約は、通称「ニューヨーク条約」と称され、160か国以上の国が加盟しています。
これにより、両当事者の所在国が共に条約加盟国である場合は、一方当事者の所在国で得られた仲裁判断の内容を他方当事者が任意に履行しない場合には、条約が定める拒否事由に該当しなければ、当該仲裁判断を他方当事者の所在国で承認させ、執行することができます。

もとより、外国仲裁判断の最終的な執行も負担の重い作業ではありますが、外国判決の執行に比べれば、容易かつ結果の予測も可能ということになります。
そのため、渉外契約においては、両当事者の所在国がニューヨーク条約の加盟国であるならば、仲裁判断を相手方当事者の国において執行していきたい側の当事者にとっては、紛争解決手段を一方当事者の所在国の裁判にするよりは、仲裁の方が望ましいことになります。

ちなみに、日本の周辺国で同条約に加盟していないのは台湾と北朝鮮です。
北朝鮮については、そもそも北朝鮮の居住者とビジネスをすることはほぼないので、事実上不都合はありませんが、台湾の居住者とビジネスをする機会は普通にあります。
この点、台湾はニューヨーク条約の締約国でこそありませんが、ニューヨーク条約に対応する国内法があり、実際外国の仲裁判断は執行されています。

このように、多くの国家がニューヨーク条約の加盟国であるという事実は、仲裁の使い勝手の良さに大きく貢献しています。

(4)仲裁地

仲裁地については、上記のとおり、両当事者の所在国がニューヨーク条約加盟国であれば、一方当事者の所在国で行うとしても、他方当事者の所在国で執行できないという問題は生じないので、何れの国でも構いません。
但し、仲裁でも被告地主義を採用して、一方当事者が仲裁を申し立てたときは、他方当事者の所在国で利用できる仲裁機関とその仲裁規則で仲裁手続を行うとすることも多いです。

更に、第三国がニューヨーク条約の加盟国であるならば、第三国での仲裁も可能です。
第三国での裁判が事実上不可能であることに比べれば、この点は裁判にはない仲裁ならではのメリットといえるでしょう。

好評な仲裁地として、上から順にロンドン、パリ、シンガポール、香港、ジュネーブ、ニューヨーク、ストックホルム、サンパウロを挙げている2018年版の調査がありますが、翌年の調査ではロンドン、パリ、ドバイ、シンガポールとなっており、近時ドバイが目覚ましい躍進を見せています[1]

これらの都市で仲裁を行う場合、仲裁機関として圧倒的に広く利用されているのはパリに本部を置く国際商業会議所(ICC=International Chamber of Commerce)で、次に利用されているのが、ロンドンに本部を置くロンドン国際仲裁裁判所(LCIA=The London Court of International Arbitration)です。
国際仲裁案件の殆どは、この両機関で扱われています[2]。パリやロンドンに本部を置くといっても、この両機関は世界的なネットワークを有しているので、様々な場所で利用できるのです。

日本当事者が第三国を仲裁地として選ぶ場合には、アジア当事者との間ではシンガポールや香港、米国当事者との間ではロンドン、パリ等の欧州都市、欧州当事者との間であればニューヨークといった、両当事者にとって中立的かつ両当事者の所在地から距離的に中間の位置にある第三国の都市を選択する機会が比較的多いと思われます。

(5)柔軟性

どの国の裁判でも裁判手続は法定されており、各仲裁機関も仲裁手続について独自の規則を定めておりますが、仲裁の方が柔軟性に富んでいます。

例えば、裁判では裁判官は選べませんが、仲裁では仲裁人を選ぶことができます。
取引規模の小さい契約では、仲裁人が1名であることが多いですが、この仲裁人は両当事者間の合意で選べます。
合意できないときは、仲裁機関が選びます。規模が大きい取引、重大な取引、特許技術等の専門的な知見を要する取引にかかる契約では、しばしば仲裁人3名の合議制を採用しますが、この場合、各当事者が1名ずつ2名の仲裁人を選び、この両名がもう1名の仲裁人を選びます。合意できないときは、仲裁機関が選びます。
このプロセスを経ることで眼前の紛争に適した仲裁人を選定することができます。

また、米国の裁判では、ディスカバリー制度に基づく広範な証拠開示請求があり、これにより、訴訟当事者は、弁護士と依頼者間の秘匿特権(attorney-client privilege)等数少ない例外に該当しない限り、事件に関連するありとあらゆる情報の開示を要求されます。しかしながら、仲裁の場合は、仲裁合意をする際に、仲裁のスケジュール、文書提出回数、文書開示の程度、証人の証言等について合意をすることができ、これにより、ディスカバリーに費やす時間、労力及びコストを軽減することが可能になりますので、特に米国での仲裁では必要な合意といえるでしょう。

(6)密行性

公的な手続である裁判は公開が原則です。公開により起こり得る不都合に対しては、審理非公開措置、秘密保持命令、インカメラ手続、記録閲覧制限等の制度があり得るわけですが、世界各国の裁判所でこうした制度が利用できるか否かは明らかではなく、仮に利用可能としても、満足に利用できるかどうかは予断を許しません。

そのため、一方当事者に紛争の発生自体を秘匿したい、或いはその商業上、技術上その他の秘密情報を秘匿したい等の要望があったとしても、裁判では必ずしもそれに応えることができないのに対し、私的かつ非公開の手続である仲裁においては、こうした要望をかなえることができます。

(7)迅速性

裁判は、自国の裁判であれば、外交ルートを通じて相手方である外国当事者の所在国で訴状の送達を行わなければならず、これには大変時間がかかります。
被告地主義を採用してこの問題を回避し、訴訟手続が開始されたとしても、どの国においても迅速な裁判は必ずしも期待できませんし、大抵の国では日本の三審制のような審級制度があるので、裁判は長期化し易いといえます。

仲裁は、仲裁申立書を提出して手続を開始させるのは簡単ですが、そこから仲裁人、特に3名の仲裁人を選ぶ場合には何か月もかかることがあります。
しかしながら、審級制度がないことや、既述のようにディスカバリー手続を簡略化できることなどに照らせば、あくまでも具体的な事案の性質及び関係者のスケジュール次第というところはありますが、概して仲裁の方が早期決着に資するでしょう。

(8)費用

裁判では、印紙代等一定の訴訟費用を払う他は裁判官その他の裁判所の職員に対する報酬というものはありませんが、代理人への報酬は高額になる可能性があります。
筆者の印象では、とりわけ米国弁護士、イギリス、香港の法廷弁護士(バリスター)の報酬は高額で、経験豊富なベテランだと1時間当たり10万円前後のタイムチャージであることも珍しくはありません。

特にディスカバリー手続のある米国の裁判ですと、代理人の費用は莫大になり得ます。これに加えて、翻訳や通訳の費用がかかります。
例えば、米国の裁判所で日米当事者間の紛争を審理する場合、ディスカバリー手続で提出しなければならない膨大な数量の日本語の文書は全て翻訳しなければなりませんし、日本人の証人に証言させようとすれば、通訳人を手配する必要があります。

一方仲裁は、訴訟と比較して安上がりなイメージを持たれがちですが、それは誤解です。
仲裁では、代理人の報酬に加え、仲裁人の報酬その他仲裁手続に必要な費用は当事者が負担しなければなりませんので、この点だけでも相当の費用負担を覚悟しなければならないのであり、とても少額の紛争に向くとはいえません。

ただ、仲裁ならば、多言語対応可能な仲裁人を選ぶことで、翻訳や通訳の費用を節約し得ること、ディスカバリー手続の簡略化も可能であること、審級制度による長期化がないことからすると、これも具体的な事案次第ではありますが、費用については概ね仲裁の方が有利で、特に米国での訴訟と比較すれば有利と考えられます。

3.仲裁と準拠法

仲裁合意をするに当たり、準拠法はどう考えたらよいのでしょうか。裁判とした場合には、準拠法と裁判地の法律が異なる場合に問題が生じます。裁判官は、他国の法令については全く門外漢なので、裁判官に準拠法を理解させることが必要です。
この詳細は、「英文契約解説~準拠法と非準拠法に関する知っておくと役立つお話」をご参照下さい。

当然ながら、仲裁の場合も、準拠法と仲裁地の法律が異なるという問題は発生し得ます。
しかしながら、裁判官を選べない裁判とは異なり、仲裁では仲裁人を選べますし、裁判官と比べれば総じて仲裁人の方がグローバルな実務経験が豊富ですから、例えば、3名の仲裁人のうち1名は準拠法に通じた仲裁人を選定することで、多少なりともこの問題に対処することができるでしょう。

4.仲裁と保全処分

仲裁合意をした場合に、仮処分や仮差押え、仮の差止命令等の保全処分は可能なのでしょうか。

仲裁は、紛争の最終的な解決を目指す手続ですから、暫定的な措置である保全処分は仲裁手続の内外でできて然るべきですし、全くできないとすると極めて不都合です。
この点、日本の仲裁法では、「仲裁合意は、その当事者が、当該仲裁合意の対象となる民事上の紛争に関して、仲裁手続の開始前又は進行中に、裁判所に対して保全処分の申立てをすること、及びその申立てを受けた裁判所が保全処分を命ずることを妨げない。」と定められています(仲裁法15条)。
この規定は、仲裁地が日本国内にある場合はもちろんのこと、仲裁地が日本国外にある場合や仲裁地が定まっていない場合にも適用されます(同法3条2項)。

しかしながら、諸外国で同様の法令があるかどうかは明らかではありません。
そのため、仲裁合意をする場合には、仲裁地をどこにするかにかかわらず、相手方である外国当事者の所在国で保全処分が可能かどうかのリサーチが必要です。
更に、仲裁合意にもかかわらず、保全処分による救済を妨げないことを契約上明記しておくことが考えられます。

5.仲裁条項例

以上を踏まえた上で、最後に英文の仲裁条項例とその日本語訳を記載します。

1.  In the event of any dispute, controversy or difference which may arise between X and Y, out of, in relation to, or in connection with the interpretation or application of this Agreement, or any breach hereof, the Parties shall attempt to resolve and settle the matter by mutual consultation in good faith; failing agreement thereof, any Party may submit such unresolved or unsettled material disputes to binding arbitration.  Such arbitration shall be held: (i) in Tokyo in accordance with the arbitration rules of the Japan Commercial Arbitration Association (“JCAA”) and the proceedings shall be conducted in the Japanese language if initiated by Y; and (ii) in New York, New York, USA in accordance with the arbitration rules of the International Chamber of Commerce (“ICC”) and the proceedings shall be conducted in the English language if initiated by X; provided that once an arbitration has been first commenced in accordance with this Section, all claims and counterclaims, if any, shall be mandatorily asserted in such first commenced arbitration. The arbitral tribunal shall be composed of three (3) arbitrators. Each Party shall select one (1) arbitrator and the two (2) arbitrators so selected shall, within one (1) month, select the third arbitrator who shall serve as the chairman of the arbitration tribunal; provided that the chairman shall not be a national of either Japan or the USA and provided further that in case the two (2) arbitrators cannot agree upon the chairman as aforementioned, the chairman shall be selected in accordance with the arbitration rules of the JCAA or the ICC, as the case may be. All proceedings of the arbitration (including the contents of the award, if any) shall be kept confidential by the Parties.

 

2.  The arbitration award rendered by the arbitrators shall be final and binding on the Parties. The Parties waive any right to appeal the arbitration award, to the extent a right to appeal may be lawfully waived.  Judgment upon an arbitration award rendered may be entered in any court having jurisdiction thereof or application may be made to such court for judicial acceptance of the award or an order of enforcement, as the case may be.  Notwithstanding the foregoing, each Party retains the right to seek judicial assistance:

(i) to compel arbitration;
(ii) to obtain interim measures of protection pending arbitration; and
(iii) to enforce any decision of the arbitrators, including the final award.

 

3.  Discovery permitted in any arbitration proceeding commenced hereunder is limited as follows. No later than thirty (30) days after the filing of a claim for arbitration, the Parties will exchange detailed statements setting forth the facts supporting the claim(s) and all defenses to be raised during the arbitration, and a list of all exhibits and witnesses. No later than twenty-one (21) days prior to the arbitration hearing, the Parties will exchange a final list of all exhibits and all witnesses, including any designation of any expert witness(es) together with a summary of their testimony; a copy of all documents and a detailed description of any property to be introduced at the hearing. Under no circumstances will the use of interrogatories, requests for admission, requests for the production of documents or the taking of depositions be permitted. However, in the event of the designation of any expert witness(es), the following will occur: (i) all information and documents relied upon by the expert witness(es) will be delivered to the opposing Party, (ii) the opposing Party will be permitted to depose the expert witness(es), (iii) the opposing Party will be permitted to designate rebuttal expert witness(es), and (iv) the arbitration hearing will be continued to the earliest possible date that enables the foregoing limited discovery to be accomplished.

 

1. 本契約の解釈又は適用若しくは違反に起因或いは関連してXとYとの間で発生し得る紛争、論争又は見解の相違の場合、両当事者は、誠実な相互協議により問題の解決を試みるものとする。合意に至らなかった場合は、何れかの当事者は、かかる未解決の重要な紛争を拘束力のある仲裁に付託する。当該仲裁は、(i)Yが申立てた場合は、日本商事仲裁協会(JCAA)の仲裁規則に基づいて東京で行なわれ、当該手続は日本語で行われるものとし、(ii)Xが申立てた場合は、国際商業会議所(ICC)の仲裁規則に基づいて米国ニューヨーク州ニューヨークで行なわれ、当該手続は英語で行われる。但し、本条により一度仲裁が開始された場合、あらゆる請求及び反対請求(もしあれば)は、当該開始された仲裁手続において主張されなければならない。仲裁廷は3名の仲裁人で構成する。各当事者が1名ずつ仲裁人を選び、かく選ばれた2名の仲裁人が1か月以内に仲裁廷の審判長を務める第3の仲裁人を選ぶものとする。但し、審判長は日本又は米国の国民であってはならない。更に、2名の仲裁人が上記の審判長の人選に合意できない場合、審判長は、場合に応じ、JCAAかICCの仲裁規則に則り選任される。仲裁の全手続(もしあれば、裁定の内容を含め)は、両当事者により機密に保たれる。

 

2.  仲裁人によりなされた仲裁裁定は、最終的なものとして両当事者を拘束する。両当事者は、上訴権が合法的に放棄され得る限り、仲裁裁定に対する上訴権を放棄する。与えられた仲裁裁定に関する判決は、その管轄権を有する裁判所において登録され得るものであり、場合により、司法による当該裁定の認証又は強制執行命令を得るために管轄裁判所に対する申請がなされ得るものである。前記にかかわらず、各当事者は、(i)仲裁を強制するため、(ii)仲裁が未決の間仮の保護手段を得るため及び(iii)最終の仲裁裁定を含め、仲裁人の決定を強制するために司法の救済を求める権利を有する。

 

3.  本契約に基づき開始される仲裁手続で許容されるディスカバリーは、以下のとおり制限される。仲裁申立ての提出後30日以内に、両当事者は、請求を裏付ける事実及び仲裁の間に主張する防御方法を詳細に述べた書面並びにあらゆる証拠と証人のリストを交換する。仲裁のヒアリング前の21日以内に、両当事者は、全ての証拠と専門家証人の証言の要旨を付記した、専門家証人の指名を含む全証人の最終リスト及びヒアリングで提示される全文書のコピーと物品の詳細な説明書を交換する。質問書、認否請求書、文書提出請求書又は証言の録取は、一切利用不可とする。但し、専門家証人を指名する場合には、以下の手続が生じるものとする。(i)当該専門家証人が依拠するあらゆる情報と文書が相手方当事者に手渡されること、(ii)相手方当事者が、当該専門家証人の証言を録取することが許されること、(iii)相手方当事者が、弾劾のための専門家証人を指名することが許されること、及び(iv)仲裁のヒアリングが、上記制限されたディスカバリーを達成し得る最も早い日まで継続されること。

 

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[1] ‘International Arbitration Survey: The Evolution of International Arbitration’, 2018, p. 9. / ‘International Arbitration Survey – Driving Efficiency in International Construction Disputes’, 2019, p. 11.

[2] その他には、ニューヨークに本部を置くアメリカ仲裁協会-紛争解決国際センター(AAA-ICDR=The American Arbitration Association-International Center for Dispute Resolution)、フランス仲裁協会(AFA=Association For Arbitration)、シンガポール国際仲裁センター(SIAC=Singapore International Arbitration Center)、香港国際仲裁センター(HKIAC=The Hong Kong International Arbitration Center)、スイス商工会議所仲裁機関(SCAI=Swiss Chambers’ Arbitration Institution)、ストックホルム商工会議所の仲裁裁判所(SCC=The Arbitration Institute of the Stockholm Chamber of Commerce)、ドバイ国際仲裁センター(DIAC=Dubai International Arbitration Center)等があります。

折田忠仁
弁護士折田 忠仁
ベリーベスト法律事務所パートナー。1986年に早稲田大学法学部を卒業し、同年司法試験合格。1989年に最高裁判所司法研修所修了後、主に知財案件を扱う特許法律事務所に入所。1994年に米国ロースクールに留学し、LL.M.修了。1995年にNY州司法試験に合格し、同年NY州弁護士登録。帰国後、米国法律事務所との外国法共同事業事務所、大手渉外事務所を経て、2018年9月にベリーベスト法律事務所に参画。帰国以来、外国企業との商取引、内国企業による外国企業及び外国企業による内国企業の買収、外国企業と内国企業との合弁事業の組成・解消等に係る契約審査を中心に、国内一般民商事案件や内外紛争案件も加え、幅広い経験を積んでおります。
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