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英文の契約書において「and/or」を使用することに潜む危険性

2020年2月27日
英文の契約書において「and/or」を使用することに潜む危険性

1.はじめに

日本語で法的な文書を起案していくときに、接続詞に悩むことがあります。
このような場合、「及び」を使えばよいのか、それともいずれか一方を示すものとして「又は」を使えばよいのかといった場合です。

 

例えば、ある人がAとBという事柄をしてはならない旨を書く場合において、
① その人は「A及びBをしてはならない。」と書くべきなのか、
② 「A及びB」と書いてしまうとAとBを両方一時にすることはだめであるが、AとBをそれぞれ別々にする場合は許されるのではとも思われるので、AとBがそれぞれ個別にしてはならないことなのであればむしろ「A又はBをしてはならない」と書くべきなのか、
③ 両方ともしてはならないことであり、AとBを両方することもだめなのであれば、やはり①の考え方に戻るべきなのか
と悩まれることもあると思います。

 

こんなとき、日本語で契約書などの法的な文書を起案している人達は、「英語はいいよね、日本語にはない『and/or』(及び/又は)という接続詞があるから」と考えたりします。
「and/or」ならどちらの意味でも含まれる、上記のようなことで悩む時間もなくなると思うわけです。

 

2.アメリカでの解釈

「and/or」は、例えばアメリカでは従前から使用されては来たものの、以前から、法律家の間では、「こんな言葉は、非常に両義的で(一義的でない)あいまいであるから、使用すべきではない。」という意見がありました。
むしろ、思考停止した怠惰な人間の使用する語と言わんばかりの非難すら見かけます。
そして、例えば、「300万円以下の罰金及び/又は3年以下の懲役に処する。」と書くのであれば、「300万円以下の罰金若しくは3年以下の懲役に処し、又はこれを併科する。」と書くべきであるといわれます。

 

実際、アメリカのいくつかの州の裁判所では、事案や文脈により「and/or」を排斥したケースもあるようです。

例えば、カリフォルニア州の裁判所では、従業員の負傷が「Aという人及び/又はBという人の違法行為によって生じた」との産業事故委員会の裁定が、上訴審で無効とされた例があります。

 

また、ジョージア州の裁判所では、カートンズヴィル公立学校制度及び/又はカートンズヴィル市の納税者であると主張して差止めを求めた原告に対し、どちらかの立場で差止めを求めることができることを示す十分な事実が主張され、訴訟が維持され得るとしても、申立人がどのベースに基づいて救済を求めているのか積極的に主張しなければ申立ては却下されるであろうとされた例もあります。

 

カナダのオンタリオ州の裁判所は、保険に関する裁判で、保険証券により意図されている保険の正確なカバー範囲を確認するのが困難なのは「及び/又は」という表現が用いられているためであり、この言葉が混乱と両義性を生み、長年批判されてきたとしました。
それにもかかわらず契約文書等で使用されるのは、適切に使われれば、便利な短縮語になり面倒な回りくどさを回避するのに役立つためであすが、裁判所の役割は、取引当事者の真の意図を最もよく表現するために用語を解釈することであり、もし用語があいまいさを生むのであれば、よく知られた解釈ルールにより、あいまいさは、被保険者に最も有利なように解釈されるとした例があります。

 

3.まとめ

契約書においても、種々の項目を併記して書く場合に、「and/or」を使って書くと便利なときもあるかと思われますが、アメリカやその他の英語圏の裁判所でその個所の意味内容が問題となった場合には、規定の文言自体があいまいで無効とされる可能性もないわけではないことに留意し、「and/or」を使うときはその条項を自ら解釈して多義的に解釈される恐れがないか吟味した方がよいと思われます。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

弁護士本川 朱美
ベリーベスト法律事務所パートナー 東京大学 法学部、ニューヨーク大学法科大学院 修了(New York University School of Law LL.M.) 国家公務員として政府機関及び国会に勤務した後、都内の渉外・企業法務・著作権事務所に勤務し、政府機関にて条約担保法制定作業に参画後、ベリーベスト法律事務所に参画。 多国間の貿易協定に係る国内法制度のハーモナイゼーション、知財関係、政府開発援助を含む国際協力、議員立法等を担当。各国との二国間貿易会議や国連主催の開発会議などに政府メンバーとして出席。 外国企業と国内企業との取引契約等の審査、国内外の企業のregulation compliance、国内企業と外国企業とのJV設立等を中心に、外国での仲裁に係る国内での求償訴訟等の訴訟経験も積んでまいりました。
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