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小売業のM&Aにおける法務デューデリジェンスの重要性とその視座

2019年11月19日

本稿では、近年以下のように活用されている、小売業におけるM&Aの意義と、そこでの法務デューデリジェンスの重要性および視座を提供して参ります。

 

1.近年における大手各社のM&A事例

2012年6月、ビックカメラがコジマを子会社化しました。
2013年12月、セブンイレブンがFrancfrancを子会社化しました。
2014年3月、スーパーアークスがベルプラスを子会社化しました。
2014年6月、阪急阪神百貨店のエイチツーオーリテイリングがイズミヤを子会社化しました。
2015年9月、イオンがウエルシアを子会社化し、ウエルシアが同業3社を完全子会社化しました。
2014年10月、ローソンが成城石井を完全子会社化しました。
2015年1月、イオンがダイエーを完全子会社化しました。
2015年3月、スーパーカスミ、マルエツ、マックスバリュ関東が経営統合をしました。
2016年9月、ファミリーマートがサークルKサンクス(ユニーグループHD)の吸収合併・吸収分割をしました。
2018年3月、ウエルシアがドラッグストア一本堂を完全子会社しました。
2018年10月、ドン・キホーテがユニーを子会社化しました。

このように大手各社、M&Aを活用して事業の拡充を図っています。
さらに最近でも、スーパーの3割が提携等を検討しているという調査結果があり、スーパーの再編が進む可能性が示唆されているところです(『日本経済新聞』令和元年10月8日朝刊)。
御社にとってもM&Aが大きな躍進の足掛かりとなるかもしれません。

 

2.小売業におけるM&Aの意義

小売業においてM&Aによる企業規模の迅速な拡大は、企業の生き残りのため重要だと言えます。
以下述べますとおり、今後はさらにその重要度が増してくるでしょう。

まず、小売業におけるマネジメント上のトレンドは、もはや単なるロジスティクスの改善にとどまりません。
川下での微動が川上にいくほどその動きが増幅する、いわゆる“ブルウィップ効果”を抑えるなどのため、サプライチェーン・マネジメント(原材料の調達から商品が消費者に渡るまでのプロセス)を行うのが一般的でしょう。

とはいえ、他社に対して人事その他の細かな改善を施すのは現実的に難しいことです。
そこで、M&Aによってサプライチェーンを広く把握し、マネジメントの質を向上させるという手法が有効な一手となり得ます。

(1)小売市場にも大きな変化が

さらに昨今、以下のように小売市場のあり方も大きく変化しています。

  • ECサイトの普及
  • 少子高齢化及び人口減少
  • プライベートブランド商品の普及
  • AIやIoTによる事業内容の革新の可能性

詳細に申しますと、まず、分野によっては小売市場での売上に占めるECサイトの割合が約20%に及ぶ商品類型も出てきており(『日本経済新聞』令和元年6月4日朝刊)、ECサイトの普及が伺われます。
しかしECサイトの開設・維持・改善にはWEBサイト等に関する専門性が要求されますし、自社のWEBサイトまで顧客を誘引し、商品を購入してもらうためのWEBマーケティングについても手を打つ必要があります。

そこで、WEBサイトやWEBマーケティングのノウハウ蓄積がある企業とのM&Aということが重要な選択肢として浮上してきます。

さらに、少子高齢化及び人口減少、加えてプライベートブランド商品の普及により、大規模な設備投資等や経営資源の大規模投下を行い長期スパンで利益を回収していくという事業方法も必要になっており、中小規模のままでは小売業の継続は危ぶまれる状況にあります。

(2)今後の動き

加えて、今後はAIやIoTといった技術によって流通業、特に小売業へ多大な影響が生じるということが予想されます。
すなわち小売店舗もARやVRによる疑似空間として再現され、その疑似空間で顧客に購買してもらうということも今後出てくるかもしれません。
このように小売業のあり方自体に多大な変化を及ぼすのはもちろんのこと、AIやIoT関連商品を販売する場合に、その商品知識に精通した販売チームを置くという必要も出てくることでしょう。

これら新技術による業界の様変わりによって、新たな人材・ノウハウの早急な獲得が要求されます。
小売業に限らず、すでに大企業各社の中にはAIに精通した人材を確保・育成しようと奔走する会社も少なくない昨今です。
その波は遅かれ早かれ小売業にも訪れるのではないでしょうか。
自社で人材の確保・育成ができれば理想ではありますが、AIやIoTに関連するスタートアップなど他社との間でM&Aを行うことも、考えるべき重要な選択肢のひとつとなり得ます。
現に京セラの子会社は、AI関連のスタートアップとのM&AによってAIに精通した人材の確保を図っているようです。(『日経新聞』令和元年6月4日朝刊3面「加熱AI人材争奪」)

3.法務デューデリジェンスの重要性

小売業のM&Aでも、その対象となる企業を調査・検討するデューデリジェンスが必須です。
中でも法務デューデリジェンスは重要で、適切に実施することにより、思わぬトラブルに巻き込まれM&Aで獲得したはずの業務ができなくなる、あるいはM&Aの対価が高過ぎたことに後から気付くというようなトラブルを回避することにつながります。

4.法務デューデリジェンスでまず考えるべきこと

法務デューデリジェンスでチェックすべき点は、重要度に応じて分類することができます。
一般的に、法務デューデリジェンスでは重要度に応じてどこまで深く細かく実施するかをある程度あらかじめ決めて開始します。
仮に一分の隙もないほど完璧に法務デューデリジェンスを行おうとすると、費用対効果が見込めず、コストが無用に嵩む恐れがあります。
ですから、まず、どこまで仔細に法務デューデリジェンスを行うかという方針決定をすることが必要になるのです。

5.重要度別、法務デューデリジェンスのポイント

まず、小売業で法務デューデリジェンスを行う場合に欠かすことができないのは、M&Aで得た会社の流通業自体が続けられなくなるような重要な問題です。
次に、M&Aの対価を決める交渉において適正額への減額を要求する交渉カードとして現行事業の問題点や将来的にコストが生じるリスクのあぶり出しを行います。
最後に、現行事業における問題点を洗い出し、将来的なトラブルの予防を図ります。
これらについて、以下具体的にご紹介いたします(なお、以下の重要度の順位付けは一般論であって、個々の事案によって重要度を吟味する必要があります。)。

6.流通業M&Aの法務デューデリジェンスで見逃してはならない点

M&Aを実施するかしないかに関わる重要な問題、例えば

  • 店舗や倉庫などの賃貸借契約
  • 配送センターに関連する契約
  • プライベートブランド商品OEMの製造委託などの契約

などの、重要な商流を形成している契約において、

  • COC(Change of Control)条項
  • 継続的取引義務の有無や内容
  • 契約期間
  • 中途解約権の有無や内容
  • 賃貸借なら定期賃貸借か否か
  • そもそも契約書の取り交わしがあるか

といった点で、商流を断ち切りかねない点はないかという点が非常に重要です。

なお、COC条項とは、Change Of Controlの略で経営者等経営権の変更が生じた時に取引相手の方から一方的に契約解除や契約の一部変更ができるとする条項です。
いわば有事を想定する条項ですから、もちろん普段の取引時には「そのような事態は当然起こりえない」という前提で契約をするのが普通でしょう。
そのため、吟味・修正を経ることなく不利な内容で合意している可能性が考えられます。

もちろん、場合によってはこの条項の有効性を争いうる場合もありますから、紛争となれば諦めずに弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

M&Aをする前の段階で判明した場合であって、COC条項がある契約の相手方が経営権の変更を承諾してくれない見込みが強く、しかもその契約が他の契約と代替不可能なものであれば、M&A自体の見直しも視野に入れて検討しなければなりません。

 

7.流通業のM&Aで交渉材料として着目すべき点

事業の実施自体が不能になるような点でなくとも、余計な出費や対応が見込まれることがあります。
これらは、M&Aの対価額の評価において有利な交渉カードとして用いる点とも言えるでしょう。
すべてを仔細には調べないまでも、実際にトラブルが起こる可能性があると考えられる場合には、ぜひチェックしておきたい点です。

【チェック項目】

  • 経営主体が変わることによる賃貸借契約の増担保・保証金増額等の義務の有無
  • テナントに店舗又はその一部を貸している場合に、その契約が賃貸借契約に当たるか否か(賃貸借契約だということになりますと、借地借家法が適用され、民法よりも賃借人が手厚く保護される結果、解約が制限されるなどして今後の事業計画に支障を来たすこともありえます。)
  • 業績不振により閉店したい店舗について、賃貸借で物件を借りていた場合、中途解約をするときに多額の違約金を払わなければならないような定めが置かれていないか
  • 親会社、グループ会社および関連会社などとの間で特に有利な取引が行われている場合には、それがM&A後にも契約上維持継続すると見込まれるか否か(いわゆるスタンド・アローン問題)

8.トラブル予防のためチェックしておくべきこと

次にみるのは、M&A自体の取りやめを考えるほどではなく、減額を交渉しうるほど大きな影響がなくとも、M&A実施後にトラブルが生じる恐れがあると考えられる点です。
これらのケースは先手を打って対応しておけば、将来的なトラブルを予防できる可能性があります。

【チェック項目】

  • 仕入先との契約における最低購入数量条項や特定の包装使用を義務付ける条項の有無
  • 製造物責任法に基づく責任に関する、仕入れから販売に至る関係各社間での内部的責任分担の定めの有無および内容
  • 食品衛生法、食糧法、酒税法、たばこ事業法、資金決済法、景表法、大店立地法、都計法その他の許認可や届出等の取得および管理等の状況
  • 個人情報保護法、下請法、廃掃法、容器包装リサイクル法、食品リサイクル法、各店舗所在地の条例などの遵守状況
  • 顧客との間の会員契約の内容に注意点がないか、特に、契約当事者の地位を引き継ぐことについて問題はなさそうか

9.まとめ

以上のように、流通業のM&Aにおける法務デューデリジェンスでは、その範囲・程度の策定から、貴社の目的や対象会社の実情に合わせた十分な検討を要します。
弊所ではそれ以前、M&Aの計画段階から親身にお話を伺い、御社に最適なご決断をサポートさせていただきます。

福田匡剛
弁護士福田 匡剛
早稲田大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科(ロースクール)修了、離婚事件・労働・刑事事件、を中心に一般民事系の経験が多いが、近年は知的財産(商標権、著作権など)・事業承継・債権回収・契約書のリーガルチェックその他企業法務も広く手掛ける。
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