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eスポーツの法的諸問題①~景品表示法を中心に

2020年11月10日
eスポーツの法的諸問題①~景品表示法を中心に

1.はじめに

わが国では、2018年2月1日、「一般社団法人 日本eスポーツ連合」(英語名称:Japan esports Union/略称:JeSU)の設立が発表され、同日より正式に活動を開始しました。
JeSUは、世界規模で盛り上がりを見せ、日本でも本格的な普及への期待が高まっているeスポーツを対象に、プロライセンスのルール化、競技大会の普及、選手の育成等の環境整備を進め、その産業の普及と発展を目標に設立された組織です。

JeSUによれば、「『eスポーツ(esports)』とは、『エレクトロニック・スポーツ』の略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称」とされております(https://jesu.or.jp/contents/about_esports/)。

今日、日本を含む世界各国で盛んにeスポーツ大会が開催されてプレイヤー達が腕を競っており、成績優秀者には高額な賞金が付与されることが珍しくありません。
ゲームのジャンルとしては、スポーツゲームは当然のことながら、対戦競技としての性質上、ファーストパーソン・シューティングゲームリアルタイムストラテジー、マルチオンラインバトルアリーナ、格闘ゲームレースゲーム、デジタルカードゲーム等が大勢を占めています。

本稿では、eスポーツの諸問題について解説したいと思います。
なお、eスポーツと知的財産権の問題については、別稿「eスポーツの諸問題②~知的財産権(著作権)」に譲りますので、そちらをご覧下さい。

2.不当景品類及び不当表示防止法(景表法)

不当景品類及び不当表示防止法(景表法)

(1) 景表法とは

景表法は、「商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止」して「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護すること」を目的とする法律です(景表法第1条)。
景品類の提供を全面的に禁止するものではなく、過大な景品類を禁止する趣旨です。

そして、「景品類」とは、「顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む。以下同じ。)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であって、内閣総理大臣が指定するものをいう」とされています(景表法第2条第3項)。

これを受けて、「不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件」と題する公正取引委員会告示[1]は、「景品類」を、「顧客を誘引するための手段として、方法のいかんを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に附随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であって、次に掲げるものをいう」として、幾つかの例を掲げていますが、この告示から導かれる「景品類」の構成要素は、「顧客を誘引するための手段」であること(顧客誘引性)、「取引に附随」すること(取引付随性)及び「経済的利益」であること(経済的利益性)の三要素です。

(2) eスポーツと景表法

① 問題の所在

1. はじめに」において、成績優秀者には高額な賞金が付与されることが珍しくありませんと記載しましたが、この賞金と景表法の問題について以下説明します。

eスポーツにおける競技対象は、ゲーム制作者のゲームですから、プレイヤーはゲームソフトを購入する必要に迫られます。
ゲームソフトが手元になければ、そもそもプレイできませんし、上達もままなりません。
また、ゲームには課金アイテムもあり、これなくしては対戦相手に勝てる強さを得ることは望み薄ですから、事実上入手を余儀なくされるといえます。

そして、eスポーツ大会は、かかるゲームやアイテムを販売するゲーム制作者(又は利益を享受する関連企業)が主催することが多いことからすると、eスポーツ大会の成績優秀者に支払われる賞金は、ゲームやアイテムという商品の購入取引に付随して提供されるものとして上記「景品類」の三要素を満たし、景表法の規制の適用を受けるのではないかということが問題となります。

「景品類」に該当するとした場合、「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」と題する公正取引委員会告示[2]によれば、「懸賞」とは、「くじその他偶然性を利用して定める方法」又は「特定の行為の優劣又は正誤によって定める方法」によって「景品類の提供の相手方又は提供する景品類の価額を定めることをいう」と定義されていますから(同告示第1項)、「特定の行為の優劣又は正誤」によって決められるeスポーツの成績優秀者への賞金は「懸賞」に該当するといえそうです。

「懸賞」に該当するとなると、「懸賞」による「景品類」の提供については、「景品類」の最高額は、「懸賞に係る取引の価額の20倍の金額(当該金額が10万円を超える場合にあっては、10万円)を超えてはならない」と定められていることから(同告示第2項)、eスポーツ大会の賞金は、この10万円の制限に服することになるのではないかが問題となるのです。
事実、消費者庁は、平成28年(2016年)の時点では、「ネットワークを介して異なる筐体間で対戦することができる機能を有するアクションゲームを利用した賞金制大会」において「成績優秀者に対して提供される賞金は、景品表示法第2条第3項に規定する『景品類』に該当する」として、10万円を超えてはならないとの見解を示していました[3]

② 新展開

ところが、令和元年(2019年)に改めてJeSUから消費者庁に対する照会がなされたところ、思わぬ進展がありました。
この照会は、対戦型コンピューターゲームを使用して参加者同士で勝敗を争い最終成績が決定される競技型のゲーム大会やリーグ戦における賞金の提供先を、(1)プロライセンス選手に限定するケースと(2)資格制限を設けず、一定の方法で参加者を限定した上で大会等の成績に応じて賞金を提供するケースとに場合分けをした上でなされたものでした。
なお、プロライセンス選手とは、JeSUがJeSUプロライセンスを付与した選手のことをいうと定義されていました。

この照会に対する消費者庁からの回答においては、冒頭で「景品類等の指定の告示の運用基準について」と題する消費者庁長官決定[4]の第5項(3)-「取引の相手方に提供する経済上の利益であっても、仕事の報酬等と認められる金品の提供は、景品類の提供に当たらない(例 企業がその商品の購入者の中から応募したモニターに対して支払うその仕事に相応する報酬)」-が引用されています。
その上で、同回答は、上記(1)(2)の何れのケースも、「参加者への賞金の提供は、景品表示法における景品類の制限の趣旨の潜脱と認められるような事実関係が別途存在しない限りにおいては、運用基準第5項(3)に規定する『仕事の報酬等と認められる金品の提供』に該当し、『景品類の提供に当たらない』ものと考えられる」と結論し、従前の見解を改めるに至ったのです[5]

とはいえ、これで高額賞金のお墨付きが出たと考えるのが早計であることはいうまでもありません。
あくまでも「景品表示法における景品類の制限の趣旨の潜脱と認められるような事実関係が別途存在しない限り」の話です。
この点、JeSUは、「もっとも、配信・観戦のいずれも行われないなど、興行的性質がおよそ認められないイベント・大会において、参加者の実力・ゲームプレイの魅力に相応しない高額な賞金を提供して、専らゲームの販促活動のために賞金を提供するような場合には、個別判断によるものの、当該賞金提供が『仕事の報酬等』の提供であると認められない可能性がある点に留意する必要がある」として注意喚起をしています[6]

なお、ゲーム制作者(又は利益を享受する関連企業)以外の第三者は、ゲームや課金アイテムの販売により利益を受けていませんから、これらの者が賞金制大会を主催して賞金を支払うことは景表法上の問題にはなりません。

3.刑法(賭博罪)

大会の成績優秀者への高額な賞金の原資としては、プレイヤー、ゲーム制作者、スポンサー、イベント業者等の様々な関係者からの拠出金が考えられますが、特にプレイヤーから参加料を徴収し、当該参加料を原資として成績優秀者への賞金として分配するという方式は、各プレイヤーが掛金を支払い、ゲームの勝敗という偶然の事情によって一部の成績優秀者が当該掛金を獲得することになりますから、プレイヤーについては賭博罪(刑法第185条)、大会主催者については賭博場開帳図利罪(刑法第186条第2項)が成立するのではないかが問題となります。

この点、JeSUは、「①賞金・賞品が、参加者や主催者以外の第三者(スポンサー)から提供されること」及び「②(大会の主催者が賞金を提供する場合であっても、)参加料が会場費やスタッフの活動費などの大会運営費用にのみ充当され、賞金・賞品に充当されていないこと」という条件を満たすことで賭博には当たらない旨を説明し、「上記①、②を明確化するための方法としては、例えば、参加料と賞金等を口座上分別管理する、賞金等が第三者(スポンサー)から直接授与されるようにすることが考えられます」との示唆を述べています[7]

4.風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)

プレイヤーが参加料を支払う賞金制大会を開催するに当たり、参加者プレイヤーにプレイさせる目的で大会会場に複数のゲーム機を設置したり、ゲームの体験や練習を目的とする有料のeスポーツカフェとでもいうべき施設を営んだりすることは、ゲームセンターの営業となる可能性があります。

そして、ゲームセンターの営業は、「スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(…)を備える店舗その他これに類する区画された施設(…)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(…)」として風俗営業に含まれます(風営法第2条第1項第5号)。
更に、テレビゲーム機とは、「ブラウン管、液晶等の表示装置に遊技内容が表示される遊技設備で、人間と人間若しくは機械との間で勝敗を争うもの又は数字、文字その他の記号が表示されることにより、遊技の結果が表され、優劣を争うことができるものをいう」とされています[8]

そうすると、モニター又はディスプレイのあるゲーム機を備えた施設を業として運営することは、風営法上のゲームセンターの営業に該当し、予め所轄の公安委員会の許可を得る必要があり得ますし(風営法第3条第1項)、また、「第2条第1項第4号…又は同項第5号の営業を営む者は、…その営業に関し、遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない」(風営法第23条第2項)と定められているので、成績優秀者への賞金の支払は違法となるおそれがあります。

現在、このような施設に関する公的な風営法の解釈基準は存在しないので、同様の施設を営む際には所轄の公安委員会に予め照会することが望まれます。
とりわけ、賞金制大会を開催するには、事前のクリアランスは必要不可欠といえるでしょう。

5.おわりに

eスポーツの法的諸問題について景品表示法を中心に説明してきましたが、eスポーツは、やり方によっては深刻な法的諸問題を引き起こすリスクを孕んでいます。
我々一人一人が問題の所在とそれをクリアするための方策をよく理解し、eスポーツが健全に発展するための礎を築かなくてはなりません。本稿がその一助になれば幸いです。

 

[1] 平成21年8月28日公正取引委員会告示第13号

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_6.pdf

[2] 平成8年2月16日公正取引委員会告示第1号

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_8.pdf

[3] 平成28年9月9日消費者庁表示対策課長作成「法令適用事前確認手続回答通知書」(https://www.caa.go.jp/law/nal/pdf/info_nal_160909_0005.pdf

[4] 平成26年12月1日消費者庁長官決定

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_20.pdf

[5] 令和元年9月3日消費者庁表示対策課長作成「法令適用事前確認手続回答通知書」(https://www.caa.go.jp/law/nal/pdf/info_nal_190903_0002.pdf

[6] 令和元年9月12日「eスポーツに関する法的課題への取組み状況のご報告」

https://jesu.or.jp/contents/news/news_0912/

[7] 同上。

[8] 平成30年1月30日「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(通達)」第3項「ゲームセンター等の定義について(法第2条第1項第5号関係)」参照(警察庁丙保発第2号、丙少発第3号)

https://www.npa.go.jp/laws/notification/seian/hoan/hoan20180130.pdf

折田忠仁
弁護士折田 忠仁
ベリーベスト法律事務所パートナー。1986年に早稲田大学法学部を卒業し、同年司法試験合格。1989年に最高裁判所司法研修所修了後、主に知財案件を扱う特許法律事務所に入所。1994年に米国ロースクールに留学し、LL.M.修了。1995年にNY州司法試験に合格し、同年NY州弁護士登録。帰国後、米国法律事務所との外国法共同事業事務所、大手渉外事務所を経て、2018年9月にベリーベスト法律事務所に参画。帰国以来、外国企業との商取引、内国企業による外国企業及び外国企業による内国企業の買収、外国企業と内国企業との合弁事業の組成・解消等に係る契約審査を中心に、国内一般民商事案件や内外紛争案件も加え、幅広い経験を積んでおります。
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