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M&Aの失敗を阻止!〜法務DDの重要性〜

2019年6月24日
M&Aの失敗を阻止!〜法務DDの重要性〜

1.はじめに

M&Aを実施する場合、買主は対象会社に対してデューデリジェンス(以下「DD」といいます。)を実施するのが一般的です。
しかし、法務DDに多額のコストをかけることに疑問をお持ちの方や法務DDを不要だと考える方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、一般にDDは時間やリソースの制約があり、対象会社を完全に調査することは現実的に不可能であるといわれています。
すなわち、事前にDDをしたとしても、完全にリスクをゼロにするのは不可能で、DDにどんなに時間とコストをかけたとしても、後に予測していなかった問題が生じ得ます。
また、DDの実施にあたっては、法務DDだけでなく、財務DD、ビジネスDDなどを実施するために、多くの専門家が必要となります。
その結果、DDにかかるコストも安いものではありません。

今回は法務DDの意義についてご説明した上で、法務DDがなぜ必要なのかをご説明したいと思います。

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2.法務DDの意義

法務DDの意義は、(1)そもそも買収可能か(2)買収価格は妥当か(3)買収後に当初の会社のビジネスプランが実現するか、という点にあります。

(1)そもそも買収可能か

例えば、株式を取得して対象会社を買収する場合、誰が株主なのかを調査する必要があります。
M&Aの対象会社の株主として名乗り出てきた者が、対象会社のM&Aをした後、実は対象会社の株主ではなかったという事態が想定できるからです。
その場合、M&Aをした側は、株式を買い取った費用を偽の売主に返還請求をするという労力を負い(同時に偽の売主の無資力リスクも負うことになります。)、また、当初想定していた対象会社の株式の割合を取得できないことになります。

このような事態を防止するために、法務DDを実施することで、売主を真の株主として扱ってよいかどうかを判断することができるので、株主でない者との交渉やその株式の買い取りを防止することができ、M&Aの失敗を防ぐことができます。

(2)買収価格は妥当か

買主がM&Aを実行した後に、労基署からの指摘や労働者から訴訟提起を契機に、対象会社が労働法を遵守しておらず、大量の未払賃金の訴訟が係属していることが発覚することがあります。
このような場合に、M&Aの交渉過程で何も手当をしていなければ、買主に責任がない未払い賃金を支払わなければならないリスクがあります。
特に中小企業では労働法が遵守されていないことが少なくなく、中小企業に対するM&Aを考えている方は要注意です。

一般に、売主はなるべく高額で会社を売却したいわけですから、売主は、売主にとって不利な情報を提供しないという行動をとりがちであり、会社の価値を高く見せようとします。
そのため、買主は知らず知らずのうちに売主の言葉を真に受けて、不当に高額な価格で買い取ってしまう可能性があります。
たとえば、未払い残業代が計上されていない場合、対象会社の貸借対照表は実態と乖離していることになりますので、発覚すればその計算書類をもとに算定した買収価格は実態に沿って調整する必要があります。

このように買収価格で損をするリスクを事前に防止するために、M&Aをする前に法務DDを実施して、対象会社の情報を取得しておくのが重要です。
買主はこの情報をもとに、対象会社の価値を分析し、対象会社の価値に影響を与える法律上の問題点を発見することができます。
この法務DDで発見した法律上の問題点について売主に説明を求め、場合によっては、売主に対して値下げ交渉を持ち掛けることができ、妥当な価格でM&Aを実施することができます。

(3)買収後に当初の会社のビジネスプランが実現するか

先にも述べましたように、M&Aをする前の法務DDでは対象会社の全ての情報を把握できるとは限りません。
また、買主は通常、売主の提供した情報をベースに話を進めざるを得ないので、後に対象会社を取得した後に、事前に売主から提供された情報とは異なる場合が出てきます。

例えば、対象会社がかつて事業譲渡を行っていたことや、競業禁止条項のある契約を締結したことにより、競業避止義務を負っていたことが後から発覚し、この競業避止義務によって買主が当初想定していたビジネスプランが実現できなくなる可能性が生じます。
仮に、このことにM&Aを実施した後に気づいても手遅れで、M&Aをした意味がなくなってしまいます。

このような事態を防ぐために、事前に適切な法務DDを実施し、競業避止義務を把握しておけば、競業避止義務の期間満了を想定してM&Aの時機を考慮することや、対象会社のM&Aを断念し、別の会社を対象会社に探すなど、M&Aの実施を考え直すことができます。
このように、法務DDを実施することで、M&Aの失敗を防止し、コストを最小限にして皆様の当初予定していたビジネスプランを実現することができます。

3.DDと取締役の経営責任

仮に、法務DDを適切に行わず、M&Aを実施し、これによって、会社に損害が生じた場合、当該M&Aにおいて法務DDを実施せずにM&Aをすることを決定した取締役に善管注意義務違反が生じ得るという問題があります。

判例によれば、取締役の行為のうち、経営事項に関する判断は、裁判での事後判断に馴染まず、また、高度の専門的判断を要するので、裁量を広く認めています。
もっとも、このような経営判断においても、①判断の前提となった事実の認識に重要かつ不注意な誤りがなかったか、また、②判断の過程、内容が企業経営者を基準として著しく不合理、不適切なものでなかったかという点について、一定の範囲で裁判所によって審査されます。

過去の裁判例では、そのため、訴訟リスクを考慮してもDDを実施することは有用と言えます。

一方で、M&Aでどの程度の法務DDをしていれば、善管注意義務違反と言えるかは、裁判例はあるものの、上記の基準では、一義的には不明確といわざるを得ません。
そのため、取締役としては、時間と予算の許す限りより慎重な法務DDを実施しないと、善管注意義務違反の訴訟リスクが残ってしまいます。

このような訴訟に巻き込まれないためにも、取締役は、同種の取引の法務DDに詳しい専門家に依頼し、専門家のアドバイスを受けつつ、どのような法務DDをするかを決定するのが望ましいといえます。
また、後にM&Aによって会社に損害が生じたときでも、実施したDDは合理的であったと、取締役会や株主総会を納得させる説明材料を残すという意味でもDDを実施する意味があります。
説明の内容が合理的であれば、取締役の経営責任を問う訴訟や解任決議を回避できる可能性があり、問題を最小限に抑えることができます。
さらに、取締役が訴訟リスクを負うことなく、安心して経営に集中することができるようにするという意味でも法務DDにはメリットがあるといえます。

4.DDと表明保証

表明保証とは、契約の一方当事者が他方当事者に対して、当該契約の対象に関する事実問題又は法律関係について、ある時点の真実性及び正確性を表明し、保証することをいいます。
民法上の債務不履行責任のように法律で規定されているものではなく、M&Aの契約実務で用いられる条項で、日本でのM&Aが活発になった際、アメリカのM&Aの契約実務が輸入され、現在において、日本での一般的なM&A取引には必ず用いられる条項です。

表明保証条項は、売主の開示する情報の正確性、真実性に誤りがあった場合、買主は損害賠償請求できるという補償条項とともに規定されるのが通常です。
そのため、表明保証条項は、DDで発見することができなかった問題点から生じる損失を事後的に売主が金銭賠償で補填するという機能を有しています。

ただし、過去の裁判例では、表明保証条項をそのまま適用するわけではなく、買主が表明保証義務違反について知らなかったか、かつ、知らなかったことに重過失がなかったかに着眼した判断、すなわち、買主が表明保証義務違反について悪意又は重過失である場合は、損害賠償請求が限定されることを示唆したものがあることに注意が必要です。
この裁判例により、表明保証義務について一般的に要件を加重するものといえるかは、議論のあるところですが、実務としては表明保証条項があっても、損害を全額賠償されない可能性があるので、重過失を否定できる適切な法務DDを実施して、あらかじめ対象会社の調査を行うことが望ましいといえます。

5.外国企業に対する法務DD

外国企業に対する法務DDにおいては、日本企業に対する法務DDで発見される問題と異なる問題があります。

例えば、アメリカには懲罰的損害賠償制度や陪審員制度があります。
懲罰的損害賠償制度の下では、日本の損害賠償制度と異なり、多額の賠償義務を課す場合があるので、賠償リスクが日本のものと比較して大変大きいです。
また、陪審員制度だと、一般の市民が裁判に関与するので、訴訟の見通しが予想しにくくなるというリスクもあります。
法務DDを行えば巨額の賠償請求がされていないかを事前に確認することができます。

また、アメリカの海外腐敗防止法(「FCPA」(Foreign Corrupt Practices Act))は、贈収賄が発覚した場合、対象会社に高額の民事制裁金や刑事の罰金を科すことになるため、多額の損害を被ります。
法務DDを行えば、対象会社が法律を遵守しているかどうか、コンプライアンスの面から確認し、事前にこういったリスクを回避することができます。

加えて、各国には外国投資規制があり、業種によっては外国人が株式を取得することが不可能な場合もありますし、売却価格が一定の額を超えると、当局による審査が必要になってくる場合もあります。

このように、外国会社のM&Aは、日本とは大きく異なる法制度をとっている場合があるため、不明確なことが多く、充分な法務DDをしないと予想外の不利益を被る可能性があります。

一方で、法務DDをすることで、外国の法律を有利に使うこともできます。例えば、2019年3月、アメリカの司法省はFCPA のCorporate Enforcement Policyを改定し、M&A取引に適用することを明記しました(※https://www.justice.gov/criminal-fraud/file/838416/download
これにより、買収者がM&A取引実行の前後において法務DDを実施し、違反が発見された場合、これを当局に申告すると、アメリカ司法省による訴追を回避し、買収者の責任(successor liability)を免れることが期待できます。

このようなリスク対策を可能とするためにも、外国会社をM&Aの対象とする場合は、海外の法律事務所と提携している法律事務所や外国の弁護士資格を有する弁護士が在籍している法律事務所に法務DDを依頼することをお薦め致します。

6.まとめ

対象会社の情報を全く知らずに売主の言われるままにM&Aを実施するのは大変リスクがあります。
上述したように、皆様の考えるビジネスがそもそもできなかったり、不当に高額な値段で売却されたりすることもあります。
また、会社に損害が出た場合は、取締役に賠償責任が生じる可能性もあります。これらのリスクを回避するためにも、M&Aの際は専門家である弁護士にご相談することをお薦め致します。
弁護士に相談することで、法務リスクが明瞭になり、M&Aの成功率を各段に上げることができます。
また、法務DDは、その対象を絞るなどしてコスト面での柔軟な対応ができる場合もあります。

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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

弁護士池内 満
法政大学法学部卒業・首都大学東京社会科学研究科(法科大学院)修了。ベリーベスト法律事務所に入所後、契約書レビュー等の一般企業法務や債権回収等の一般民事事件・労働事件・家事事件と業務内容を問わず、予防法務及び紛争解決に広く関与。国際紛争にも関心を持っています。訴訟リスクに対するアドバイスの他、依頼者様のビジネスの内容や行政への対応、取引先等との関係も踏まえ、将来を予測した総合的なアドバイスをするよう心掛けています。
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