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中国で就労する日本人被用者に対する関連政策について

2020年11月27日
中国で就労する日本人被用者に対する関連政策について

1. はじめに

近年、中国へ投資する日本会社は、中国で就労している駐在員に適用する外国人の中国におけるビザ申請の規定、就労許可制度、並びに日中の相互免除保険についての協定など関連法律又は政策に重大な関心を寄せています。
本稿は、最新の関連政策をまとめて、紹介します。

2.  外国人の中国におけるビザの種類について

中国では、2013年7月に施行された『中華人民共和国出入国管理法』(以下「出入国管理法」といいます。)を受けて『外国人出入国管理条例』(以下「出入国条例」といいます。)が2013年9月1日より施行されました。
「出入国条例」の第6条に基づき、外国人の中国におけるビザの種類及び対応する申請対象者は、以下の図表の通りです。

ビザ類別 ビザ種類 申請対象者

 

Z 就労者
M ビジネスを目的とする訪問者
R 高度人材および中国国内で不足している専門的人材

 

F 非ビジネス目的の訪問者(訪問、視察、学術文化交流など)
L 観光客、団体観光客
Q Q1:中国人および外国人永住者の親戚訪問者、および扶養などの理由で中国内に居留する者
Q2:中国人および外国人永住者の親戚訪問を目的に短期滞在する者(180日以下)

 

S

S1:仕事・就学のため居留する外国人の家族による親族長期訪問、およびその他の個人的理由による長期居留者
S2:仕事・就学のために居留する外国人の家族による親族短期訪問、およびその他の個人的理由による短期居留者

X X1:中国で長期に就学する者
X2:中国で短期に就学する者
C 飛行機や船舶の乗員等向け査証
D 永住者
G トランジット
J J1:中国に常駐する外国人記者
J2:臨時に取材のため訪中した外国人記者

以上のビザの種類に対応して、居留許可は以下の類型に分かれます。

イ)就労類:中国国内で就労する外国人
ロ)学習類:中国国内で長期に学習する外国人
ハ)記者類:中国国内に常設されている海外メディア機構の外国人駐在記者
ニ)家族居住類:家族で居住するため居留する中国国民や永住資格を持つ外国人の家族構成員、及び、被扶養等の理由で中国国内に居留するため入国する外国人
ホ)私的事務類:仕事、学習等の理由で中国国内に居留している外国人の配偶者、父母、満 18歳未満の子女、配偶者の父母で長期の親族訪問のため居留する人及びその他の私的事務のために中国国内に居留する必要のある外国人

3. 外国人の中国における永住権について

外国人の中国における永住権について

(1)永住権に関する政策の改善の経緯

中国政府は、2004年に『外国人の中国における永住審査認可管理弁法』を公布し、2013年7月に『中華人民共和国出入国管理法』(以下「出入国管理法」といいます。)を施行しました。
「出入国管理法」に基づき、要件を満たす外国人は、中国における永住権の取得を申請することができます。
ところが、実際には2004年から2013年の10年間に中国政府により発行された永住権の許可証の枚数は、僅か7,000枚余りにとどまっていると言われていました。
厳しい申請要件及び発給条件は、日本人を含んだ外国人が中国で長期にわたり勤務したり、滞在したりさせる上での大きな障害となっていました。
多くの在中外国人は、審査関連部門に対し「永住権の申請がかなり厳しい」といった声を寄せていました。

こうした過度に厳しい条件を緩和するため、中国政府は、2016年2月に『外国人永住サービス管理の強化に関する意見』を公布し、永住権に関するポイント評価制度と身分転換制度などに対して、より高い利便性を図りました。
同年の報道によると、これらの政策によって2016年の永住権の取得者は1,576人に達し、2015年に比べて163%ほどの増加となりました。

もっとも、実際には中国政府による優秀な外国人人材誘致政策の重要な一環としての永住権の緩和政策は、適用対象の範囲が限られており、一部地域で施行されているにとどまっていました。
上記のように、長期にわたり、永住権に対する審査認可は厳しいことで知られており、中国で長年勤務してきた多くの外国人からも「中国の永居権取得は極めて困難」との声があがっていました。
このような状況に応じて、2019年、中国における国家移民管理局は『国家移民管理局による自由貿易試験区建設に寄与し促進する12条の移民及び出入国利便化政策の全国範囲における普及と複製政策』を公布しました。
これらの政策により、外国人の中国における滞在、居住及び永住権の申請の利便性を向上させる方向性が示されました。

このような背景を踏まえて、中国の司法部は、今年(2020年)2月27日に『外国人永久居留管理条例(意見募集稿)』(以下『意見稿』といいます。)を公布し、一ヶ月のパブリックコメント期間を設けました。
『意見稿』は、今後外国人が中国で永住権を取得するための評価や現有の外国人管理システムの改善及び最適化等の内容について、細分化し、明確化を図ることを目的としています。

(2)中国における最新の永住権政策の主な内容について

①永住権の申請条件

『意見稿』によると、外国人は、以下のいずれかを満たした場合には、永住権を申請することができます。

イ)中国の経済社会に対して大きな貢献をした場合(11条)
ロ)経済、科学、教育等の領域で国際公認の成果を収めた場合(12条)
ハ)中国の経済社会発展の需要に基づいて誘致された場合(13条)
ニ)中国国内で就労し、納税記録や信用記録が良好で、かつ一定の条件を満たした場合(15条)
ホ)外商投資に関する法令により、自然人又は企業の支配株主として中国へ投資し、かつ一定の条件を満たした場合(16条)
ヘ)家族滞在の場合等(17条)

②永住権申請に対する審査認可管理

『意見稿』によれば、国家移民管理局の授権により、中国における県以上のレベルの地方政府の公安部門は、永住権の申請を受理することができます(21条)。
審査期間は受理の日から120日間です(23条)。
なお、永住権を有する外国人は、中国に居住する期間が毎年3ヶ月を下回ってはいけません(27条)。

③永住権を有する外国人の権利・義務

『意見稿』によると、永住権を有する外国人は、以下の権利を享受することができます。

イ)出入国の際、中国公民専用の通路を通行できます(37条)
ロ)中国の税収に関する法令、中国が締結した税収に関する国際条約や協定に従って納税義務を負います(39条)
ハ)自分が使用する不動産を購入できます(40条)
ニ)中国における社会保険に加入できます(41条)
ホ)規定された費用の範囲内で、適齢期の子女は義務教育を受けることができます(42条)

④永住権申請についての注意点

永住権申請の際に、一般的な資料以外に、以下のような資料を準備すれば、手続きがより効果的になります。

まず、各地の要請が異なる可能性があるので事前確認が大変重要です。
そして、一般的な資料も、政府の要求どおりに入念に準備する必要があります。

その上で、良い審査結果を得るためには、説得力のある補助資料を準備・作成しなければなりません。
例えば、高卒の場合において、できる限り詳細な技能に関する証拠を揃えるなどです。

4. 外国人の中国における就労許可制度について

外国人の中国における就労許可制度について

(1) 関連する就労許可について

現在、日本本社および中国における駐在員にとっては、外国人就労許可管理制度改革が最も切実な外国人材関連政策であると思われています。
2017年に改正された「外国人の中国における就業管理規定」(以下「就業規定」といいます。)は、全面的に外国人が中国で就労することに関する流れを定めています。

「就業規定』にしたがって、中国における国内企業および外資系企業は、外国人を雇用する場合には、必ず「外国人就業許可証明書」を取得した上で、当該外国人を雇用しなければなりません。
当該外国人は、中国で就労するために、上記のZビザを持って中国に入国してから、就業証明書及び外国人居留証明書を取得した後、中国国内で就労できます。
一方で、以下の外国人は外国人就業許可証明書の取得を免除され、入国後にZビザ及び関連証明書に基づき直接就業証を取得できます。

イ)中国と外国政府、国際組織との間の協議、協定に基づく交流協力の実施により招聘され就労する外国人。
ロ)外国企業の常駐中国代表機構の代表である外国人。

「就業規定」第15条及び16条に基づき、中国で就労できる外国人は、許可証明書および有効なパスポート或いはパスポート代行証明書に基づき、中国大使館、領事館にZビザを申請します。
企業は雇用した外国人の入国後15日以内に、許可証明書、労働契約およびパスポート或いはパスポート代行証明書に基づき、証明書発行機関で就業証申請手続を行います。
就業証は証明書発行機関の管轄区域内だけで有効です。

(2) 就業管理制度における分類

2016年10月に公布された「外国人訪中就労許可管理制度試験実施案の印刷発行に関する国家外国専門家局の通知」において、中国で就労する外国人は以下のA・B・Cいずれかのクラスに分類され、各クラスに分類された外国人はそれぞれ奨励類・制御類・制限類としての扱いを受け、相応の行政対応がなされることになりました。

① Aランク:外国高度人材就労許可

イ)中国の人材誘致計画に入選した場合(例:中国共産党中央組織部の「千人計画」に入選した場合等)
ロ)国際的に公認された専門業績認定基準に合致する場合(例:規定分野のノーベル賞受賞者等)
ハ)市場の動向に合致した奨励類職位に必要とされる外国人人材(例:グローバル500の企業の全世界又はエリア本部が採用した高級管理職、平均賃金収入が現地の前年度の社会平均賃金収入の6倍を下回らない外国人材等)
ニ)イノベーション・創業人材(例:重大な技術発明、特許等の自主知的財産権又はノウハウをもって出資し、投資の累計額等が規定の基準を満たす起業者等)
ホ)優秀な青年人材(例:ハイレベルな国(境)外[1]の大学でポストドクター[2]として研究に従事している40歳以下の青年人材等)
へ)得点が85点以上の人材

② Bランク:外国専門家就労許可

イ)学士以上の学位及び2年以上の関連実務の経験を持つ外国人の専門的人材で、各種企業、政府系公益組織、社会組織等が採用した外国管理人員又は専門技術人員等の規定条件を満たす場合。
ロ)国際的に通用する職業技能資格証書を有する又は急を要する不足している技能型人材。
ハ)外国語の教員
ニ)平均賃金収入が現地の前年度の社会平均賃金収入の4倍を下回らない外国人材
ホ)国の関連部門の規定に合致する専門人員及びプロジェトの実施人員
ヘ)得点が60点以上の専門人材

③ Cランク:他の外国人就労許可

イ)現行の中国における外国人就業管理規定に合致する外国人員
ロ)臨時的な、又は短期間の(90日を超えない)就業に従事する外国人員
ハ)数量割当制管理を実施される人員(例:政府間協定に基づき訪中して実習を行う外国青年等)

Aランクの人材には、手続き上及び許可上の優遇政策が与えられ、上記4.(1)のようにビザでの入国後に直接「外国人就業許可証明書」を取得することを許したり、有効期間を複数年とするなどの対応も見込まれています。
例えば、フォーチュン・グローバル500に選出された日系企業の在中現地法人や駐在員事務所の上級管理職の場合、Aランクに認定される可能性があります。

B ランクの人材には、「60歳未満」・「学士以上の学位」・「2年以上の実務経験」という条件を設け、当該人材の就労を制御しています。
現在の実務状況からみると、日系企業の駐在員の多くはBランクに認定される可能性があります。

Cランクは、制限類として、一般的に、条約や政府間協定、法律の規定に基づき訪中して就労することになった者や政府の職務割当管理下で就労を許された者に与えられ、実質的には日系企業の関係者とはおおむね直接の関係がないと思われます。

5.日中の社会保障協定について

日中で相手の国で働いている従業員の社会保険料の二重納付問題を有効に解決するために、日中両国は2018年5月9日に「中華人民共和国と日本国政府の社会保障協定」(以下「協定」といいます。)を正式に署名しました。
また、「協定」の順調な執行のために、中華人民共和国人力資源社会保障部は日本主管機関と「中華人民共和国と日本国政府の社会保障協定に関する行政協議」(以下「行政協議」といいます。)を締結しました。
「協定」と「行政協議」は2019年9月1日に発効しました。
社会保障協定における主な内容について、以下の通り紹介します。

(1)相互免除保険種類の範囲

中国被用者の場合、基本養老保険を指します。
一方、日本被用者の場合、国民年金(国民年金基金を除く)及び厚生年金(厚生年金基金を除く)を指します。

(2) 日本関係社会保険料の免除を適用する中国被用者

イ)派遣人員。中国国内に経営場所を有する雇用者に雇用され、当該雇用者のために役務を提供するため、日本に派遣される被用者を指します。
ロ)航海船舶又は航空機内で就労する被用者。
ハ)外交領事機構の人員、公務員。
ニ)随行の配偶者及び子供。派遣人員、公務員、例外人員の随行する配偶者及び子供は日本国民年金(国民年金基金を除く)を免除できます。その条件は、日本法による社会保障協定実施の要求に合致しています。但し、随行の配偶者及び子供から申請を行う場合には、前述の規定は適用できません。

(3) 中国関係社会保険料の免除を適用する日本被用者

中国関係社会保険料の免除を適用する日本被用者は中国従業員のイ)~ハ)の人員の適用条件と同じです。

(4) 派遣人員が社会保険料を免除する期限

派遣人員に対する初回の免除の最長期限は5年です。
但し、派遣期限が5年を超える場合、日中両国の主管機関または実務機関の許可を取得して延長できます。

(5) 中国国内における異動について

例えば、上海の会社から北京の会社への異動に際して、新しく就労許可を取得する必要があるでしょうか。
北京では、他の都市から北京への横滑り移動する場合、新しい就労許可を取得しなければなりません。

6. まとめ

以上、説明しました中国で就労する外国人被用者に関連する政策の規定が今後日本本社の中国子会社や関連会社の中国人事に与える影響としては、中国へ送る人材の選考基準を社内で確立する必要が高くなり、人材戦略も必要とる点です。
また、上記の規定は中国全土にわたって実施されますが、地方ごとの手続きがそれぞれ異なりますので、十分に把握する必要があります。

[1] 通常「境外」というのは、中華人民共和国領域以外又は、領域以内かつ中華人民共和国政府がまだ行政管轄を実施していない地域です。香港、マカオ及び台湾は、「国内」ですが、「境外」です。

[2] ポストドクター(博士研究員,Postdoctoral Researcher, postdoctoral fellow)とは、博士号(ドクター)取得後に任期制の職に就いている研究者をいいます。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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